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「大企業は避けたほうがいい」お金のプロが就職・転職で勧める会社の選び方

プレジデントオンライン / 2021年5月15日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alex57111

就職・転職を考えたとき、これからはどんな企業を選べばいいのか。投資家の藤野英人さんは「大企業が安泰ではなく、むしろハイリスク。投資する対象としても、働く職場としても、元気な中小企業のほうがよほど将来性がある」という——。

※本稿は、藤野英人『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。

■仕事とは“お金をもらえる学校”なのか

14歳の君は将来の夢を誰かに聞かれたとき、「資産家」なんて答えていたけれど、具体的なイメージは持っていなかったように思います。だから、将来に対して、漠然とした不安を抱えているかもしれません。

でも大丈夫。40年後の君は、こんなに楽しく仕事をして、素敵な仲間と家族に囲まれて暮らしているから、安心してほしい。

さて、その「仕事」だけれど、君はどんな印象を持っているでしょうか?

君とほぼ同い年の中学3年生、ちかこさんという子と話をする機会がありました。そのとき僕は聞いてみました。「仕事ってどんなイメージ?」と。

すると、ちかこさんはすごく興味深い答えを返してくれたんです。

「仕事は“お金をもらえる学校”に行くことだと思います」

なるほどなあと感じました。

藤野英人『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(マガジンハウス)
藤野英人『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(マガジンハウス)

少しだけ補足します。実は、この問いかけの直前にちかこさんは、あまり学校が好きになれない時期が長かったという話を打ち明けてくれていました。

中学1年生のとき、担任の先生が苦手で、通学するのが苦痛な時期があった。でも、3年生に進級する直前、新型コロナウイルスの影響で全国一斉休校になった。学校に通わず、自宅で自習する日が続くと、「学校に行くのはあまり好きじゃないけれど、勉強自体は面白いかも」と気づいた。だから、学校に行かなくても好きなように勉強できたらいいのに、と最近は思っている。

そんな話をしてくれていたので、この時点のちかこさんは学校に対してポジティブな気持ちを持っていないことがわかっていました。

■日本人の半数以上が勤め先の会社を「好きだ」と言えない

この流れを受けて、「仕事は“お金をもらえる学校”に行くこと」とちかこさんが表現したその意味をもう一度考えてみましょう。きっとこんな解釈ができると思います。

「学校は自分の意思にかかわらず、行かなければいけないところ。大人になって仕事をしにいく会社もきっとそう。でも、会社に行って働けば、お給料をもらえるからマシかもしれない」

少し偏った解釈になっていないだろうかと心配してちかこさんに聞くと、「そうです」と返してくれました。

そしてこれは、今の大人たちの大多数が抱いている「会社」のイメージとほとんど変わらないんじゃないか。僕はそう思っています。

つまり、会社とは、好きじゃない仕事を無理して頑張る場所で、給料とは苦痛に耐えていることへの「我慢料」。

残念なことに、日本の今の大人たちには「会社嫌い」を公言する人がとても多いことがわかっています。

ある団体が、世界の何カ国かの大人たちに、「あなたは、今働いている会社が好きですか?」と聞く調査をしたそうです。すると、アメリカ人は80%くらいの人が「好きです」と答えた。中国人も同じくらい。

ところが、日本人は40%くらい。半分以上の人が自分が働いている会社を「好きだ」と感じられていないなんて、ショックですよね。

■自分の気持ちよりも、世間の目を気にして選んでいる

この差はどうして生まれてしまったのか。

理由は簡単で、日本人は“我慢”しているのです。そもそも会社とは、好き嫌いで選ぶものではなくて、「将来にわたってお金の心配なく暮らせるかどうか」「有名かどうか」「人気ランキングの上位かどうか」で選んでいる人が少なくないのです。

今挙げた条件には、一つも“自分の気持ち”は入っていません。自分の気持ちよりも、世間の目を気にして選ぶから、当然、入社後にあまり面白いと感じられないことは多いはずです。でも、辞めない。これもきっと世間体が理由です。

