「全集中は必要ない」ついサボってしまう人でも成果が出る怠け方のコツ
プレジデントオンライン / 2021年4月30日 9時15分
※本稿は、『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■人間はもともと怠けるようにできている
「怠ける」という行為は、人類の「生き残り戦略」といえます。わたしたちは生命体ですから、まずなによりも生き残ることが最大の目的。そのためには、いざというときに備え、エネルギーの消費を抑えておく必要があります。
では、わたしたちの体の消費エネルギーの内訳がどうなっているかというと、じつは脳が消費する割合が非常に多く、なんと全体の約20%も占めています。ですから、生き残るためには、面倒なことを考えるといった、脳をたくさん働かせるようなことは避ける必要が出てくる。つまり、人類はもともと脳をなるべく働かせないように、怠けるようにできているのです。
たとえば、歯磨きをするときに、多くの人は「この歯を磨いたら、次はこの歯を磨こう」などと考えながら磨きません。それはもう習慣化されていて、ほとんどなにも考えずに歯を磨いているはずだからです。そのことがよく表れているのが、虫歯ができやすい場所です。右利きの人の場合、左側の歯のほうが磨きやすく、意識しなければ右の奥歯は磨きにくいもの。そのため、右利きの人は右の奥歯に虫歯が多いのです。
■あのジョブズだって怠けていた
あるいは、いまは在宅ワークをしている人も多いと思いますが、毎日の通勤電車に乗るときにも、いちいち「○時△分の電車の□号車の×番目の扉から乗車しよう」なんて考えませんよね? 日常的に使う通勤ルートなら、家を出て会社に着くまで、それこそほとんど自動化されているはずです。
決断の回数、つまり、考えるという脳を働かせる回数を減らすことで、なるべくエネルギーの消費を抑えて忙しい毎日を生き抜くという我々の自衛策が、怠けるということなのです。
また、有名な話ですが、アップル社の共同設立者のひとりであったスティーブ・ジョブズは、いつも同じ服を着ていました。ジョブズは、同じ服を着ることで「今日はあのスーツにしよう、ネクタイはどうしようか」といった決断の機会を減らし、本当に大事な場面で間違いのない決断をするための脳のリソースを確保していたのです。「怠ける」というと悪いことのように思いがちですが、そうとは限らないわけです。
■「同僚はすごいのに…」と落ち込むことはない
そうはいっても、なんでもかんでも怠け、自動化すればいいということではありません。「自分を成長させたい!」「こういうスキルを身につけたい!」といった、ビジネスパーソンとしての願望を持っているのなら、やはり意識的に脳に負荷をかけて鍛えることも必要です。将来のキャリアアップを目指して勉強することもそうでしょう。
ただ、そのときに、まわりのバリバリと勉強しているように見える同僚と自分を比べ、「自分は怠け癖が強いな……」なんて考えて落ち込む必要はありません。なぜならば、どこで誰がなにをしているかということについては、本当のところはまわりの人間にはわからないからです。
バリバリ勉強しているように見える同僚も、自宅ではテレビゲームに明け暮れているかもしれないし、休日にはアイドルの追っかけをしているかもしれませんよね。トータルの勉強量は、あなたと変わらないかもしれないのです。ですから、他人を見て自分を評価することはナンセンスといえます。
ところが、人間にとって絶対評価をすることは意外なほど難しいもの。つい相対評価し、まわりと比べて自分を評価してしまうのが人間という生き物です。平均年収が100万円の国で自分の年収が120万円だったら「自分はすごい!」と思いますし、自分の年収が同じ120万円でも平均年収が1000万円の国にいたなら落ち込んでしまうわけです。
![オフィスで若いビジネスパーソン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/c/670/img_4c859cf25bd6ad2c893ed2177eb3ab39509673.jpg)
■怠け癖は使い方で武器になる
だけど、本当に大事なことは、周囲と比較して自分を評価するようなことではないはずです。どこかの誰かのものさしなどで自分を測るのではなく、ビジネスパーソンとして人間として、自分のことをしっかりと見つめて考え、自分のやりたいことや自分の生き方を持つことが大事なのではないでしょうか。
じつは、そういった自分の「軸」を持つことができると、怠け癖を治すということにもつながります。なぜなら、怠ける──自動化すべきところとそうではないところが、軸に照らし合わせることできちんと見分けられるようになるからです。
自動化できそうなことがあったとしても、それを軸に照らし合わせてみて自分の成長につながると思えることなら、そうしない。自動化することにはいい面もありますが、あまりそれに頼ってしまうと、自ら成長を止めてしまうことになってしまいます。
あるいは、先のジョブズの例のように、本当に大切なことに全力を注いだり自分がやりたいことを徹底的に追求したりするために、それ以外のことはできるだけ自動化する。そのようにして、自分の怠け癖をうまくコントロールしていくような思考を持ってほしいと思います。
■デキる人がやっている「脳のリセット」
どんなにエネルギッシュに見える人でも、持っているエネルギーは有限です。ですから、毎日しっかりと活動したいと思うのなら、適切に体を休ませることが肝心。とくに、体の部位のなかでも飛び抜けてエネルギーを消費する脳をしっかりと休ませることが大切になります。
ところが、わたしから見ると、脳を休ませることがうまくない人が多いようです。脳を休ませるといったときに、まずみなさんが思い描くのが、睡眠ではないでしょうか。もちろん、脳を休ませるために睡眠は重要な働きをしているわけですが、残念ながら、睡眠の取り方が優れている人は少ないものです。
