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三菱UFJ銀行半沢淳一新頭取「常識に従うのではなく、逆らっていく」

プレジデントオンライン / 2021年7月20日 9時15分

三菱UFJ銀行頭取 半沢淳一氏

■銀行本店をグループ本店に

子どもの頃は、どこにでもいる普通の野球少年でした。私は最後の王・長嶋世代で、小学生の頃は「将来は長嶋茂雄になるんだ」と友達と白球を追っていました。中学生にもなるとさすがに長嶋にはなれないと悟って野球は諦めましたが、現在までずっと巨人ファンです。埼玉県立浦和高校ではボート部に入りました。隣接する戸田市には1964年の東京オリンピックでボート競技が行われた戸田漕艇場がありますので、あの辺りの学校では(ボート競技が)盛んなのです。毎日一生懸命、漕いでいましたね。

高校を卒業して東京大学経済学部に進学しました。身長が低いこともありますし、あんなにキツい部活動はもういいだろうと思ってボートは続けませんでした。卒業は、88(昭和63)年ですから、ちょうどバブルの絶頂期です。好景気で企業が順調に成長する中で銀行の役割は大きくなり、また規制緩和への期待感もありました。これからの銀行は資金面での支援もさることながら、証券やM&Aなど業務の広がりもありそうだということで三菱銀行(現三菱UFJ銀行)を志望したのですが、その見通しと選択は間違っていなかったと思います。

「将来は頭取にと思っていたか?」。そんなことは想像すらしませんでしたし、頭取になるために仕事をしてきたわけでもありませんから(笑)。

最初は王子支店(東京都北区)に配属され、4年目からは大蔵省(現財務省)国際金融局に出向しました。そこでは調査・分析の仕事に携わったのですが、さまざまな業界の現状を徹底的に調べ上げ、今後の見通しについてレポートにまとめるという仕事をやっていました。いかに客観的・多角的な調査をして、誰にでもわかりやすい文章に落とし込むかを、とことん叩き込まれました。バンカーとしてのものの見方の基礎が、あそこで出来上がったと思います。振り返ってみると、私は上司には恵まれてきたと思います。厳しい方が多かったですが、節目節目でいい上司に巡り合い鍛えられました。

銀行に戻ってからは経営企画に長くおりました。私が入行以降、三菱銀行は東京銀行との合併(96年)、日本信託銀行・三菱信託銀行との持株会社設立(2001年)、UFJホールディングスとの合併(05年)など、一貫して経営基盤を強化してきました。私が経営企画に携わってからは、17年に三菱UFJ信託銀行から法人融資業務を三菱東京UFJ銀行(当時)に移すなどしました。いかにグループとしての強みを生かし、より良いサービスを提供していけるかが今後も経営のテーマになっていくと考えます。

■金融とデジタルの力で未来を切り拓くNo.1ビジネスパートナー

今回の頭取就任に際して私が果たさなければならない責務は、このコロナ禍においてまずは金融の役割をしっかりと遂行することです。現在、最優先で取り組んでいる資金繰り支援を中心とした金融サービスで、社会を継続的に支えていきます。そのうえで、21年4月からMUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)で企業変革/成長戦略/構造改革の3つの柱からなる新・中期経営計画(21~23年度)が始まりました。3年後の目指す姿として「金融とデジタルの力で未来を切り拓くNo.1ビジネスパートナー」を掲げ、銀行もこの方向性に沿って3つの重点テーマに取り組んでいきます。

金融とデジタルの力で未来を切り拓く3つの重点テーマ

1つ目は、「国内収益基盤の徹底強化」です。ウェルスマネジメントと法人向けソリューションサービスの充実はさることながら、最も力を入れていきたいのはDX(デジタルトランスフォーメーション)による変革です。この5年間で店舗にご来店されるお客様は半分まで減っている一方で、ネットを通じたサービスのご利用者数は2.5倍に増えており、オンライン業務の拡充は急務です。23年度までには、ほぼすべての金融取引をオンラインでできるようにしたい。同時に、DXは業務フローにおいても推進します。徹底的な効率化で損益分岐点を下げ、強靭な事業基盤を確立します。

2つ目に、「グローバル事業の強靭化」を進めます。前・中期経営計画(18~20年度)では、インドネシアのバンクダナモン連結子会社化など、海外戦略のプラットフォーム構築に目途をつけました。新・中期経営計画での大きな考え方は「量の拡大」から「質の向上」へのシフト。これまで構築してきた海外事業基盤をより強固なものにし着実に利益貢献させていきたい。

そして3つ目は、「環境・社会課題解決へのさらなる貢献」です。気候変動対応や政府の推進するグリーン成長戦略は、すでに環境問題への意識喚起から産業構造の転換へとステージが移行しています。銀行としては脱炭素化やサプライチェーンの見直しなど、中長期的な視点で的確なソリューションを提供していきたいと考えています。

■今、銀行はビジネスモデルの転換を

今、銀行はビジネスモデルの転換を迫られています。超低金利はこのまま恒常化するでしょう。そうした中で銀行はどのように収益を上げていくのか? 従来通りのやり方では、生き残っていけません。常識に逆らうことも必要なのです。もちろん、預金をお預かりして必要とされる方に適正に融資する業務は、これまで通りしっかりと行ってまいりますが、これだけで収益を強化していくことは不可能です。

では、どうするか。解決策はお客様の経営課題にしっかりと寄り添っていくことです。脱炭素化や新型コロナ対応など経営環境がこれだけ激変している中で、今、課題を抱えていない企業はないはずです。いかに変化に対応し事業を継続していくのか──。新規事業に踏み出す、業態転換に舵を切る、他社との協業に踏み出すか、他社との協業に活路を見出す、M&Aという選択肢もあるかもしれません。そうしたときに、銀行が将来を見据えた的確な提案をさせていただけるようにならないといけない。そこでは我々がMUFGのグループとしての強みを、いかに発揮できるかがカギになります。

そうした問題意識の中で、銀行本店ビル(東京・丸の内)を「MUFG本館」に建て替える構想を持っています。現在、MUFGの銀行/信託銀行/証券の各社では、丸の内/大手町の9拠点に1万9000人が勤務しています。新型コロナ対応で(銀行本店は)出社率が40~50%までになっています。これは新型コロナが収束しても、100%には戻らないでしょう。そこでデジタルもフルに活用しながらグループ各社の本社機能を新しいビルに集結し、グループ一体での提案や決定をスピーディに行えるようにしていく。

常識にとらわれない、我々の新しい姿に期待していてください。

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半沢 淳一(はんざわ・じゅんいち)
三菱UFJ銀行頭取
1965年、埼玉県生まれ。埼玉県立浦和高校を経て、88年、東京大学経済学部卒。同年、三菱銀行(当時)入行。企画部、調査部に加え名古屋営業本部長など営業部門を歴任。2019年、三菱UFJ銀行取締役常務執行役員を経て、21年より現職。

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(三菱UFJ銀行頭取 半沢 淳一 構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩)

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