どうしても断りたいときに「NO」の代わりに使うと角が立たない"最強のフレーズ"
プレジデントオンライン / 2021年5月8日 11時15分
※本稿は、伊藤羊一『1分で話せ2【超実践編】』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■交渉で「NO」と言えない
交渉でNOが言えません。ここに着地させたいというゴールイメージを持っていても強く主張されると反論できず、相手の思うように交渉を進められてしまいます。
また、相手の話にすぐ反論を組み立てられず、自分でも判断がつかないまま、相手のペースで話が進んでしまって、こう言っておけばよかったと、あとになって思います。
【POINT】
・妥協できるラインと譲れないラインを引いておく
・言葉ではなく「態度」で表す
・NOと言うときは相手を理解しようとするサインを忘れずに
まず交渉に入る前に、どこまでなら妥協できるか、どこからは譲れないのかというラインをはっきり決めておくことです。自分の中に判断基準がないと、相手の勢いに押されてしまいますので、交渉に臨む前の準備段階でそこを決めておきます。
交渉というのは、お互いの「NO」をどこまで通すかの戦いでもあります。
「NO」と言うと相手が気分を害するのではないかと心配する人もいますが、「NO」と言うことと、相手の人間性を否定することはまったく別です。
でも、しっかり反論する準備ができていればいいのですが、そうではないことも多いですよね。自分の考えがまとまっていないときに反論されると、譲ってはいけないと思いながらも、ついつい相手のペースで物事が進んでしまったり、相手の言うことにも理があるような気がして、あとになってから「あのとき、こう言っておけばよかった」と後悔することもあります。
■困ったときの最強フレーズ
こんな時、僕は「うーん」と言ってYESともNOとも言わないことにしています。
「◯◯をお願いできませんか?」
「うーん」
「でも、伊藤さん。こういうメリットがあるんですよ」
「うーん、うんうんうんうん。うーん」
「反対がなかったら進めてもいいですか?」
「うーんうーん。なんかモヤモヤするんですよね。モヤモヤの正体を考えているんですけどね」
という感じです。「角が立ちそうで、なかなか強くNOと言えない」人にもおすすめです。
反論されたり、意向に合わない提案を受けたとき、「これには反対である。理由は3つあって、これこれである」とすっきり言えることのほうが少ないと思います。自分の中でも「ちょっと違うな」という感覚はあるものの、確証はない。相手の言うことが正しい気もする。
でも直感というものは大抵正しいので、そこで譲ってしまうと、やっぱり後悔します。
「相手に悪く思われたらどうしよう」という理由で決断するほど馬鹿馬鹿しいことはありません。一度YESと言ったら、その後くつがえしにくいから、「アホか」「何言っているんですか」と言われても、捨て身の姿勢で「うーん」とモヤモヤを伝えていく。それも1つのやり方です。
■歩み寄りながら一線は譲らない
ポイントは「あなたの言うことを心から理解しようとしています。でも僕は違う意見を持っています。意見は違うんですけど、あなたのことを理解したいし、何かしら歩み寄りたいという気持ちはあるんです」ということをサインで示しながら、一線は譲らないことです。
「あなたの意見に反対です」ということと「あなたのことをリスペクトしています」というのは両立できます。同じように、相手の話を受け止めることと「でも賛成はできないんですよね」ということも両立できます。
聞いた瞬間、明らかに「それはないな」という提案だったとしても、「僕は違うなと思ったんだけど、どうしてそう思ったのですか?」「そういう見方もあるかもしれませんね」
というように、一旦は相手の話を聞いてみる。相手を受け止めるスタンスは持っておく。
聞いたうえで、「ああああ、その気持ちもわかるから、ものすごく残念だけど、自分はちょっとYESとは言えない」ということを全身で示して、「かわりに、こういうのはどうですかね」というように、自分のスタンスをじわじわと伝えるようにします。
いくら口で「わかります」と言っても、目を合わせなかったり、体が引いていると、相手は「口だけなんだな」と感じます。相手をリスペクトしたいという気持ちがあれば、全身に出ます。こういう局面ほど、相手へのリスペクトは大切です。
![コーヒーを飲みながら会話](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/d/670/img_bdcc4c7617f15e6f37beba8142d5061e652342.jpg)
■自分のことについて交渉が苦手
人事評価のときなどに自分のことをアピールするのが苦手です。仕事は結果を出してこそだと思うので、もう数字として見えていると思いますし。でもアピールはしたほうがいいのでしょうか?
