1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「フローリングより畳がいい」勉強や仕事の効率を高める"捗る部屋"の作り方

プレジデントオンライン / 2021年6月15日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vicnt

■「床と天井が木目柄ビニール」でも効果あり

新年度の始まり、室内の環境を整えて公私ともに新しい風を取り入れてはどうだろう。

長年健康的な住まいを研究している慶應義塾大学伊香賀俊治教授らは、「室内の仕上げ」が人工材料か自然素材かで自律神経や睡眠時間、翌日の作業成績に変化が起きるかを調査した。

調査方法は、タイプが違う3部屋──「床のみ木目柄ビニール」「床と天井が木目柄ビニール(自然風)」「自然素材のスギ無垢材」に男子学生を振り分け、そこに3泊してもらうというもの。そして各部屋で就寝前に入室者の自律神経(交感神経)を測定すると、「『自然素材のスギ無垢材』の部屋で鎮静効果が確認できたのです」と伊香賀教授。

「また、『床と天井が木目柄ビニール』の部屋でも自然素材ほどではありませんが、鎮静に傾きます。“視覚”だけが自然風の刺激でも、体に影響するということです」

■スギ無垢材の部屋だと「深い眠り」が20分以上も長くなる

自然の“香り”が漂う「自然素材のスギ無垢材」の部屋に泊まった学生は「ノンレム睡眠(深い眠り)」の時間が他の部屋の人と比べて、平均して20分以上も長いことがわかった(図)。

深睡眠時間と床・壁・天井の仕上げの関係

さらに翌日の「作業成績」も、「自然素材のスギ無垢材」の部屋で眠ったほうが結果がよかったのだ。

慶應義塾大学の伊香賀俊治教授
慶應義塾大学の伊香賀俊治教授

「偏差値に置き換えると、『床のみ木目柄ビニール』が45.7、『自然素材のスギ無垢材』が54.8で、およそ“9の差”がつきました」(伊香賀教授)

最近はビニールクロスの上から自然素材の壁紙を張るタイプもある。手先が器用な人なら自分でやってみてもいいかもしれない。

自然素材ではないが、空気を快適にするエコカラットという商品もある。湿度を調節、脱臭、空気中に漂う有害物質を吸着したりする壁で、オンラインで自分の好きなデザインを選び既存の壁に張るタイプもある(効果を発揮する目安として、エコカラットの場合はその空間の床面積の4分の1以上の壁面積に施工することを推奨している)。そのような商品はほかにも数多くあるが、JIS(日本産業規格)などで定められた基準を満たしているものを選ぶと安心だろう。

■「畳の教室」のほうが、より多くの問題を解答できた

室内に「置き畳」を取り入れるのも調湿作用があり、勉強効率へのよい影響が期待できる。い草・畳の効能を研究して20年の北九州市立大学の森田洋教授によると、「畳1畳で500ミリリットルの水分を吸収したり、放出する力がある」という。

北九州市立大学の森田洋教授
北九州市立大学の森田洋教授

「畳の主材料であるい草は、湿気が多い時期は水分を吸収し、冬の空気が乾燥している時には水分を放ちます」

畳を敷いた和室と、通常の洋室の湿度を比較した研究では、畳の部屋のほうが雨の降った後も湿度変化が少ない。

また、森田教授が小中学生を対象に、学習塾で畳を敷いた教室と、フローリング教室での勉強効率に差が出るかという研究を行うと、畳の教室で問題を解いたほうが、同じ精度でより多くの問題を解答できたのだった。勉強後の子供たちの「疲れ」も、畳の部屋のほうが感じにくいことがわかっている。

「畳の香り、い草に含まれるバニリンがリラックス効果をもたらしていると考えられます。これは菓子を作る時に数滴たらすバニラエッセンスに含まれる成分なんですよ」(森田教授)

メリハリのつきにくいテレワークでは、例えば机に向かう“オンの場所”と、置き畳やゴザを取り入れたスペースで“オフの場所”を同じ部屋の中につくるというやり方もいいだろう。

■疲労回復には緑色を、でも組み合わせに注意

そして最も簡単に室内にオンとオフを生み出せるのが「色」。色彩専門家で住環境、製品のカラーコンサルティングを行う南涼子氏(日本ユニバーサルカラー協会代表理事)は「室内にはとにかく色を取り入れること」と話す。

日本ユニバーサルカラー協会代表理事の南涼子氏
日本ユニバーサルカラー協会代表理事の南涼子氏

「色は大脳で認識され、感情の中枢である『扁桃体』やホルモン分泌を促す『視床下部』を刺激し、心身に強く影響を与えるんです。白が多い、言い換えると“色がない”環境は、心身への刺激が少なく、やがては無気力や無感動になる可能性があります。仕事でも創造性にマイナスとなりやすいですね」

色は視覚だけでなく皮膚でも感じられる。たとえ目隠しをしていたとしても、皮膚は色光に反応して筋肉を緊張させたり緩めたりしているという。

「人は気分がいい時に好ましく感じる色と、調子の悪い時に好む色は異なる傾向にあります。例えば黄色は希望に満ちた心境の時、茶色は安定を求める時、紫は強いストレスを感じる時に選びやすい。ですが無意識ではなく、目的に合わせて意識的に色を選ぶと、悩んでいる心身を改善できる可能性があります」(南氏)

色は「心身をギアチェンジするシフトレバー」と、南氏は言う。

■白は陰りができてむしろ室内が暗くなってしまう

体調に応じてカーテンやベッド・ソファカバー、テーブルクロスをはじめ、仕事用の机やデスクマット、椅子、パソコン画面などの色を変えてみよう。

4月や5月は異動や転勤、引っ越しなどで環境に変化がある人も多いと思うが、疲労を感じるなら「緑色」を。

「緑は自然に目のピントが合い、見るのに余分な力を必要としないため筋肉を弛緩させます。緊張を解きほぐして精神安定や疲労回復にも役立つ、健康効果として優れた色ですね」(同)

仕事の合間に観葉植物を見るだけでも癒やされるという報告もあるから、「部屋に植物を置く」という色の使い方も楽しい。

日当たりが悪いなど、室内が“暗いイメージ”の時は、「黄色」がお勧め。

「光の反射率が高いのは白ですが、白は陰りができてむしろ室内が暗くなってしまうんです。黄色は太陽光を象徴し、心理的にも物理的にも“外に広がる”イメージ。自由でユニークな発想をもたらし、気分をポジティブにします。うつ病の改善にも役立つという報告があるのです」(同)

■心身によい影響を与える色の面積のほうを増やしていきたい

実際に南氏が行った調査でも、「検査室」に黄色を使うと、患者の不安や恐怖心を和らげる効果があったという。

「オレンジ」も黄色と同様に、明るい気持ちにさせる作用がある。これらの色を使った空間では一緒にいる人との距離を近く感じさせる。家族がいるなら団欒の場にもってこいで、1人暮らしの人なら孤独感を和らげる作用が。

反対にタブーな色と、組み合わせは。

「青と緑を組み合わせるとうつ症状の度合いが上がり、活動レベルが下がることが報告されています。女性は、ベージュや灰色の環境では能力が低下し、男性は紫の環境で作業の効率が低下することも確認されています」(同)

本来なら活動性が増す春に不向きな色ともいえるので、ご注意を。室内でそれらの色をゼロにする必要はないが、心身によい影響を与える色の面積のほうを増やしていきたい。

----------

笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。

----------

(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください