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「納豆は苦手」そんな人でもおいしくコロナ対策できる"甘い発酵食品"

プレジデントオンライン / 2021年5月10日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Urupong

食べ物で免疫力を上げるにはどうすればいいのか。発酵食品に詳しい作間由美子さんは「発酵食品を取り入れるといい。あまり知られていないが、特におすすめの発酵食品が2つある」という――。

■日本が世界に誇れる発酵大国である3つの理由

「発酵食品はおいしいだけでなく、健康と美容にも優れた効果があるもの」というのは、ここ最近の常識になりつつあります。わたしが講師を務めている日本発酵文化協会にも、そういった発酵の優れた「効果」を取り入れたいと、老若男女を問わず講座に人々が訪れます。

金城実、作間由美子『免疫は発酵食品でぐんぐんあがる』(プレジデント社)
金城実、作間由美子『免疫は発酵食品でぐんぐんあがる』(プレジデント社)

そこで、「どんな発酵食品を知ってますか?」と尋ねると「ヨーグルト!」と答える人がダントツ。ヨーグルトはたしかに有名な発酵食品ですが、日本にはそれ以外にもたくさんの発酵食品があります。

数年前には、世界ナンバー1のレストランと言われている、デンマークのノーマから、日本の発酵を学ぶためにシェフが来ていたほど、日本は世界に名だたる発酵大国なのです。

彼らに日本の発酵の仕組みを教えると、「こんなに素晴らしい発酵の技術があるのに、それに注目しないなんて、なんてもったいないんだ!」とみなさん驚いています。

そして東京・飯田橋にINUAというレストランを作り、その発酵技術を思う存分使い、日本人では考えつかない発酵食を自ら生み出しています。

日本が世界に誇れる発酵大国の理由は、大きくわけて3つあります。1つめは、地理的な要素。日本は島国で食材が限られているため、昔から保存や備蓄の知恵が備わってきたということ。

2つめは、気候的な要素。四季に応じて寒暖の差があり、なによりも湿度があることが、発酵に最適な環境なのです。近年は猛暑や季節はずれの台風など、気候がおかしくなっていると言われますが、それでも他国と比べれば一年を通して穏やかです。

そして、3つめは、日本人の気質的要素。他国では、ただ放って環境任せで発酵をさせていることが多いのですが、日本人はきちょうめんで、物を丁寧に扱い、管理します。奈良時代や平安時代の寺院がまだ存在しているのと同じように、発酵食品も、日本の気候、日本人の気質に沿って、日本人の体に合った食べ物として、長い間生き続けています。

■日本食とは切っても切れない関係

「和食;日本人の伝統的な食文化」は2013年12月4日ユネスコの「無形文化遺産」に登録されました。そのおかげもあってか、日本食はヘルシーでおいしいと今では世界中の注目の的です。その日本食の要が発酵食品。みそ、しょうゆ、酒、酢、みりんなどの調味料はすべて発酵食品です。

スーパーなどで、なんとなくなじみのある調味料を使っている方がほとんどだと思います。でも、実はそれぞれ地域によって原料が違い、蔵独自の製法によって色も味も香りも熟成時間も異なる、とても奥深い世界なのです。

みそやしょうゆにも、日本酒のようにさまざまな種類があると言えばわかりやすいでしょうか。北に行けば塩辛く、南に向かえば甘い。真ん中は中間的な味をつくりつつも白かったり、真っ黒だったりと極端で、とても魅力的な世界がそこにはあります。

ところが、1990年代ころには、発酵食品は臭いし、しょっぱいし、色も渋いものばかりで、古臭いというイメージで敬遠され、汁ものの定番はコーンスープに移行しました。

「田舎のおばあちゃんが作るもの」というイメージが強い手づくりの発酵食品よりも、機械的な大量生産、塩分控えめで臭わない簡単便利な食べ物が好まれ始めました。

■人間の危機を支えてきた発酵食

それが、昨今見直されてきました。きっかけは、東日本大震災。

昨日まで普通に生活を送っていたのに、あのとき突然、すべてが流されていってしまいました。そんなときに重宝されたのがおみそでした。おみそは保存性も高く、常温でも置いておけます。お湯で薄めればおみそ汁になり、食材につけておけば、腐りにくくなるし、柔らかくおいしくもなります。

