「真っ赤な外車に年100万円以上」43歳IT社長が完敗した妻のすごい"固定費削減プラン"
プレジデントオンライン / 2021年6月24日 11時15分
■手取り月収65万円の夫の稼ぎが丸ごと消える4人家族の謎
「収入が少なくなったわけではないのに、貯金が減っているんです」
家計のやりくりがうまくいかないことに不安を覚えて相談に来たのは、都内在住の専業主婦・柿本梢さん(40歳・仮名)です。夫の和也さん(43)はIT関連の小さな会社を経営しています。小6と小3の2人の子供がおり、4人で暮らしています。
収入は夫の役員報酬だけで、手取り月収約65万円。役員賞与は設定していないので、臨時収入はありません。それでも今までは黒字でやりくりできていたはずなのに、この1年ほどは通帳の金額が減り続けている。原因を探ってみたものの、突き止められなかったそうです。
梢さんは3年前から家計簿をつけはじめました。それをざっと見ると、どの月も支出総額は約61万円です。家計簿上、毎月3万~5万円は黒字なのに、なぜこの貯金が減っているのか。
■特別出費が年55万円以上もあった理由
家計状況を詳しく伺いましたが、やはり月の収支は黒字であり、支出総額も大きな変動はありません。そうなると、考えられるのはイレギュラー支出の影響です。毎月ではなく、年に数度ある支出が変化し、毎月の家計に影響したのだろうと推測できます。
家計簿を見たり、思い出したりしながら1年にかかるイレギュラー支出を書き出していただきました。毎月の収入からは支払っていないコートやスーツといった衣類や家電の買い替え代として計約20万円、NHKの年間受信料が約2万5000円、自動車保険料(車両保険含む)の年払いが約10万円。そこに弟と住んでいる夫の母の体力がだんだんなくなってきたと聞き、様子を見るために年1回だった帰省を2回に増やしたので、年間約13万円かかっています。この2~3年は、イレギュラー支出が最低でも45万5000円ほどかかっているのです。そして昨年はそこに車検代の約10万円が加わりました。計55万5000円になります。
柿本家の月の収支状況を見ると、平均的に3万4000円ほど黒字です。ボーナスがないため、この金額の12カ月分、つまり40万8000円がイレギュラー支出に充てることが可能な金額となります。
計算してみるとわかるとおり、今の収入ではこのイレギュラー支出を賄える金額が足りません。イレギュラー支出に充てるほどの余剰金を残せていないのです。ここは毎月の収支をしっかりと見直し、貯金が減らないよう、また将来に向け貯められる家計を作れるように家計の体質改善することが必要です。
■オシャレな真っ赤な外車に年100万円以上。でも使うのは週末のみ
月の支出の詳細を見ると、明らかにメタボ家計です。特に固定費の割合が多いです。
固定費とは住居費や通信費、生命保険料、教育費というような、毎月同じ金額が発生する支出のこと。クレジットカードの分割払いや、仕送り、小遣いといったものも固定費に該当します。支払いスパンは月に1度ということが多く、支出額を意識しなかったり、当たり前だと思いながら支払ってしまったりすることも多い「落とし穴」的な支出でもあります。
「固定費は減らせない」。そう思い込んでしまうことも多く、支出の削減を意識し始めた人は、固定費を聖域化し、先に変動費の節約からとりかかることがほとんどです。しかし、固定費の割合が多い家計は変動費の節約の努力が成果となって表れる金額が少ないので、「頑張っても効果が出ない」という状況に陥りやすいです。
そこで柿本さんの家計ではまず、固定費の見直しをすることにしました。
気になる固定費は、通信費(月1万9000円)、自動車関連費(月5万1000円)、小遣い(月10万3000円)、カード支払い(月1万5000円)。
突出しているのは自動車関連費です。その内訳は、月約5000円がガソリン代で、それ以外はローン返済。数年前に購入したイタリアブランドの赤い車を使う頻度は週1、2回。週末にお買い物に行く程度だそうです。家計簿上、住居費に含めている駐車場代を加えれば、車の維持費に計月7万円以上かかっていることになります。
さらにイレギュラー支出として自動車保険に10万円かけていますし、自動車税もあります。よって自動車関連費は軽く年100万円を超えます。乗車頻度、所有目的が支払っている金額に見合っているのかを検討する必要があると考えます。
■自家用車を手放しカーシェアリングに移行する案が浮上
居住するマンションの駐車場には3台分のカーシェアリングのステーションがあります。考え方次第では、自家用車は所有せず、必要時に借りるという方法もありです。
また通信費は、和也さんは格安スマホを利用していますが、梢さんは子供にキッズケータイを持たせるために大手キャリアを利用しています。ここも考え方を柔軟にし、子供と一緒にスマホの利用ルールを作ったり、インターネットの制限をかけたりして、子供も梢さんも格安スマホに乗り換えると、かなり支払金額を下げられます。
