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「本気でコロナ対策をする気はない」小池都知事のコロナ便乗を許してはいけない

プレジデントオンライン / 2021年5月7日 17時15分

緊急事態宣言が発出され、閑散とする銀座の飲食店街=2021年4月26日午後、東京都中央区 - 写真=時事通信フォト

3回目の緊急事態宣言が4都府県で発出されている。このうち東京都の小池百合子知事はさまざまな独自施策を打ち出している。文筆家の古谷経衡氏は「今回の小池都知事の施策は、世間の空気を反映したもので、どれも非科学的要素が強い。非常に危険だ」という――。

■暗くすることは何のコロナ対策にもならない

軍靴の足音が聞こえる——とは決して陳腐なフレーズではない。小池百合子都知事はコロナ禍に「便乗」して、いよいよ都下を非科学な全体主義に巻き込まんとしている。これが軍靴の足音ではなくてなんだというのか。

3度目の緊急事態宣言は、前2回に比べてさらに非科学的要素が多くなった。まず「令和の灯火管制」と揶揄(やゆ)される東京都下における夜8時以降のネオン等の消灯要請である。コロナに視覚はない。コロナは誘蛾灯に誘引される蛾ではない。よって消灯には何の意味もない。

さすがにこの要請について、都下繁華街でもネオンが消えることはなかったことは一縷の望みではあるが、小池都知事は「ネオンの消灯により、人々が早く帰宅する効果がある」とその要請をかたくなに正当化した。常識的に考えれば、仮にその説が正しかったとしても、早く帰ろうとする人々の「密」が起こり、電車内は過密になる。誰が考えても非科学で異常な要請である。

先の戦争における灯火管制は、日中戦争時代における1937年の防空法にその根拠が書き込まれ、1938年には詳細が策定された。しかし太平洋戦争が勃発する以前のこの時代、中国(中華民国・国民党政府)は、日本本土を爆撃する能力をほとんど持たなかった。当時の日本に灯火管制の必要はなく、ただ泥沼化していく日中戦争にあって、「戦意高揚の演出」にすぎなかった。

■夜8時以降の消灯要請は戦時中の意味のない灯火管制に重なる

灯火管制が本格的に実施されるようになったのは、太平洋戦争が勃発(真珠湾攻撃)して翌年、1942年にアメリカ軍が太平洋上の空母艦載機から日本本土を初空襲したいわゆる「ドゥーリットル空襲」以降である。

1944年後半から米軍は中国奥地の成都にB-29の発進拠点を置き、主に北九州の八幡製鉄所や長崎の大村海軍基地を爆撃した。日本本土で本格的な灯火管制が必要になったのはこの時期からである。各家庭では灯火管制用の傘つき電球が使用され、屋外に照明が漏れない措置が徹底され始めた。

しかし、結果的にこの灯火管制は無意味であった。日本政府や軍部の考える以上に、米軍の技術力が進歩していたからである。当時のアメリカは、日本軍に技術力で対抗するためにレーダー兵器の革新的発展に国力を注いでいた。その結果、B-29には暗視レーダー等が装着されて、夜間爆撃が容易に行えるようになった。

1945年3月10日の所謂「東京大空襲」を皮切りに米軍は日本本土への無差別爆撃を開始するが、米軍機にとっては東京の市街地が灯火管制で真っ暗でも何ら支障はなく市街地はレーダーで丸見えであった。その証拠に、東京大空襲は同日の深夜から奇襲的に開始され、10万人の市民が殺害された。結果、灯火管制などまるで意味をなさなかったのである。これは終戦まで同様であった。

戦時中の灯火管制は「戦意高揚の演出」にすぎなかった。これは「令和の灯火管制」と重なるところが多い。

■科学的根拠のない「令和の禁酒法」

また小池都知事は、「令和の禁酒法」とも揶揄される「飲食店での終日酒類提供自粛要請」を打ち出している。

要請の根拠は、酒類が入ると大声を出したり、騒いだりする人が出るため、飛沫が飛び感染リスクが増加する——ということだが、酒が入る・入らないにかかわらず大声を出したり騒いだりする人はいる。問題なのは社会的距離や飛沫の拡散やウイルスを含んだエアロゾルが室内に充満することであって、酒ではない。

