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40代以上が「年収の下がらない転職」を成功させるための4つのポイント

プレジデントオンライン / 2021年5月14日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pixelfit

40代以上が「年収の下がらない転職」を成功させるには、どうすればいいのか。マーケティングコンサルタントの酒井光雄さんは「大きくわけて4つのポイントがある。まずは自分自身の『売り物と価値』を把握することだ」という――。

■40代以上の転職は難しい

コロナリストラ、早期退職の募集開始、一時帰休、外部出向……。これまで「一生安泰」と言われた名だたる大企業でも人員整理の嵐が吹き荒れています。特に致命的なのが40代以上の社員です。転職で選択肢が多い20代~30代と違い、40代以上のビジネスパーソンが再就職先を見つけるのは容易ではありません。

40代以降を対象にした人材募集は非常に少なく、あっても非常に狭き門か、給与が低いなど労働条件が悪い案件が多くなります。人材紹介会社に頼って、何十、何百とエントリーしても書類選考に通らず、時間だけが過ぎていくケースも稀ではありません。

とりわけ大企業などの恵まれた企業に就職した人ほど、「自分には関係ない」と思い込み、居心地の良さを満喫してきました。安定した企業や職業など既に存在しない時代にもかかわらず、20世紀のまま「根拠なき安心感」に浸っている人は少なくありません。

ミドルエイジの人には、「失業したら転職エージェントに頼ればいい」「転職先なんてすぐに見つかる」と楽観的に考えがちです。これまでの過去の権威は、社外に放り出されたらなかなか通用しません。

現在の年収より大きく下げて条件を低く設定しても、転職先を見つけるまでに半年から1年以上かかる場合がほとんどです。転職エージェントすら、募集する企業が限られ、成約の見込みが少ないミドルエイジの案件に注力してはくれません。

■「内向き型の社員」は最も危険

40代以上のなかで、最も危険なタイプは社内の人たちとだけ交流する「内向き型の社員」です。長年勤務すれば会社の居心地は良くなり、社内の人たちとは以心伝心になります。会社の人たちとだけ交流し、飲み会ですら社員同士。他業界で活躍している社外の人たちとの出会いや交流がほとんどない人がそのタイプにあたります。

冒頭で紹介したような万一の事態が起きると、「内向き型」はひとたまりもありません。結局、会社は社員に対して冷淡で、仲が良いと思い込んでいた上司や同僚ですらあなたを助けてはくれないのです。

では、そんな時に頼りになり、手を差し伸べてくれるのは誰でしょうか。「縁でつながっていた社外の人たち」です。社外にいくつものネットワークを持つように心掛け、実践してきた人たちは、転職を余儀なくされる事態に直面しても転職エージェントに頼らず、自力で活路を見出しています。

逆に言えば、居心地の良い社内の人たちとだけ交流している無意識の行動が、気づかないうちに人生のチャンスを逃している恐れがあるのです。もちろん援助してもらうことだけ考える利己的な人に、価値ある人との縁は生まれません。自分自身も人から頼りになる存在になっていることが必要なのです。

実力のある人たちと懇意になるには、どうすればいいでしょうか。大きくわけて4つのポントがあります。

■【ポイント1】自分の売り物と価値を見える化する

人間的にいかに「良い人」であっても、力のある人たちはそれだけで懇意になってはくれません。相手にはない独自の力が欠かせません。

まずは自分自身の「売り物と価値」を把握する必要があります。

過去の職歴や取り組んだ仕事を洗い出し、自分のために職務経歴書をつくってみてください。これまでの仕事を通じてどんなノウハウや知見を磨いてきたかを自身で把握すれば、他の人に自分の売り物を説明できるようになります。

職務経歴書をつくってみて、これだ! という「売り物」が見つからない人は、これまでの仕事の取り組み方や意欲に原因があります。今から仕事の取り組み方を早急に見直すべきです。

自分が持つ付加価値の高い能力を見つけるために、最適な取り組み視点があります。それは『これまでに磨いてきた得意な分野』×『強みを発揮してきた事業領域』×『市場の成長性と有望度』=自分の付加価値(スペシャリスト)にする、という発想です。

この時重要なのは、過去に取り組んだことだけでなく、今後成長が期待できる市場で活躍できる点を分析視点に加味することです。

■自分の「売り物」はこれまでの仕事の掛け合わせ

例えば、こんな掛け合わせが有望です。

●食品メーカーで冷凍食品を担当し、コンビニエンスストア向けに単身者向け冷凍食品の商品開発を担ってきた人
→食品メーカーの冷凍食品担当×コンビニエンスストア向け商品開発×高齢化と単身世帯の市場=高齢者や単身世帯の増大をキャッチアップするコンビニエンスストア向け冷凍食品開発のエキスパート
●IT系企業の人事で中途採用に携わった期間が長く、そこで採用される人とそうでない人を見分ける眼を養ってきた人
→IT系企業での中途採用の実績×活躍できる人材を見極める眼力×人生100年時代の社会の到来=IT業界で活躍する人材を中途採用するスペシャリスト
●B2Bのビジネスソリューションを手掛ける企業で、マーケティングのノウハウを研鑽し、EC市場で発揮してきた人
→マーケティング力×B2Bのビジネスソリューション×伸長するEC市場=B2BのEC分野に強いマーケティングのプロ

このように仕事の掛け合わせによって独自の付加価値づくりとそのアピールが可能になります。

人事にいた。マーケティングに知見がある。商品開発の経験がある。こうした全方位的キャリアではなく、<1>どんな事業領域で、<2>自身のどのような力を発揮したのか。そして<3>市場の将来性が高い、という点を加味すれば、独自の強みに変わります。

