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「ディズニーランドのついでに予約」女性向け風俗の利用者が爆増しているワケ

プレジデントオンライン / 2021年6月14日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miljko

男性セラピストが女性に性的サービスを行う「女性向け風俗」の利用者が増えている。女性向け風俗セラピストの柾木寛さんは「以前に比べてレジャー感覚の若い利用者が増えた」という。ホワイトハンズ代表理事の坂爪真吾さんとの対談をお届けする――。(前編/全2回)

■情報にアクセスしやすくなりハードルが下がった

【坂爪】この10年で女性向け風俗は爆発的に広がりました。かつて都内で数店舗にすぎなかったのに、いまは150店舗以上に増加したと聞きます。個人が自由に情報にアクセスできるうえ、利用者も情報を発信できる環境になり、ハードルが下がって、抵抗を感じる女性も減っていったのでしょうね。

【柾木】私は6年ほど前から女性向け風俗の世界で働きはじめたのですが、業界……特にお客さまの意識の変化は本当に著しい。当初、女性向け風俗は、ひっそりと営業されており駆け込み寺的な役割も果たしていました。夫婦仲は悪くないけれど、長年セックスレスに悩む40~50代の女性、性交痛に苦痛を感じている女性、性交中の演技に疲れた女性、女としての自信を喪失してしまっている女性……。そんな切実な悩みを抱える女性たちが利用してくれました。しかし最近は20~30代で、プロの技術を試してみたいと連絡をくださる若い世代が多い。地方から上京し、ディズニーランドで遊んだ翌日に、女性向け風俗を予約する。そんなレジャー感覚の女性が増えた気がします。

【坂爪】1970年代~90年代にも、女性が主体的に性を楽しもう、という動きはありました。しかし、反体制運動やフェミニズムの理論が基になっており、政治的にラディカルな主張も多く、「男女がお互いにきちんとコミュニケーションを取り合って性生活を楽しんでいこう」という感じではなかった。それから30年近く過ぎ、ようやく男女のコミュニケーションをふまえた形に変わっていったように見えます。

■女性向け風俗の草分けはドクター荒井

【柾木】この数年の女性向け風俗の動きを改めて振り返ると、2016年の『昼顔』ブームで、不倫で家庭を壊すわけにはいかないから風俗を利用してみたかった、と言うお客さまもいました。ある店舗のオーナーは、2018年に松坂桃李さんが主演した『娼年』の影響で利用者が増えたとも話していました。

ブレードランナー スタイル新宿クロッシング夜
写真=iStock.com/Vu-Minh Nguyen
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Vu-Minh Nguyen

そもそも女性向け風俗の草分けは、ドクター荒井だと言われています。ドクター荒井は70年代にアメリカで性について学び、日本で初めて性感マッサージ店「すがも美療院」を開設しました。80年代に入り、「トゥナイト」などの深夜番組に取り上げられ、一躍有名になった。女性も性を楽しみ、快感を味わう……。当時としてはセンセーショナルな文脈で爆発的にヒットしましたが、もともとのコンセプトは違いました。性行為がうまくいっていない夫婦へのサポートが目的だったのです。

こうしてスタートした女性向け風俗は、整体師など身体の知識とマッサージのスキルを持つ人たちが、裏メニュー的に行うケースが多かったようです。その頃から、女性向け風俗店で働く男性は、性感マッサージ師、性感師と呼ばれていました。それが、3年前ほどからセラピストという呼称になり、店によってはスタッフ、キャストと呼ぶようになった。

■風テラスへ寄せられる相談に男女差はほとんどない

【坂爪】利用する女性にも抵抗感がない呼び名になったわけですね。

件数は少ないですが、風テラスにも男性セラピストから相談が寄せられます。コロナ以前だと、風俗の世界で働く女性から風テラスによせられる相談は月60~80件。一方で、男性セラピストからの相談は年に数件にすぎません。

そこで興味深いのは、相談内容が男性セラピストも、性風俗店で働く女性もほとんど変わらないこと。退店時に店舗側がホームページから写真を削除してくれない、約束の報酬が支払われない、店が決めた理不尽な罰金のルールに困っている、客とトラブルになってしまった……。女性向け風俗でも、一般の男性向け風俗でも、同じような問題が発生し、その世界で働く人たちは似た悩みを抱えているのだな、と気づかされました。

