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「点数より粘り強さ」偏差値75超の高校が求める"レジリエンス"が身につく親の習慣

プレジデントオンライン / 2021年5月31日 11時15分

麻布中学校・高等学校校長 平秀明先生(撮影=黒坂明美)

先行き不透明なこれからの時代を生き抜くためには、どんな力が求められるのか。親は子供に何をすればいいのか。『プレデントFamily』編集部が東京大学を含む難関大学合格実績の高い私立校の校長にインタビューした――(後編/全2回)。

※本稿は、『プレデントFamily2021年春号』の一部を再編集したものです。

■麻布、灘、渋渋・渋幕などの校長が語る「これが有望人材」

これからの時代を生き抜いていくには、どんな力が必要なのか。そのために、家庭でやるべきことは何か。トップクラス校の校長に聞きました。十人十色の答えの中から、きっと各家庭に響く答えが見つかるのではないでしょうか。

各校長に聞いたのは、子育て世代の多くの親が悩む、下記の2つの質問。

Q1:これからの社会で必要になる力は何でしょうか?
Q2:その力を身につけさせるために、家庭教育でやってほしいことを教えてください。

■●麻布中学校・高等学校校長 平秀明さん

情報をうのみにせず、自らの頭で考えよ

ニュートンはペストの流行によって大学が閉鎖し、郊外で思索の日々を過ごす中で、万有引力の法則を発見したといわれています。

2020年3月、新型コロナウイルス感染拡大による自宅待機を生徒に通知した際にこのエピソードを添え、今だからこそ日頃読めなかった本を読んだり、関心のあることを追究したりしてほしいと伝えました。

コロナ後の時代には、与えられた情報をうのみにせず、自分の頭で考える力が一層重要になるでしょう。

今回の新型コロナウイルス感染症の流行では、政府の方針やメディアの主張はコロコロ変わりました。自分で考えずに指示に従うという癖がついてしまうと、社会の動きに流されて、周囲の人間の決定についていくだけの人生になってしまいます。

私もこの1年間は生徒たちに「自らの頭で考えよ」という話をよくしました。

2020年秋には「コロナ感染者が出ることを怖がっている人も多いと思うが、わが校で感染者が出るのは想定内だ。もし感染者が出ても差別しないように」と生徒に話しました。

新型コロナは怖い病気ですが、一定の確率で校内に感染者が出ることは避けられません。ただ、ニュースに踊らされていたずらに怖がるのではなく、起きそうな状況を想定して心の準備をしておけば、自分の行動を変えることができます。

ご家庭でもニュースを自分の身に引きつけて、子供が深く考える機会をつくってほしいと思います。

たとえば、そもそもウイルスとはどのような存在なのか、感染症の専門家と知事や政府の話す内容に隔たりはないか、友だちや自分が感染したらどう振る舞うべきか、等々について話し合ってみてください。

世間や周りの人はこうだからと思考停止せずに、立ち止まって考える癖をつけることが、自分で考えて行動を選び取る力を育てることにつながっていくはずです。

【学校が注目している卒業生】

鈴木優人さん 指揮者・作曲家・チェンバリスト
青嶋未来さん 将棋棋士

東京藝術大学に進学し、音楽家として活躍している鈴木さんは、麻布OBオーケストラの演奏会でも指揮者を務めてくれています。青嶋さんは在学中は学校と奨励会の両立に努め、高校卒業後、10代で四段に昇段し、プロとして活躍しています。2人をはじめ、多くの卒業生が自分の道を見つけ、そこで活躍する姿を目にするのは非常にうれしいですね。

■●広尾学園中学校・高等学校校長 南風原朝和(はえばら ともかず)さん

話をよく聞き、よく話し、中身のある会話を!

今は先が見えない時代といわれています。しかし、振り返ってみれば、いつの時代も先のことは見えませんでした。たとえば1年前に現在のコロナ禍を誰が予想できていたでしょうか?

