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「これ以上血税は使わせない」ハリー王子夫妻を見限った英王室の苦しい事情

プレジデントオンライン / 2021年5月1日 9時15分

英バークシャー州のウィンザー城で行われたエディンバラ公の葬儀の際、行列を歩くハリー王子=2021年4月17日 - 写真=PA Images/時事通信フォト

英エリザベス女王の夫、エディンバラ公爵フィリップ殿下が99歳で亡くなった。4月17日の葬儀では、王室メンバーと家族から距離を置いたハリー王子の動きが注目を集めた。在英ジャーナリストのさかいもとみ氏は「葬儀を機に、意外なほどの速さで王室内のパワーバランスが変わりそうだ」と指摘する――。

■「ハリー夫妻は葬儀に呼ばれるか」が関心事に

フィリップ殿下の死去が伝わるやいなや、ハリー王子&メーガン妃夫妻が葬儀に呼ばれるのかどうかは英国内で大きな関心事となった。夫妻は殿下が亡くなるわずか1カ月前、米CBSテレビのインタビューに応じた。その際、メーガン妃は、生まれてくる子供(長男アーチーちゃんを指す)の肌の色が「どれくらい黒くなるのか」を王室の誰かに問われたと述べた。

王室はすぐさま緊急会合を開き、ハリー王子ファミリーについて「いつまでも愛される家族の一員」という声明を出すに至った。しかし、先のインタビューではハリー王子自身も「父であるチャールズ皇太子からの援助が途切れた」と不満を漏らしている。

結局、メーガン妃は第2子妊娠中という理由でドクターストップがかかり、ハリー王子がひとりで渡英する格好となった。王室メンバーといえども新型コロナの隔離免除の特例は認められず、英国到着後5日間は女王の居城・ウインザー城に近い別荘で自主隔離していたという。

■“平服指示”は女王の意趣返し?

ハリー王子は、葬儀への参列が王室から認められたが、女王の一存で「参列者は軍服でなく一般的な喪服を着る」ことが決まった。

これは、ハリー王子が王室から離脱したことに加え、女王の次男でチャールズ皇太子の弟に当たるアンドリュー王子が性犯罪者と関係していたと問題視され公務から引退しているという事情から、この2人は軍の役職から外れており軍服が着られない。「他の王室メンバーが軍服を着ると、着られない2人が目立つ」という問題を避けるための、女王による温情という見方が強い。

しかし、女王のこうした「ハリー王子への特別対応」は、死去したフィリップ殿下の孫(血縁者のひとり)であることを認めるものの、王室メンバーのひとりではないという「区別」を内外に示す目的もあったのではないかと類推する。いわば、女王の王子に対する「参列は認めるが、世間への恥を感じてもらう」意趣返しであったのではなかろうか。

■兄弟で話す場面もあったが…

王室ウォッチャーたちは、葬儀を通してハリー王子の一挙一動を追った。フィリップ殿下の棺を載せた特別仕様車の後ろに続く葬列では、あえてハリー王子と兄のウィリアム王子との間に、従兄弟であるピーター・フィリップス氏を挟み込むという妙手を繰り出した。「2人を並べて歩かせて、過度にメディアの注目を浴びるのは望ましくない」とする女王の考え、という説もある。

葬儀が終わり、会場となったチャペルから引き上げる際、ようやく兄弟が言葉を交わす機会があった。ハリー王子は当初、ウィリアム王子の妻であるキャサリン妃とおしゃべりしていたが、やがて妃が一歩下がって兄弟水入らずの会話ができるよう演出した。こうした仕草により「ケイト妃(キャサリン妃の愛称)、兄弟間のピースメーカー(仲裁人)に」と英国各紙に評される形となった。

もっとも2人の会話は、読唇術による解析によると「良いお葬式だったね」程度のたわいもないおしゃべりだったそうだが、こうした機会の演出は、亡くなった殿下が生前訴えていた「兄弟和解への期待」を具現化する兆しとなったと喜ぶ向きもあったという。

ウィンザー城
写真=iStock.com/OlegAlbinsky
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/OlegAlbinsky

■公務の人手が足りない王室の事情

2人の父であるチャールズ皇太子は、兄弟の関係改善を期待していたとも伝えられる。葬儀後、2人が話しているところを見て、「親子会議がしやすくなったのではないか?」と分析する王室ウォッチャーの声もある。

実際に葬儀終了後、皇太子と兄弟による3人の話し合いが行われたと伝えられた。ただ、一部報道では、チャールズ皇太子もウィリアム王子も「ハリー王子との一対一の面談は避けている。後で歪曲した形でマスコミに暴露される可能性が高いため」との分析もあった。

現在、王室が従事すべき公務はあまりにも多い。そうしたことから、皇太子は王室を離脱したハリー王子&メーガン妃夫妻にもその職務を一部負ってもらうかどうかを悩んでいた節がある。先に述べたように皇太子の弟、アンドリュー王子も現在王室公務には出られない立場にあることから「本来いるべき3人に王室の公務を任せられない」状況だ。

公務の多忙化を巡っては、フィリップ殿下が生前、2017年時点で高齢を理由に公務から退いた段階で問題が顕在化した。その際、殿下が関わった公務は他の王室メンバーに振り分けられたが、ハリー王子夫妻の離脱で事態がおかしくなった。

女王と共にロンドン市内でのイベントに参加したフィリップ殿下
女王と共にロンドン市内でのイベントに参加したフィリップ殿下=2017年6月、王室の許可を得て(筆者撮影)

