本当に頭のいい人を一発で見抜くことができる「とっておきの質問フレーズ」
プレジデントオンライン / 2021年6月17日 11時15分
※本稿は、齋藤孝『本当に頭がいい人の思考習慣100』(宝島社)の一部を再編集したものです。
■「話を聞く」と「内容がわかる」はどう違うか
誰かと話をしているとき、まずは「聞く」という行為に集中することが重要です。
ここでいう「聞く」とは、単に音として耳に入れるという意味ではなく、相手が何を伝えようとしているのか、言葉の裏にある意味を読み取りながら、頭の中で正しく要約するということです。要約できたときが、「話の内容がわかった」ときなのです。
世の中には話が上手な人ばかりがいるわけではありません。回りくどい話し方しかできず、自分でも何を言っているのかわからなくなってしまう人もいます。そういうタイプの話も、しっかりと聞いて要約することができれば、相手もほっとするものです。
■意識して「聞く」だけで差は開く
「なるほど、つまりこういうことですね」とたとえてあげ、「ということは、こういうことにもつながりますね」と、ときに新たな意味を付け加えて話を広げてみます。それらが芯を食った適確な返しであれば、相手は「この人は正しく理解してくれているな」という安心した気持ちになり、その後の相手のトークはスムーズになるでしょう。
これが仕事上の上司との会話や、ビジネスパーソン同士のやりとりであれば、「この人は要約する力が高い人だ」「頭のいい人だ」という評価につながるわけです。
このように、聞く力がつくだけで、思考力のレベルはずいぶんと上がります。日頃から「人の話は要約できるように聞く」と意識している人と、漠然と聞いているだけの人では、それだけで大きく差がつくことになるでしょう。ちなみに、要約できるということは、話の流れをズラすこともできるということです。
同じ話ばかり繰り返し、要領を得ない人に「こういうことですね」と軌道修正し、流れを操る力も備わるのです。
■相手を安心させる「話を聞く姿勢」の正解
人の話を聞くとき、「姿勢」というのも実は大変に重要です。話し手に向かって自分の胸を向け、正対するのが基本です。話し手が右にいるなら、自分の身体も角度をちょっと右に向けて動かす。
シンプルな行為ですが、これだけで話し手の緊張はずいぶんとやわらぎ、より円滑なコミュニケーションが図れます。
講演会に呼んでいただくと、体育館のような場所にパイプ椅子が並べられているわけですが、たいていは垂直かつ平行にまっすぐ並べてあります。
そうなると、聞く側からまっすぐに前を見た場合、ほとんどの人の視線の先に私はいないことになります。理想としては、椅子は半円を描くように並べるのが最適でしょう。
■反応できる心の準備をしておく
このように、人の話を聞くときは相手に身体を向け、「全身で聞く」という意識が必要なわけですが、そうなると頷き方や、相槌の打ち方も変わってくるはずです。
笑顔での「なるほどね」という頷きもあれば、深刻な場面での無言の頷きというのもあるでしょう。頷くという行為は「腑に落ちた」ことを相手に伝えるリアクションです。私たちは人の話を聞くとき、きちんと反応できる準備を心の中でしておく必要があるのです。
コロナ禍で、大学の授業もオンラインで行うことがありましたが、最初のうちは顔を出さないで参加している学生がほとんどでした。やってみるとわかりますが、顔が見えずリアクションもない何十人もの学生を相手に、90分の講義をするというのは、どんなにタフな人でもメンタルにこたえるはずです。顔出ししてもらうとラクになりました。
普段あまり意識していないことではありますが、顔が見えるということは、人がコミュニケーションをとるうえで実は大事なことです。そして、それゆえに聞く側の「身体の姿勢」というのも、とても大事だということなのです。
■相手に必要な情報に特化して説明する
相手に何かを説明するとき、すべてを順序立てて話すのではなく、その人が必要としている必須情報に範囲を特化して説明するということが大切です。
その際、「資料にはAからJまで挙がっていますが、現実的にはAとDとFから選ぶしかないという状況です」と絞り込んで伝えてあげれば、会議の参加者はその部分だけ見て考えればいいことになります。全文読んだあとに、「とはいえ、実は3つしか選ぶ道はなく……」などと言ったら「それを先に言え!」と大いに顰蹙を買ってしまうでしょう。
その点において、実に優れた人物が、私の知り合いにいます。彼は必要な情報を時系列にして全体像をメールで報告してくれるうえに、「ついては対処方法は3つに絞られます。Aのこれ、Bのこれ、Cのこれです」と絞り込んでくれます。
■伝える相手に合わせて情報を加工する
