雑音や視線で集中できない「敏感体質な人」が上手に"周囲との壁"をつくる方法
プレジデントオンライン / 2021年5月19日 8時15分
※本稿は、井上智介『繊細な人の心が折れない働き方』(ナツメ社)の一部を再編集したものです。
■雑音をシャットダウンする方法
多くの人が働くオフィスは、電話やコピーの音、話し声や足音など、さまざまな雑音であふれています。聴覚が過敏なHSPさんは小さな音にも神経が刺激されて疲れてしまい、仕事に集中できません。また、仕事中に突然大きな音がすると、心臓がバクバクするほど驚いてしまいます。
音が気になるときは、耳栓やイヤホンで音を遮断してみましょう。最近ではノイズキャンセリング効果のあるイヤホンもたくさん市販されているので、自分に合った物を使えば、聴覚の刺激をかなりへらすことができます。
ただし、職場でイヤホンなどを使うときには、周囲の理解が必要です。音が気になって集中できないことを周囲に説明し、理解を求めるようにできるとよいでしょう。
イヤホンが使えない職場では、朝、ちょっと早めに出社して静かなオフィスで集中モードに入ると、途中で集中が切れにくいです。空いている会議室をひとりで使わせてもらうのもいいかもしれません。
■音以外に集中すると、落ち着くことも
どうしても音が遮断できない場合には、自分の意識をコントロールする方法も有効です。聴覚以外の感覚に神経を集中させて、気を紛らわせましょう。
たとえばパソコンで作業しているなら、キーボードを打つ指の触覚に意識を集中させます。ペンを持って書いている場合には、ペンの感触に集中します。
少々練習が必要ですが、こうして自分の意識をコントロールする習慣をつけると、物理的に音が遮断できないときにも仕事に集中しやすくなります。
■疲れたときは3分間、目を閉じる
HSPさんは刺激に敏感で疲れやすい人が多いのですが、仕事中には思ったように休憩がとれないこともあります。そんなときおすすめなのが、「目を閉じること」です。
人は、外界から受ける刺激のうち8割が視覚によるものとされています。このため、目を閉じて視覚情報をへらすだけでかなりの刺激がへり、脳や体を回復させることができるのです。リラックスしている人の脳からはα波という脳波が発生しますが、じつは目を閉じただけで、α波が発生することがわかっています。
疲れたら、3分間続けて目を閉じてください。寝てしまいそうなら、半開きでもかまいません。3分間ボーッとするだけで神経が休まり、心身がリラックスします。イヤホンや耳栓を使ってもいいでしょう。
お昼休みや残業前の仮眠も、心身のリフレッシュに役立ちます。
耳栓で音をシャットアウトしたり、好きなBGMを流すとさらにリラックス効果が高まります。BGMはクラシックに限らず好きな曲でかまいませんが、歌詞のないもののほうが、気分が落ち着くという人が多いようです。
■焦ったときは「両手で作業」
突発的な仕事を頼まれたときや、予定外のことが起きたとき、HSPさんは焦りを感じることが多いのではないでしょうか。そんなとき、「がんばらなきゃ」と、せかせか動くのに仕事ははかどらず、ミスを重ねて悪循環にはまります。これは「焦り」に行動が支配されている状態です。
こんなとき参考になるのが、「行動から感情が生まれる」というジェームズ=ランゲ説です。これは、感情に行動を支配させず、行動によって感情をコントロールするというもの。いわば、「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」という考え方です。
ジェームズ=ランゲ説は、いろいろな応用ができます。たとえば気持ちが落ち込むと姿勢も悪くなりますが、背筋を伸ばしてシャキッとすれば気分も上向きに。
焦っているときにおすすめなのは「両手で動作を行う」こと。せかせかしていると、たいてい人は片手で雑な動作をします。「焦っている」と感じたら、あえて両手で物を持ち、丁寧に行動してください。落ち着いた行動をとっているうちに、心は落ち着きをとり戻すでしょう。
■敏感スイッチをオフにする時間をつくろう
周囲の空気を敏感に察知するHSPさんは、他人といると心がなかなか休まらないことが多いです。敏感スイッチがつねにオンになっていて、張りめぐらされた神経のアンテナがピリピリしている状態です。
こんな状態で一日過ごしていたら、どんな人でもクタクタになってしまうでしょう。
HSPの気質と折り合いをつけて暮らしていくには、仕事の合間にも敏感スイッチオフの時間を確保する必要があります。
敏感スイッチは自動的にオフにできないので、自分で意識してオフにしなくてはなりません。この操作ができるかどうかで、HSPさんの生活の質ががらりと変わります。
職場では、ひとりになれる場所を見つけておきましょう。給湯室や人のあまり通らない廊下、階段の踊り場はどうでしょうか。更衣室やトイレでもOKです。
お昼には、いつも同僚とランチに行くのではなく、ときにはお弁当を持参してデスクで食事をとるのもいいでしょう。知り合いがあまりいないカフェを見つけておくと、ひとり静かに息ぬきできます。
休憩時間の仮眠は、とくにおすすめです。前述のように、数分間目を閉じて休むだけでも刺激を大幅にシャットアウトできます。
できれば一日に1時間以上ひとりの時間を確保するのが理想的ですが、現実的に難しければ、数分ずつの細切れでもかまいません。敏感スイッチのオンとオフを切り替え、高ぶった神経を休ませてあげましょう。
■「マイ鈍感グッズ」を持ち歩く
気持ちが高ぶったり不安定になったりしたとき、自分なりの「マイ鈍感グッズ」を持っていると安心です。スヌーピーの漫画に登場するライナスの毛布のように、安心感を与えてくれるお気に入りのグッズです。
マイ鈍感グッズは、自分にとって「これがあると落ち着く」という物なら、なんでもOK。神社のお守りやキャラクターグッズ、好きな本でもいいでしょう。
また、肌ざわりのいいフェイスタオルやブランケット、ビーズのクッションなど手ざわりのいい物を職場に置いておくのもおすすめです。心地よい刺激は、不快な刺激を抑える効果もあります。
HSPさんは人との境界線があいまいなので、身に着ける物で肌を隠すとバリアが強化され、気持ちが落ち着くことがあります。
通勤電車で疲れる人は、スカーフやマフラーで首回りをおおってみましょう。
また、マスクも顔の大部分が隠れるので、とても効果的な鈍感グッズです。すでに実感しているHSPさんは多いかもしれません。
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産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務
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(産業医・精神科医 井上 智介)
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