「内臓脂肪は15日で劇的に減る」ぽっこりお腹をへこませる基本ルール
プレジデントオンライン / 2021年5月28日 11時15分
※本稿は、池谷敏郎『15日間でお腹が凹んでリバウンドなし 名医のお腹やせ』(KADOKAWA)を再編集したものです。
■診察室で「太りました」とため息をつく患者たち
コロナ禍で、私たちの日常は大きく変わりました。仕事はリモートワークが中心に。不要不急の外出は憚(はばか)られ、友人との歓談や人脈を培う交流会、音楽、美術などアートシーンに触れる機会も激減です。引きこもりがちな日々の楽しみは、どうしたって「食べること」。私の診察室を訪れる患者さんの多くが「太りました」「お腹がぽっこり出てきました」とため息をついています。
肥満の原因はとてもシンプルで、食べ過ぎと運動不足によるエネルギー過多です。
私にも肥満の黒歴史があり、36歳のころ体重79kgの最大値を記録。身長は173cmですから堂々たるおじさん体型で、流行の服など似あうはずもありません。そこで一念発起し、15kgのダイエットに成功。以来59歳の今まで、体重、内臓脂肪、血管年齢とも当時のままを維持してきました。体調がベストなら、仕事のパフォーマンスが上がり、人生を前向きに楽しむことができます。
メタボリックシンドロームと診断される人が急増する昨今、地域医療を担う医師として、ダイエットの指導も大切な仕事です。そこで考案したのが「池谷流お腹やせメソッド」。ゆる糖質オフと、ゆる運動の組み合わせで、誰でも無理なくずっと続けることができます。今回はその概要をご紹介しましょう。
■40代半ばからぽっこりお腹は加速する
体に蓄積される体脂肪は、主に「皮下脂肪」と「内臓脂肪」に分けられます。ぽっこりお腹の元凶は、皮下脂肪に加え、腸を支える腸管膜周辺にべっとりたまる内臓脂肪です。医学的には「内臓脂肪型肥満」と呼ばれ、男性なら腹囲85cm以上、女性は90cm以上の方が該当します。
体脂肪のもととなる主な食品は、牛肉、豚肉、バターなどに含まれる動物性脂肪。ご飯やパン、イモ類、甘いお菓子などの糖質も、摂り過ぎると体内で脂肪に変換され蓄積します。
若いころは女性ホルモンと男性ホルモンが、血液中の脂肪やコレステロール値を適度に保ちつつ、体脂肪を皮下脂肪へと誘導するため、太るといっても全身ふっくらタイプにとどまります。ところが男女ともに性ホルモンが低減する40代半ばからは、過剰な脂肪は一気に内臓脂肪に。ぽっこりお腹が加速します。
■ぽっこりお腹は、生活習慣病の温床
脂肪細胞には、エネルギーの貯蔵庫となるだけでなく、ホルモンのような物質を分泌する働きがあります。たとえば健常な脂肪細胞は、アディポネクチンという動脈硬化を防ぐ物質を産生。しかし過剰に増殖し丸々太った内臓脂肪は、このアディポネクチンを十分に作れなくなる上に、血圧を上げる、糖の代謝機能を悪くする、血液中で血の塊を作りやすくするなどの悪玉物質を続々と放出します。
これらは血管の老化を早め、高血圧、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化、さらに脳梗塞や心筋梗塞などの生活習慣病の誘因です。また肥満はさまざまな臨床データから、がんと認知症の発症リスクを高めることもわかっています。
■「ゆる糖質オフ」で食生活を上手に改善
ご飯やパン、麺類を主食とする日本人の食生活は、炭水化物(糖質と食物繊維が合わさったもの)が50~60%を占めるとされます。したがって適度な糖質制限は手軽な上に、栄養バランスを崩しにくいダイエット法と言えます。私がすすめる「ゆる糖質オフ」のアプローチ法は大きく分けて次の2つです。
(1)糖質の摂取量をざっくり半分に減らす。
(2)糖質の吸収を抑える食べ方を覚える。
(1)の実践法は、まず主食を半分に減らすこと。目分量でかまいませんからご飯はお茶碗半量盛り。トーストは2枚だったら1枚に。麺やパスタも同様です。甘いお菓子は、1週間単位で半減を目指します。量を減らす、回数を減らす、食べていい「楽甘日」と我慢する「休甘日」を分けるなど工夫してください。半分で効果が乏しいようなら、さらに半分に減らします。
■ご飯類は食事の「仕上げのひと口」にする
(2)は「インスリン」の過剰分泌を防ぐことが目的です。インスリンとはすい臓で作られるホルモンで、食事で摂った糖質を体がエネルギー源として代謝できるよう、サポートします。さらにもう1つ、インスリンには余った糖質を脂肪に変える働きがあるため、内臓脂肪を増やしていきます。このため別名「肥満ホルモン」と呼ばれるほど。糖質の吸収を遅らせ、インスリン分泌をコントロールする食事法を覚えておきましょう。
![池谷敏郎『15日間でお腹が凹んでリバウンドなし 名医のお腹やせ』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/f/200/img_8ffcacbe1ebda5cdd20f1d27a3e4a4ae182937.jpg)
まず、食物繊維が豊富な野菜の副菜から食べること。人間は食物繊維を消化吸収できないので、胃腸に長くとどまり、糖質や脂質の吸収を抑制してくれます。次に肉や魚の主菜。タンパク質も糖質の吸収を阻害する作用があります。ご飯類は最後。仕上げのひと口にいただきましょう。
