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「投資信託で老親の2000万円が消滅」素人が銀行員の"善良度"を見抜くチェックリスト12

プレジデントオンライン / 2021年6月6日 8時45分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/zepp1969

投資を始める際、損をしないためには購入時にどんな対策をするべきか。作家の鳥居りんこさんは「私の老母は、銀行に勧められるまま購入した約3000万円分の投資信託を頻繁に売買した結果、約2000万円相当を損しました。騙されたも同然の類似案件は多いので、客は賢くならなければなりません」という。鳥居さんがファイナンシャルプランナーの藤原未来さんに12のトラブル防止法を聞いた――(前編/全2回)。

■投資の素人が「騙された」と思わずにすむ銀行窓口攻略法

——「金融の素人が知っておくべき資産運用を学ぶ」シリーズ(※)、最終回の今回は「銀行窓口攻略法」です。

※「退職金1500万円分の投信が半減」銀行に買わされた50代独身女性の人生転落は自業自得か
「あなたもその商品買ってますか?」腹黒銀行員のセールス殺し文句への天才的な切り返し方10

拙著『親の介護をはじめたらお金の話で泣き見てばかり』(学研プラス)で70代の母親がある銀行に勧められるまま購入した約3000万円分の投資信託で約2000万円相当を損した話を「大銀行に騙されたも同然」と書いたことで、同じように「ウチの老親もです!」とその事例を寄せてくれる人たちがいました。「わが家だけではなかった!」というのは私の慰めにもなりました。一方で、改めてこうした事例が多いことを実感し、“自己責任”として切り捨ててはいけないと思いました。

【藤原未来(ファイナンシャルプランナー)】そうですね。“振り込め詐欺の防止策”ではないですが、ケーススタディを学ぶことによって銀行とのトラブルが防げる場合もありますので、まずはお年寄りが陥りやすい失敗事例をご紹介しましょう。

【ケース1 A氏(87歳)地方都市在住(ひとり暮らし)】
A氏は、数年前に銀行の勧めで複数の分配型投資信託を購入。銀行は、古株の県民からは絶大な信頼を得ている県内最大手銀行。行員の訪問がきっかけで300万円の投信を3種類購入(計900万円)。以来、半ば銀行に言われるがまま売買を繰り返した。

だが、息子(50代)が帰省した際、A氏が「毎月、利子としてまとまった金額が振り込まれてきて、さすが○○銀行だ!」と語ったことで事態が発覚。

息子が取引明細書を確認し「それは利子ではなく、特別配当という名を語った“たこ足配当”で、自分の預金を切り崩して普通預金に入金されているだけ」と説明。

しかし、A氏は「実際に毎月お金が振り込まれているのは利益が出ているから。○○(銀行)の支店長さんもわざわざウチに来て挨拶してくれたんだ。あんな立派な人が、年寄りが困るような商品を案内するわけがない!」と答え、なおも説明ようとした息子の話を打ち切り、以来、親子の仲はギクシャクしている。

——300万円の投信を3種類購入……からの頻繁な売買。これ、ウチの母のケースと全く同じです。銀行は違いますけど。もしかしてどの銀行でも行っている営業手段でしょうか。A氏はどんな点に注意すればよかったのですか?

【藤原】そうですね、誤解のないようあらかじめ申し上げますが、世の中のすべての「分配型投資信託」が悪い商品というわけではありません。ある時期「銀行や証券会社にとって売りやすく儲かる商品」として乱暴な販売手法が横行したため、すっかり「悪者扱い」にされてしまいましたが、中には使い勝手のいい商品も存在します。

ただし、A氏の場合も少々乱暴な売り方をされた印象は否めません。A氏はどうすれば良かったのでしょうか。信頼を置いている銀行だけに「振り込め詐欺」のように「まずは疑ってかかってください」というわけにもいかないですよね。こんな時にこそ思い出してほしいのは、前々回の記事で紹介した〈投資してはいけない人12項目〉です。

