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「これをやらないと逆効果」うがいの消毒能力を高めるために必要な"ある習慣"

プレジデントオンライン / 2021年5月31日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/okugawa

効果的な「うがい」にはなにが重要か。医師の遠山祐司さんは「口のなかは細菌やたべかすなどで汚れているため、いきなりガラガラうがいをするのは逆効果。しっかりと口のなかをゆすいでからうがいをしてほしい。もっとも効果的なのは、歯磨きをしてからうがいをすることだ」という――。

※本稿は、遠山祐司『免疫入門 最強の基礎知識』(集英社新書)の一部を抜粋したものです。

■なんのためにうがいをするのか

これまでにも、のどはウイルスや細菌にとって体内に侵入する扉であり、のどの扁桃はそれを防ぐリンパ組織の集まりであること、ウイルスがのどを通過して気管から肺にいたると肺炎を起こしかねないなど、のどの重要性について述べてきました。

感染症や花粉症の予防として、毎日のようにうがいをする人は多いでしょう。

ただし、うがいのしかた次第では何の効用もなく、間違った方法のうがいを続けてのどを傷めて来院される方もいます。そこで、患者さんからの質問が多い、のどを守るためにNGなことや、効率的なうがい法について紹介しておきます。

うがいの適切な方法を考えるにあたり、まずはうがいの目的を明確にしましょう。新型コロナウイルス、インフルエンザ、風邪などの予防には、口の中とのどの殺菌、消毒です。近ごろ、うがいや歯磨きでインフルエンザが予防できるということがわかっています。

■うがいする前に口をすすいで歯磨きをすべき

歯学博士で『すべての不調は口から始まる』(集英社新書)という著書がある江上一郎氏は、歯周病原菌がインフルエンザウイルスを口の中で増殖させることについて、同書内でこう説明されています。

「日ごろ、これら(鼻の奥やのど ※著者注記)の粘膜は唾液などの粘液に覆われてウイルスや細菌を防御しています。しかし、歯周病原菌が放出するタンパク質分解酵素の『プロテアーゼ』などがそれらの粘膜を溶かし、インフルエンザウイルスが侵入しやすくなるのです。

すると、細胞壁がこじ開けられてウイルスが入り込み、仲間を増やします。そして別の酵素の『ノイラミニダーゼ』が周囲の細胞へと大量のウイルスを放出すると言われ、感染が気管へと拡大していきます」そのため、「インフルエンザの予防には、毎日の口腔ケアで細菌の数を減らすこと、口腔を清潔に保つことが有効となり、重要」であるとし、うがいの際には、「まずは、口だけをすすぐようにしてください。その後、歯磨きとのどのうがいをしてほしいのです。」と述べられています。

もうひとつ、うがいの目的で見逃しがちなことに「保湿」があります。のどが潤っていてこそ、殺菌や消毒の作用が働きます。のどの潤いのためのポイントは、唾液の作用とのどの奥の状態です。うがいの目的は、「唾液の作用を促すため」「のどの奥まで潤すこと」と考えてください。そこでまず、「してはいけないうがい法」を挙げ、その後に、「適切な方法」を紹介します。

たっぷりの歯磨き粉を歯ブラシに乗せている女性
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

■消毒作用があるうがい薬を使いすぎてはいけない

〔うがいの方法NG集〕

× 殺菌・消毒作用があるうがい薬でのうがいのしすぎ

大人の患者さんに多いケースで、ヨード系で殺菌・消毒作用があるうがい薬でうがいを繰り返して、かえってのどを傷める場合があります。殺菌効果が強すぎて常在細菌叢にまで影響し、潤いも奪われて、「のどの防御機能」が低下するわけです。

また、唾液には、口の中を殺菌・抗菌・洗浄する働きがありますが、ヨード系のうがい薬を使いすぎると、唾液のそれらの機能をも低下させます。

さらに、のどや鼻の粘膜の線毛が、鼻水や唾液、くしゃみ、たんなどの粘液とともに病原体を体外へ押し出す役割をしていると伝えましたが、殺菌剤を含む液体でうがいをしすぎると、この粘液が流されて線毛が脱落する可能性があるのです。

ヨード系のうがい薬には「イソジンうがい薬」「ポビドンうがい薬」などがあり、病院で処方される薬でも市販の薬でも、濃い茶色をしています。

主成分に「ポビドンヨード」が含まれるタイプです。のどと口の中の殺菌効果は高いものの、刺激が強い一面があることを知っておきましょう。

■口をゆすがないガラガラうがいは逆効果

もうひとつ、医療機関で処方されるうがい薬に、「アズノールうがい液」があります。

主成分は「アズレンスルホン酸ナトリウム」で青色をしています。こちらは抗炎症剤で、のどの痛みはじめなど炎症が起こっているときに用います。

市販では「水溶性アズレンうがい薬」「浅田飴AZうがい薬」「パブロンうがい薬AZ」などがあります。ヨード系に比べて刺激が少なく、副作用はまれだとされています。

のどに炎症があって自分でうがい薬を選ぶ場合はこちらが良いでしょう。普段は水やぬるま湯、また緑茶や紅茶でのうがいで十分です。

× いきなり、ガラガラとのどのうがいをする

口の中にはウイルスや細菌、食べかす、ほこり、ちりなどが混在しています。

1回目のうがいからのどをガラガラとすすぐと、それらのウイルスや細菌、汚れがのどに付着してしまいます。まずは口の中だけを2、3回すすぎます。歯磨きをするとさらに有用です。その後に、のどのうがいをしてください。

