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「韓国の裁判所も迷走」慰安婦問題を政治利用する文在寅大統領の姑息さ

プレジデントオンライン / 2021年5月7日 11時15分

日本政府に損害賠償を求めた韓国慰安婦訴訟の原告の1人で元慰安婦の李容洙さん(中央)=2021年4月21日、韓国・ソウル - 写真=EPA/時事通信フォト

■韓国のメディアや世論は2つに割れた

4月21日、韓国の元慰安婦らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁が原告の訴えを却下した。却下とは訴えそのものを退け、門前払いにすることである。原告にとっては手痛い敗訴を意味する。原告は元慰安婦ら20人で、求めた賠償額は総額30億ウォン(約2億9100万円)だった。

これは2度目の慰安婦訴訟判決で、1月18日の最初の判決では日本政府に賠償を命じていた。正反対の判決が出たことから、韓国のメディアや世論は2つに割れ、日本でも反響を呼んでいる。

なぜ、韓国ソウル中央地裁は正反対の判決を下したのか。

1月の判決は「慰安婦制度は日本政府による計画的かつ組織的に行われた反人道的行為な犯罪行為で、主権免除は適用できない」と指摘したうえで、「日本が韓国の裁判権に服する」と判断し、日本政府に対して「原告は想像しがたい精神的、肉体的苦痛に苦しめられた」と請求された全額の賠償を命じた。

12人の元慰安婦が原告となり、1人あたり1億ウォン(950万円)の損害賠償を求めていた。

■「主権免除」という国際法上の原則から大きく外れている

1月の判決にある「主権免除」とは、主権国家は相互に平等であるとの観点から「国家とその財産は外国の裁判権には服さない」との国際法上の原則を指すものだ。簡単に言えば、「国家の行為や財産は他国の裁判所で裁かれない」という考え方である。国家間の円滑な関係を維持する国際慣習法の原点といえる。

今年1月15日付の記事「『元慰安婦に950万円ずつ払え』歪んだ判決を尊重する文在寅大統領の異常」でも触れたが、「主権免除は適用できない」という指摘や「日本政府が韓国の裁判権に服する」との判断は、国際的に非常識で大きく歪んでいる、と沙鴎一歩は考える。

■4月判決は主権免除を認め、日韓合意も正当化

次に4月21日の2度目の判決の内容を見てみよう。

1月の判決と大きく異なるのは、主権免除を認めた点にある。ICJ(国際司法裁判所)の判決や韓国大法院(最高裁)の判例をもとにして「主権免除が適用される」と指摘し、「外国である日本に対して損害賠償の請求をする訴えはできない」と判断した。

さらに画期的で異例だったのは、日韓両政府が「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年12月の「慰安婦問題の日韓合意」について次のように言及したことである。

「日韓合意は日本政府による元慰安婦を救済するための確かな措置だった」
「日韓合意には日本の謝罪や反省がきちんと織り込まれている。日本の資金で財団も作られた」
「日韓合意が元慰安婦の意思に反しているとは断定できない」

いずれも正しい見解である。韓国の裁判所もその気になれば、正当な判断をすることができるのだ。

韓国・ソウルにある高等法院
写真=iStock.com/Rex_Wholster
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rex_Wholster

■文在寅氏は政権を握ると、すぐに日韓合意を否定

2015年12月の日韓合意では、日本と韓国の両外相がソウルで共同発表した後、安倍晋三首相(当時)が朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)に国際電話を入れ、謝罪と反省の気持ちを伝え、慰安婦問題に終止符が打たれたはずだった。

しかし、保守政権の朴槿恵氏が失脚すると、2017年5月に大統領に就任した左派の文在寅(ムン・ジェイン)氏は公約で日韓合意を否定し、2018年11月には慰安婦の財団も解散させた。

韓国民の反日感情を利用して自らの政権を盛り上げようとする作戦に出たのである。これまでも書いてきたが、文在寅大統領は反日種族主義(トライバリズム)の権化のような人物だ。

■土地投機疑惑と検察改革問題で文在寅政権の人気が急落

ここで思い出してほしいのは、今年1月18日にネット上で行われた文在寅氏の新年記者会見だ。文在寅氏は慰安婦問題について突然、態度を翻して「韓国政府は日韓合意を公式的なものだったと認める」と語った。徴用工問題についても「日本企業の資産が現金化されるのは韓国と日本にとって好ましくない」と語り、初めて現金化を避けたいとの考えを示した。