広尾学園中学校・高等学校校長 南風原朝和先生
広尾学園中学校・高等学校校長 南風原朝和先生(撮影=黒坂明美)

未来予想が不可能な以上、これからの時代に合わせるのではなく、時代がどう変わろうとも求められる力を身につけることが大切です。

そしてそれは決して特殊な力ではありません。従来の教育現場でいわれてきたような豊富な知識や経験、深い理解や向学心など、基本的な力だと思います。社会が混乱している今だからこそ、子供たちには焦らず目の前の学びを一つ一つ積み上げていってほしいと願っています。

ご家庭では、まず子供が安心して過ごせるよう「いつも味方だよ」と伝えてやってほしいですね。

安心できる家庭があることで、子供は物事に没頭したり、興味のあることを調べてみたり、新しい遊びを考えたりといった“冒険”ができます。もし失敗しても戻る場所があるからこそ、前に進んでいけるのです。受験もできるだけポジティブな“冒険”になるように心がけてください。

『プレデントFamily2021年春号』
『プレデントFamily2021年春号』

点数が低いと居心地が悪くなるような環境では、子供がその後の挑戦に臆病になってしまいます。「頑張った結果がどうなるか楽しみ」くらいに捉えてほしいですね。

また、子供が興味のある事柄については、多少背伸びをさせて“本物”に触れさせることがおすすめです。わが校ではキャリア教育として、中1から大学の先生の講義を受けたり、社会の第一線で活躍される方の話を聞いたりする機会があります。早い段階から、学問や仕事の魅力について触れることは大きな刺激になります。

ご家庭でも子供が興味を持ったことに対して、博物館や美術館、大学、スポーツ観戦などに足を運ぶ機会をつくってやってください。

【学校が注目している卒業生】

須田隆太朗 東京大学 工学部3年生

本校在学中から統計学について研究したり、生徒会の全国大会の運営に関わったりするなど積極的に活動していました。東京大学入学後も、社会を変えるアイデアの実現とイノベーターの育成を目指すプログラム「Red Bull Basement」の2020年度日本代表になるなど活躍しており、今後が楽しみな卒業生です。

■●渋谷教育学園幕張中学校・高等学校、同渋谷中学校・高等学校 校長 田村哲夫さん

A1:異文化アジリティー(異なる文化的背景を持つ人々とうまく協働する基本的姿勢)。

開校以来、本校では「国際人としての資質を養う」ことを教育目標の一つに掲げ、多様な海外留学プログラムや帰国生・留学生の受け入れ、海外との文化交流、海外の大学への進学サポートなどを実践してきました。コロナ禍でもその活動はとどまらず、むしろリモート等を通じ、より活発になってきた感さえあります。多様化する世界の中で異なることを否定するのではなく、なんか違っているぞ、おもしろいな、と思う心を大切に育てていきたいです。

A2:自分の考えを文章としてまとめたり、詩を鑑賞したりすること。

大正時代、鈴木三重吉や北原白秋が中心になって進められた「赤い鳥運動」が参考になると思います。運動ではつづり方を学び、詩を鑑賞することで、自分の考えをまとめ、アンテナを高くして敏感に感じる姿勢が促されました。これらは、これからの未来を創っていく若者が異文化アジリティーを身につけていくうえで、その素養となる特に大切な資質であると考えまする。

【学校が注目している卒業生】

(渋幕)平野拓也 米マイクロソフト社副社長

[推薦の理由]異文化アジリティーを体現するような生徒だった。

[在学中の様子]学園祭でも新たなイベントを実行するなど、たいへん積極的な活動が印象的であった。「異文化アジリティー」は平野君の口癖。

(渋渋)内山慧人 米フェイスブックビジネスパートナー

[推薦の理由]同上(異文化アジリティーを体現するような生徒だった)

[在学中の様子]生徒会役員を務め、人とのつながりを大切にした活動で、未完成だった生徒会のかたちを整えた。卒業後は、東日本大震災後に安否確認アプリを自作し、早々に公開した。「大事なのは新しい挑戦があるかどうか。場所は関係ない」という言葉はよく引用されている。

■●灘中学校・灘高等学校校長 和田孫博さん

A1:レジリエンス(回復力)とテナシティ(粘り強さ)。

未来に待ち受ける未知の課題に立ち向かい、幾度となく失敗してもくじけずに、粘り強く解決していくことが求められるから。

A2:子供が好奇心を示すことを大切に。

「好きこそ物の上手なれ」というように、子供は好きなことにはものすごい集中力を発揮します。また、好きなことであれば失敗してもめげずに頑張ります。そういう経験がレジリエンスやテナシティを育むのです。

【学校が注目している卒業生】

山田 淳 登山家

[推薦の理由]灘中学時代にワンダーフォーゲル部に所属し、登山の魅力を知る。東大在学中に当時の七大陸最高峰世界最年少登頂者となる。安全登山の推進を掲げてベンチャー企業を立ち上げた。現在はフィールド&マウンテン代表取締役社長。好きなことが仕事につながった最適例。

[在学中の様子]もともと体があまり強いほうではなかったが、部活動を通じて壮健に。学習面でも頑張りがきくようになり、文武両道の模範的な生徒だった。

■●洛南高校附属中学校校長 堀 俊彦さん

A1:知情意のバランスが取れ、ゆとりある人間性。

新型コロナの混乱の中で見られるような二律背反の状況でも落ち着いて、自信を持って判断していく力を期待します。文系だ、理系だと偏ることなく、また「理」も「情」も理解し、難しい状況の中でも困らない、大きな幅のある人間をイメージします。

A2:自立・自律させること。

自分で机に向かえること、また、勉強だけにとどまらず、自ら片づけ・掃除やお手伝いが積極的にできること。休日には飯ごう炊飯などの野外活動をすることも、いろいろ試しながら自立の力をつけるよい体験です。そして、豊かな内容の本を進んでたくさん読み、心の幅を広げましょう。

【学校が注目している卒業生】

姫路市の病院で外科医として勤務しているKくん

[推薦の理由]ピンチにもあせらず、あわてず、いつも「困っても困らない」の気持ちで行動し、誰もが認めるクラスの要でした。

[在学中の様子]文化祭前日の準備が思うように進まず、徹夜を余儀なくされた高校生のKくんたち。どうしても必要な物があったので、ただ一人、当日の始発の電車に乗って1時間ほどかけて取りに行きました。調達後は、遅刻することなく登校し、騒ぐことなく、自慢することなく、当日の発表にきっちりと間に合わせました。

■●東海中学校・高等学校校長 佐藤泰年さん

A1:信頼される人間性。

どのような社会になろうとも、人と人とのつながりを軽視しては健全な社会は成り立たないからです。他者に共感する力やその基礎となるコミュニケーション能力を育て、ひいては信頼関係を築くことができる人間性を磨く必要があるのです。

A2:子供が安心して話せる場をつくる。

子供との会話で、先回りをして話をし過ぎないで、まずは話を聞くように心がけてください。共感を示すことで、子供が安心して話すことができる状況をつくれると思います。それが親子間の信頼関係を築くことにつながり、子供は親の姿勢を見て、自然と信頼すること、されることの大切さに気づくのではないでしょうか。

【学校が注目している卒業生】

山田進太郎 メルカリ創業者
牧 寛之 バッファロー代表取締役社長

[推薦の理由]それぞれ、新たな分野の開拓に力を注いでいる。

[在学中の様子]山田くんは周囲の優秀な人間を見て、競うのではなく力を借りながら独自の道を進むことを選ぶ意識を持つようになったようです。牧くんは剣道部の中心メンバーとして活躍し、まとめ役でした。いずれも人との協力関係を築くことの大切さに気づいていたと言えるでしょう。

(プレジデントFamily編集部 構成=松本史)

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