「雑談上手の共通点」三流は喋り続け、二流は聞くに徹する、では一流は?
プレジデントオンライン / 2021年5月5日 9時15分
※本稿は、『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■“雑談下手”な人の特徴とは
人生というものは、自分を取り巻く人たちが多ければ多いほど豊かになります。それなのに、狭い人間関係のなかに閉じこもっている人もいる。そして、その傾向は、とくに若い世代に強いように感じます。理由は、「雑談力」がないから。
雑談とは、コミュニケーションのもっとも初期段階のものです。それがうまくできなければ、当然、人間関係の輪は広がっていきません。狭い範囲の内輪の関係だけに満足して、本来、出会えるはずの楽しい人と出会えないということになる。そんな人生はやっぱりおもしろくないですよね。
ただ、雑談と一言でいっても種類があります。そのひとつが「無意味な雑談」。雑談という言葉のイメージから、雑談自体に意味があまりないと考える人もいるかもしれませんが、そうではありません。意味がある雑談もあるのです。それは、なにかを生み出す雑談といっていいでしょう。一方、無意味な雑談はその逆で、「なにも生み出さない雑談」ですね。どんなものかというと、時間潰しの雑談です。
時間潰しの雑談の特徴は、互いに相手の話を聞いていないということ。ただ、自分が話したいことに終始してしまう。相手が話し疲れたと思ったら、自分が話したいことをバーっと一気に話しはじめる。そんな人がみなさんの周囲にもいませんか? こういう会話はなんの脈絡も意味もないものです。時間潰しの雑談を続けていたら、いつまでたっても人間関係を広げることはできません。
■自分を気に入ってくれるのは会社ではなく“人”だ
コミュニケーションをあまり重視しないという人もいますが、わたしは人生においてもっとも重要なもののひとつだと思っています。雑談でコミュニケーションのスタートを切れなければ、ものすごく損な人生を歩むことになる。
わたしの会社は法人向けの社員研修を行っています。クライアントの数は、一部上場企業では1700社くらい。ただ、それらの会社がわたしの会社を気に入ってくれているというわけではありません。わたしの会社を気に入ってくれているのは、クライアントの担当者なのです。担当者がわたしの会社を評価してくれれば、その会社全体が動く。そして、その担当者、つまり人を動かすのは間違いなくコミュニケーションです。コミュニケーションがすべてといってもいいでしょう。
なぜかというと、人は、嫌いな人の話は聞きたくないからです。逆に好感を持った相手の話は頭に肯定的に入ってくるようになる。自分の話を、相手がすべて肯定的にとらえてくれるか、あるいは否定的にとらえるか。どちらの人生が得か損か、考えるまでもありませんよね。
■雑談するだけでこんなにも得をする
わたしの場合、雑談力のおかげでずいぶんと得をしてきたと思っています。わたしのオフィスのビルには、ロビーに受付とコーヒールームがあります。なにも特別なサービスをしてもらうことなどなくとも、そこにいる人たちと雑談を通して仲良くなって「安田さん、おはようございます」と声をかけてもらうと、1日の気分がまったくちがってきます。それがずっと続くわけですから、トータルで考えればかなりの得をしているといえませんか。
もうひとつ、例を出しましょう。以前わたしは、東京日本橋人形町のとある居酒屋に行きました。ちょっと格式が高めで一見客にはなかなか入りづらい老舗店です。その雰囲気に萎縮しながら食事をするのと、格式の高さをエンジョイして食事をするのでは、楽しめる度合いがまったくちがうものになるじゃないですか。そして、エンジョイするために必要なのが、雑談なのです。
![日本酒](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/a/670/img_5ac4acc1d183e4c77bfeab6fa0c09312760826.jpg)
女将と雑談をする。そうして、「この人はいいお客さんだ」と思ってもらえればしめたもの。その晩の女将のなかでのプライオリティーが上がって、料理の説明も丁寧になるし、お酒もオーダーすればすぐに出てくるようになる。それこそいいことずくめです。
■話し上手な人は“聞き上手”である
しかも、雑談はコミュニケーションの初期段階ですから、その影響は今後にも影響を及ぼします。コミュニケーションを取ったということは、いってみれば女将とわたしはもう友人です。すると、次にその店を訪れたとき、女将からすればわたしはすでに「ウエルカム」の存在になっていることは間違いありません。そういう周囲からの「ウエルカム」を増やせば増やすほど、人生は充実したものになるのです。
とはいえ、話すことが苦手だという人もいるでしょう。それどころか、どんなに話し上手な人でも、気の利いたことや相手が思わず聞き入るようなことはなかなか話せるものではありません。では、雑談が上手な人はどうしているかというと、「話すことより聞くことを意識」しているのです。割合としては、「話す」が2、「聞く」が8というところでしょうか。
相手が話しているときは、「こういう話なら自分もちょっとおもしろいことを追加して話せる」というタイミングまで待つのです。そして、「うんうん」とうなずいて話を聞きながら、「この人が本当にしゃべりたいことはなんだろう?」「理解してもらいたいことってなんだろう?」と考える。きちんと相手の話を聞いて、そういう相手の願望を察知できたとしたらどうでしょう? 相手に好感を持ってもらうことができ、コミュニケーションのスタートとしてすごくいいものになるはずです。
■最初は「興味があるふり」でもいい