■「善良な銀行」は投資してはいけない人に投資をやめさせる

〈投資してはいけない人〉
1 10年以上、手を付けずにおいておける資金がない
2 投資をするのに目的など必要ない。とにかく儲かれば良いと思っている
3 信頼性の高そうなもうけ話には耳を傾ける
4 投資の手法について理解しているつもりでも、自分で何をやっているか、たまに分からなくなる
5 資金を1年後に2倍に増やしたい
6 投資のリスクとは元本割れや値下がりのことで、そのようなリスクは取りたくない
7 元本割れだけは絶対に嫌だ
8 証券会社または銀行の担当者のアドバイスだけを頼りにして売買している
9 今後の価格が上がるとか下がるとかの、将来の予測ができるかが重要である
10 「利回り10%で元本割れなし」の特別キャンペーン商品を勧められたら迷わず購入する
11 理屈を淡々と説明する担当者よりも、儲かりそうな商品をいろいろと提案してくれる担当者のほうを好む
12 手数料はなるべく安いほうが良いが、利益が出るならあまり気にしない

心と懐に余裕がなく、儲けたいというガツガツした気持ちが強い人は、投資に向いていません。そこで、無用なトラブルを防ぐために、このリストをおおよそ頭に入れて、銀行の窓口担当者や支店長などと相対する方法をお伝えしましょう。

例えば、(1)は、「10年以上、手を付けずにおいておける資金がある」ことが投資をしていい人の条件ということですが、これに関して、自分自身で「年金暮らしで毎月預金を取り崩して生活しているので、いずれこの投資した額にも手を付けることになりそうだ」と心の中で思うのなら、そのことを正直に銀行の窓口の相手に伝えるのです。

それに対して、銀行側から「それならば、そもそも大きな額を投資信託に投資することはできません。元本割れもやむを得ない、というのであれば話は別ですが」といった回答が返ってきたら、それはアタリです。お付き合いしていい担当者でしょう。

同じように(2)に関して、自分の本音が「投資の目的など特にない。少しでも儲かればそれでいい」というものなら、それを伝えます。アタリの回答はこちらです。

「そうであればやめましょう。やみくもに儲けることだけを考えるのは危険です」

つまり、「私は投資してはいけない人物だ」と自ら開陳したにもかかわらず、それにとりあわずに投資を勧めるような銀行なら、絶対やめたほうがいいということです。

5枚の1万円札
写真=iStock.com/zepp1969
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/zepp1969

自ら開陳するのではなく、前出の「投資してはいけないリスト」をご挨拶に来られた支店長に渡して、次のようにいうという手もあります。

「あなたの支店の担当者に投資信託を勧められたのだけど、私は『投資してはいけない人』かもしれないので、この12項目について私に向かって質問してください。そして私の答えを聞いたうえで支店長がお勧めの投資信託を買ってもいいかどうか判断してください」

12項目別に具体例を示しましたので参考になさってください。

■本当に顧客のことを考えているかがわかるチェックリスト12

【『投資してはいけない人』問答集】

「良い銀行員」なら顧客の答えに対して➡印に続くようなアドバイスがもらえるはずです。「Q」は銀行の支店長から自分(顧客)に聞いてもらう質問内容。

1 10年以上、手を付けずにおいておける資金がない

Q:「その900万円(300万円×3種類)は10年以上手を付けなくて良い資金ですか?」

顧客の答え:「いいえ。年金暮らしで毎月預金を取り崩して生活しているのでいずれこの900万円にも手を付けることになりそうです」
善良な銀行員の回答➡「それならばそもそも900万円全額を投資信託に投資することはできません。元本割れもやむを得ない、というのであれば話は別ですが」

2 投資をするのに目的など必要ない。とにかく儲かれば良いと思っている

Q:「この投資信託に投資する目的は何ですか? とにかく儲かれば良いと思っていませんか?」

顧客の答え:「目的など分からない。少しでも儲かればそれで良い。」
善良な銀行員の回答➡「そうであればやめましょう。やみくもに儲けることだけを考えるのは危険です」

3 信頼性の高そうなもうけ話には耳を傾ける

Q:「この話は信頼性の高そうなもうけ話と思っていませんか?」

顧客の答え:「はい、説明を聞いていてそう思った」
善良な銀行員の回答➡「イエスであればやめましょう。投資ともうけ話は違うものです」

4 投資の手法について理解しているつもりでも、自分で何をやっているか、たまに分からなくなる

Q:「分配型投資信託とはどういう商品か他人に説明できますか?」

顧客の答え:「毎月分配金がもらえるから預金よりもよっぽどお得だということぐらいしかわからない。詳しいことはよくわからない。」
善良な銀行員の回答➡「自信を持って説明できないのであればやめましょう。その説明では誤解が生じます」

山盛りの札束
写真=iStock.com/fatido
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fatido
5 資金を1年後に2倍に増やしたい

