本当にお金を貯められる人は、タイムセールと送料無料には目もくれない
プレジデントオンライン / 2021年5月15日 11時15分
※本稿は、飯村久美『お金の先生! できるだけ簡単にお金が増える方法を教えてください。』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■「安くても消費量は倍増」ビールの箱買いはNG
多くの人がまとめ買いをするのは、平日は仕事で忙しいので、週末に1回買い物するだけなら手間が省けて、節約できた気分になれるからでしょう。
その際にやりがちなのが、晩酌用のビールを箱買いすることです。自宅で飲むことが増えた昨今、さらに箱買いしている人が多くなっているのではないでしょうか。
その習慣、実はお得ではありません。
1本あたり数十円安いので、「1箱で数百円も得した!」と思うでしょう。実際そうなんですが、そのせいで消費量が格段に増えてしまうところが、箱買い、まとめ買いの盲点なのです。あると思うと、ついつい進んでしまうのがお菓子やアルコール類の嗜好品です。
甘味やアルコールをとると脳が快感を覚えます。この快感を覚えるメカニズムは、なんと麻薬中毒と同じなのです。そのため、甘いものもアルコールも、体がもうこれ以上必要がないというサインを出しても、脳がそのブレーキを解除してしまうのです。
ダイエット中の人が、ときどき甘いものを猛烈に食べてしまうことや、じゅうぶんに酔っている人がビールをおかわりしてしまうのは、依存性があるからです。
ビールを箱買いするようになってから、休肝日がつくれなくなったという話をよく耳にします。1日1本を守れる人はいいのですが、「今日は大変だったからもう1本飲もう」と増えていった結果、消費量は2倍になってしまうのです。
■買い物はその都度、必要な分だけがいい
ですので、お菓子やビールが欲しくなったら、その都度必要な分だけ買うことをオススメします。もう少し飲みたいと思っても、わざわざ外に買いに行く手間を考えると、それが抑止力になるのです。その結果、おなかも出費もおさえられます。
そもそもビールは、原価は安いものの酒税があるため、メーカーや小売店にとって利幅の少ない商品です。なので、利益を生むには数を売らなくてはなりません。数を売るには、酔いという作用をもたらすビールは格好の商品で、お酒が好きな人にたくさん買ってもらえるようお得感を訴えれば、乗ってくれるお客さんがたくさんいるのです。
お酒のほか、ジュース、チョコレートやスナック菓子といった嗜好品、それから肉や野菜といった生鮮食品も、安いからといってまとめ買いするのはオススメできません。買ったことを忘れて冷蔵庫に入れたままにしていると、腐らせたりするからです。
お金と健康を大切にしたかったら、その都度買いをぜひ実践してください。
■店は絶妙な方法で財布の紐を緩めてくる
でも、すべての買いだめがいけないとはいいません。
トイレットペーパーやシャンプーなど、いざというときにないと困るもの、あっても腐らないもの、消費のスピードが一定のものに関してはOKです。防災用品などもあらかじめ買っておいてもいいものだと思います。
ただし、置き場もないくらい買いだめするのはやめましょう。
メーカーや小売店は、私たちの財布のひもをゆるめるために、ありとあらゆる戦略を考えています。それは、私たちに「ダマされた!」と思わせないよう絶妙な方法で仕掛けてきます。その際に狙われるのは、私たちが抱えている欲望やコンプレックス、不安やストレスといった心のスキマです。
ここをめがけてアナウンスしてくるのを理解したうえで上手につきあえれば、お金も貯まる賢い消費者になれるのです。
■「今がチャンス」「全品3割引」の宣伝文句は要注意
ついムダな買い物をしてしまうのは、買いだめや箱買いによるものだけではありません。「同じものなら、安く買いたい」という人間の心理をついてくる宣伝文句にも注意が必要なのです。
ですので、食品や日用品の出費が多いという人には、チラシや広告を見るのをやめることをオススメします。なぜなら、そういった人は、チラシにあるお買い得品を求めて買い物に行ったはずが、余計なものまで買っていることが多いからです。
つりにたとえると、私たちが獲物なら、チラシや広告はまき餌(え)のようなものです。つり糸がたれているところまでおびき寄せるためにあるのです。
そのため、チラシには「全品3割引」「5時からタイムセールで半額」といった、私たちの胸が躍るような文言が巧みに並べられています。
店側からすればお店に来てもらえれば、しめしめという感じなのです。それは、スーパーなどの店内には、私たちがつい買いたくなるような仕掛けが張り巡らされているからです。
■「余計なものを買ってしまう」スーパーの仕掛け
そもそも、店内での行動経路を思い浮かべると、私たちはまさに回遊魚のような動きをしていることがわかります。スーパーのほとんどが、お客の流れが左回りになるように設計されています。
心臓が左側にある人間にとって、左回りのほうが心地よく感じるためといわれているのです。また、ほとんどのスーパーでは、メインの入り口付近に果物売り場があります。
そうなんです、スーパーの店頭に鮮やかな明るい色を配置することで、買う側の気持ちを高揚させるのです。そのほうが、購買意欲が高まり、財布のひもがゆるむからなんです。
確かに、外観や店内が暗いスーパーを見たことがないでしょう。また、ハンバーガーショップや牛丼店の看板は、みな色鮮やかです。暗いよりも明るいほうが気分は乗ってきます。
店頭には果物のほか、お買い得品がこれでもかと積まれていることがありますが、それは、その商品をカゴに放り込むことで浪費スイッチが入るようになっているのです。
店側のいろいろな仕掛けにはめられているのが、私たちなのです。
■スーパーは店の裏側から入るといい
そこで、提案です。スーパーには裏側から入ってみましょう。
スーパーには出入り口が表側と裏側の2カ所ある場合が多いので、気分を高揚させる表側の入り口は避けるのです。また、たくさんものが積めるカートではなく、カゴを両手に抱えて重みを感じながら店内を回りましょう。
たったそれだけのことで、これらのマジックに引っかからずに、買いたいものだけ買うことができるはずです。さらに、あらかじめ必要なものをメモしてから、買い物に臨みましょう。
また、『お金の先生! できるだけ簡単にお金が増える方法を教えてください。』(アスコム)で紹介している冷蔵庫の中の写真を撮って、それを見ながら必要なものだけ買うといったことも有効です。
スーパーではお得なものを買うよりも、余計なものを買わないということを心がけること。それがあとあと家計に効いてきます。ぜひ覚えておいてください!
