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「コロナ入り残りカスでも食ってろ、死ね」という手紙

プレジデントオンライン / 2021年7月27日 9時15分

ハルモニに「平和」という文字を教えるフォトジャーナリストの安田菜津紀さん(右)。2021年4月、筆者撮影。

■「コロナ入り残りカスでも食ってろ、死ね」という手紙

「コロナ入り残りカスでも食ってろ」そして「死ね」と何度も綴られた手紙とともに、お菓子の空袋が、多文化共生施設「川崎市ふれあい館」に届いた。手紙は在日コリアンを差別的に攻撃するもので、同館には以前もゴキブリの死骸が送られてきたこともある。2020年1月にも「在日韓国朝鮮人をこの世から抹殺しよう」と書かれた年賀はがきが届き、12月には威力業務妨害罪に問われた男に懲役1年の実刑判決が言い渡されたばかりだ。

ふれあい館は在日コリアンをはじめとする様々なルーツを持つ市民が、子どもからお年寄りまで相互にふれあいをすすめることを目的とした施設で、普段、子どもたちの笑い声が飛び交う。同館へ向けられるヘイトはやまない。

「今日はハルモニ(おばあさん)たちに作文を書いてもらいたいと思います」。私がふれあい館を訪れたこの日は、定期的に開かれている、在日コリアンの高齢者を中心とした交流クラブ「トラジの会」が開かれていた。

■変えることのできないルーツを理由に差別される恐怖

ハルモニたちは学校で読み書きの教育を受けたことがない人が多い。サポートを受けながら「これまで日本で一生懸命生きてきたのに、どうしてこんな酷いことを言われ続けなきゃいけないの」「子どもたちの世代には、こんな思いをしてほしくない」と、想いを綴っていた。一緒に取材に来ていたフォトジャーナリストの安田菜津紀さんも、あるハルモニの隣で作文を書く様子を見守りながら、サポートをしていた。「へいわってどんな漢字?」とハルモニが聞くと安田さんは丁寧に大きな字で「平和」と書いて見せる。安田さんは父が亡くなってから彼が在日コリアンだったことを知り、現在は自身のルーツや、様々なルーツを持つ人々の取材を続ける。

米国でのアジア人を標的にした事件、ヘイトクライム(差別的動機による犯罪)の報道も増え続ける。変えることのできないルーツを理由に差別される恐怖は、私自身も米国カンザス州に留学をしていたときに何度か経験した。だが日本にはヘイトクライムを処罰する法律がない。今日本で起きているヘイトの現状を重く受け止め、早急に対策に踏み切る必要がある。ハルモニが書いた「平和」という言葉の実現に向けて。

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伊藤 詩織(いとう・しおり)
ジャーナリスト
1989年生まれ。フリーランスとして、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信し、国際的な賞を複数受賞。著者『BlackBox』(文藝春秋)が第7回自由報道協会賞大賞を受賞した。

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(ジャーナリスト 伊藤 詩織)

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