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ほどほどに仕事ができる人が「実は出世から遠ざかる」のはなぜか

プレジデントオンライン / 2021年5月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

出世の早い人にはどんな特徴があるのか。研修トレーナーの伊庭正康氏は「上司の代わりに、いわば汚れ役を買って出ている人は出世が早い。『よくそんな役をわざわざやるよなあ』と同僚からも一目置かれる人をイメージしてほしい」という――。

※本稿は、『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■上司の盲点、サポートできていますか?

「フォロワーシップ」という言葉を聞いたことがありますか? これは、アメリカのカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が1992年に出版した著書のなかで提唱したもので、「上司の盲点を把握し、サポートする姿勢」のことです。

このフォロワーシップが、いまのビジネスシーンではとくに重要なものになっているとわたしは考えています。というのも、時代の変化によって上司には見えない部分、盲点が以前よりあきらかに増加しているからです。

環境の変化がいまほど激しくなかった時代なら、上司は自らの経験則から判断を正しく下すことができました。でも、いまはとにかく環境変化のスピードが上がっている状況です。つまり、上司が若い頃から培ってきた経験則が通用しない場面が増えている。そのため、変化が激しい現場にいる部下から上がってくる情報を整理して、正しく判断するハードルが以前より格段に上がっているのです。

■デキる部下は「問題発見マニア」

そこで重要になるのが、フォロワーシップ。部下が主体的に上司の盲点を把握してサポートすることが大切になります。いわば、部下の主体性に上司のパフォーマンス、ひいては会社の業績がかかってきているともいえます。そのため、2010年頃から多くの会社が積極的にフォロワーシップ研修を行うようになってきたのです。

ただ、それだけフォロワーシップの注目度が上がっているなかでも、本当の意味でしっかりとフォロワーシップを発揮できている人は、驚くほど少ないと思います。わたしが行っている研修を通じての実感からすれば、その数字は全体のわずか3%というところでしょうか。

フォロワーシップを発揮できている部下には、「問題発見マニア」とでもいうべき特徴があります。ただ指示どおりに動くだけではなく、組織が抱える問題を自ら発見し、その解決策などを上司に提言し、かつその実現のために行動することができるのです。

■チャートで分かるあなたの「部下タイプ」

では、みなさんは、フォロワーシップをしっかり発揮できる3%に入れているでしょうか。次のチェックリストで、みなさんのフォロワーシップのレベルを確認してみましょう。注意してほしいのは、「みなさんの上司になった気持ちで、みなさん自身を評価する」ということ。A、Bともにすべて○ならそれぞれ満点の10ポイントとなります。

フォロワーシップチェックA
出所=『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』
フォロワーシップチェックB
出所=『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』

結果はどうだったでしょうか。では、A、Bそれぞれのポイントを次のチャートにあてはめてみてください。Aは問題の「提言力」、Bは自ら行動する「率先力」を表します。ともに8ポイント以上なら「理想型」というわけです。この理想型にあてはまるのが、先にお伝えしたわずか3%の人たちなのです。

フォロワーシップの5類型
出所=『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』

■そこそこできる「実務型」こそ要注意

ポイント数が少なければ、フォロワーシップに関してなんらかの問題があるということはみなさんにもすぐに想像できるでしょう。「消極型」は、上司への提言もしなければ行動もしないので問題だらけです。「順応型」は、問題提起はしないけれど、指示されたことに対しての行動力はあります。いわゆる「イエスマン」ですね。

それから、「孤立型」は、文句をいうだけいって行動しないタイプ。この3タイプが高く評価されるわけもありませんから、もしどれかにあてはまってしまったのなら要注意です。

ただ、この3タイプは、ふだんからどこかで問題点を指摘されることもありますから、自分の問題を自覚しているケースもあります。一番気をつけなければならないのが、提言力も率先力もほどほどにある「実務型」でしょう。それなりに実績を残すこともできて同僚たちの評価も悪くありません。でも、そのままでは会社から重要なポストに抜擢されるようなこともない。いってみれば、とてももったいないのです。

いずれにせよ、このチェックリストによって自分に足りない部分がわかったはずです。今後、その足りない部分を埋めていくことができれば、上司や会社から重宝される人材になれると思います。

■残念な部下から最高の部下になるには

提言力を高めるための方法をお伝えする前に、まずは具体的なシチュエーションにおける、提言力のレベルによる言動のちがいを見てみましょう。いわゆる「あるある」ではないですが、そのほうがみなさん自身の提言力のレベルを自覚してもらいやすいはずです。

わたしは、提言力のレベルを4つに分けて考えています。コロナ禍のなかリモートワーク導入にあたってなんらかの問題が生じている会社において、それぞれのレベルの部下が上司に対してどのような言動をするのか、その例を示しましょう。

レベル1は「積極的な人」。決して提言力がないわけではありません。でも、レベル1の人は、「やっぱりリモートワークを導入すべきだと思いますよ」というふうに、ただ上司に意見をいうだけ。これでは問題の解決にはつながりません。

それが、レベル2の「主体的な人」になると、「わたしなりにリモートワークを導入するための方法を考えてきました」と、自分なりの解決策を提示するようになる。もちろん、上司から「デキる部下」だと思われるのは、レベル1よりもレベル2にある人でしょう。

さらに、レベル3の「支援する人」になると、レベル2までとは大きなちがいが生まれます。それは、「上司の立場からものごとを考えられる」ということ。レベル1、2のように「リモートワークを導入すべきだ」とただ意見をいうことや、自分なりの解決策を提示することは、決して難しいことではありません。

ビジネスミーティング
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■では、「参謀級」はなんと提案する?