■【ポイント2】自分の現在評価額を把握する

次は自分の「売り物」が市場でどれだけの評価(年俸)を得られているかを把握します。導き出した自分の売り物が、どれだけ社会にニーズがあるかをつかむためです。

転職サイトの求人情報に提示されている年俸金額が役に立ちます。さらに詳しく知るには、転職エージェントの適正年収診断を試す方法もあります。提供できる価値が高く、その力を提供できる人材が限られていれば、提示される年俸は高くなります。

現在の年俸と同額かそれ以下の場合には、現在の仕事を通じて『得意な分野』に磨きを掛ける必要があります。『市場の成長性と有望度』を見ながら、『強みを発揮する事業領域』をさらに絞り込んでいくように取り組みます。

客観的に自身の評価金額を知れば、現在の待遇を再認識する人もいるはずです。自分の「売り物」の評価が高まれば、頼りになる人としての存在感は高まり、人生の選択肢は増えていきます。

■【ポイント3】人間関係は「数」より「質」

3つ目は自身の人的資産の棚卸しです。スマートフォンやPCの電話帳やメールアドレスのリストを使い、自身のキャリアや仕事、生活に良い影響を与えてくれる可能性のある人を洗い出します。

この時重視するのは、数よりも質です。人数が多すぎては、限りある時間の中で定期的な情報交換ができないからです。人数が少なくても、その質が高ければ問題ありません。

握手する日本の実業家
写真=iStock.com/helovi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/helovi

リスティングする際は、最も重視したい上位10人、次に重視したい30人、その後に続く50人のように分類します。候補者を検討すると、仕事の取引先や協力企業の幹部や経営者、転職していった過去の上司や部下、これまでに知り合った経営者や相談したことのある人、メンターの人たちなどが浮かび上がるでしょう。

このリストが出来たら、関係を強化したい人と定期的に情報交換を行い、相手が必要とする情報や記事などと共に、1週間に1回程度の頻度でメールなどを使って連絡するようにします。

人的なつながりを棚卸ししてみると、現在決定的に不足している人材やネットワークがあることに気づくと思います。自分が会社員であれば、知り合いが同じ業界の会社員ばかりで、経営者、他企業の管理職層、転職エージェント、自営業の人たちなどとのつながりが希薄な人がいると思います。

■【ポイント4】SNSだけのつながりに期待してはいけない

このような人たちは、自ら雇用を生み出し、仕事も自身の手で獲得してきた人たちです。危機的状況に何度も直面し、乗り越えてきた経験があります。また絶えず有能な人材を探している人たちでもあります。いざという時に相談に乗ってもらえる可能性が高いのです。

問題は、どうやって相談に乗ってもらえそうな人たちとつながるかです。LinkedInのようなビジネスSNSを通じて、自分と価値観が同じで学べる人を絶えず探すことは当然です。しかし、SNS上でつながっても目的を共有していないつながりに効果は期待できません。

SNS上だけではなく、リアルで懇意になれるように取り組まなければなりません。テキストのやり取りだけでなく、Zoomなどを使って積極的に交流するように努めます。

リアルの対応なら、つながった人が参加するセミナーに出向き、直接会って名刺交換の時間に会話を交わせば自分の印象を残せます。社内の勉強会にゲストとして招いたり、その人のセミナーを社内で開催したりする方法もあります。

ウェビナーの場合なら、参加したセミナーの内容をコンテンツ化し、自身のSNS上に投稿します。投稿を相手に知らせれば、好意を持ってもらえる可能性は高くなります。つながりをさらに深めるには、相手が投稿したポストを自身のSNSでシェアし、相手のページにコメントを入れます。相手が興味を持ちそうな情報をこちらから知らせる方法も有効です。

■「互いにメリット」がある行動を

書籍を読んで感銘を受けた筆者、オンラインのニュースや経済誌の記事に登場する識者など知名度のある人との面識をつくれない場合には、その人への思いをブログに書いたり、刊行された書籍やコラムの読後感や書評などを投稿したりすれば、本人から直接連絡をもらえることがあります。つながりたい人のSNSにコメントを書き込んだり、自身のSNSでリツイートやシェアをしたりすることも効果的です。

実力のある人から懇意にしてもらうには、互いにメリットがあるように行動しなければなりません。時間を掛けてこうした取り組みを実践していけば、あなたを取り巻く人的ネットワーク環境は確実に変わっていきます。

万一の事態が起きた時に慌てて行動を起こすのではなく、人との縁を通じて、「引き抜きが来る人」や「転職の勧誘が来る人」になってください。もっともそうなる人なら、会社はあなたを絶対に手放さないと思います……。

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酒井 光雄(さかい・みつお)
マーケティングコンサルタント
学習院大学法学部卒業。事業経営の本質は「これまで存在していなかった新たな価値を生み出し、社会に認めてもらう活動」であると提唱。価値の低いものはいつの時代も、必ず価格競争に巻き込まれ、淘汰されていくとして、一貫して企業と商品の「価値づくり」を支援している。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれた実績を持つ。著書に『不況を乗り切るマーケティング図鑑』『デジタル時代のマーケティング・エクササイズ』(共にプレジデント社)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』、『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版)、『価値づくり進化経営』『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書』(監修)『男の居場所』(共にマイナビ出版)など多数ある。プレジデント社のオンラインサイト「プレジデントオンライン」で連載コラムを執筆し、多くのファンに支持されている。日経BP社が主催する日経BP Marketing Awardsの審査委員を長年務めている。http://www.ms-bgate.com/

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(マーケティングコンサルタント 酒井 光雄)

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