【POINT】
自分を評価できるのは自分しかいません
「今期の昇給は据え置きだよ」
「どうしてですか。今期、かなり頑張ったつもりですが……」
自分のアピールができない。頑張っているつもりなのに、周囲に認められない。そんなときは、自分の成果に関する「結論+根拠」が明確に伝わっていないかもしれません。
こうしたときも、やはり「結論+根拠」のピラミッドをつくってみましょう。
根 拠1 予算に対して120パーセント達成した
根 拠2 達成度はチームメンバーの平均よりも高い
根 拠3 大型顧客を3件開拓した
こういうピラミッドをつくってみて、「結論+根拠」が明確だなと思ったら、それを伝えてみてください。
ただ、そもそもマネージャーが前提を伝えていなかっただけで、全社の業績が落ち込んでいるから、社員は一律で昇給がないという事情があるのかもしれません。そうした隠れた前提を探りながら、自分の成果はきちんと伝えることが大事です。
よく「ちゃんと仕事をして成果を出しているから、わざわざアピールしなくていい」と考えている人もいます。マネージャーがちゃんと評価してくれる人であればいいのですが、残念ながらそうではない人もいますから、成果はなるべく客観的に伝えられるといいです。自分を宣伝してくれるのは、基本的には自分だけなのです。
■会議で物事が決まらない
会議で物事がなかなか決まらないのは、そもそもどうやって意思決定するかということを決めていないからです(PTAの係決め会議でもよく見かけます)。
![](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/c/200/img_6c9af410a91b9779cd48bc27ffb61b6510094.jpg)
「意見が対立したとき、議長(ファシリテーター)がどう引き取るか」の箇所でもご説明した通り、意見が平行線をたどって結論が出ないときは、最終的に多数決で決議するのか、より上の役職の人にエスカレーションするのかというように、あらかじめルールを決めておく必要があります。
ただ、できれば議論を通じて、みんなで決めるところまでいきたい。
会議中のファシリテーターの役割としては、「意見が割れていますね」「このままだと時間切れになってしまいますよ」ということを伝えたうえで、争点を整理することが大事です。
「Aさんは積極的に投資すべきというお考えですよね。それに対してBさんは予算がないとおっしゃっている。つまり、もし予算が許せばAさんの意見で一致ということでよろしいでしょうか」というふうにです。
■話を蒸し返す上司
同じ話の繰り返しにならないために会議で話題が次に移っているにもかかわらず、上司が「いや、さっきの話はこういうことだよね。だったら、こういう問題もあるんじゃないかなあ」などといって、話を蒸し返したり、せっかく決まった結論をひっくり返すこともあるでしょう。
実際、こういうケースはよくあります。ですから、前項のゴールや時間配分を決めて進めていくことが大事です。
「今は前期の予算について話していますよね」ということを会議の参加者全員が理解していて、「これはOKですよね」とみんなが理解したら、次のテーマに移るのが理想です。
議事進行と時間配分をスクリーンに映写したり、ホワイトボードに書いて、みんなが見られる状態にして、「はい、⑴が終わったので、次は⑵に移りたいと思います」と言うのも有効です。
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ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長
日本興業銀行、プラスを経て2015年4月にヤフー入社。企業内大学「Yahoo!アカデミア」の学長としてヤフーの次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授、株式会社ウェイウェイ代表として、ヤフー以外でも様々な活動に従事する。近著に『1分で話せ―世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』がある。
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(ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長 伊藤 羊一)
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