お金でも才能でもない「天才になれる人、凡人で終わる人」生き方の決定的な違い
プレジデントオンライン / 2021年5月14日 9時15分
※本稿は、山口揚平『ジーニアスファインダー 自分だけの才能の見つけ方』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■天才は作れる
「天才」と聞くと、あなたは何を思い出すでしょうか?
マンガや小説の主人公でしょうか? テレビやスポーツ・芸術など各界で活躍している人? 子どもの頃に図書館で読んだ偉人の話? それともビジネスを大成功させた億万長者でしょうか? はたまたIQが140以上ある人?
いずれにせよ自分からはまったく遠い存在と思ってはいないでしょうか? 天才なんて自分には関係ないと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
では、天才はどのように作られるのでしょうか。遺伝子? 突然変異?
いえいえ、それは要素でしかありません。
実は、天才は、まずは自らの天才性を発掘し、その天才性に忠実に生きることによって作られるのです。
■「他者と異なる特性」に忠実に生きよ
つまり、天才=「天才性を知ること」+「天才性に忠実に生きること」です。どちらが欠けてもダメなのです。
ここでいう「天才性」とは、個人が生まれた時に授かっている、他者とまったく異なる特性のことです。天才性は個性や才能とも違います。
個性は能力よりキャラクター(性質)に近く、才能は能力を表すもの。個々人に固有のものというよりも、「あるタイプの才能のある人たち」のように集団でも語れるうえ、1人で多くの才能を持つ多才な人もいます。
しかし天才性は個々人に特有で、1つとして同じものがありません。そして「あいつは次元が違う」というふうに“次元”のレベルの違いで語ることができます。
■<天才性×社会性>で人類は生き抜いてきた
人間は皆、人と異なる特性を必ず持って生まれます。なぜならば、人類という生物種は、個々人が異なること、つまり天才性を持ち、その異なる人々が協力し合うこと、つまり社会性の掛け算によって厳しい生存競争を生き延びてきた生物だからです。
しかし多くの人は自分の天才性に気がついていません。あるいは子どもの頃は自由に自分の好きなことに没頭していたのに、忘れてしまっている人も多いと思います。自分の天才性に気づかず、また、それを活かすこともなく人生を終えてしまうのは、もったいないように思います。
加えて、自分の天才性をある程度知っていても、社会に適合できずに結局、既存の仕事をしながら暮らしている人も多いでしょう。それも残念なことです。
■「才能」と「環境」がアインシュタインを天才にした
アインシュタインは誰もが認める天才でしょう。アインシュタインが天才になったのは、自分の天才性を知りそれに忠実に生きるという2つの要素を満たしたからです。
アインシュタインは大学受験の時、勉強をせずに臨みました。そのためひどい点数でした。ただし数学と物理が圧倒的にできていたために特別に入学が許されました。彼はこういう経緯で自らの天才性(彼にとっては特殊性)に気づいていきました。
しかし授業に出ていないために肝心の大学の成績は凡庸(ぼんよう)、教授からは疎(うと)んじられて、就職は失敗、定職につかない期間も長く、友人のコネで特許庁の一職員として働いていました。結局、アインシュタインが大学の先生になるまでに十数年を費やしました。
それでも彼は報われない時代、各国の大学の先生に論文を送ったり勉強会を主催したりするなど、退屈な特許庁の仕事の時間の合間をぬって自分の天才性に忠実な暮らしを送ったのでした。
またアインシュタインはコーヒーが大好きでした。しかし生涯にわたって一度として自分でコーヒーを淹(い)れたことがないといいます。これは周りが気を利かせて淹れてあげたのでしょう。
こう見ると、若い頃のアインシュタインは社会的には成功しているようには見えないかもしれません。しかし彼には人に好かれる愛嬌があり、頼りになる友人がいて、そして何よりも社会と一定の距離をとって自分に忠実に生きる勇気があったのです。
その才能と環境がアインシュタインを天才にしたのでした。
■天才性にしたがって生きる環境を設計するには
天才性に基づいた生き方を選択し、天才性にしたがって生きるための環境を設計する一連のプロセスを「ジーニアスファインダー」と呼びます。
私がこのジーニアスファインダーを提唱し、それを実践してきた経緯を少しだけ述べます。
私(山口揚平)と兄(山口和也)は、10年前、「武者修行プログラム」を創業し、大学生を中心にその人の「天才性」を見つけ挑戦を助ける仕事をしていました。
兄は年間1000人、総計で約3800人の学生一人ひとりと真剣に向き合う作業を淡々と続けました。兄は、残念ながら2020年10月に難病によって47歳の生涯に幕を閉じましたが、膨大な実例を残してくれました。
一方、私のほうは、自分の起業から売却を終えた2010年から10年間、十数社の創業を自ら行い、あるいはその支援をしてきました。
当然、それぞれの企業には社長がいます。その社長たちは皆、それぞれまったく異なる天才性を持っています。そしてその天才性を活かすために、裏方の経営面をサポートするのが私の会社の役割です。
業界は多種多様、いわゆるテックベンチャーから劇団、リトリートホテル、エコヴィレッジに至るまでの様々な企業群で、それを束ねるのは、まっすぐに天才性を生きる社長たちです。
■天才性に忠実に生きることが自分と周囲を幸せにする
私は投資や支援をする時に「この人の本質やミッションは何か」を問い、そしてその天才性を見極め、そこからブレずに生きているだろうか? という一点のみ考えてきました。
業種も業態も問わず、儲かるかそうでないかなどはまったく考えませんでした。自分の天才性に忠実に生きることがその人にとっても周りにとっても幸せをもたらすと思っていたからです。
実際、自分の天才性を見つけ、自分なりにミッションを見つけた人は、他人の視点に振り回されず、自由にストレスも少なく仕事をしています。
たとえば、一緒に事業を行っているロボティクス会社のCEO林摩梨花氏は、アンドロイドの専門家である石黒浩博士に「1秒たりとも好きではないことはしてはならない」と10年前に言われ、悩みぬいた上で、自分の使命や行動指針が定まったそうです。
そして林氏は、自分の心の内から本当に沸き起こる使命と多少でも他者より秀でていると思われる天才性を活かして動きはじめた時、環境や仕事が整いはじめた、と言っています。
他にも、大学時代に自分のミッションを見つけてそのまま起業した人、30歳で会社を辞めて自分の信念に合った新たな事業を起こした人、35歳で自分の天才性を活用し転職間もないうちに管理職候補として期待されている人、40代で大企業を辞めて新たな道を踏み出したことで、自分が心からやりたいことを見つけた人──。
■「息をしている」のか? 「生きている」のか?
もちろんすべての人が順風満帆ではないかもしれませんが、自身の天才性と、それを活かせる方向性・場所を見つけた人は、その後も毎日を納得して過ごしています。
実は私自身もその1人です。勇気のなかった私は15歳から社会のレールに合わせて生き、30歳になってようやく修行を終えて職場を離れ、自分の道を歩み続けました。それ以降、多くの失敗・挫折を経験しました。いまだに成功したとはとてもいえません。
ただ1ついえることは、自分が真に「生きている」と実感しているということです。
青臭い言い方ではまさに青春のまっただ中にいます。本心・本音で率直・素直に感謝・感動しながら、まるで10歳の子どものように、毎日、泣き笑いしながら生きています。単に「息をしている」のでなく、「生きている」と感じられるのはそれ自体が幸福なことなのかもしれません。
繰り返しになりますが、私たち兄弟がこの10年間の数千人との対話を通して気づいたことは世の中には天才がいるのでなく、自分独自の天才性を自ら発掘し、磨き上げ、そしてそれに忠実に生きている人がたくさんおり、それが「最高の人生」につながっている、ということです。
*ジーニアスファインダーは、ブルー・マーリン・パートナーズの登録商標です。
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事業家・思想家
早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院修士(社会情報学修士)。専門は、貨幣論、情報化社会論。1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと30歳で独立・起業。劇団経営、海外ビジネス研修プログラミング事業をはじめとする複数の事業、会社を経営するかたわら、執筆・講演活動を行っている。
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(事業家・思想家 山口 揚平)
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