3食規則正しく食べることも大切。食事と食事の間が空くと、インスリンの分泌は活発になります。
ゆっくりよく噛んで食べることも心がけて。食事を始めて15~20分ほどたち、血液中の糖の値(血糖値)が上がり始めると、内臓脂肪から食欲を抑えるホルモン「レプチン」が分泌され、脳の摂食中枢は満腹を感じます。早食いの男性に大食い&肥満の方が多いのは、満腹感を得る前にたくさん食べてしまうからでしょう。
清涼飲料水やスポーツ飲料のガブ飲みも控えてください。水に溶けた糖質は小腸からすばやく吸収されます。コーヒー、紅茶も無糖が原則です。
■内臓脂肪は短期間で減らせる
こんな簡単なゆる糖質オフで、お腹が凹むのか? と思われる方も多いでしょう。実は内臓脂肪は代謝が盛んで「つきやすいが落としやすい」という特徴があります。私がかつてダイエットを成功させたときのデータもあり、皮下脂肪に比べ、内臓脂肪は15日間で大幅に減っていきました。
ズボンのベルトで言えば“ひと穴”というところ。
また、内臓脂肪はインスリンの糖代謝機能を阻害する悪玉物質を放出しているため、血糖値を上げる原因の一つになっています。医師に高血糖、あるいは糖尿病の診断を受けている方は、ぜひこのゆる糖質オフを試みてください。たった15日でも、血糖値のコントロールが容易になるはずです。
モティベーションが上がったところで、ゆる運動を開始。筋肉を引き締め、さらなるお腹やせにつなげましょう。
![お腹の脂肪をつかんでいる人](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/3/670/img_f35772339eb455306b1dbc9e4994bede300109.jpg)
■ゆる運動でお腹を凹ませ、血管も健康に
ゆる運動の目的は、以下の3つです。
(1)ゆる運動=有酸素運動で内臓脂肪を燃焼し、同時に糖も消費する。
(2)腹筋群とインナーマッスルを鍛えてお腹を凹ませる。
(3)血管内に「NO(一酸化窒素)」を増やし動脈硬化を予防・改善する。
(1)有酸素運動とは、軽度から中度の負荷を継続的にかける、ゆるめの運動のこと。酸素を使い、脂肪をエネルギー源として燃やすので、内臓脂肪を確実に減らします。
加えて運動で筋肉が活性化すると、グルットフォーというタンパク質が現れ、血液中の糖の消費も盛んになります。糖は体内で余れば内臓脂肪となってお腹にたまりますから、まさに一石二鳥でしょう。
有酸素運動には汗ばむ程度のジョギング、ウォーキング、水泳、サイクリング、ヨガなどがあり、週3回1回30分が目安です。
■インナーマッスルはすきま時間に鍛えられる
(2)お腹を凹ませるには、まず体表近くで腹部を取り巻く腹筋群を引き締めます。同時に体の深部にあるインナーマッスルを鍛え、腹壁を引き締めると内臓が本来あるべきスペースへと引き上げられます。
これらを鍛えるエクササイズはいろいろありますが、取り入れやすいのは「ドローイン」。鼻から息を吸ってお腹を膨らませた後、口から息を吐いてお腹をグッと凹ませます。その状態で30秒間浅い呼吸を繰り返してください。
要領がつかめたら、仕事や家事の合間に適宜行います。ウォーキングなど有酸素運動と組み合わせればさらに効果倍増! です。
■運動が血管の自然治癒力を高める
(3)NOとは、血管の一番内側にある血管内皮細胞が分泌するガス状の物質です。NOは血管に張り巡らされた繊維や筋肉、自律神経に働きかけ、血管を拡張したり縮めたりしながら血圧を安定させます。ほかにも血管の柔軟性と弾力性を高めて老化を防ぐ、血管内皮細胞にできた傷を修復する、初期の動脈硬化を改善するなど優れた作用が。
運動をすると、筋肉からブラジキニンというタンパク質が放散され、NOの分泌を促します。つまり運動には血管に備わる自然治癒力を高める効果があるということ。生活習慣病の予防・改善に運動がすすめられる理由の一つです。
私のメソッドでコロナ禍を元気に乗り切り、スリムボディを取り戻してください。
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池谷医院院長、医学博士
1962年、東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年、医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科、循環器科。現在も臨床現場に立つ。生活習慣病、血管・心臓などの循環器系のエキスパートとしてメディアにも多数出演している。東京医科大学循環器内科客員講師、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会循環器専門医。
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(池谷医院院長、医学博士 池谷 敏郎)
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