それだけでも助かるのに、「ついてはAの場合に考えられるメリットはこれ、一方でリスクはこれ、そしてBは……」という、3つの選択肢の先の想定まで書いてくれるのです。実際、このマイナス面を伝えるというのは、誤解やトラブルを防ぐうえで特に重要です。
またそのうえで彼は、「わたしはB案が推しです」「参考までにBについてはこういった応用案が……」という形で、「B」に補足して「'B」案まで提示してくれることもあります。そこまで整理して説明してくれれば、こちらは最小限のエネルギーで、「じゃ、これにしようか」と納得して決断することができるわけです。
いうなれば、最初は四角く大きかっただけの武骨な情報が、彼によってブラッシュアップされた結果、角がとれ、必要な部分以外がそぎ落とされ、分解されて3つにきれいに並べられたことで、こちらはそれを見比べてすぐに決められるということなのです。
必要な情報とそうでない情報をふるいにかけ、たたき台になるものを上手につくれる人は、間違いなく頭がいい人です。
■「たとえば?」と聞かれてすぐ具体的に答えられるか
話をしていて「たとえば?」と聞かれたときに、即座に具体的な例が挙げられる人は頭のいい人です。ある事象を別のワードでたとえる力というのはとても大事です。「日本ってこの分野の理解がとても遅れているけど、海外ではさぁ」と言う人に、「海外って、たとえばどこ?」と聞いてみて、具体的な国名や地域が出てこないようでは、実はその問題を深くは理解できていないということになります。
ある会社がコピーライターの入社に際し、「あなたの好きな(嫌いな)コピーを10個(もしくは20個ほど)挙げてください」という試験問題を出したという話を聞いたことがあります。クリエイティブな職業の採用試験ですので、普段からどんな文化や芸術に触れているかが、採用するうえでの重要なポイントとなります。
■勉強不足をあぶり出す見事な質問
入社試験を受けに来るくらいですから、コピーを書くのが好きなのはわかっていますので、「具体的にどんなコピーをいい(悪い)と捉えているのか」を、「たとえ」として挙げてもらうことで、その人がどんなセンスの持ち主であるかを推し量ろうというわけです。
しかも、ひとつや2つでは少なすぎます。10や20の具体例をパッと出せないようでは、普段から世の中のコピーにあまり触れておらず、ひいてはコピーライターとして勉強不足ということにもなります。見事な問題だと思います。
■「ベスト3方式」で「たとえ力」を磨く
これは、一般の企業や団体などでも応用することができるでしょう。「これまで感銘を受けた本をいくつか挙げてください」というお題に対して、返ってきたリストを見れば、その人がどんなレベルで読書をしてきたかがおおよそわかります。
本をまったく読んでいない人であれば、おそらく一冊も名前が出てこないのではないでしょうか。また、読んでいたとしても、たとえばサブカルチャー的な本しか知らないというようなことになると「この人は軽い読書しかできない人」と判断されてしまうでしょう。
この判定方法については、私は「ベスト3方式」というのをおすすめしています。たとえば、ユーチューブに精通している人に、「好きなコンテンツを3つ」とお願いし、興味深いコンテンツを瞬時に3つ答えられる人は、「ユーチューブ偏差値」が高い人といえるでしょう。ひとつも答えられないという人は、普段から頭の中で情報が整理されていない人です。そういう人は、概して話すことも一般論に偏りがちで、具体的な説明が苦手です。
頭のいい人は考えが常に具体的で、会議でも「こんな案はどうでしょう」と「たとえ」を提案できますから、それをたたき台にして会議もスムーズに進みます。
「たとえ」とは「具体的」なもの、すなわち「アイデア」ということなのです。
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明治大学文学部教授
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『ネット断ち』(青春新書インテリジェンス)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)『新しい学力』(岩波新書)『日本語力と英語力』(中公新書ラクレ)『からだを揺さぶる英語入門』(角川書店)等がある。著書発行部数は1000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導を務める。
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(明治大学文学部教授 齋藤 孝)
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