「米中対立が激化で経済環境が悪化」日本人が資産を守るためにまずやるべきこと
プレジデントオンライン / 2021年5月20日 13時15分
■アメリカの対中政策はより強硬に
「プレジデント ウーマン」2020年秋号で奥山真司氏は、「国際情勢は猿山と同じ。パワーの強いボス猿にナンバー2の若頭がかみついては蹴落とされています。現在のボス猿はアメリカで若頭は中国だが、リーマン・ショック後、ボス猿は若頭にその地位をおびやかされています」と教えてくれた。
その後、ボス猿の地位を守り続けているアメリカは、強硬派だったトランプからバイデン政権へと移った。若頭である中国に対するアメリカの政策はどう変わっているのか。
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アメリカの対中政策はバイデン政権になって、より厳しく、そしてより組織的になりました。バイデン政権が誕生したときは、識者の間では「民主党だし、これからはお手柔らかに行くのではないか」「気候変動やSDGsなども踏まえて、是々非々でやって行くのでは?」という見方が強かったわけですが、いざ蓋を開けてみると、予想以上に中国に対して強硬姿勢で対応しています。これはちょっと驚きでしたが、一番驚いていたのは当の中国自身だったのではないでしょうか。
具体的には「ジオエコノミクス」の戦略が始まったこと。ジオエコノミクスとは、経済を武器に地政学的な問題を解決しようという「地経学」のことです。また経済の「デカップリング」に対しても、アメリカはやる気を見せています。デカップリングというのは、二つが連動している「カップル」の反対で、「離れる」という意味です。つまり、ここで経済的に中国を引き離して競争に勝ちたい。バイデン政権は経済力で中国に戦いを挑む方向で進んでいるのです。
また人権や価値観といったことに、大きくフォーカスしているのもバイデン政権の特徴です。中国による新疆ウイグル自治区のウイグル人への人権弾圧を「ジェノサイド」と認定し、強く批判しています。
というのは、バイデン政権の閣僚にはユダヤ系が多く、特に国務長官のアントニー・ブリンケン氏は、過去に身内がナチスドイツに迫害されたというユダヤ系なので、ことさらに人権やジェノサイドに敏感であることは間違いありません。個人の心情がどこまで伝わるかわかりませんが、ブリンケン氏のような人権派がいると、バイデン政権としても、そこは無視できない動きになってくるでしょう。
この人権弾圧はアメリカだけでなく、欧州連合(EU)の対中関係も悪化させています。2020年末、EUは中国と投資協定を結ぶことで、大筋合意したにもかかわらず、この人権弾圧が足かせとなって批准に至っていないのです。世界的に見ても、中国の人権や価値観に対する問題は、スムーズな経済関係を止めているといえます。
とにかく民主主義と権威主義の対立が強まっていることが、トランプ政権から変わらなかった点というより、むしろ予想外に大きく変わった点でしょうね。
■米中のはざまで日本はどう振る舞うべき?
現在の日本は、ビジネスは中国、安全保障はアメリカと、米中のはざまでそれぞれに依存していますので、その中間でうまくやっていくしかありません。
アメリカやヨーロッパが人権、価値観と言っているところに、ユニクロの柳井正会長兼社長は「政治的に中立」とコメントを控えましたが、日本としては、もうそうするしかない。
![ニホンザル京都](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/1/670/img_512dc63c98055db5de34f380a85762281722566.jpg)
「人権に配慮します」といった瞬間に、中国で排除されたH&Mの例もあります。日本がそうなると非常につらい。だから頭を隠した「ダック」という状態で、噂が収まるのをやり過ごすしかないでしょう。
一方で、日本がますます経済的に中国に寄る流れもあります。楽天が中国のテンセント系の会社から出資を受ける、メルカリがアリババグループの会社と連携する、といったことは象徴的な出来事ですね。
こういった日本の状況に対して、アメリカは「もうちょっと中国と離れろよ」とけしかけてくるでしょう。そこで日本政府は、アメリカに見逃してもらうのか、マーケットをインドや東南アジアに求めていくのか、その決断をここ2~3年のうちに迫られるでしょう。
そのときに日本国内の世論は必ず沸騰するはず。1960年代の学生運動のようなことが起きることが予想されて、僕としては心が重いのですが……。日本政府がしっかりと守ってくれることを望むばかりです。
■賃金は下がっているのに物価は上がっている
米中対立が激しくなると、私たちの生活にも影響が出てきます。経済的にちょっと苦しくなります。アメリカが中国のマーケットを締めつけることで、中国で安く生産できなくなるからです。
実はコロナ禍になって、物の値段が非常に上がっていることをご存じですか。最近、チョコレートやクッキーなどのお菓子の中身が少なくなっていることに気づいている人も多いかもしれません。そう、これは値段を据え置きにして、個別包装などで中身を減らして価格の上昇を吸収しているのです。
![キャンディー、チョコレート、スイーツ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/a/670/img_fafbd158b1691fd99e1f909ddb7d2c6c1753120.jpg)
その原因は、コロナ禍で人の動きが制限されて、作物の生産や物流がうまくいかなくなったことに加えて、気候変動による災害や豚インフルエンザなどの影響が考えられます。
これまで日本はデフレ、デフレといわれてきましたが、実は今はインフレというか、スタグフレーション。賃金が下がりつつあるところに、物の値段は上がっているので、経済的に厳しい状況が目の前にきています。
ですから今、私たち個人レベルでできることは、資産をうまく分散させることです。一時金などで貯金ができるようになった人も多いと思いますので、株を買う、暗号資産に変えるなど、うまく物の価値を逃すことをおすすめします。
ユダヤ人はいざというときは、手に持って逃げられるようにするため、必ず宝石を持っています。今ならロレックスなど高級時計を持つのもいいかもしれません。現在高騰しているとは言え、日本のロレックスの値段は世界的に見るとまだまだ低水準といわれていますから。
いずれにしても、これから米中対立が激化すると、お金の価値が下がる可能性があります。そういう危機感を持って、みなさんには、ぜひ資産防衛をしてほしいですね。
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地政学・戦略学者
戦略学Ph.D.(Strategic Studies)。国際地政学研究所上席研究員。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士に師事。近著に『サクッとわかるビジネス教養 地政学』(新星出版社)がある。
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(地政学・戦略学者 奥山 真司)
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