さらに素材の栄養素におみその栄養素が加わるので、栄養満点。それにもかかわらず、すでに発酵によって分解もすすんでいるので、体はエコモードでその栄養を取り入れることができます。

みその原料である大豆は畑のお肉と言われる高たんぱくなので、いざというときには底力が湧いてきます。実は発酵と災害の関係は今始まったことではなく、東京が焼け野原になった東京大空襲、古くは戦国時代にも同じようにみそが重宝されたそうです。

そういった非常食としての側面に加え、さらには飽食時代の栄養素不足や食の安心安全が注目される時代背景も手伝ってか、発酵ブームが本格始動しているようです。

■定義は「臭くてしょっぱい」

とはいえ、どれが発酵食品かわからないという方もいるでしょう。

ざっくり定義すると、臭くてしょっぱいもの。

もちろん、甘い発酵食品もありますが、臭くてしょっぱいものは、ほとんど発酵食品です。

みそやしょうゆも、わたしたち日本人は「臭い」とは感じませんが、海外の方からすると独特の、強烈なにおいがするようです。

以前、「日本人に家を貸すと、ソイ・ソースの臭いが染みつくから」と断られることもあったとある駐在員の方からうかがったことがあります。

わたしたちには香ばしいと感じるしょうゆの香りも、なじみのない人には臭いと感じるのでしょう。

■おつまみの定番「塩辛」も発酵食品

いくつか、臭くてしょっぱい発酵食品をご紹介します。まず思い出すのがくさや。くさや液という発酵し続けている液につけて干すことでおいしくなる干物です。

ほかにも、魚つながりでいうと、へしこ。魚のぬか漬けで、北陸の郷土料理として、知られています。福井県三方郡美浜町のゆるキャラ「へしこちゃん」でご存じの方もいるかもしれませんね。へしこちゃんはサバですが、ほかにもイワシやフグのへしこもあります。

北海道では、ニシンやサンマのへしこがあり、北前船によって北陸から北海道へ伝わったといわれています。

ふつうに魚のように焼いてよし、あぶってお茶漬けにしてもいいし、酒のさかなにももってこい。新鮮であればお刺し身でも食べらるという優れものです。

また、意外と発酵食品として知られていないのが、塩辛。イカの塩辛が有名ですが、魚介類の身や内臓などを加熱せずに塩漬けにすることで出来上がります。なので、地方によって、さらには国によってさまざまな塩辛が作られています。

へしこや塩辛は、それだけでおつまみとして食べても楽しめますが、近年では日本食以外にも、スパゲティやサンドイッチなど、洋食の具としても使われています。

意外に感じられるかもしれませんが、その濃厚なうま味は、やみつきになるほどです。ぜひ一度試してみてください。

■筆者イチ押しの発酵ドリンク「ミキ」

食品だけでなく、最近は発酵ドリンクもかなり人気が出てきました。アルコール類以外にも、こうじの甘酒はいまやどこのスーパーでも置いてあるほど人気ですし、りんご酢やコンブチャなども飲用としてよく用いられています。特に甘酒は夏バテ防止にも優れており、これからの季節には重宝するでしょう。

もちろん、発酵飲料もたくさんあるのですが、わたしがこの夏一番におすすめしたいのが、「ミキ」です。

ミキ
筆者提供
ミキ - 筆者提供

奄美大島や沖縄では古くから親しまれている飲み物で、おかゆに生のサツマイモをすって加えて寝かします。サツマイモの酵素がおかゆのでんぷんを分解して甘くさせ、その甘さを空気中の乳酸菌が分解して、酸味のある飲み物に変えます。イメージでいうと、和製ヨーグルトといった感じでしょうか。ほのかな甘みと酸味があり、後味がとてもすっきりとしています。