対中国の安全保障政策で日韓の協力関係を強く求めるアメリカに対し、従順な姿勢を見せたのである。この5月中には日米首脳会談が予定され、文在寅氏は追い込まれている。

文在寅氏の人気は急落している。たとえば4月7日の首都ソウルと第2都市釜山(プサン)の両市長選は、与党の「共に民主党」が大敗し、最大野党の「国民の力」が圧勝した。両市長選は来年3月の大統領選の前哨戦に位置付けられ、大統領選でも政権与党が負け、野党から新大統領が誕生する可能性が高い。

兵役や大学入試、就職といった若い層が強い関心を持つところで不祥事が次々と起き、人気を落とした。宅地開発を担う韓国土地住宅公社(LH)の職員による土地投機疑惑や、検事総長を辞任に追い込んだ強引な検察改革に対する反発も人気急落に拍車を掛けている。

■韓国の裁判所は「反日感情」や「政権の意向」に左右される

4月の慰安婦訴訟判決について「正しい見解」「正当な判断」と評価したが、韓国の裁判所の現状は、日本のように司法が独立する三権分立ができていない。裁判所が反日感情を意識した判決や政権の意向をくむ判断をすることがある。慰安婦訴訟や徴用工訴訟はその代表例だ。

その観点からすると、1月と4月の慰安婦訴訟判決が正反対だったことがよく理解できるだろう。つまり1月18日に最初の判決が出された時点で、文在寅政権の人気自体はそれほど落ちてはいなかった。このためソウル中央地裁は政権の考え方に沿った判決を下した。

しかし、3月初旬ごろから文在寅政権の支持率が落ち込み、ソウルと釜山の両市長選で敗北した。4月21日の2度目の判決は、こうした世論の変化を感じ取った同地裁が文在寅政権に反発する判断を出したのである。

■読売社説も「司法が政治・外交への影響を考慮した」と解説

4月22日付の読売新聞の社説は「元慰安婦訴訟 国際法重視した妥当な判決だ」との見出しを掲げ、こう書き出す。

「国際法を踏まえた常識的な判決である。これを機に、韓国の文在寅政権が日韓の慰安婦合意に立ち返り、関係修復へ動くことを期待したい」

読売社説が書くように「妥当な判決」「常識的な判決」なのだが、問題は1月と4月でソウル中央地裁の判断が正反対になった理由である。

沙鴎一歩は韓国司法の独立性の欠如を指摘したが、読売社説も「司法の側が政治・外交への影響を考慮した可能性がある」と解説している。

■文在寅大統領は任期前に辞職すべき

中盤で読売社説は「日本政府は、いずれの訴訟も却下されるべきだとして参加していない。1月の判決には控訴せず、確定している。今回の判決では、原告側が控訴した場合、上級審がどう判断するのかは不透明だ」とも書いてこう主張する。

「文氏に必要なのは、時に迷走する司法判断に振り回されず、慰安婦問題を収拾することである」

同感である。ただし、沙鴎一歩は読売社説のようには文在寅大統領に期待はしない。慰安婦問題も徴用工問題も文在寅氏がこじらせ、複雑にした。間違っているのは文在寅政権だ。文在寅氏にはその責任をきちんと取って来年5月の大統領職の任期(一期限りの5年)前に辞職するべきだ。

■朝日社説は日本政府を「外交的に稚拙」と切り捨て

朝日社説は「日韓は速やかに対話に乗り出すべきだ」と主張する

次に4月23日付の朝日新聞の社説。書き出しは「日本政府の主張にも沿う韓国の司法判断を契機として、日韓両政府は速やかに本格的な対話に乗り出すべきである」だ。

「日本政府の主張にも沿う」は問題ないが、「日韓両政府は」のところはおかしい。間違っているのは韓国の文在寅政権であることを朝日社説は無視している。つまり、これまで喧嘩両成敗を主張してきた都合上、日韓に対し「対話」を求めているのだ。見出しも「慰安婦訴訟 判決を機に本格対話を」である。

最後に朝日社説は指摘し、主張する。

「一方、日本政府も、根深い歴史問題の解決には双方の不断の努力と誠意が欠かせないことを忘れてなるまい」
「新任の韓国外相や駐日大使を冷遇し、閣僚らへの表敬や会談を受けつけないという態度は、外交的に稚拙である。難題があればこそ直接話し合う成熟した隣国関係を心がけるべきだ」

こうした指摘や主張は喧嘩両成敗そのものである。朝日社説は日本政府を「外交的に稚拙」と切り捨てているが、これはおかしい。文在寅政権が徴用工・慰安婦問題を解決しようとせず、しかも感情的になって強硬な言動を繰り返した。それに対し、日本政府は行動しただけのことである。

どうして朝日社説は自らの慰安婦報道の過ちを棚に上げ、「日本政府も悪い」という自虐的発想に陥るのだろうか。沙鴎一歩の目には、これも故意であるように映る。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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