「社員48人中23人が一斉退職」倒産寸前の住宅会社が社員78人に大復活するまで
プレジデントオンライン / 2021年5月23日 11時15分
■コロナ禍でも「前年比191.1%」の離れ業
ウッズカンパニーは、鳥取県倉吉市に本社を置く住宅会社です。1994年の創業ながら、鳥取県では2015年から4年連続で棟数No.1ビルダーであり、鳥取県内のシェア率は7.2%。お客様の予算帯別に複数のブランドを提案する、鳥取県の地域一番企業です。
同社のそうした勢いは、新型コロナ禍においても変わらず、新築注文完工棟数は前年の68棟から130棟にアップ。前年比191.1%を達成するという離れ業をやってのけました。
その歴史の中では、新規エリア出店に伴う戦略転換や、右腕であった副社長が社員の半分を引き連れて独立、社員数が半減してしまったという大きなターニングポイントもありました。こうした会社の転換点に、どのように対処し乗り越えていったのか。ポイントをお伝えします。
・総合展示場戦略の推進
・右腕の副社長の独立と人材戦略の転換
<企業データ>
代表取締役社長 谷本弘樹氏
本社所在地 鳥取県倉吉市
売上:17.3億円(2019年度)
社員数:78名(2020年6月)
■飛躍のターニングポイント①:総合展示場戦略の推進
第一のターニングポイントは2015年。同年に同業他社のハートホームとの合併を実施したことを受け、本社から50km離れた鳥取市にも店舗を持つことになりました。
倉吉市から鳥取市は距離が遠いこともあり、その当時鳥取市内での同社の知名度は芳しいものではありませんでした。集客のために実施したチラシなども思ったほどの反響・集客が実現せず、当初は年間15棟受注と苦戦が続く状態だったのです。
そうした現状を打破するために取り組んだ一手が、総合展示場戦略です。総合展示場戦略とは、複数のブランドを自社のみの総合展示場で展開する施策を指します。
これは、鳥取県内に総合展示場がないという地域特性や、ウッズカンパニーが複数のブランドを有していたこと、採用上の優位性などを加味して推進されました。
そして、この施策は、集客力・企業価値双方に大きなインパクトを生み出します。同社の総合展示場である鳥取ハウジングプラザは、2019年4月からの1年間で集客件数582組、契約棟数47棟、契約率8%。売上額11.6億円、粗利3.4億円、営業利益1.8億円と破格の実績となりました。
そして契約棟数47棟のうち21棟の受注を新卒だけで生み出したのも特筆すべき点でしょう。
■自社総合展示場のヒットを根幹で支える商品戦略
こうした総合展示場戦略がヒットした背景に、販促集客施策が的確だったことがあります。エリア最大級の展示場を用意し、集客媒体はポスティングチラシを使用、完成見学会・イベント集客を実施することに注力しました。
結果、鳥取で家づくりを考え始めたお客様に「あそこの展示場が大きいからとりあえず行ってみようかな」と一番初めの来場を取り切ることができたのです。
けれども、そうした販促集客面以外にも、緻密な商品戦略が存在することも見逃せません。ポイントは、家づくりを考え始めたお客様の中でも、顧客ターゲットを「土地なし×価格重視×性能重視」の客層に絞ったこと。
このターゲットがウッズカンパニーが最も得意とする客層なわけですが、この客層から逆算して商品が開発され、販売・営業施策も練り上げられているのです。
具体的には、ウッズカンパニーは、価格帯別に、2000万円~の桧家住宅、1700万円~のハートホーム(ココママの家)とサクリエ、~1500万円のウッズハウスと複数のブランドを展開しています。
鳥取ハウジングプラザにおいては、全てのブランドを展示はしているのですが、販売する商品は最も得意なハートホーム(ココママの家)を基本としているのです。
エリアトップクラスの集客装置を有し、その中で最も得意とする価格帯の商品の良さを展示場で体感し、伝え切る。そうしたお客様の欲しいものを売る仕組みをエリアで最も磨き上げている以上、エリアダントツ一番を達成できたのは必然と言えるかもしれません。
■飛躍のターニングポイント②:右腕の副社長の独立と人材戦略の転換
第二のターニングポイントは2018年。
右腕であった副社長が社員の半分を引き連れて独立し、48人だった社員が25人まで減ってしまったという人事面での危機が挙げられます。
住宅業界においては、構造的に短期の売上や数字を追いかけがちであり、部門によってはどれだけ働いても給与が増えないといった不満が上がることも少なくありません。
今まで隠れていたマネジメント面の課題が、多くの社員の退職という形で噴出したのです。ここで、谷本社長は、経験豊富な社員でなくとも数字を作り上げられる体制づくりを進めるべく一気に舵を切ります。
即戦力となる営業経験者の中途採用が主体だった採用・育成・定着の方針を転換、0から社員を育てる決断をし、新卒採用を積極的に行って育成に注力するようになったのです。
そして、採用・育成・定着のための注力点も徹底して絞り込みます。具体的には、①切磋琢磨しあえる環境の整備、②ペア営業で接客量を上げる、③成長の道筋とゴールを明確化する。この3つです。
そして、絞り込んだこれらの点に対して、①の環境整備に関しては会社側がツールやマニュアル、研修制度を設ける。②の接客量アップに関しては、先輩営業を新卒営業とペアにさせロープレとOJTを並走させる。③のゴール設定に関しては、月・週・日ベースでの目標進捗管理を徹底するなど、きめ細かく会社を変革させていくのです。
■コロナ禍でも業績は前年比約2倍
この判断は正に慧眼で、1年ほどで新卒社員が戦力化。2020年度の新築注文完工棟数は前年の68棟から130棟にアップし、うち新卒1年目が31棟を受注しました。全社売上の約24%を新卒1、2年目が売り上げるまでになりました。
やるべきこと、やったほうが良いことに対して、ポイントをきめ細かく徹底することができる社風こそが、同社の本当の強さなのかもしれません。
事業計画に基づき、採用・出店計画の実施を行って売上・利益の最大化にチャレンジを続けるウッズカンパニー。副社長が社員の半分を引き連れて独立した際は、倒産の危機にも瀕したことでしょう。こうした危機があっても、岡山にエリアを拡大する、新人を戦力化する体制を整備するなど不屈の取り組みで逆境をはねのけています。
今後の中期の目標は、鳥取県住宅ビルダー圧倒的1位と岡山県でのシェア拡大。ゆくゆくは年商100億円と上場を達成し、鳥取県をより良くしたいと谷本社長は語ります。より高く、より大きな目標実現に向け同社の挑戦は続きます。
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(船井総合研究所 社長online)
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