栄養価が高い上に消化もよく、1ccあたり100億個以上含まれる乳酸菌が腸内の善玉菌のエサとなってくれるので、美容にも健康にもすぐれています。

離乳食や介護食としても使えますし、ドレッシングなど調味料に加工してもおいしい。しかも自宅で手軽に作ることもできるので、家計にもやさしい、理想的な飲み物といえます。

縄文時代から作られていて、その語源はお神酒(みき)と言われるのも納得の逸品です。

もうひとつ、スイーツとしておすすめなのが、江戸久寿餅。

くずもちと言われるものには、くずの粉で作ったくず餅と、小麦粉からグルテンを分離させた後の浮き粉を発酵させた久寿餅と二種類あります。このうち後者の久寿餅が発酵食品です。

久寿餅
写真提供=山信食産
山信食産の久寿餅 - 写真提供=山信食産

ひんやりとした久寿餅に、きな粉や黒蜜をかけていただくのですが、夏場にはそのひんやりがとても口に心地よく感じられます。

山信食産が「クズクズシェイク」という、久寿餅をシェイクにしたドリンクを売っています。こちらも夏場にはとてもヘルシーでおいしい飲み物です。

■免疫が上がる効果的な食べ方

発酵食品の上手な取り入れ方は、ドカ食いしないで、少量でいいので毎日食べること。

極論をいえば、毎日おみそ汁を飲んでいるだけで、免疫も上がるし、美容、健康にも役立ちます。

おみそに昆布や煮干しを刺しておけば、だしみそが出来上がるので、それらを丸めてラップに包んでみそ玉にしてお弁当と一緒に持ち運ぶ。ランチタイムに、そのみそ玉をマグカップに入れてお湯を注げば、それで十分です。具が欲しければ、干物のお麩(ふ)やわかめを入れるといいでしょう。

■発酵は神のおぼしめし?

昔は、神棚に飯を備えておいたらお酒になっていた。ぶどう酒を瓶に入れておいたらワインになっていた。ミルクを持ち歩いていたらチーズになった。そんな感じで、発酵した食べ物や飲み物ができていました。昔の人は、「神のおぼしめしだ!」と思ったことでしょう。

このようなことが世界中で起こっていたようですが、近年、これは目に見えない微生物が起こしているものだということがようやくわかりました。

それでも、まだ発酵の研究の歴史は160年ほどです。

納豆だって、豆を煮てわらに包んでおいたらネバネバした状態に変化した。それはわらについている菌の仕業です。ぬか漬けだって、米ぬかと塩と水でできているのに野菜を漬けると独特な酸味と塩味でおいしくなる。それは米ぬかにいる菌の仕業。おみそだって、豆とこうじと塩で作りますが、あんなに重宝する調味料になるのもこうじ菌の仕業です。

このように、私たちに肉眼では見えないうちに変化するのだから、神のおぼしめしとされるのも理解できますね。特に日本では、こうじというカビによる発酵が、世界に誇れる日本食となっています。

この神のおぼしめしとも思える発酵食品を取り入れて、健康にも美容にもいい食生活を楽しみましょう。

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作間 由美子(さくま・ゆみこ)
発酵マイスター・発酵プロフェッショナル
福島県出身。ホテル業界を中心にソムリエとして飲食に携わった後、「学びたい人の学びたい時のための『校舎のない学校』」を有志と設立。そこで著名な方々を講師として招きながら食文化を楽しく身につける場を作る。現在は、ライフワークとして、日本の食文化、特に発酵食を広げる講演や教室を各地で行っている。

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(発酵マイスター・発酵プロフェッショナル 作間 由美子)

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