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「同じ絵本を54回連続で読み聞かせ」3男1女が東大医学部に合格した母の"過保護"な子育て

プレジデントオンライン / 2021年4月27日 9時0分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RapidEye

頭のいい子供の親はどのような教育方針を持っているのか。4人の子供が東大医学部に進学した佐藤亮子さんは「子供が小さい頃は、連続54回同じ絵本を読み聞かせすることもありました。過保護な部分がありましたけど、過干渉だけは避けようと気をつけました」という。教育のスペシャリストである2人の母親との座談会で明らかにした“親技”とは――。

※本稿は、『プレジデントFamily2021春号』の記事の一部を再編集したものです。

最難関といわれる東大医学部に進学した4人の子供を持つ佐藤亮子さん。そして、外資系企業の第一線で働き今は世界の最先端教育を紹介している竹村詠美さん、さらに教育ライターとして家庭や専門家を取材している加藤紀子さんを加えた3人の凄腕ママが語り合った「子育てのコツ」(前編)に引き続き後編をお届けします。

■佐藤亮子ママ「同じ絵本を連続で54回も読みました」

【加藤】同じ本を何度も読みたがるっていうのも、子供ならではの感覚ですよね。子供って同じ絵本でも毎回違う読み方をしているらしいですね。

【竹村】うちの夫は「違う本もいっぱいあるよ」って感じで、ほかの本を出したがるんですけど、私はその子が同じお話を本人なりに深めたり楽しんだりしてるんだから、別の本に行きたいって言うまでは何度でも読めばいいと思います。

【佐藤】私も子供の気がすむまで何度でも読むのがいいと思いますよ。次男が生まれたとき、長男が赤ちゃん返りで私に甘えたかったのか、同じ絵本を何度も読んでって言ってきたんです。動物が、ただ「こんにちは」って言うだけのお話なんですけど、どれだけ読ませるんだって思うくらい読みました。10回くらい読むとこっちもイライラしてくるんだけど、これはもうやるしかないと腹をくくって、「正」の字を書いて回数を数えていったら結局54回!(笑)

【竹村】そこまでつき合ったのはすごい!(笑) 読むのを楽しむ方法を編み出したのもいいですね。

【加藤】児童精神科医の故・佐々木正美先生は、過保護と過干渉を区別し、過保護はいくらでもやっていいと。佐々木先生の言う過保護とは、子供が望んでいることをたくさんしてやること。一方、過干渉とは、子供が望んでもいないこと、むしろ嫌がっていることをやりすぎることだと。佐藤さんの子育ては、まさにこの意味の過保護だなと思いました。

【佐藤】そうそう。私が本を世に出したばかりのとき、過保護の塊だって非難されたんですよ。朝、なかなか起きられない子供に靴下をはかせるとか、勉強時間が増えるように子供の髪を乾かしたりとか、私が工夫してきたことを非難する人が多かったですね。でも、保護と過保護ってどこで線引くの? って話でしょ。過保護と過干渉をみんなごちゃごちゃにしてますよね。

【加藤】佐藤さんは、子供が望んでいるものを察知するために、一人一人をよく観察されていたんだろうなと思います。もし過保護ではなく過干渉だったら、お子さんとの関係がギスギスしているはずですから。

■「過保護でしたけど、過干渉だけは避けようと気をつけていました」

【佐藤】「(子供を)マザコンにさせるなよ」とも言われましたけど、4人とも東京に行って、家事ができなくて困ったということはなく自分たちできちんとやって暮らしていました。結構自炊もしていたようです。今なんて、上3人はもう医師になって忙しく働いているので、時々LINEで様子を聞くんですけど、既読スルーですから(笑)。

【加藤】親子によってケース・バイ・ケースですよね。周りの声は気にしなくてもいいんじゃないでしょうか。

【佐藤】確かに私は過保護でしたけど、過干渉だけは避けようと気をつけていましたよ。18歳まで年齢に応じて子供との距離を意識して少しずつあけていくようにしました。勉強の手伝い方も、中学受験までは手をかけましたが、中学以降は徐々に手を離していくという感じでしたね。