■女性は身体だけでなく心でも性を感じる

【坂爪】また、風俗を利用し、恋愛感情をどうしても抑えられなくなってしまう人も、男性、女性に限らずに少なからずいる。そうした部分もジェンダーによる違いはないと初めて知ったとき、少し意外な感じがしました。

柾木寛『「女性向け風俗」の現場』(光文社新書)
柾木寛『「女性向け風俗」の現場』(光文社新書)

【柾木】女性向け風俗では女性がセラピストにはまることを“沼る”と言いますね。なかには、恋愛感情を利用するセラピストもいますからね。

【坂爪】そう考えると、セラピストが女性客と距離感をどうとるか。そこが一番、難しい気がします。疑似恋愛を楽しみたい女性もいれば、悩みを解決したい女性もいる。女性客がセラピストに求めるサービスも多様なわけでしょう。

【柾木】そう思います。最近、よく、いいセラピストの条件はなんですか、と聞かれるんです。スキルや知識、コミュニケーション能力、誠実な人柄が大切なのは当然ですが、仕事を続けていくうち、お客さまとの距離の取り方かなと思うようになりました。

女性向け風俗の難しさは、女性が身体だけでなく、心でも性を感じやすい点にあります。私は、お客さまの予約メールに返信した瞬間からサービスがスタートしていると考えています。特に初めてのお客さまは、不安を抱えて連絡をしてきてくれています。待ち合わせて、ホテルに向かうまでの数分間も、セラピストがどんな男性なのか、ずっと観察しています。その後、施術に入る前に、事前アンケートに必ず答えてもらってから、マッサージに入ります。

私が働く店では、お客さまは3時間で3万円に加え、ホテル代をお支払いいただきます。対価に見合う満足感を与えられているのか。当初、私も不安でしたが、たくさんのお客さまに教えていただきながら、私たちの役割は、女性がいままで誰にも言えなかった悩みや欲求に寄り添うことだとようやく気づきました。

ただ一昔前は、セラピストが店のオーナーも兼ねて、自分の性欲を満たすために風俗営業をしているような店も少なくなかった。「オイルマッサージをしてもらっていたら、いきなり挿入された」という犯罪レベルのトラブルもよく耳にしました。

■女性の性への意識は昭和と比べて大きく変わった

【坂爪】女性向け風俗がさらに知られて、利用者が増えれば、そうした悪質な店舗やセラピストは淘汰(とうた)されていくはず。SNSなどで店やセラピストの評判は一気に広まるでしょうから。

また、経営者自身が女性であるお店もありますよね。経営に女性の視点が入ってきている影響も大きいのではないですか?

【柾木】そうかもしれないですね。昭和なら女性たちが性にかかわる発言をすることすらためらわれた。しかし女性の意識は大きく変わった。彼女たちの声が、いま、女性向け性風俗の世界の秩序をつくっているのかもしれません。(後編に続く)

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柾木 寛(まさき・ひろし)
女性向け風俗セラピスト
女性向け風俗店を運営する40代の現役セラピスト。施術歴6年。たくさんの女性の身体と向き合う中で、性的に満たされている女性が極めて少ないことを知り、女性の性に対する男性の間違った理解・男女の性のすれ違いを改善する役に立てたらと書籍を執筆。『「女性向け風俗」の現場 彼女たちは何を求めているのか?』(光文社新書)が初の著書となる。

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坂爪 真吾(さかつめ・しんご)
ホワイトハンズ代表理事
1981年新潟市生まれ。東京大学文学部卒。新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗産業の社会化を目指す「セックスワーク・サミット」の開催など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に、『セックス・ヘルパーの尋常ならざる情熱』(小学館新書)、『男子の貞操』(ちくま新書)など。

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(女性向け風俗セラピスト 柾木 寛、ホワイトハンズ代表理事 坂爪 真吾 聞き手・構成=プレジデントオンライン編集部)

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