「通勤しただけでヘトヘト」朝から疲れてしまう人に共通する"ダメな姿勢"
プレジデントオンライン / 2021年6月7日 9時15分
■疲れるのは、仕事量でも通勤時間でもなく「重力」のせい
みなさんは「宇宙に行くと肩こりが治る」という話を聞いたことがありますか?
これは宇宙飛行士の金井宣茂さんが、あるインタビューで語られた話ですが、重力の影響がない宇宙空間では、人の身体で一番重い頭を支える必要がなくなるため、肩こりが一切ないのだそうです。
私は、約30年間にわたり、人間の動作を観察・記録して、運動学や解剖学、物理学などに沿った「人体構造に合った正しい動作」を検証し、スポーツの世界に還元していく動作解析という分野の専門家として選手たちをサポートしてきました。
その研究の中でわかってきたことが、人間が疲れてしまう大本の原因は、地球の重力にあるということです。
人間は、地球の重力に対して、たった2本の足だけで抗っています。多くの生き物が、重力という巨大な力を分散させるために4本足で踏ん張っているのと異なり、人間は2本の足だけの不安定な状態で重力を受け止めています。だからこそ、なるべく重力を受ける面積を少なくする姿勢を取り続ける必要があります。
ですが、子どもの頃に「胸を張れ!」など間違った姿勢指導を受けてしまったがために、重力を受ける面積が広がり、疲れる姿勢を「正しい姿勢」と誤解し、大人になって筋力が低下してきたときに疲れを実感しはじめるのです。
今回は拙著『疲れないカラダ大図鑑』より、疲れない立ち方についてお伝えします。
■気をつけの姿勢で「胸を張れ!」はとんでもない間違い
体育の時間に「気をつけ!」の号令がかかった時、うまくできていないと「胸を張れ!」と指導された経験はありませんか? このとき指導された経験が、大人になってからも記憶に残り続け、正しい立ち方とは「胸を張って立つ」ことだと思っている人が多いと思います。
ですが、これは大きな間違いです。
「正しい立ち方」とは、真上から見たときの体の面積をできる限り小さくした姿勢です。外国の人が、大きな水がめや荷物を頭の上に載せて立っている映像を見たことはありませんか? あの立ち方こそが、人体の構造的に理にかなった「正しい立ち方」だと言えます。
ポイントは「地面に対してまっすぐ垂直に立つ」ことです。その際、やってはいけないのが「胸を張らない」ことです。胸を張ってしまうと、肩の位置が骨盤より後方にずれ、頭が前方に出てしまうため、上半身の重さを分散させることができません。
疲れない立ち方は4つの簡単な手順でいますぐにできます。
①まず肩を軽く下げる
②肩甲骨を軽く寄せる
③足指を猫の足のようにして踏ん張り
④肩幅程度に左右に開いた足の中心に体の重心が来るように意識する
![「正しい立ち方」](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/e/600/img_def2e1d0b24a638ef58914161103ac58269021.jpg)
最初のうちは、普段と異なる立ち方に戸惑うかもしれません。しかし、人体の構造的にはこれがもっとも体に負担を与えず、なおかつスラっとした美しい立ち方だと言えます。
この立ち方ができない人は、体を支える筋肉・支持筋が老化している可能性があります。支持筋に刺激を与えて若返らせるためにも、意識的にこの立ち方をするようにしましょう。
■「休め!」の姿勢では身体が休まらない
片足を横に出して、もう一方の足に体重をかけて立つ「休め」の姿勢。駅やバス停での待ち時間や、オフィスで立ち話をしているときなど、この姿勢を自然にとっている人は多いのではないでしょうか。
この「休め」ですが、動作解析をすると、重力の負担はまったく減っておらず、むしろ疲労がたまりやすい姿勢であることが、研究からわかっています。いつも同じ足に体重をかけていると、骨盤にゆがみが生じ、身体に左右差が生まれます。すると「立つ」だけでなく、あらゆる日常動作がアンバランスになり、疲れが残る原因にもなります。
「休め」は、バレエダンサーの基本姿勢のように、足を前後に開き、身体の重心を定期的に動かすのが正しい休めの姿勢です。
![本当に正しい「休め」の姿勢](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/7/350/img_07c1f12e62c46c1ae12012895e926e36197629.jpg)
その際に大切なことは、同じ姿勢でい続けない、ということです。
子どもが静止し続けるのが苦手なのは、支持筋という動作を止めるときに働く「体を支えるための筋肉」が未発達だからと言われています。
一方、大人は支持筋が発達しているため、同じ場所に静止することはできます。ですが、時間の経過とともに支持筋に負担が蓄積していくことで、筋肉の柔軟性が失われ、血流が滞り、最終的には疲れとして表れてしてしまうのです。
正しい休めの基本姿勢をとったら、前後に開いた前足に体重をのせ、つぎに後ろ足に重心をうつす、ということを繰り返し小刻みに行ってください。左右に足を広げて立つ姿勢に比べて、体の揺れが目立ちにくいため、公的なシーンでも活用できるはずです。
■疲れを歳のせいにしてはいけない
ここでは、立ち方に関する正しい姿勢についてご紹介しましたが、拙著『疲れないカラダ大図鑑』では、立ち方以外にも疲れない座り方や歩き方、重い物の運び方など、厳選した100の疲れない方法を解説しています。
![夏嶋隆『疲れないカラダ大図鑑』(アスコム)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/9/200/img_4994f3addfaec623a7390acfe701501b417412.jpg)
一見ラクに見える姿勢でも、実は自ら疲れやすい姿勢をとってしまっている方を、これまで多く目にしてきました。疲れやすい姿勢が習慣化している方が、肩こりや首こりなどを抱えてしまうのは、当然の結果と言えるでしょう。
人は疲れを「もう○歳だからしょうがない」とついつい年齢のせいにしたり、「○時間しか寝れなかった」と睡眠時間のせいにしがちです。もちろん、老化による筋力低下や、オーバーワークによる睡眠不足も考えられます。
ですが、疲れる立ち方、疲れる座り方、疲れる歩き方、疲れる寝方……こんなにたくさんの疲れる姿勢を毎日様々な場面で連発し、しかも習慣化しているとなると、疲れが引き起こされるのは当然です。
疲れない姿勢を身につけておけば、ストレッチもマッサージもいりません。逆に、疲れる姿勢をこの先もずっとし続けたら、ストレッチやマッサージを一生やり続けることになるでしょう。
仕事やプライベートで疲れを感じたときに、すぐに役に立つテクニックを100紹介した『疲れないカラダ大図鑑』を参考に、「今日も疲れた……」そんな口癖と決別してください。
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メディカルトレーナー、動作解析専門家
1957年、大阪府出身。大学卒業後に実業団バレーボール部の指導者としてキャリアをスタートさせるが、自身の足のケガをきっかけに手技療法の道に。久光製薬バレー部元監督。大阪体育大学サッカー部、関西国際大学トレーナー。現在は、メディカルサポートやアスリートの動作解析を行っている。メディア出演も多数。
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(メディカルトレーナー、動作解析専門家 夏嶋 隆)
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