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「勉強しなくてもいいが…」サッカー元日本代表・中村憲剛に勉強を両立させた父親の"怖い言葉"

プレジデントオンライン / 2021年6月23日 11時15分

川崎フロンターレFROの中村憲剛氏 - 画像=『プレジデントFamily2021年夏号』

サッカーの元日本代表で現在は川崎フロンターレFROの中村憲剛さん。小さい頃からサッカーに没頭したが、学校の授業も全集中で臨み、手抜きをしなかったという。両立できた背景にあったもの、それは父親が「勉強しろよ」と言わない代わりに息子に放った、ある“怖い言葉”だった――。

※本稿は、『プレジデントFamily2021年夏号』の一部を再編集したものです。

■元日本代表MF・中村憲剛「子供時代はマンガ、今は“本の虫”です」

子供の頃はサッカー漬けの生活で、本を読む時間などはありませんでした。

例外はマンガです。10歳年上の姉の影響もあって、『キャプテン翼』を夢中になって読んでいました。主人公の翼クンは、勝ち続ける男です。自分も同じようにサッカー界を駆け上がっていくんだと思っていましたが、現実は厳しい。「翼クンは特別だ」って、僕は早々に気づきました(笑)。

でも、翼クンの前向きな姿勢やチームメートと一緒に成長していく過程は読んでいて熱くなったし、彼らの姿勢は自分のプレーについて考えるヒントにもなりました。やはり『キャプテン翼』は、サッカー人生の入り口をつくってもらったバイブル的な作品です。

余談ですが、プロ選手になってから作者の高橋陽一先生に会えたのはとても嬉しかったです。僕の人生の夢がひとつ叶(かな)った瞬間でした(笑)。

小学4年生の頃から連載が始まった『スラムダンク』も僕のココロのど真ん中にはまりました。単行本化されるのを待ちきれず、毎週「週刊少年ジャンプ」を買って、むさぼり読んでいましたね。基本、スポーツものは明るくて爽やか、読んでいて気持ちがいいじゃないですか。当時の多くの少年少女と同じように、読んで元気をもらっていましたね。

■「勉強しなくてもいいけど自分に返ってくる、全部、自分の責任だ」

両親には、本を読めとか、勉強しろとかはあまり言われませんでした。ただし、父親からは「勉強しなくてもいいけど、将来の自分にすべて跳ね返ってくるぞ。それは全部、自分の責任だ」と。これは、子供ながらに怖かったですね。結局、勉強をやらざるをえなくなりました(笑)。

その影響もあってか、僕はサッカーも勉強も中途半端が嫌で、小学校から大学まで、授業中はしっかり集中していました。文武両道とまでは言い難いけれど、「サッカーは百点、勉強は80点くらい」を目指していた。ただ、サッカーを全力で追求すると、帰宅後はくたくたで余力がなくなる。だから、勉強は授業中に完結させていました。ここで培った集中力は、サッカーでも役立ちました。

子供たちには、「サッカーがうまくなりたければ、授業に集中しなさい!」とアドバイスしたいですね。

■プロ1年目で中村憲剛を覚醒させた「絶望を希望に変える一冊」

というわけで、子供時代の僕にとって、活字、読書といえば、マンガと教科書でした。本を読みだしたのは、プロ選手になってからです。

画像=『プレジデントFamily2021年夏号』

大学を卒業すると、教科書がなくなって読むべき活字がなくなってしまった。自分から望まないと、活字がどんどん離れていく状態に陥りました。それに、Jリーガーって意外と自由時間が多いんです。午前中に練習したら午後はフリーとか、試合のある日も長い移動の時間があったりで。気づいたら、そこに活字を欲する自分がいたんですね。読書は苦手だと思っていたけれど、そうではない自分を発見しました(笑)。

そして、プロ1年目に印象的な本に出合ったんです。レーシングドライバーの太田哲也さんが著した『クラッシュ 絶望を希望に変える瞬間』という一冊で、太田さんがレース事故で瀕死の重傷を負ってから、レース復帰を目指して壮絶なリハビリを経て回復していく経緯が、こと細かに綴られています。

当時の僕はレギュラーではなく、試合に出たり出なかったりで、「プロ選手としてやっていけるのか」とかなり悩んでいた時期でした。そんなときに、太田さんの本に触れて、自分の悩みはなんとちっぽけで恥ずかしいものかと。元気にサッカーをやれる状況に感謝して全力で頑張ろうとこのとき思ったんです。プロになったばかりのタイミングでこの本に触れられたのは大きかった。以来、本の虫です。

■なぜ、本をたくさん読むとサッカー選手としての一皮むけるのか

読書は、文字で読んだものを脳で映像に変換する作業を伴います。これって、サッカーにおける創造性と通じるんですね。創造力を鍛えれば、プレーを組み立てる能力も上がる。さらに、読書によってボキャブラリーが豊富になります。語彙を増やして、表現力を鍛えることも、サッカー選手にとって大事なことです。

『プレジデントFamily2021年夏号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily2021年夏号』(プレジデント社)

サッカーは試合中の瞬間瞬間に局面が切り替わるスポーツなので、チームメートに指示を出すときは、短いワードでズバッと要点を伝えなければならない。また、連係プレーの質を高めるためには練習や試合後のコミュニケーションが必須ですが、ここでは自分の頭の中にあるプランを的確な言葉で相手に伝えなければなりません。試合で良い連係プレーを実践するには、言語化することで相互理解を深める必要もあるのです。

そういう意味で、サッカーをやっている子供たちは、絶対に本を読んだ方がいいと思います。マンガでも教科書でも、とにかく活字に触れてほしい。

サッカーは今後ますます戦術的に高度になります。足元の技術がめちゃくちゃ高いとか、シュート力がすごいとか、飛びぬけた才能の持ち主でも、どこかで壁にぶつかるときが来ます。それを乗り越えて次のステップに進むには、本を読むことで鍛えられる創造力や言語化能力が助けになると強く思っています。

わが家の長男も今はサッカー漬けの毎日ですが、「本はいいぞ」とは伝えています。

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中村 憲剛(なかむら・けんご)
川崎フロンターレFRO
1980年、東京都生まれ。小学校1年生でサッカーを始め、府中市の府ロクサッカー少年団に所属。都立久留米高校、中央大学文学部卒業。2003年、川崎フロンターレに入団。20年に現役引退後もフロンターレ リレーションズ オーガナイザーとして川崎フロンターレに所属。長男(中1)、長女(小5)、次女(年長)の3人の父。

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(川崎フロンターレFRO 中村 憲剛 構成=小桧山想 撮影=市来朋久)

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