■「送料無料」の誘惑に騙されてはいけない
忙しいときに便利なネットショッピング。
クリックするだけで、水やお酒など重いものをはじめ、「こんなものまで買えるの?」という商品もすぐ届くので、ついつい使ってしまいますよね。コロナ禍で外出自粛が続いて、ネットショッピングが好きになった人もいるかもしれません。
このネットショッピング、「送料無料」だと、ページのアクセス数に対して購入率がグンと上がるそうです。逆に、送料無料じゃなければ買わないという人が増えているといいます。
そこに買わせる側の罠が仕掛けられているのです。
なんで送料無料が可能なのでしょうか。
あるショッピングサイトはこういう仕組みになっています。もちろん、サイト側は配送会社に送料をきちんと支払っています。要は、サイト側が自ら負担しても、たくさんの人が買ってくれれば、負担した送料をまかなえるくらいの利益が生まれるからなのです。
「部屋にものがあふれている」「ムダな買い物をしている」人ほど、送料無料にどっぷりつかっているのではないでしょうか。
こういった人はまず、送料無料と距離を置いて、必要なものだけを買うようにしましょう。きちんと送料を払っても、そのほうが確実にお金が貯まり、部屋はシンプルになるはずです。
■ショッピングサイトの奴隷にならない
コロナ禍で特に需要が伸びているネットショップは、便利な反面、ムダづかいの温床にもなってしまいます。ネットショップをつい利用してしまうのは、ワンクリック購入という便利さ。これはお店で現金購入するのと比較すると一目瞭然でしょう。
お店で商品を現金購入するためには、①欲しいものを調べる、②現金を用意する、③お店に出向く、④商品を手に取る、⑤レジに並ぶ、⑥財布から現金を出して購入する、とちょっと思い浮かべただけで、いろいろなステップがあります。
しかしネットショップの場合は、これらの手間がすべて省かれてしまいます。100円の商品でも数万円する商品でも、すべてワンクリックで自宅に届いてしまう。これでは、ムダづかいしてしまった痛みを感じることもできません。
ネットショップでさらにおそろしいのは、自分の購入履歴から「こんな商品もおススメです」とサイト画面やメールで頻繁に勧めてくるところで、しかもその紹介された商品が魅力的です。
そして、クレジットカードという出費の痛みを感じにくい方法で「欲しい、即購入」が簡単にできる仕組みが出来上がっている。これがネットショップなのです。
■ネットショッピングで浪費を防ぐ2つのポイント
まずは、ご自身のネットショップムダづかい度を知りましょう。
やり方は以下の通りです。
①自分の購入履歴から、直近1年で買った商品の満足度を10点満点で点数化する。
②7点以下の満足度だった商品をリストアップし、それらの商品の合計額を計算する。計算はざっくり千円単位でOK。
合計額が節約できたはずの金額です。
ネットショップの怖いところは、合計いくら買い物したか把握しにくいところです。
ネットショップでムダづかいしないためには、ムダづかいしてしまった金額を知ることが最初のステップ。ぜひ定期的に、できればネットで何か買いたいなと思うたびに、購入履歴のページを開いてみてください。
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FP事務所アイプランニング代表。日本FP協会認定ファイナンシャル・プランナー。学習院大学卒業後、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)に入社。在籍中にファイナンシャル・プランナー(FP)資格を取得。2006年FP事務所を開業。これまで手がけた家計相談は1000世帯を超え、テレビやラジオ出演、セミナー講師としても活動中。著書に『子どもを持ったら知っておきたいお金の話』(KADOKAWA/中経出版)、『シングル女子の今日からはじめる貯蓄術』(成美堂出版)。監修に『一生お金に困らない! 貯め方・増やし方』(ナツメ社)がある。
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(ファイナンシャルプランナー 飯村 久美)
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