「サラリーマンの副業は確実に稼げない」それを裏付ける残酷な事実
プレジデントオンライン / 2021年5月15日 11時15分
※本稿は、森永康平『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)の一部を再編集したものです。
■「副業元年」から3年がたったけれど…
世の中の多くの人は会社で働き、その対価として給料をもらっています。
しかし、昨今は副業を認める会社も増えつつあり、1つの会社からだけ給料をもらうのではなく、複数の会社から給料をもらう人も増えてきています。
この副業ですが「副業元年」といわれた年があります。みなさんはいつかご存知でしょうか?
それは今から3年前の2018年です。2017年3月に「働き方改革実行計画」が決定され、2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表したことより、大手企業をはじめとして様々な企業で副業が解禁されたため、そのように呼ばれています。
■渋谷区の「副業募集」には応募692人で採用11人
私の知人のAさんも本業を持ちながら副業で収入を得ている一人です。
Aさんは元々、デザイナーとしてウェブサイトのデザインなどの仕事を手掛けていました。しかし、スマホ向けアプリやウェブサイトの開発ができたほうが給料が上がるということで、デザイナーをしつつ開発に関する知識を独学で身につけ、数年後にはエンジニアとしてウェブサイトの開発会社に転職をしました。
仕事にも慣れ始めて、時間もうまく調整できるようになったころ、今度は個別に簡単なデザインの仕事を頼まれることが増えてきたため、会社に申請したうえで個人事業主としてデザインの仕事を副業にしたといいます。
現在、新型コロナウイルスの感染拡大で、将来的な不安やテレワークの働き方の変化で、Aさんのように副業を始める人も増えてきているといいます。
また、最近では、渋谷区がスタートアップの支援や誘致を進めるため副業人材を募集。692人の応募があり、その中から11人の採用が決まったことが話題にもなりました。
■日本の副業ワーカーはどれぐらい?
このように段々と広まってきた感のある副業ですが、実際に日本ではどれぐらいの人が副業をしているのでしょうか。
副業マッチングサービス最大手のランサーズが発表した『フリーランス調査2020年版』によれば、日本のフリーランス人口は1034万人となっています。
また、そのフリーランスには4種類あるとされ、その内訳も発表されています。
常時雇用されているが、副業としてフリーランスの仕事をこなす「副業系すきまワーカー」が409万人。
雇用形態に関係なく2社以上の企業と契約ベースで仕事をこなす「複業系パラレルワーカー」が281万人。
特定の勤務先はないが独立したプロフェッショナルである「自由業系フリーワーカー」が56万人。
個人事業主・法人経営者で、1人で経営をしている「自営業系独立オーナー」が289万人。
ここで取り上げる副業は(1)の「副業系すきまワーカー」ですが、「いまもらっている給料より、もう少しお金が欲しい……。会社の許可さえあればやってみたいな……」そんなふうに思っている人は多いことでしょう。
■「副業系すきまワーカー」が得ている平均年収
そこで気になるのが実際の収入です。みなさんも「副業でいくら稼げるのか?」は気になりますよね。では、ちょっと意地悪なようですが、クイズで考えてみましょう。
先ほど挙げた、副業系すきまワーカーの人たちが、副業で得ている平均年収はいくらぐらいでしょう? いきなりそういわれても、どんなものか全くイメージがつかないという人のために三択問題としましょう。
1.38万円
2.63万円
3.116万円
いかがですか?
ちなみに、ランサーズの先ほどの調査で副業系すきまワーカーの性別を見てみると、男性が60%、女性が40%とそこまで性別によって偏りがあるわけではありません。
しかし、年齢構成比を見てみると20代、30代が半分近くを占めており、比較的若い人たちの間で副業が浸透していることがわかります。
では、クイズの答えはどうでしょうか?
正解は(2)の63万円です。
この数字を見て、「そんなものか」と思った人、「意外と稼いでるんだ」と思った人、様々にいると思いますが、私は後者でした。
国税庁が発表した「令和元年分 民間給与実態統計調査」によれば、給与所得者の1人当たりの平均給与は436万円です。それから考えると副業で得られる収入の63万円は大体2カ月程度の所得が増えていることになるのです。
■全体の55%は副業の年収10万円未満
こう聞いて、自分も副業を始めようと思った人もいるかもしれません。しかし、安易な決断は避けたほうがいいでしょう。
なぜならデータを読み解く際に、平均値という考え方は非常に便利なものですが、時として事実を大きく見誤る可能性もあるからです。図表1を見てください。
たしかに「副業系すきまワーカー」の平均年収は63万円です。
しかし、グラフを見ると全体の55%の人は10万円未満の年収であることがわかります。
これは一部の「副業系すきまワーカー」が多く稼いでいるため、結果として平均値が引き上げられているだけで、データから読み取れる事実は副業をしたところで半分以上の人は10万円も稼げないということです。
■安易に決断して後悔する人もいる
10万円でも余分に稼げるならいいじゃないかと思う人もいるかもしれませんが、私の周りには安易に副業を始めて後悔している人もいます。
副業とはいえ、お金をもらって仕事をする以上、仕事の依頼主からすればそれが本業か副業かは関係なくしっかりと結果を求められます。副業だから適当にやっていいという依頼主などいないでしょう。
こうなると本業もしっかりとやりつつ、副業にもリソース(時間と労力)を割かないといけません。本業がヒマだから副業を始めたものの、副業で仕事を受けた瞬間に本業が忙しくなるということもあります。
その結果、本業の仕事の質が下がり、給料を上げてもらえなかったなどということも起こり得ます。
副業という選択肢を持つこと自体は素晴らしいことではあるのですが、本業があっての副業であるということを忘れてはいけません。
大事なのは自分が将来どのように収入を得ていきたいかです。
ですから、まずは日々の仕事にしっかりと取り組み、そのうえで「副業」が必要であるならば選択肢として考え、始めてみる。そのようなスタンスが大事なのではないかと思います。
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経済アナリスト
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとしてリサーチ業務に従事。その後はアジア各国にて法人や新規事業を立ち上げ、現在は株式会社マネネCEOほか複数のベンチャー企業のCOOやCFOを兼任。日本証券アナリスト協会検定会員。著書に『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』『いちばんカンタン つみたて投資の教科書』(いずれもあさ出版)や父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(KADOKAWA)、『MMTが日本を救う』(宝島社)などがある。
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(経済アナリスト 森永 康平)
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