女王はかつて、「命が続くかぎり大英帝国に奉仕する」と述べるなど生前譲位について明確に否定しているが、今年95歳を迎えている。今後公務への出席は激減、あるいはゼロにする可能性が高い。

こうした事情もあり、親子3人での話し合いでは、「ハリー王子と王室との距離感をどう保つか(あるいは離れるか)」がトピックとして浮上していたと予想される。

■女王の誕生日前にまさかの帰国

ところが、ファミリーの和解が実現すると思った矢先に予想外の出来事が起きた。フィリップ殿下の葬儀から1週間後に控えた女王の誕生日を前に、ハリー王子は米国へ帰ってしまったのだ。

ハリー王子はもともと、葬儀が終わった翌日にも自宅のあるロサンジェルスへ戻る予定を立てていたようだ。だが、女王が誕生日を21日に迎えることから、英国滞在を延長することとなった。

ところが、どんな心変わりがあったのか、それとも米国で用事でもあったのか。女王の誕生日の前日である20日、ロンドン・ヒースロー空港から飛行機に飛び乗り、さっさとメーガン妃が待つ家へと帰ってしまった。

ヒースロー空港のターミナル
写真=iStock.com/GiorgioMorara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GiorgioMorara

女王は誕生日のメッセージとして、自身が95歳を迎えたことの喜びよりも、「殿下の葬儀に対する英国民、そして全世界の人々への厚情に感謝する」と述べ、70年以上にわたる殿下との暮らしが途切れたことへの悲しみは癒えていないことを感じさせた。

孫のひとりとして、女王にいたわりの声をかけるのが人としてあるべき姿だと思うが、それをあえて前日に英国から引き上げるという格好は「王室への不愉快さを行動で示した」と言えなくもない。

■皇太子「王になったら夫妻を切る」

王室メンバーは、多数の公務を抱える一方で、王室自体のスリム化を図る必要に迫られている。これは他ならぬ、公金を使った王室への支出を食い止めるのが最大の目的だ。

そうした中、王位継承順位第1位のチャールズ皇太子は葬式前後のさまざまな経緯を通して、大きな決断を行ったようだ。自身が王位を継承したら、「ハリー&メーガン夫妻を王室から切る」意向があるという。夫妻が米国でさまざまな事業を行い、ビジネスに勤しむ中、英国民により支払われている血税をこれ以上ハリー王子一家に注ぎ込むことは許されないとの判断が立ったと予想できよう。

父であるチャールズ皇太子の決断により、ハリー王子はついに米企業が与えた新たな仕事「CHIMPO」を全うする必要が出てきたわけだ。「CHIMPO」とは、王子が米コーチング専門企業「BetterUp」から与えられたチーフ・インパクト・オフィサー(Chief Impact Officer)という肩書きの略称だ。ただ、その音感の「日本語での意味」は全世界が知ることとなり、奇妙な形でミソが付いている。

■王室の対応はそんなに甘くない

今回のフィリップ殿下の葬儀では、ハリー王子夫妻の「差別発言の暴露」もあって、英国だけでなく米国市民の間でも大きな関心を呼ぶこととなった。米ニュース専門チャンネルCNNでは、葬儀の一連の流れを数時間にわたって実況したが、その中継のさなか、「NETFLIXを通じて初めて英王室の存在を知った米国の若者たちが、葬儀の様子に注目しているかもしれない」といった興味深いコメントもあった。

米国人で「ロイヤル」の称号を持つのはメーガン妃だけだ。彼女がビジネス上の目的から称号に固執する意思は理解できなくもないが、王室の対応はそんなに甘いものではない。英国に飛んだ王子と自分たちの地位についてどのようなやりとりをしていたのかは知らないが、結局は、遠からず未来に「経費節減」という理由でその立場から切られることへとつながった。

■不動のパワーバランスが変わるのか

殿下は死の間際まで、孫兄弟の和解を祈ったという。そんな温情さえも消し飛ぶほど悪化した王室との関係を、メーガン妃はどんな手を使って巻き返そうとするのだろうか。これ以上の醜態を目にしたくない、と思うのは筆者だけではないだろう。

王室は1人の人間に引っ掻き回されるほど、脆弱なものではない。しかし、殿下の死で消沈した女王が事実上隠居の道を選ぶ中、徐々に王室の求心力は落ちていく懸念がある。

CNNの名物キャスター、リチャード・クエスト氏は葬儀の中継で「英国王室自体は今後も維持されるだろう」としながらも、英連邦を構成するいくつかの国が女王を元首とする国体からの脱却を模索していることから、向こう数年で「英連邦になんらかの変化が生まれるかもしれない」との見解を披露した。

女王の戴冠から来年で70年。大英帝国の名残りともいえる王室は今、重大な転換機に差し掛かっている。図らずもフィリップ殿下の死は、そうした問題が露呈する機会となってしまったようだ。

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さかい もとみ(さかい・もとみ)
ジャーナリスト
1965年名古屋生まれ。日大国際関係学部卒。香港で15年余り暮らしたのち、2008年8月からロンドン在住、日本人の妻と2人暮らし。在英ジャーナリストとして、日本国内の媒体向けに記事を執筆。旅行業にも従事し、英国訪問の日本人らのアテンド役も担う。■Facebook ■Twitter

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(ジャーナリスト さかい もとみ)

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