× 上向きだけのうがいをする

上を向いてガラガラとうがいをする人は多いと思いますが、その場合、のどの中央しか洗えていません。実は左右の頬粘膜や、歯ぐきと頬の間にウイルスや細菌が付着している可能性は高いのです。上向き→右上向き→左上向きと順に丁寧にうがいをしましょう。

■ウイルスの侵入をふせぐ適切なうがいの方法

× 口に水を含むだけですぐ吐き出す

口の中の洗浄、潤いのためには、丁寧にすすがなければ効果がありません。

× 口いっぱいに水を含む

うがいをした気分になるからといって、水を大量に口に含む人がいます。この場合は、上を向いたときに口を開けることができず、ガラガラと音を立てながらのどの奥のほうまでうがいをすることができません。

口の中でぐちゅぐちゅと水を流すこともできないので、洗浄になりません。

口いっぱいに水を含んでいる女性
写真=iStock.com/:Tharakorn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/:Tharakorn

× 手洗い前の手で水をすくって口に含む

感染症予防の第一の方法は「丁寧な手洗い」です。十分に洗っていない手で水をすくってうがいをする人は案外、多いのです。この場合、手に付着したウイルスや細菌を口に入れることがあり、感染しかねません。

〔適切なうがい法〕

① まずは、口の中を隅々まですすぐ。コップに注いだ水かぬるま湯を、口の中の3分の1から半分ほど含み、食べかすなど口の中の汚れを取り除くイメージで、強めに縦に5~10回、横に5~10回ほど「ブクブク」とすすいでからそっと吐き出す。

頬と歯ぐきの間、上あごの天井、舌の周囲など口の中全体を洗うイメージで、2、3回行う。

② コップに注いだ1と同量の水かぬるま湯、また炎症があるときなどは、うがい薬を薄めた水かぬるま湯(量は説明書のとおりにする)を口に含む。

まずは上を向いてガラガラ、次にやや右上を向いてガラガラ、さらにやや左上を向いてガラガラと、各方向に5~10秒ほどうがいをして吐き出す。息が続かないときは、一度吐き出してから再度行う。

③ 水かぬるま湯の場合は、2をもう一度繰り返す。うがい薬を使うときは説明書に従う。

④ コップを洗い、清潔に保つ。とくに口がついた部分は唾液が付着しているので注意。

⑤ 白湯か水をひと口以上、飲む。うがい後、口から吐き出す水は自分のウイルスや細菌が含まれる汚水。常に「そっと」吐き出し、うがい終了後は周囲を掃除する。

■こまめなうがいで口の乾燥を防ぐ

最後の白湯か水を飲むというのは、のどの奥まで潤す目的があります。

遠山祐司『免疫入門 最強の基礎知識』(集英社新書)
遠山祐司『免疫入門 最強の基礎知識』(集英社新書)

うがいはのどの表面の清掃と保湿にはなりますが、咽頭の奥から気道までを潤すには、5~10分ごとにちびちびと水を飲む、また、ガムやのどあめで唾液の分泌を促す、加湿器を活用する、屋内でもマスクをするなど工夫をしてください。

「口の中やのどが渇いた」と自覚したときはすでにかなり乾燥しています。コツは、そう自覚する前に潤す習慣をつけることです。

また、のどから気道、肺の周囲の保温のため、寒い時期は屋内でもマフラーやネックウォーマーを着用してください。胸の上のほうからのどもと、背中の上のほうや肺のあたりにカイロを貼って温めることも有用です。

寒さが厳しいときや風邪のひきはじめには、肺をカイロでサンドイッチするように貼ってみてください。

【結論】
うがいの目的は殺菌と保湿。普段は水かぬるま湯でOK。殺菌・消毒効果があるうがい薬の過剰使用はNG。

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遠山 祐司(とおやま・ゆうじ)
耳鼻咽喉科専門医、気管食道科専門医
1958年生まれ。大阪府出身。関西医科大学卒業。医学博士。医療法人とおやま耳鼻咽喉科(大阪市都島区)理事長・院長。都島区医師会議長・前会長。大阪府医師会代議員・同調査委員会元委員長。2020年春、新型コロナの第1波時、大阪市の都島PCR検査センターで医師の指揮をとる。免疫や感染症にまつわる鼻・のど・気管の健康などについて啓発する。

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(耳鼻咽喉科専門医、気管食道科専門医 遠山 祐司)

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