そもそも会話自体が苦手というような雑談の「初心者」には、まず「話すことより聞くことを意識する」ことをおすすめします。とはいえ、聞くこともそう簡単なことではありませんよ。「うんうん」とうなずくのも、タイミングがちがえばおかしなことになりますからね。しっかり聞くにはどうすればいいかというと、「相手の話に興味を持つ」のです。
![雑談](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/b/670/img_bbead7ca13eaf0e908a43588b42f1db3645273.jpg)
雑談が下手、コミュニケーションが下手な人は、他人への興味がないということがほとんどです。人の話に興味を持てば、きちんと聞くことができますから、自然に雑談が成立するようになります。
でも、「実際に興味がないからしょうがない」という人もいるでしょう。どんな人も赤の他人のことには基本的にはそれほど興味はありませんからね。
そういう場合は、「興味があるふりをする」のです。でもそうするには、瞬間的に「この人の話に興味がある」と思い込まなければならない。そのトレーニングを繰り返すうち、雑談のあいだはしっかり相手に興味を持って話を聞くことができるようになるはずです。
■「気の利いたことがいえない」中級者は…
続いて、それなりに会話は続けられるが、「気の利いたことがいえていない気がする」というような雑談の「中級者」に向けてのアドバイスをしましょう。まず、気の利いたことを話すなんて、そう簡単ではないことを知ってください。気の利いたことを話していると思われる人は「気の利いた話し方」をしているのです。話の中身ではなく伝え方がちがうということですね。
なにかプレゼントをもらって「うれしい」と思ったとき、どんな気の利いたことがいえるでしょうか。誰にとっても難しいですよ。でも、「うれしい」「ありがとう」という簡単な言葉も、気持ちを込めて「わあ、うれしい! ほんとにありがとう」といえば、相手をうれしくさせるような言葉になるのです。
そういう伝え方を磨くためにわたしがおすすめするのは「落語」です。古典落語には決まった演目があります。つまり、話す内容は同じなのです。それなのに、名人といわれる人と若手とでは、まったくちがって聞こえるから不思議です。そのちがいはなにかと、探りながら落語を聞けばいろいろと気づきがあるはずですよ。
■上級者は“初対面”を探しに行く
雑談の達人になりたい「上級者」の人には、ぜひ、「外」に向かって出て行ってほしいですね。
![『Study Hack! 最速で「本当に使えるビジネススキル」を手に入れる』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/f/200/img_3f8611f2a50f9ab855d4d49fda576b68280988.jpg)
気の置けない飲み仲間と話すのは、誰にとっても簡単なことなのです。ところが、そこに新しいメンバーが入ってきた途端、それまでの会話は通じなくなってしまう。なぜなら、誰がどんな人間でどんなエピソードを持っているという知識が新メンバーにはないからです。逆に、自分にも新メンバーの知識はありません。そういう人との雑談は難易度がぐんと上がります。上級者を目指す人は、互いに知識がない人と積極的に話して雑談力を磨いてください。内輪の人間関係の「外」には、いくつもの「宝」があるのですから。
その「宝」は「運」といってもいいかもしれません。わたしがこれまでにインタビューを受けてきたことも「運がいい」という言い方もできるでしょう。でも、その運は超常現象のように与えられたものではありません。どこかでわたしと知り合った誰かが、「安田さんの話はおもしろいよ」といってくれたというような、雑談でスタートした誰かとのコミュニケーションが、巡り巡って運やチャンスを引き寄せてくれるのです。
■内輪の人間関係の「外」に目を向けてみて
そういう「宝」や「運」を手に入れるため、とくに若い人には内輪の人間関係の「外」に目を向けてほしい。会社に勤めている人の場合、35歳くらいまでの若いうちはある程度のレールが敷かれていて、そこを走ることで目一杯です。もう少し年齢が上でも、部長や役員になるといった目標に向かって走り続ける人もいるでしょう。ところが、60歳を超える頃から人生はがらっと変わるのです。
いま、わたしは67歳です。若い人が走らなければならないレールから外れ、ある程度、自由な身になっています。すると、「こういうビジネスの話があるんだけど」「うちの会社の役員になってくれないか」といった話が次々にやってくるのです。その出どころはどこかといえば、やっぱり雑談を通して知り合った友人たちですよね。
若いうちから雑談力を磨いて、人間関係をどれだけ「外」に向かって広げられるか。その成果がみなさんの将来を大きく変えることになります。
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コンサルタント
株式会社パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表取締役。早稲田大学グローバルエデュケーションセンター客員教授。1990年法人向け研修会社パンネーションズ・コンサルティング・グループを起業。現在は英語、ロジカル・コミュニケーション®、プレゼンテーション、対人対応コーチング、交渉などのビジネスコミュニケーションの領域で講師、コンサルタントとして活躍している。『英語は「インド式」で学べ!』(ダイヤモンド社)、『できる人は必ず持っている一流の気くばり力』(三笠書房)、『超一流の雑談力』(文響社)など著書多数。
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(コンサルタント 安田 正)
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