■通知表を持ってきた子供に「お疲れさま」というワケ

【加藤】一方で、今は共働き家庭が増えているので、子供をじっくり見られないという悩みも多いですよね。

『プレジデントFamily2021春号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2021春号』(プレジデント社)

【佐藤】「佐藤さんは専業主婦だったからできたんだ」ってよく言われますけど、仕事も子育てもどうするか決めるのは親自身。親も自分の人生なんだから、誰かと比べて嘆いたって仕方ない。仕事は辞めないで子供との時間を増やしたいなら、仕事以外の時間を減らすしかないですよね。24時間をどう使うか、自分の人生に対する覚悟が必要です。

【加藤】佐藤家では誰かのテストの結果が返ってきたらみんなに見せて、良くても悪くてもワーワーと盛り上がっていたそうですが、そんなふうに明るく受け入れ合える雰囲気づくりって何かコツがあるんでしょうか。

【竹村】もしかしてお子さんたちを比べなかったんじゃないですか?

【佐藤】そうですね。子供同士を比べることは一切しなかった。通知表も模試の結果も返ってきたら私は「お疲れさま」って言うと決めていました。良かったら褒める、良くなかったら何も言わないなどという考えもありますが、結局は二通りの態度をとることになりますから、それは良くないと思いました。それに夫には通知表は一切見せませんでした。うちの場合は夫がおっとりした性格で、「おぉ、こいつは数学がいいな」とか「英語は俺に似てイマイチかな」とか、悪気はなくてもつい比べるような言葉を言いかねない(笑)。

【竹村】私は姉と1歳違いで、二人とも同じ学校だったので、親には悪気はないけれどテストの結果を比べられたのが嫌でしたね。そうすると姉と気まずくなってしまって。

【加藤】心理学などの研究では、子供は結果を評価されると、次から失敗を怖がって萎縮してしまうこと、一方で頑張った経緯や努力を認められた子は「やればできる」「次もっと頑張ろう」などと前向きな気持ちになることがわかっています。

【佐藤】うちは年齢や男女の差別もナシ。1番目と4番目は7歳差ですが、お兄ちゃんのおかずを多めにするとかもナシ。食べられずに残ったら子供同士で分け合えばいいのです。

佐藤亮子さん
佐藤亮子さん(出所=『プレジデントFamily2021春号』)

【竹村】権威的でもなく、子供に媚びるわけでもなく、話し合わせるのはまさに民主的な子育てスタイルですね。海外の研究で、親が○○しなさいと決めることが多い「権威的な子育て」、子供のやりたいようにさせ親が子供を制限しない「消極的な子育て」などがある中で、親の期待を伝えながら、子供の意向につき合う「民主的な子育て」が感情をコントロールする力や自尊心を育むっていわれているんですよね。佐藤さんの子育ては民主的ですね。

【佐藤】子供って体は小さいけど心は大人と同じだと思うんです。名探偵コナンみたいだけど(笑)。だから子供の思いは尊重しようと思っていました。

【加藤】同感です。だから私、子供に何かを「させる」「してやる」っていう表現が好きじゃないです。

【佐藤】私も嫌ですね。「これやってみたら?」とは言うけど、「させる」って感覚はないです。子供が嫌そうだったら親が引き下がる。

■油断すると、自分の思いを子供に押しつけてしまうことがある

【竹村】確かにそうやっていったん引いて考えると、実は親の都合だったっていうことは結構ありますね。私は自分の中学受験が大変だったので、子供は小学校で受験させて、あとはのびのび過ごしてもらいたいと思っていたんです。ところが息子は合格した小学校が合わないと言い出して……。私は働いていて忙しかったので、最初はなるべく穏便に、本人が徐々に納得してくれたらなと思っていたんですが、やっぱり楽しくないと。「仕事の忙しさに逃げないで、ちゃんと向き合おう」って決めて、息子にどんな学校が合いそうか調べ始めました。そして学校を変えたんですが、思い切って決断したらお互い幸せになれました。

