なぜかいつも「声がかかる人」が、お礼を言われた直後にする"ある質問"
プレジデントオンライン / 2021年5月24日 11時15分
※本稿は、高橋浩一『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。
■大事な場面では他人に決定権がある
人から必要とされる成功体験を重ねて「声がかかる」ようになると、人生の選択肢が広がります。誰しも仕事をしていれば、「声がかかるようになりたい」という気持ちはあるはずです。しかし、すべての人の希望が叶うわけではありません。
突然ですが、この中で、自分が望んだ通りに必ず決まるできごとはありますか。
●自分の望む相手と結婚する
●自分の住みたい部屋を賃貸で借りる
就職・結婚・住まい選び……。どれも、人生に影響を与えるイベントです。ここで、私たちが認識しておくべき現実があります。それは、「人生の大事な場面では、どんなに自分が望んでいたとしても、最終的には他人に決定権がある」ということです。自分を必要とするかどうかを決めるのは、「他人」なのです。
●どんなにこの人と結婚したいと思っても、結婚を承諾するかどうかを決めるのは相手
●どんなにこの部屋に住みたいと思っても、賃貸で貸すかどうかを審査して決めるのはオーナー
高望みをせず、何かを妥協すれば選択肢は他にもあります。しかし、人生の大事な場面で、自分にとっての「理想」がはっきりしていたら、やっぱりそれは実現したいですよね。
■「人の心が動く瞬間」に詳しくなる
強く望んで努力をしても、決定権が相手にある場合は、受け入れてもらえなければ事が決まりません。報われない可能性もあるという現実を私たちは認識しておく必要があります。
あなたに声がかかるということは、裏に必ず「声をかける人」がいるわけです。その人のアクションをあなたが直接コントロールすることはできません。人から声をかけられるためには、相手の心を動かす必要があるのです。
自らの意思だけでは決まらない構造を正しく理解した人が、自分の希望を叶えられます。
「人の心を動かす」というと、ハードルの高さを感じるかもしれません。
「私はそこまで今の会社で評価されているわけじゃない」
「仕事ができる人は、自分と別の世界にいる気がする」
しかし、私が伝えたいのは、そう難しいことではないのです。
■なぜ相手の心が動いたのか
どんな場面であれ、自分に対してOKの返事をもらえた場合、それはどこかで相手の心が動いたということです。
人生それなりの年数を生きていれば、相手が喜んでくれたり、OKの返事をくれたりという経験が大なり小なりあるでしょう。たとえ第一志望の企業でなかったにせよ、入社できたということは、採用面接官の心を動かしたということです。
また、就職や結婚、引っ越しといった、数年あるいは数十年に1度のイベントでなくとも、日常生活でのささやかなできごとなら、身に覚えがあるはずです。
人から「ありがとう」と言われたり、仕事でちょっと褒められたり、家族や友人に喜ばれたり……。「相手の心が動いた瞬間」の直前には、「あなたが相手の心を動かした、何らかの行動」があります。
例えば、こんなできごとがあったとします。
会社の定例会議が終わった後、進行役の人から「今日は助かりました。ありがとうございます」と言われた。
感謝のコメントをもらうと嬉しいですね。たしかに、あなたには「今日の会議では、積極的に参加できたという思いがあった」とします。さて、進行役の人は、何に「ありがとう」と言ったのでしょうか。
●発言が少なくなった場面で、沈黙が生まれないように、自分から発言した
●手元のPCでメモをとっていたので、会議が終わる前に、「メモを皆さんに共有しましょうか」と申し出た
■「具体的に」聞いてみる
「積極的に参加していた」から?
多くの方は、このぐらいの感覚で捉えます。しかし、「積極的な参加」というのは、あいまいな言葉です。次回、もし同じように会議があったら、具体的にどんな行動をすれば、もっと喜んでもらえるのか、知っておきたいところです。
仮に、「ありがとうございます」と言ってくれた方に対して、このように聞いてみたら何が起こるでしょうか。
「そんなふうにコメントいただいて嬉しいです。ちなみに、具体的にはどの場面で『助かった』と思われたのですか?」
ここで、想定外の答えが返ってくることがあります。
「会議が終わる前に、次回の日程だけ決めておきませんかと言ってくれて、すごく助かったんですよ。参加者が多いと、次のステップが決まらなくて、ぐだっとしてしまうことがよくあるので……」
なるほど、そういうのがありがたいのか! でも、本当にそんな一言がよかったの?