小遣いは自営をする和也さんの交際費を含んでいるとのことでそのままでもよいと思えます。ただ、カード払いはリボルビング払いで支払額を一定にしているとはいえ、支払い期間が長期化しやすく利息がもったいない。同じ使うならプリペイドカードにチャージして使ったり、銀行口座から即時で金額が引き落とされるデビットカードなどを利用したりするほうが支出は一目瞭然です。両方ともクレジットカードブランドが付いているので、どのお店でも使いやすいのです。
これらをお伝えすると、梢さんは驚くべき速さで対応しました。
■外車を遊ばせていた夫に粘り強く交渉した専業主婦の“戦利品”
当初は拒絶反応を示していた和也さんに対して粘り強く交渉して自動車を手放す決断をしてもらい(カーシェアやレンタカーを利用)、自分と子供のスマホを格安に変えました。これだけで固定費の支出は7万4000円減らすことができました。加えて、任意保険、車検代の負担もなくなります。自動車を手放すとオーバーローン(乗らずにローン返済のみする)となるかもしれないと心配していましたが、購入時の頭金のおかげで持ち出しなく売却して、ローンをなくすことができました。
カードについてもプリペイドカードを取り入れるようにしたそうですが、今の支払い残金は貯金を減らしたくないという思いがあるため、これからの支出の削減度合いを見ながら早期完済を目指します。
自動車について思い切った決断をしたことで、お金が残ることを実感すると、その他の食費(月9万1000円)、日用品(月1万3000円)、妻の化粧品や美容室代(計月2万円余り)なども気になり始めたようです。
食費と日用品代の1週間予算管理の方法を教えるとさっそく取り入れ、1週間1万6000円の予算で頑張り始めました。毎週決まった曜日に予算額だけを財布に入れ、翌週の同じ曜日に更新するという方法です。予算内に収まる週、オーバーして翌週の予算から前借りする週もありますが、支出は食費と日用品代の2つの費目で2万7000円ほど削減することができました。
また、妻の美容などにかかるお金は、時に多くなりがちということもあり、妻の小遣いを設定し(月1万円)、その中でやりくりをしてもらうことにしました。妻の自由に買い物ができますし、家計にも響かないので、支出が安定します。
■2人の子供の教育費=月7万円は削減せず、中学受験に突入
このようなことを取り入れ、毎月の支出を抑えたところ、イレギュラー支出も減ることとなりました。毎月13万5000円ほどの余剰ができる家計になり、年間約150万円をイレギュラー支出の支払いと貯金に充てることが可能になったのです。
まずは貯金を増やすことを目標にしていますが、夫婦ともに40代。2人の子供たちには現在すでに塾や習い事などで月7万円以上の教育費をかけていますが、中学受験をする予定なので、さらなるコストがかかることが確実です。さらに自分たちの老後資金作りも本格化させないといけません。そのため少額で投資も始めてみたいと計画しているところです。
毎月の収支を見ることはとても大切なことですが、ボーナスのない家庭では毎月の収支から年間で必要になる支出を準備することも必要です。頭ではわかっていてもなかなかうまくできないという柿本さんのようなケースもありますから、支出の割に貯まらない、など疑問を持つようなことがあれば、毎月の収支に加えて年間で必要となるイレギュラー支出も書き出し、1年間に必要な支出額を把握してみましょう。過剰な支出または改善が必要な支出を見つけられるはずです。
■【家計費コストカット額ランキング】
ガソリン代もあまりかかっておらず、乗っていなかったので、手放してカーシェアリングを利用
2位 2万3000円 食費
1週間の予算管理を取り入れた
3位 2万1000円 住居費
車を手放したことで駐車場代が浮いた
4位 1万2000円 理美容代
妻の美容室代、化粧品代は新規に設定した妻の小遣い(1万円)内でやりくり
5位 1万円 小遣い
妻にも小遣いを1万円与え、その中で化粧品等必要な支出をやりくりしてもらう
6位 8000円 通信費
10年以上スマートフォンの契約プランの見直しをしていなかったため、格安スマホに変更
7位 4000円 日用品費
食費と共に管理することでコスト削減
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家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は143冊、累計330万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。
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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)
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