「石の上にも三年」ということわざの影響でしょうか。なんとなく、「三年以内に会社を辞める若者はけしからん」という風潮もあります。

親からも説得されるようです。「ちょっとくらいつらいからって、辞めるなんて考えてはいけないよ。仕事とはそういうものだ。そのうち慣れるから頑張りなさい」と。

意地悪で言っているわけではありません。親世代も同じように“我慢”をしてきたので、それが普通なんですね。

きっと、アメリカ人や中国人が聞いたらびっくりするはずです。なぜなら彼らは「嫌になったらすぐ辞める」のが当たり前だから。

そう、なぜ彼・彼女らが日本人と比べて「会社好き」か、ピンと来ましたか? 嫌いになる前に辞めちゃうからですね。自分に合わないと思ったら、もっと好きになれそうな会社に移るという考え方が当たり前になっているのです。

■今いる会社は「385万社のうちの1社」を選んでいるだけ

よく考えてみたら、どの会社に入って、いつ辞めて、どの会社に入り直そうが、その人の自由なはずです。

学校に通っている間は、「3年間は同じ中学、高校に通うのが原則です」という共通認識が全員にあるけれど(だからといって絶対とも限らない)、会社の選択はもっと自由に考えていいのです。

今、日本にはいくつの会社があると思いますか? 答えはおよそ385万社です(『平成28年経済センサス』より)。

君が将来、学校を卒業した後、いつかどこかの会社に入ったとして、それは「385万分の1」の選択だということ。

たった一つの会社がしっくり来なくてもなんの問題もない。だって、日本の会社という選択肢だけでも、他にまだ385万社近くの候補があるということなのだから。さらに、海外の会社まで合わせるとすごい数になります。選び放題です。

つまり、僕たちはもっと自由に、好き嫌いで会社を選んだっていい。

いや、好き嫌いで会社を選ぶべきだと僕は思います。

■好きな仕事を選べば、日本全体も豊かになる

これは、日本という国が豊かになれるかどうかという大問題に直結する、真面目な提案です。

なぜなら、好きなことをやりながら、つらそうな顔をする人はいないから。君も身に覚えがあるはずですよ。好きなピアノの練習なら何時間でもできるのに、嫌いな大人の話は10分聞くだけで疲れてしまうでしょう?

この違いを仕事に置き換えると、「同じ時間をかけて、どれくらいの成果を出せるか」という生産性の違いになります。成果の違いは、それによってもらえるお金の金額の違いに反映されます。

ということは、みんなが好きな仕事を選ぶだけで、日本全体が稼げる金額は増えると期待できるということ。

だから、「好きで仕事を選ぶ」ことは決してわがままや自分勝手ではなくて、日本のためになるいいことなんです。

オフィスで談笑するスタッフたち
写真=iStock.com/imtmphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imtmphoto

稼ぐことも大事だけれど、何よりも好きな仕事のほうが楽しいに決まっています。

好きな仕事を選んで、同じく好きな仕事を楽しめる仲間たちとワクワクしながら毎日を過ごす。嫌いな仕事をして我慢料をもらうのではなく、好きな仕事をして、人に喜んでもらって、報酬をもらう。

君にはぜひそんな人生を送ってほしいのです。

■日本の不況時に7割の企業が株価上昇を記録

僕は「ベンチャービジネスの創り方」をテーマに、大学で講義を行っています。誰もが知っている、偏差値が高い有名私立大学です。

あるとき、講義が終わった後に学生から提出してもらったレポートに、こんなことが書かれていました。

「藤野先生、どうして僕たちに起業家になることやベンチャー企業に就職することを薦める講義をするんですか? 僕たちは○○大学の学生なんだから、大企業に就職できるのは確実なのに。わざわざハイリスクな道を薦める意味がわかりません」

彼は、きっと本気で、僕を不親切な先生だと思ったのでしょう。でも、僕は本当に彼にとって有益な情報と知恵を与えるつもりで講義をしていたのです。

どういうことか、説明しましょう。

まずはクイズです。

株式市場に上場している会社のうち、2002年から2012年までの10年間で株価が上昇した会社はどれくらいあったでしょう?