たとえば、忙しいビジネスパーソンなら、「睡眠時間を少しでも長くしたい」と考え、お風呂はシャワーで済ませている人も多いと推測します。でも、これは完全にNGの行為。良質な睡眠をもたらす強い眠気は、体温が上がって下がるときに出るからです。ですから、一度体温を上げるために、シャワーより少し時間がかかっても湯船のお湯につかることをおすすめしたいところです。
■寝酒、週末の寝だめもNG
また、日常的に寝酒をしているという人も多いでしょう。もちろん、週末などに楽しいお酒を飲むのならいいのですが、アルコールは睡眠を浅くしてしまうため寝るためのお酒はおすすめしません。アルコールを摂取することによって肝臓で生成されるアセトアルデヒドという毒素がノンレム睡眠を継続してしまう、尿量が増えてトイレに行くために起きてしまう、喉の筋肉が緩んでいびきが出てしまう、など複数の要因があります。
![ラップトップの隣にあるビールグラス](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/c/670/img_fcfa22656d69b4f7523e4075ead1272a794644.jpg)
寝酒をしたあとに寝ていると、ちょっとした物音でも目が覚めてしまうことがありませんか? または、夜中にトイレに行くというのも、よくあることでしょう。アルコールの働きで寝付きはいいかもしれませんが、睡眠の質は下がってしまうのです。
あるいは、週末になると平日より何時間も長く寝ている人はいないでしょうか? これもNGの行為です。週末にふだんより長く寝てしまうと、生活リズムを乱すことになります。そのことが、体や脳の働きを調節するために大切なさまざまなホルモンの分泌を阻害してしまいます。そうして、疲れを取るつもりの週末の寝だめが、逆に体も脳も疲れさせてしまうということになりかねないのです。
■平日以上に動いてリフレッシュしよう
ここでみなさんに知ってほしいのは、ただ寝ることだけが休息ではないということです。休息には大きく分けてふたつあります。ひとつは「パッシブレスト(passive rest)」と呼ばれるものがそう。これは日本語で「消極的休養」と訳され、まさに多くの人が思い描くような、ベッドで寝る、ダラダラとソファで過ごすといった休息のことです。
それに対して、日本語では「積極的休養」と訳す「アクティブレスト(active rest)」と呼ばれる休息があります。たとえば、ゴルフが好きな人にとっては、週末のゴルフがそれにあたります。そういう人たちは、週末にはむしろ平日よりよほど早起きをしてゴルフに出かけますよね。さらに、18ホールをラウンドすれば、肉体的には確実に疲れているはずです。
でも一方で、大好きなゴルフをしたことで精神的には完全にリフレッシュできて、月曜日からの仕事にも元気に臨むことができる。もちろん、精神的にリフレッシュできるのですから、脳もしっかりと休められるということにもなります。
人によってはゴルフが旅行になるかもしれないし、読書や映画鑑賞になるかもしれません。いずれにせよ、ただ寝るのではなく、自分が好きなことをするアクティブレストを生活のなかに取り入れることを考えてみてください。
■「ぼーっとする時間」を増やす
そして、平日でもなるべく脳を休ませるために、なにも考えず「ぼーっとする時間」を増やすように心がけてください。休憩するとしても、勤務中はついつい仕事のことを考えてしまうものですが、なにも考えずにぼーっとするのです。
![『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/f/200/img_3f8611f2a50f9ab855d4d49fda576b68280988.jpg)
あるいは、食事のときには、仕事のことを頭から放り出して目の前にある食事に集中する。お米ひと粒ひと粒の味をかみしめたり、野菜の苦味やほのかな甘味を意識的に感じようとしたりするのです。これは近年、日本でも流行しているマインドフルネスの初級編といえるものです。ぼーっとしたり、ひとつのことに集中したりして、頭のなかの雑念を払うことが、脳を休ませることにつながります。
いまは在宅ワークをしている人も増えていますが、もし出社する場合には、通勤時間を利用することを考えてもいいでしょう。通勤電車のなかで勉強している人も多いかもしれませんが、通勤電車はぼーっとして、あえてしっかり脳を休ませる時間にあてる。そうして、通勤時間を脳をリセットする時間にすれば、生活にメリハリをつけられ、仕事でもより成果を出しやすくなるはずです。
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日本脳神経外科専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1997年に杏林大学医学部を卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療研究センター病院、北原脳神経外科病院(現・北原国際病院)にて数多くの救急医療現場を経験。その後、2015年、東京・八王子に菅原脳神経外科クリニックを開業。2019年、港区・赤坂にある医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科理事長に就任し、菅原クリニック 東京脳ドックを開業。「病気になる前に取り組むべき医療がある」との信条で、日々の診療とともにテレビなどのメディア出演や執筆を行っている。
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(日本脳神経外科専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター 菅原 道仁)
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