疑問に思ったあなたは尋ねます。
「そんな一言にインパクトがあったのですか?」
「ええ、皆さん忙しいので、調整がすごく大変なんです。それに、あのメンバーだと、皆が思ったことを言ってくれないので、進行役としてもなかなか感触がつかめていなくて」
ここで大事なのは、「自分が予想していた場面とは違うところで、相手の心が動いていた」ということです。
■想像とは違うところで相手の心が動いている
人の心を動かすのが難しいと感じるのは、あなたの人間力やスキルが低いからではありません。努力していないからでもありません。「いつ、どんなふうに人の心が動くのか」に関する情報が足りないからなのです。人の心がどう動くのかに詳しくなるほど、報われないことは減っていき、自分の希望が叶うことが増えていきます。
もし、あなたが誰かから「迷った末にOK」をもらえたできごとがあったら、それは大チャンスです。迷った上であなたにOKを出したということは、心が動いた場面について、強い記憶や印象が残っているはずだからです。
相手にこんなふうに聞いてみましょう。
「(途中、迷うこともあったと思いますが)心が動いた瞬間はどのタイミングですか?」
「タイミングを聞く」というのは、変わった質問に思えるかもしれません。多くの人は、相手に対して「理由」を尋ねます。
「なぜ選んでくれたのですか」「なぜ選ばれなかったのですか」といった質問です。ただ、理由を聞かれたとき、多くの人は感覚的に答えがちです。
「ピンときたから」「何かよさそうだったから」。こういった言葉では、実際のところ何が心を動かしたのかがつかめません。次は何に対して頑張ったらいいのかがあいまいなままですよね。
■「場面」や「タイミング」も聞いてみる
「理由」を聞いて、そこでなんとなくわかったつもりになってしまってはいけません。
私がお勧めするのは、理由だけでなく、「場面」や「タイミング」を聞くことです。場面やタイミングまで踏みこんで聞くと、客観的な情報が得られます。それによって、次の行動につながるヒントが得られます。
例えば、採用するかどうかを迷う会社が面接で採用してくれたのであれば、「心が動いた瞬間はどのタイミングですか?」という質問に対して、「実は面接終わり際のあいさつがとても好印象で、心が動いた」と返ってくるかもしれません。あなたが「自己PRが響いたのでは」と思っていたとしたら、予想と違うところで相手の心が動いていたことになります。
また、結婚を承諾するかどうかを悩んだ末、相手が受け入れてくれた場合、同様に聞いてみたら、「実は食事の際のふとした会話で、心が動いていた」ということもあります。サプライズのプロポーズにグッときたと思っていたのに、決定的瞬間はそこだったのか……という気づきがあります。
相手の心がどう動いたのかは、聞いてみないとわからないのです。実際に確かめてみると、多くの場合、自分の想像と違うところで心が動いていることがわかってきます。
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TORiX株式会社 代表取締役
東京大学経済学部卒業。外資系戦略コンサルティング会社を経て25歳で起業、企業研修のアルー株式会社へ創業参画(取締役副社長)。1日100件のテレアポ新規開拓や数十人の営業組織をゼロから作るなど、同社上場に向けた足がかりを作る。2011年にTORiX株式会社を設立し、代表に就任(現職)。上場企業を中心に50業種3万人以上の営業強化を支援。行動変容を促す構造的アプローチに基づき、年間200本の研修、800件のコンサルティングを実施。8年間、自らがプレゼンしたコンペの勝率は100%を誇る。主な著書に『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』『無敗営業 チーム戦略』(ともに日経BP)、『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)など。
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(TORiX株式会社 代表取締役 高橋 浩一)
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