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在宅ワークで仕事効率の高い人は、なぜ「コーヒー豆」を常備しているのか

プレジデントオンライン / 2021年4月29日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/burakkarademir

集中力を発揮するには、どんな環境がいいのか。言語学者で明治大学教授の堀田秀吾氏は「作業環境としておすすめしたいのは『静かすぎないカフェ』。それには3つの理由がある」という――。

※本稿は、堀田秀吾『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

■脳は「同じ空間、同じ作業」ではすぐに疲れる

考えごとをするとき、根を詰めて作業や勉強をするとき、「一人きりの静かな空間で集中したい!」と思ったことはあるでしょうか?

一般的に仕事や勉強をする空間は静かであるほうがいいと感じる人は多いかと思います。

ですが、イリノイ大学のミータらは驚きの研究を報告しています。

ミータらは5つの実験を行い、次のどの環境で作業をするともっともパフォーマンスが高まるかを調べました。

①「騒音レベル低(50デシベル)……静かな事務所内程度」
②「騒音レベル中(70デシベル)……高速道路走行中の自動車内程度」
③「騒音レベル高(85デシベル)……救急車のサイレン程度」

この結果、②の70デシベルのときにもっともクリエイティビティが上がることがわかったのです。一方、③の85デシベルまでいくと思考の妨げになる、と報告されています。

つまり、ちょっとざわついている、くらいの環境のほうが脳にとってはいいということです。これは、特に「抽象的なものごと」を考えるときにいいようで、たとえばプレゼンの内容を考える、報告書をまとめる、新しい案を考える、戦略を練る、といった「考えごと」に適しています。

脳は新しい刺激を好みます。反対のことを言うと、同じ空間、同じ作業では脳はすぐに疲れてしまうのです。一つのことをじっと集中して行う、というのは苦手なんですね。

■「コーヒーショップ・エフェクト」を活用して最適な作業環境を

その点、作業環境としておすすめしたいのは「静かすぎないカフェ」です。

理由は3つあり、一つは今お伝えしたように、ある程度人の声や食器を運ぶ音など、雑音があったほうが効率がよいからです。このことは、「コーヒーショップ・エフェクト」と呼ばれています。

理由の2つ目は、「香り」です。

ソウル大学のスーは、「コーヒー豆の香りには、活性酸素によって破壊された脳細胞を呼び戻す効果がある」ことを発表しています。この活性酸素とは、睡眠不足や疲労の原因とされる物質のことです。

この実験では寝不足のマウスの脳内を調べました。この状態ではストレスを抑制する細胞が少なかったのですが、マウスにコーヒー豆の香りをかがせたのです。すると、細胞の一部が回復する、という効果が見られました。

つまり、コーヒー豆の香りには疲労回復効果やストレス抑制効果が期待できる、ということなのです。たしかにコーヒー豆などの香りは頭がシャキッとするような、目がさめるような刺激がありますよね。

■自宅で「脳がクリエイティブに働く」システムをつくる方法

そして3つ目のおすすめの理由は、「ルーティン化」による意識の切り替え効果が期待できるからです。

日常的に決まったカフェに行き、そこで作業を行うようにします。これを続けていくと、条件反射的に「カフェに行く」=「脳がクリエイティブに働く」というシステムができ、カフェに行くだけで集中できる(やる気のスイッチが入る)ようになるのです。

もちろんこれは、自宅などでも応用ができます。

「作業場所」を用意して、「この席、この机についたら脳がクリエイティブになる」というシステムをつくるのです。作業中には音楽やラジオをかけたり、あるいは家族の声や外の音がしたり、というのは脳への刺激になりますし、さらにコーヒー(香りが重要なので、豆だけでも可)を用意すればカフェと同じような環境になりますね。

いずれにせよ、「静かな場所でなければ集中できない」と神経質にならず、実際には多少ざわざわしていたほうがいいんだと、力を抜いてみてください。きっと、今までよりパフォーマンスがよくなるはずです。

ここでは、このような「集中」や「生産性」に関連する研究を見ていきたいと思います。

■いたずら書きをすると集中力が高まる理由

話をしているとき、相手がメモにいたずら書きをしていたら、どうでしょう? 自分が軽んじられているようでイヤに感じるかもしれませんね。

ですが、意外な研究結果があります。イギリスのプリマス大学のアンドレイドらが「いたずら書きをしながらの作業のほうが記憶力が高くなる」と発表しているのです。

この実験は、参加者たちに録音テープを聞いてもらい、その内容を記憶してもらうというものです。これを

①「(落書きのように)図形をなぞりながら聞いてもらうグループ」
②「何もせずに黙々と聞いてもらうグループ」

の2グループに分けて行いました。

この結果、①の「図形をなぞりながら聞いてもらうグループ」は②のグループに比べて30%ほど記憶していた内容が多かったのです。

一般的なイメージとしては、一つのことに集中して注意を向けたほうが脳がよく働くように思えるかもしれません。

ですが、実は脳の集中力には持続力がないと考えられています。一定の量の集中力しかなく、この力を使い切ると、情報処理が止まってしまうのです。

ですから、作業の時間が長くなるほど注意力が散漫になり、飽きてしまったり他のことが気になったりしてきます(この作用を、脳の「認知負荷理論」と呼びます)。

スケッチブックに何かを書き込むひげ面の男性
写真=iStock.com/mediaphotos
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mediaphotos

その点、いたずら書きのように手を動かすことは脳に刺激がいきます。このことがかえって脳のエネルギーを上手に分散させ、集中力を長持ちさせることにつながったと考えられるのです。

■「考えない行動」を加えてエネルギーを分散させる

実は、脳は「無意識下」では複数のことを並行して処理するのが得意です。エネルギーが1カ所に集中しているよりも、さまざまな場所に分散されているほうがよく働きます。

ところが、意識している状態でのマルチタスクは苦手で、極端に集中力が落ちてしまうのです。

堀田秀吾『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)
堀田秀吾『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)

たとえばいたずら書きレベルではなく、マンガや複雑なイラストであるとか、難しい計算などであると負荷が強すぎて話が耳に入ってこなくなるでしょう。意識的に行う作業をマルチタスクで行うことは基本的にできないのです。

このことを日常で応用するならば、たとえば暗記作業は机にじっと向かいながらではなく、後ろ向きで歩いたりとか、声を出しながらとか、あえて分散させると記憶の効率がよくなることが実証されています。

いずれにせよ、重要なのは「考えない行動」を加えることです。人は一つのことに長時間は集中できないようになっているのです。

ですから、休憩を挟んだり、ぼーっとして無意識の時間をつくったり、そうしてエネルギーを1カ所に集中させない必要があります。根を詰めてじっくり考えるよりも、ほどほどに考えるほうがよいということですね。

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堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
言語学者/明治大学教授
専門は社会言語学、理論言語学、心理言語学、法言語学、コミュニケーション論。研究においては、特に法というコンテキストにおけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、法学、脳科学など様々な学術分野の知見を融合したアプローチで分析を展開している。執筆活動においては、専門書に加えて、研究活動において得られた知見を活かして、一般書・ビジネス書・語学書を多数刊行している。アイドルのプロデュースから全国放送のワイドショーのレギュラー・コメンテーターなど、研究以外においても多岐に渡る活動を見せている。

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(言語学者/明治大学教授 堀田 秀吾)

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