でも、そもそも上司はリモートワーク導入に対してどんな考えや問題意識を持っているのかを知らなければ、上司の意向に沿った解決策をつくれるわけもないのです。そこで、レベル3の人は、まず上司の考えを確認して、そのうえで情報を収集して解決策を練るのです。

それから、レベル4の「参謀級の人」になると、上司が考えている以上のことを提言するようになります。こういう人は、職場が抱える問題や上司の考えを把握していることは当然として、社外のネットワークを通じてさまざまな情報を入手しています。

そして、「じつは、同業他社のA社ではこういう手法でリモートワークを実現しているそうです。これなら、ちょっとアレンジすればうちにも導入できるのではないですか?」というふうな、上司の悩みを一気に解決できるような提言ができます。

レベル4の人は、いってみれば「上司を驚かせる人」です。その提言が実現して大きな成果を挙げることができれば、社内における上司の評価も上がるでしょう。そのため、レベル4の人は、上司にとって「手放せない人」にもなる。文字どおり、「参謀級」なのです。

■上司が知っていること、知らないこと両方を把握する

では、提言力を高めて参謀級の「上司を驚かせる人」になるにはどうすればいいのでしょうか。わたしからは、なにより「インプットに注力する」ことをアドバイスしておきます。

なんらかの解決策を実行に移す率先力がどんなにあったとしても、その解決策自体が的外れのものだったとしたらどうでしょう? その行動はまったく意味がないことであり、せっかくの率先力をムダにしてしまうことになりかねません。それこそ、空回りです。

このケースでいえば、先にもお伝えしたように、リモートワークに対する上司の考えをインプットしておかないことには上司の意向に沿った解決策を考えられるはずもありませんよね。また、社内外問わずさまざまなネットワークをもち、上司が知らない情報をインプットしておかなければ、レベル4の人のように上司を驚かせるような提言もできません。

会議資料
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

■大変そうに見えてお得な役回り

提言力は、インプット量に左右されるのです。これまでたくさんの人に会ってきたなかで、提言力がレベル3以上にある人とレベル2以下の人のあいだには、インプット量に決定的な差があると感じています。

とくにレベル4の人は、とにかく本をよく読み、ジャンルを問わずトレンドに精通している。また、ほとんどの人が日本経済新聞を読んでいます。そして、社外に持っている自分のコミュニティーのなかでさまざまな生の情報をインプットしてもいるのです。

レベル4の役回りは、なかなか大変そうですよね。ただ、実際にはそうでもありません。上司から感謝されることはもちろんですが、上司の代わりに、いわば汚れ役を買って出ているのですから、「よくそんな役をわざわざやるよなあ」と同僚からも一目置かれます。もちろん、それだけ率先して動ける力があれば社内での評価も上がり、将来的な出世にもつながります。

また、本来は上司がやるべきことを代わりにやっているだけですから、大きな責任もありません。責任はあくまでも上司のものです。仮になんらかの失敗をしてしまっても、責任を問われるリスクは限りなく低い。そういう意味では、ものすごくお得な役回りとも言えます。

■率先力を高める魔法の言葉2つ

だとしたら、そんなお得なポジションに就くためにも、率先力を高めていきたいものです。そうするためにやることはふたつ。どちらも、ふだんの会話において使うメソッドです。ひとつは、発言のなかの「会社は~」「上司は~」という主語を「我々は~」に変えること。

『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』(KADOKAWA)
『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』(KADOKAWA)

同僚同士での会話では、「リモートワークもまともにできないなんて、うちの会社は古いよね」「上司は古いよね」というふうに、愚痴っぽくなってしまうことも多いでしょう。でも、愚痴をこぼしてただ会社や上司を非難するだけではなにも変わりません。

しかし、「会社は~」「上司は~」を「我々は~」に変えて、「リモートワークもまともにできないなんて、我々は古いよね」だったらどうでしょう? 「だったら、なんとかしなければいけない!」という気持ちになるはず。そうして、自ら率先して行動する力を持つことにつながるのです。

率先力を高めるためのもうひとつのメソッドが、「なにかわたしにできることはありますか?」を口癖にすることです。部下という立場にいると、無意識のうちにもどこかで「上から指示されたことをやっておけばいい」という気持ちを持ってしまいがちです。もちろん、それでは率先力は高まりません。

ふだんから「自分がやるんだ!」という意識を自分自身に植えつけるため、あらゆる場面で「なにかわたしにできることはありますか?」と口にするようにしましょう。きっと、みなさんの意識と行動は大きく変わるはずです。

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伊庭 正康(いば・まさやす)
らしさラボ代表取締役
1991年リクルートグループ入社。リクルートフロムエー、リクルートにて法人営業職として従事。プレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回を受賞。累計40回以上の社内表彰を受け、営業部長、フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、研修会社らしさラボを設立。リーディングカンパニーを中心に年間200回を超えるセッション(営業研修、営業リーダー研修、コーチング、講演)を行っている。実践的なプログラムが好評で、リピート率は9割を超え、その活動は日本経済新聞「日経ビジネス」「The21」など多数のメディアで紹介されている。YouTube、Voicyでもスキルアップのメソッドを紹介。

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(らしさラボ代表取締役 伊庭 正康)

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