「もし動物に生まれ変わるなら…」努力の報われる人が答える動物の名前
プレジデントオンライン / 2021年6月22日 15時15分
※本稿は、清水利生『スポーツの本番に強くなる! 子どもメントレ』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。
■何をしたいのかわかっていない子
私は幼児からトップアスリートまで様々な年代の方々をメンタルサポートしています。
特に小学生から高校生の年代のお子さんを持つ保護者の皆さんから、「目標を立てるけれども、その気持ちが長続きしない」「うまくいかないと、目標をすぐに諦めてしまう」、そんな声を多くいたただきます。
本人に合った目標とは、一体どうやって決めていけば良いのか? どんな目標設定が自分に合っているのか? 今回はそんな目標とやる気の関連性を考えていきます。
私が目標設定をするときに、すごく大切な要素だと思っているのが「願望や欲求」です。「~したい」という気持ちが、目標設定のヒントになるからです。
しかし、不思議なことに自分の求めていることなのに、自分では気づいていないことがあります。私は選手に「なんでその目標を立てたか?」という質問をよくします。選手たちは、目標達成することによって、何が自分のメリットになるか気づいていないことがあるのです。
人は不足感があるものに対して、「持っていないから欲しい」と欲求が出るものです。
例えば、お腹が空いている(不足感)から「ご飯が食べたい」という欲求が出てきます。満腹感があれば、「ご飯を食べたい」という欲求も出てきません。不足感が強いものほど、叶えたいという気持ちも強くなると言うことができます。
「願望や欲求」を明確化するためのオススメの質問を一つ紹介しましょう。
■質問1 動物に生まれ変わるなら何になる?
これは、ジュニア年代のサポートを始めるときによく投げかける質問です。
一見、スポーツとは見当違いに思われがちですが、これは自分自身が何を求めているのかを表面化する質問です。
「ライオンになりたい」と言うテニス選手がいました。理由は、「動物の王様で一番強そうだから」と。
「一番強い」という部分に欲求を持っていることを表します。さらに彼は、「強くて、たてがみがかっこいいのが、他の動物には無くて良い」と、他とは違う存在になりたいという欲求が明確化されます。
ある野球選手は、「何も考えずゆっくりしたいから、ナマケモノ」という選手もいました。その選手の目標は「将来怠けて暮らせるほど稼ぐ」というふうに設定できました。
欲求が明確になると、どんな自分を作っていけば良いかが見えてきます。
・そのためにどんな技術をつけたらいいか?
・どんな結果が必要なのか?
・どんなチームに入っていくべきか?
という、目標を具体的に設定することができます。
このように欲求を明確化して、自分の求めているものを理解すると目標が立てやすくなるでしょう。感情がついてこない目標ほど長続きしない可能性が高くなります。欲求と目標をつなげて考えてみてください。きっとお子さんに合った目標設定ができるはずです。
■スランプに陥った子
2021年は延期となった東京オリンピックが開催予定です。世界的なビッグイベントが日本で行われることは、子どもたちにとって、かけがえのない経験となり、記憶に残るでしょう。
私が子どもの頃にJリーグが開幕し、世界的スーパースターたちが華々しいプレーを見せてくれました。そのプレーから大きな影響を受けて夢を持つことができました。
私自身、少年時代に持った夢は「サッカーで有名になって、お金をたくさん稼ぎたい」でした。それが大きなモチベーションを作る要因となっていました。
しかし、プレーがうまくできなくなると、人の目や評価ばかりが気になりはじめました。有名になりたいという気持ちが強い分、人と自分を比べてしまい、うまくいっている友達に敏感になっていったのです。
友達にねたみを持ち、そして「自分には向いていないのではないか」と自己否定をする。ミスをするたびに大きく落ち込み、折れやすいメンタリティになっていました。
■質問2 夢を叶えると周りの人に何ができる?
