子供4人とも偏差値72超…佐藤ママの主張「子に家の手伝いをさせるのは失礼」は是か非か
プレジデントオンライン / 2021年4月27日 8時45分
※本稿は、『プレジデントFamily2021春号』の記事の一部を再編集したものです。
■3人の凄腕ママが「わが子の才能を120%伸ばした知恵を全公開」
【加藤】佐藤家はお子さん4人が全員医学部に進学していますが、小さな頃から医学に興味を持つような働きかけをしていたんですか?
【佐藤】実は医学部に行ってほしいと思ったことは一度もないんですよ。私がしたことは、基礎学力をしっかりつけることだけでした。うちはリビングに4人の勉強机を置いていて、その真ん中にコタツがあります。食事が終わると子供たちはそれぞれ勉強するのですが、私はコタツで新聞を読むのが日課だったんです。
その日のいろいろな記事を読みますが、特に投書欄が好きで、子供たちに内容を話していました。子供にぜひ伝えたかったのは、今後ますます深刻になる地球環境と少子高齢化の問題。記事を声に出して読んでから、「ママはこう思うんだよね」って意見を言っていました。長男が「おい! ママが語りたってるぞ」って声をかけてくれて、残りの3人も渋々聞くという……(笑)。
■戦争体験、SDGs……新聞の投書欄を子供前で声に出して読む
【竹村】深夜ラジオを聴きながら勉強する感じですね。
【佐藤】特に外せなかったのは、投書欄の戦争体験。ちょうど子供たちと同年齢の子が戦争で親を失って路上で生活していたような話も織り交ぜて話していました。8月になると戦争の話題が増えますが、投書される方が年々高齢化している。「8月の新聞に戦争の話題が載らなくなったら日本はまずい状態」って言ったり、「歴史を学ぶのは未来のための教訓であって、点数を取るためじゃないよ」ってことも常々伝えたりしていましたね。
【竹村】そうやって、お母さんの言葉で歴史や社会問題との接点を持つのはすごくいいですね。学校だとどうしても歴史や社会的な話題を、教科書の中だけの自分とは関係ないところで起こった出来事として扱ってしまいがちですから。
【佐藤】そうかもしれませんね。うちは意見を言うときは「ママはこう思うのよ」という言葉を必ずつけていました。親の言うことがいつも絶対に正しいとは言い切れないから。環境問題なら、経済優先できれいな地球をこんなに汚してしまったこと、温暖化を進めてしまったことなどはママたち世代の責任だから、「本当にごめんね」と。「申し訳ないけど問題はあなたたちの世代で解決してね」ということもよく話しました。
【竹村】うちも環境問題については家族でよく話します。長男はモンテッソーリ教育を取り入れたインターナショナルスクールに通っていて、SDGsに関心があるんです。夕食後に、TEDTalks(※)の環境問題に関する動画を家族で見て、みんなでそれについて話したりして。
※世界のさまざまな分野の専門家によるプレゼンテーションを視聴できる動画サービス。日本語字幕もある。
■医学部に入った子供たちからTEDTalksを勧められた
【佐藤】TEDTalksっていいですよね。息子からもすすめられました。
【竹村】ちなみに、今小学6年生の娘はヘアケアに興味があるんですね。どのシャンプーが髪の毛や環境にいいかという疑問につながり、成分のことにも興味が進んでいるようで、この前、実際に働いている人はどう思っているのかを聞いたら、って美容師の方を紹介したこともありましたね。
【加藤】日常会話の中や、興味があることから社会の問題に触れていたことが、「未来の社会は自分たちがつくっていくんだ」って、動機づけや自立心につながるんでしょうね。
■わが子が自然に机に向かえるようにするコツ
【加藤】日々の勉強で、お子さんたちが自然に机に向かえるようにするコツってありましたか?
【佐藤】子供の反応が悪ければすぐやり方を変えることでしょうか。きょうだいでも性格がそれぞれ違うので、「ママはこれがいいと思う」って言っても反応が全然違う。例えば参考書にしても、長男はまじめなものが好きなのですが、次男は語呂合わせ系が好きなんですね。だから一生懸命、子供にウケそうな参考書を選んでいました。
【加藤】なるほど! 私は自分の本の中で、科学的に効果が検証されている子育て法をたくさん紹介しているのですが、それはあてはまる子が多いだけであって、その方法がすべての子にいいわけではないんですね。だから「うちの子には合わない方法だな」というときには、それはわが子の個性だと前向きに受け止めて、方法を変えるというのは大事ですね。
【佐藤】大事です。「この方法でうまくいかないのは子供が悪い」と思いがちですが、方法が悪いのです。子供が嫌がるときは何か理由があるんでよね。だからまず寄り添って、子供の気持ちを聞くこと。
【竹村】子供は楽しんでいないのに、親の思いだけでやらせてしまっていることって案外多いかもしれません。習い事など、子供は楽しんでいなくても、せっかく続けたのならやろうって。うちの息子はテニスをやっていたんですがコーチの存在は重要でした。有名だったり評判だったりする先生に習っている場合、親のほうがせっかく見てもらっているんだから、先生を変えるのはもったいないって思ってしまいますね。
【佐藤】子供の気持ちを最優先に考え、何が嫌なのか、何が引っかかっているのか聞くと対策が取れますね。
■子供の進路に、親はどう関わるのがベストか
【加藤】子供の進路に、親はどんなふうに関わるのがいいと思いますか?