これに併せて、「路上飲みの取り締まり」という方針が打ち出されている。これもおかしい。問題は人が密集したり飛沫が飛ぶことであって、路上や公園で酒を飲むのが悪いわけではない。酒はなにも関係がないのだ。にもかからず、少し考えれば非科学であることが、平然と「お上」によって実施されようとしている。

これに大規模なデモや抗議の声が起こらず、一部を除くメディアもこれをさも良いことのように追従する事態は寒気がするほど異様なことだ。いつから日本人はこんなにも非科学な「空気感」に沈黙するようになったのか。

■飲食店への時短要請も「非科学の全体主義」

東京都の統計によると、コロナウイルス新規感染者の感染経路の4~5割は「同居」、つまり家庭内での感染であって、飲食店や会食での感染は少ない。それにもかかわらず、昨年の緊急事態宣言以降、飲食店での夜8時や9時での営業自粛が求められた。

もちろん、零細の飲食店はその見返りに出された4万~6万円/日の協力金で少しは助かったこともあるだろうが、よく考えればこれも非科学極まりない。コロナは夜行性ではない。コロナは「この店は夜8時で閉店するから手加減してやろう」などとは思わない。

街に出てみよ。夜8時で閉店し、ラストオーダーが夜7時とか同7時半とかを見越して、飲食店はわんさかの人だかりである。何の為に飲食店等に時短営業を求めるのか、その根拠が曖昧模糊(もこ)としたまま、「何となく悪いこと」という空気感が列島全体を支配している。

ウイルスのイメージ
写真=iStock.com/loops7
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/loops7

夜飲みに行ったり、キャバレーに行ったりする著名人がスクープされ、罪人のように石を投げつけられるが、よく考えるまでもなくコロナは、その御仁がどこで飲もうといつ行動しようと、「感染力を弱めてやろう」とか逆に「強めてやろう」という忖度(そんたく)は存在しない。非科学の全体主義が、まるで一種の信仰のようになってこの国を覆っている。いつから日本人は近代的科学主義をかなぐり捨てて中世の時代に退行したのか。

■100年前から技術は進んだが人間は進歩していない

100年前のスペイン風邪では、日本だけで約50万人前後の死者が出たが、当時「ネズミを焼いた粉末を飲めば予防になる」とか神社の厄除け札が飛ぶように売れたという。当時は、ウイルスというモノをそもそも観測することができなかった時代だ。それから100年経って、技術は進めど人間は何も進歩していない。非科学という名の鎖に、身も心も束縛されている。これは恐ろしいことだ。

GWをはさんだ3度目の緊急事態宣言下、東京都は「おうちで楽しめる娯楽」を提供するために、ネットで完結する東京観光巡りのサイトやバーチャル水族館や動物園動画を公開した。

百歩譲って水族館や動物園はともかく、東京観光巡りをネットで楽しみたいのなら、すでにグーグルマップがあるから何の意味もない。ここにもまた、莫大な予算が投下されたのであろう。

小池都知事は、ユーチューバーと対談したコロナ啓発運動動画に、一本平均200万円以上の予算を費やしている。落語の寄席には「客を入れるな」と伝統文化を破壊しておきながら、自身が出演する動画には何百万も使って無意味なプロパガンダを延々と続けている。

もうお分かりいただけただろう。小池都知事にも政府にも、コロナ対策などまるで何も頭にないのである。彼らの頭にあるのは、衆院選挙とオリンピックと都議会選挙の行方だけだ。

満腔の思いで言う。非科学のコロナ全体主義には絶対に抵抗するべきだ。空気がそれを押しつぶすなら今こそ空気に反逆すべきだ。コロナに意思はない。コロナに視覚はない。コロナに県境や国境の概念はない。人類がルネッサンス以降、数世紀を費やして実現してきた近代科学精神の灯が今まさに消えようとしている。この灯が消えたら文明は滅びる。非科学の全体主義に、小生は身を挺して徹底抗戦することをここに宣言するものである。

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古谷 経衡(ふるや・つねひら)
文筆家
1982年、札幌市生まれ。立命館大学文学部卒。保守派論客として各紙誌に寄稿するほか、テレビ・ラジオなどでもコメンテーターを務める。オタク文化にも精通する。著書に『愛国商売』(小学館)、『「意識高い系」の研究』( 文春新書)、『日本型リア充の研究』(自由国民社)など。

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(文筆家 古谷 経衡)

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