こういうときには自分が夢を叶えることによって「周りの人にどんな影響を与えられるのか」という視点を持つことが大切です。
夢を叶え「自分が得られるもの」を考えることは、一つのモチベーションになるのは間違いありません。
しかし、それだけではなく「周りの人に影響を与える」という視点も、モチベーションを保つ要素になります。
人に対して何かを与えようと考えられる人は、「幸せな時間を過ごせている」という心理学の研究結果もあるほどです。
例えば、私がサポートする陸上選手で、大学生のスグルくんは、「家族、応援してくれている人、今まで自分に陸上を教えてくれた指導者に対して、喜んでもらいたい。その人たちのためにも結果を出したい」
そんな強い気持ちが、自分を支える柱になっていると話してくれました。
「自分のために競技を頑張るというよりは、みんなを笑顔にするためのほうが、モチベーションが高まります」
彼は、人のために頑張るという軸を持っていたことで、苦しい状況に追い込まれたときでも「今自分がどうあるべきか?」と、常に気持ちを切り替えて競技と向き合うことができていました。
他人の成功や環境に左右されないモチベーションを作れていたのです。
スグルくんは大きな壁を何度も乗り越え、毎年1月に行われる箱根駅伝で活躍し、長年の夢を叶えました。
親御さんが涙を流して喜んでくれたことを、嬉しそうに話してくれた姿は私にとっても感動的な瞬間で、大切な時間になりました。
2021年の東京オリンピックを見て、多くの子どもたちが夢を持つきっかけになるでしょう。子どもの目標設定をサポートするとき、その夢を叶えた先に「どんなことを与えられる人になるか」という視点を頭の片隅に置きながらコミュニケーションを取ってもらいたいと思います。
辛いことやきつい思いをしているときに、「自分のために」と「人のために」。この2つの視点が心の支えとなってくれるでしょう。
■練習が嫌いな子
「地味な練習も大切だよ」
いつも子どもにそう伝えていますが、うまく伝わらず困った様子のお母さんが相談に訪れました。
「試合は楽しそうに頑張っているのですが、練習が嫌いみたいで、いつも行きたくないと言うんです」
お母さんの悩みの種は小学4年生のユウキくん。4月から野球チームに入りましたが、なかなか練習に前向きになってくれません。
「楽しくないことはやりたくない」というユウキくんに詳しく話を聞くと、自分でも練習が大切なのはわかっているけれど気持ちがついてこない様子でした。
■質問3 好きな漫画のキャラは何?
そこで私は好きな漫画を聞きました。
「たくさんあるよ!」とユウキくん。その中から自分に似た境遇のキャラクターをピックアップしてもらい、そのキャラが苦手なことだろうが克服する様子を話してもらいました。
「ユウキくんが、そのキャラクターになってみようか!」
そう問い掛けると、彼はキョトンとした顔でこちらを見て笑い出しました。
キャラクターになった気分で練習に向かい、苦手を克服する様を自分に重ねてもらったのです。人間は、「取り組んだ先にどれだけワクワクすることが待っているのか?」というプラスの感情をイメージすることができたときに、やる気が増します。
ユウキくんは苦手を克服し、成功するキャラクターに自分の姿を重ねることで、成功する未来への期待が膨らみました。
「自分が漫画のキャラになったつもりで練習しているよ」
彼は結果的につまらないと感じる練習も、積極的に取り組めるようになり、メキメキと実力を伸ばしていきました。
目の前の練習に前向きになれない子は少なくないでしょう。そんなときは、行動に意識を向けて、少しずつ達成感を味わっていくことがモチベーションを伸す一つの方法です。
もう一つ私のオススメは、漫画や映画、また目標とする選手を見て、成功するイメージをしてもらうことです。
キャラクターに自分を重ねる仕掛けをしてみるのも、モチベーションを育てるサポートになるでしょう。
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メンタルトレーナー
株式会社43Lab代表取締役。1985年山梨県生まれ。山梨県立韮崎高校卒業。山梨学院大学を中退しプロフットサル選手として29歳までプレー。引退後メンタルトレーナーに転身。現在プロスポーツチームのサポートをはじめ、オリンピック選手やW杯出場選手など日本を代表する選手たちのサポートを行う。ジュニア育成「パンケーキプロジェクト®」では、年間延べ2,000人を超える子どもたちをサポートし自己肯定感を育てる活動を広げる。 [実績]ジュビロ磐田(Jリーグ)、ヤマハファクトリーレーシング(モトクロス)、インドネシアフットサル代表、フウガドールすみだ(Fリーグ)、中央大学陸上部駅伝ブロックなど多数。
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(メンタルトレーナー 清水 利生)
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