【佐藤】中学受験まではある程度親がリードするしかないと思います。小学生だとまだ経験不足なので先のことは考えられないから。中学受験で難関校を目指すなら一般的には3年間は必要なので、そこは親が計画を立てて進める必要があります。
ただ、うまくいかなくても、心配はいりません。私ね、よく中学受験の失敗を引きずる親御さんに「12歳で人生を終わらせるな」ってお話ししています。中・高・大学と入った学校を好きになるのが大事です。私が言うのも変ですけど、なんで世間は東大にこだわるのかなって思いますね。私は子供たちに、「大学は行きたいところに行くんじゃなくて、行けるところに行きなさい」って言ってきたんです。仕事も同じで、就ける仕事で立派に人生を歩んでいけって。行きたかった方面には未練が残るかもしれないけど、未練のない人生なんてないんです。未練こそ生きるための力にしないとね。
【加藤】置かれたところで咲きなさい、ということですね。
【竹村】「入れる学校に入る」という点は私も同じ考えです。うちは長男が昨年、高校受験だったんです。インターナショナルスクールに通っていて、アメリカの学校を受けているので受験のスタイルが日本とは違い、試験の点数だけで決まるわけではなく、エッセイを書いたり、課外活動に打ち込んだりすることも評価の対象になります。
学力はテストで測りますが、一番重要なのは面接やエッセイで「この学校に行きたい」という思いを伝え、自分はこの学校にふさわしい人物だとアピールできるかがカギになります。つまり、合格したら、学校が息子を必要だと認めてくれたということ。子供には「あなたがいいと思った学校を受けて、その中で合格をくれた学校に行こう」って言っていました。
【佐藤】点数が取れればいいわけではないんですね。エッセイの内容で落とされたりするんですか?
【竹村】はい。でも実際は何が理由で落とされるかはわからないんですよ。縁の要素が大きいかも。エッセイを書くには、まだ13、14歳くらいだと限られた経験しかない中で、本人なりに過去の出来事や感情を思い出してそのときのことを分析しないといけないんですよね。それは子供だけでは無理なので私も手伝いましたし、学校の先生などの力も借りました。息子はテニスに打ち込んでいたので、挫折や失敗もあって、それを軸にエッセイをまとめることができました。思春期で普段はあまりしゃべってくれないんですが、どんな学校がいいかなど、親子で話し合いました。半年ほどの受験の準備は親子の対話の良い機会でしたね。
■わが子が小学校時代に家庭でやっておくべきことをひとつ選ぶなら
【加藤】小学校時代に家庭でやっておくべきことをひとつ選ぶとしたら何ですか?
【佐藤】その点でいうと私はやっぱり基礎学力だと思うんですよ。例えば将来、環境問題を解決したいと本気で思ったときに、やっぱり基礎学力がないとどうにもならないんですよね。だから小学生のうちに身につけていてほしいのは読み・書き・計算の力だよっていうことは子供たちにも常に言っていましたね。
【加藤】確かに一生学び続ける時代での強みになりますね。日々、コツコツ学びの積み重ねができると学習習慣もできて、「努力すればできるよ」と思えます。自己効力感にもつながりますし。
【佐藤】息子が大学生のとき家庭教師のアルバイトをしていたんですが、高校の数学でつまずいている子はたいてい中学の数学でつまずいているって言っていたんです。「じゃあ中学でつまずいたのはなぜ?」と聞くと、小学校の算数ができていないからだって。結局、元をたどれば、小学生のうちに基礎学力を徹底的に身につけておくことは大事なんだなって思いました。
【竹村】特に低学年のうちに基礎学力をつけたいですよね。うちの子供はそろばんをやっていました。インターナショナルスクールの小学校でやっていたモンテッソーリ教育特有の数や図形を体験的に学ぶ「教具」は立体感覚を自然に身につける良い教材ですね。
【加藤】そろばんや教具を手で動かした実体験は、学力の土台になりますね。立体感覚といえば豆腐を切るとか、学力を伸ばすのにお手伝いも良いといわれます。佐藤さんはお手伝いをさせなかったんですよね?
■なぜ、佐藤亮子ママは4人の子供に手伝いをさせなかったのか
【佐藤】うちはさせなかったですね。お手伝いさせるときって「遊んでいるなら手伝ってよ」と、親のサポートをさせますよね? せっかく子供が楽しそうに何かしているのに私の都合で中断させるのは、子供に対して失礼だなと思っていたんです。でも、うちの子たちは料理するのが好きで一緒によく作りましたよ。ただそれは、私が子供の料理を手伝うという感じです。
【竹村】お手伝いのために子供の集中を止めていたかもしれませんね。
【佐藤】そうなんです。子供って遊びのときにこそ集中しているんですよね。だから邪魔しちゃいけないんです。
【竹村】子供と大人の時間の感覚は違うって思っておいたほうがいいですね。大人からするとぼーっとしている時間もいろんなことを考えている必要な時間かもしれない
(以下、後編へ続く)
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3男1女が大学受験の最難関といわれる東京大学理科三類(医学部)に進学したことで注目を集め、テレビ出演や講演活動をしている。進学塾浜学園アドバイザーも務めている。『「灘→東大理Ⅲ」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方』をはじめ子育てに関する著書多数。現在3人の息子は医師に、娘は大学在学中。
竹村詠美さん
FutureEdu代表理事。アマゾン、ディズニー、Peatixなどの経営メンバーとして、サービスの事業企画や立ち上げに関わり、現在は新しい教育を広める活動を展開。世界の最先端の教育について記した『新・エリート教育』が話題に。総務省情報通信審議会委員なども務める。1男1女の母。子供は私立小学校からインターナショナルスクールに転校。
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フリーランスライター
ライター。子育てが一段落してから教育関係の取材・執筆を本格的に開始。教育専門家に取材したことから得た知見や、国内外の最新研究から得た子育てのコツを盛り込んだ初の著書『子育てベスト100』は現在16 万部のベストセラーに。1男1女の母。
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(フリーランスライター 加藤 紀子 撮影=干川 修、市来朋久)
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