竹村詠美さん
出所=『プレジデントFamily2021春号』
竹村詠美さん - 出所=『プレジデントFamily2021春号』

【佐藤】親は自分が育った人生で得た経験をかなり引きずりますよね。油断してると、自分の思いを子供に押しつけてしまうことはあります。まず親自身が内省して、子供に合う方法を考えること。まず自分の常識を疑うことも大事だと思います。

【竹村】そうですね。子供に合わないなと気がついた時点で、方向転換したらいいんですよね。

【佐藤】子育ては18歳で一区切りだと私は思っています。娘が大学生になって手が離れた今は、産卵したあとの鮭のお母さんのような感じです。あとは自分たちで頑張って生きていってね。今、子供たちが何してるかはあまり興味ないんです。とにかく元気にやってくれたらいいですね。

【竹村】子育てを「楽しむ」気持ちの大切さをあらためて実感しました。

加藤紀子さん
出所=『プレジデントFamily2021春号』
加藤紀子さん - 出所=『プレジデントFamily2021春号』

■ピンと来たものから取り入れよう「プロママの知恵10」

(前編・後編のエッセンス)
1)新聞やTEDTalksで社会問題を話し合う

環境問題や経済問題など世の中に目を向けるきっかけづくりを日常的に行う。

2)子供が嫌がるときは理由を聞こう

勉強にしても習い事にしても、子供が嫌がるのには理由がある。子供に寄り添って理由を聞くのは親だからこそできること。

3)「子供ウケ」を狙う

それぞれの子に合う参考書が違うように、それぞれの子にウケるポイントでやり方を変える。習い事なども子供ファーストで考える。

4)「入れる学校に入ろう」と伝える

入った学校を好きになり、そこで頑張ることが大事。「あの学校がいい」とこだわっても仕方がない。

5)基礎学力をつける

将来子供がやりたいことを見つけたときのベースになるのは読み・書き・計算の基礎学力。小学生のうちにしっかりサポートする。

6)「手伝い」はさせない

子供にさせる手伝いで子供が集中を切らすことは良くない。子供が家事をするのを親が手伝う。

7)子供が求めていることをやる

子供をよく観察して求めることをしてやる。他人から見たら「やりすぎ」だと言われることも親が必要だと思えばやる。

8)きょうだいを比べない

成績やスポーツなど成果を比べられると子供は嫌なもの。きょうだいやほかの子とは比べない。

9)子供の意向を尊重する

親の意向を伝えつつも、子供の意見も聞き話し合う「民主的な子育て」が子供の自尊心を育む。

10)今の状態が良くないと思ったら方向転換する

子育ての中で失敗をしたり間違えたりしたと思ったら、気がついた時点で決断することも必要。

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佐藤亮子さん
3男1女が大学受験の最難関といわれる東京大学理科三類(医学部)に進学したことで注目を集め、テレビ出演や講演活動をしている。進学塾浜学園アドバイザーも務めている。『「灘→東大理Ⅲ」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方』をはじめ子育てに関する著書多数。現在3人の息子は医師に、娘は大学在学中。
竹村詠美さん
FutureEdu代表理事。アマゾン、ディズニー、Peatixなどの経営メンバーとして、サービスの事業企画や立ち上げに関わり、現在は新しい教育を広める活動を展開。世界の最先端の教育について記した『新・エリート教育』が話題に。総務省情報通信審議会委員なども務める。1男1女の母。子供は私立小学校からインターナショナルスクールに転校。

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加藤 紀子(かとう・のりこ)
フリーランスライター
ライター。子育てが一段落してから教育関係の取材・執筆を本格的に開始。教育専門家に取材したことから得た知見や、国内外の最新研究から得た子育てのコツを盛り込んだ初の著書『子育てベスト100』は現在16 万部のベストセラーに。1男1女の母。

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(フリーランスライター 加藤 紀子 撮影=干川 修、市来朋久)

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