Q:「株で成功して1年で2倍に増えたという手柄話を聞いて自分もそうなると良いのになと思ったりしませんか?」

顧客の答え:「まあ、できればそうなって欲しいな」
善良な銀行員の回答➡「チラッとでもそう思うならやめておきましょう。その欲が間違いの始まりになります」

6 投資のリスクとは元本割れや値下がりのことで、そのようなリスクは取りたくない

Q:「リスク=損失。リスクなど無ければよいのにと思っていませんか?」

顧客の答え:「リスクは怖い。リスクが無ければ良いとは思う」
善良な銀行員の回答➡「価値が下がるだけがリスクでなく価値が上がるのもリスクです。それを知らずして投資はできません。やめておきましょう」

7 元本割れだけは絶対に嫌だ

Q:「元本割れは絶対に許せないと思っていませんか?」

顧客の答え:「そりゃそうだ。元本割れだけはやめてほしい」
善良な銀行員の回答➡「それなら絶対にやめたほうが良いです。そんな投資信託はありません」

8 証券会社または銀行の担当者のアドバイスだけを頼りにして売買している

Q:「この担当者は優しいし一生懸命で知識も豊富で頼りがいがあるからアドバイスに従えば大丈夫と思っていませんか?」

顧客の答え:「その通り。あなたの支店の担当者は本当に親切で頼りがいがあるから大丈夫だと思っているが違うのか?」
善良な銀行員の回答➡「ありがとうございます。ただ、『担当者が大丈夫か」よりも、『自分がこの投資をして大丈夫か』のほうがよっぽど大事です。その判断ができなければやめておきましょう」

9 今後の価格が上がるとか下がるとかの将来の予測ができるかが重要である

Q:「自分は将来の予測などできないが、この優秀な担当者は最新の専門情報を入手できるので、ある程度予測が可能であるから大丈夫と思っていませんか?」

顧客の答え:「あなたの支店の担当者はプロとして日頃から最新の情報を得ているから大方の予測はつくと言っていたけど違うのか?」
善良な銀行員の回答➡「残念ながら将来何が起きるかは、神のみぞ知るです。投資に将来の予測は不要です」

10 「利回り10%で元本割れなし」の特別キャンペーン商品を勧められたら迷わず購入する

Q:「今回はキャンペーンの商品ではありませんが、もし特別キャンペーンでいろんな特典が付いていたらさらに買いたくなりますか?」

顧客の答え:「そうだね、それは買って得したい気持ちになるね」
善良な銀行員の回答➡「イエスなら要注意です。“キャンペーン”の裏に潜んでいるリスクの有無を念のために確認することをお勧めします」

11 理屈を淡々と説明する担当者よりも、儲かりそうな商品をいろいろと提案してくれる担当者のほうを好む

Q:「この担当者と付き合っていれば儲かりそうな良い商品を教えてくれそうだと思っていませんか?」

顧客の答え:「はい、そう思って期待しているのだけど」
善良な銀行員の回答➡「イエスなら危険です。そもそも儲かりそうな商品を探していること自体が正しい投資の考え方と異なります」

12 手数料はなるべく安いほうが良いが、利益が出るならあまり気にしない

Q:「手数料も気になるけど利益のほうがもっと気になると思っていませんか?」

顧客の答え:「そりゃ利益のほうが大事でしょう。手数料は安いほうがいいに決まっているけど」
善良な銀行員の回答➡「イエスならコレも危険です。利益-手数料=手取りであることを忘れてはいけません」

(以下、後編へ続く)

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鳥居 りんこ(とりい・りんこ)
作家
執筆、講演活動を軸に悩める女性たちを応援している。「偏差値30からの中学受験シリーズ」(学研)の著者。近著に『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(ダイヤモンド社)、近刊に『神社で出逢う私だけの守り神』(企画・構成 祥伝社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(取材・文 いずれも双葉社)など。

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藤原 未来(ふじわら・みき)
独立系FP 株式会社SMILELIFE project代表取締役
1級ファイナンシャルプランニング技能士・ファイナンシャルプランニング技能士会代表幹事、一般社団法人 信託制度保障協会理事。1989年慶應義塾大学経済学部卒業。三井生命保険相互会社(現大樹生命保険株式会社)など経て、2017年、株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けのトータルライフプランニングサービスである「ライフブック」サービスをスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。

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(作家 鳥居 りんこ、独立系FP 株式会社SMILELIFE project代表取締役 藤原 未来)

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