(1)20%
(2)30%
(3)70%

答えてもらう前に、一つ補足します。2002年からの10年間は日本が長引く不況で苦しんでいた時期です。

「ボーナスカット」、「派遣切り」といった穏やかではない言葉がニュースで連呼され、その前の10年間も含めて「失われた20年」などと呼ばれていました。

そういった背景から、このクイズを出すと、答えは大体(1)か(2)に集中します。不況だったというイメージのせいでしょう。

ところが、答えは(3)。なんと7割の企業が株価上昇を記録していたのです。

■一方、日本を代表する大企業の株価は低迷

しかも、株価を上げた企業のうち7割については、10年間で株価が2倍以上、利益も2倍以上になっています。

ざっくりと、利益とは「儲け」のことで、株価とは「会社の実力と人気を反映した世の中からの評価」だとイメージしてください。

7割の7割だから、全体のほぼ半分。

つまり、「失われた」と言われてきた2002年から2012年の10年の間に、日本の上場企業のうち7割が成長していたし、5割の企業が利益も株価も2倍以上伸ばしていたということ。素晴らしい成長ですよね。

次に、今説明した「日本の上場企業」の内訳を会社の規模ごとに見てみましょう。

実は、大型株=大企業の数は全体の4%しかないんですね。

残りの96%は、中小企業。10年間で成長していた企業のほとんどが中小企業だったことがわかります。ちょっと意外ではありませんか?

では、大企業はどうだったのでしょうか。

東証一部上場企業のうち、特に時価総額と流動性の高い企業30社の株価の値動きを示す「トピックス・コア30」を見ると、2012年までの10年間でなんとマイナス24%! こっちは悲惨ですね。一体、どんな企業がこんなに成績を下げてしまったのでしょう。2012年10月末時点の「トピックス・コア30」を構成する企業は次の30社でした。

日本たばこ産業、セブン&アイ・ホールディングス、信越化学工業、花王、東芝、武田薬品工業、アステラス製薬、新日本製鐵、小松製作所、日立製作所、パナソニック、ソニー、ファナック、日産自動車、トヨタ自動車、本田技研工業、キヤノン、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱商事、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、野村ホールディングス、東京海上ホールディングス、三菱地所、三井物産、KDDI、日本電信電話(NTT)、NTTドコモ、東日本旅客鉄道(JR東日本)、ソフトバンク

一度は聞いたことがある、それどころか、日本を代表するコア中のコア。就職希望の上位ランキングに入る大企業ばかりですよね。

■大企業に入れば安泰どころか高リスク

しかし、「失われた」と言わせる元凶はこの大企業にあったと言わざるを得ません。

僕たちは「大企業は儲かっていて、中小企業は貧乏」というイメージを抱きがちですが、少なくともこの10年間において事実はそうではないことがわかります。さらに、2012年末から2020年8月までのデータを見ると、いわゆる「アベノミクス」以降も、株式市場を牽引してきたのはやはり中小企業なのです。

大企業に入れば安泰、とは本当でしょうか?

むしろ高リスクなのは大企業のほうなのかもしれません。

僕は投資する対象としても、働く職場としても、元気な中小企業のほうがよほど将来性があると考え、大学生にも魅力あるベンチャー企業の存在を伝えているのです。

興味があったら、パッと目についた企業の株価を調べてみてください。意外な成績が見えてくるかもしれませんよ。

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藤野 英人(ふじの・ひでと)
レオス・キャピタルワークス 会長兼社長・最高投資責任者
1966年富山県生まれ。1990年早稲田大学法学部卒業。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。JPXアカデミーフェロー、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師。一般社団法人投資信託協会理事。

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(レオス・キャピタルワークス 会長兼社長・最高投資責任者 藤野 英人)

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