「太りづらく老けにくい体質になる」スプーン一杯で効果が期待できる"身近な調味料"
プレジデントオンライン / 2021年6月30日 11時15分
※本稿は、小林弘幸『自律神経にいいこと超大全』(宝島社)の一部を再編集したものです。
■「体にいいもの」は大きく分けて2種類
最近は、「体にいいもの」という情報が氾濫していて、あまり気にし過ぎるとかえってストレスになってしまう。
「腸内環境を整える」「ストレスフリーの食事術」という観点から腸内環境を改善するには、「発酵食品」と「食物繊維」を積極的にとればいいということを、頭のどこかに置いておいてほしい。
私たちの腸内には、1.5キロもの腸内細菌がすんでいる。消化・吸収を助け、免疫機能を高めてくれるのが、いわゆる「善玉菌」である。一方、毒素を発生させたり、病原菌を増殖させたり、腸の炎症を引き起こしたりするのが「悪玉菌」だ。
腸内環境を改善するためには、いかに「善玉菌」を増やし、「悪玉菌」を減らすかにかかっている。とはいえ、「悪玉菌」をすべてなくすということはできない。どんなに腸内環境が整っている人でも、「善玉菌」が2割、「悪玉菌」が1割、腸の状態によって、善・悪、どちらにも転んでしまう「日和見菌」が7割といったバランスである。
不規則な食事、ストレスや睡眠不足、暴飲暴食、喫煙などで、「日和見菌」が「悪玉菌」に転じてしまうと、腸内環境が途端に悪い状態になり、便秘や下痢だけでなく、消化・吸収も悪くなる。
すると、体のなかでは、さまざまな不具合が起こってくる。まずは、血液の汚れだ。腸でうまく排出できなかった食べ物のカス=毒素が、「門脈」と呼ばれる血流に乗って肝臓に行き、そこから心臓に行き、さらには全身に回ってしまう。
質のよいきれいな血液ではなく、毒素で汚れた血液が回るので、太りやすくなるだけでなく、肌荒れ、髪のパサつき、老化、さらには全身がだるくなって疲れやすくなってしまう。腸内環境が悪くなると、途端に自律神経も乱れてしまう。
■「お腹が張る」は腸内環境が変わってきたサイン
慢性的な便秘や下痢などを抱えている人は、ストレス耐性も弱くなり、集中力がなくなり、気分が沈みがちになる。
増えてしまった「悪玉菌」を減らし、「日和見菌」を「善玉菌」に変えるのに力強い味方が発酵食品と食物繊維である。てっとり早く善玉菌を増やすためには、腸内で善玉菌に変わってくれる乳酸菌やビフィズス菌などの生菌(せいきん)をとるのがいちばん。
朝食のときに、生菌を添加したヨーグルトなどの発酵乳製品の食べ物を一つ加えるだけでも、腸内環境の改善に役立つ「力めし」となってくれる。ちなみに、朝食に適しているヨーグルトだが、じつはその人の腸内環境によって、合うヨーグルトが違ってくる。
最近、さまざまなタイプのヨーグルトが市販されているが、いろいろ試して、どのタイプが自分の腸内環境を改善してくれるのか、相性をチェックしてみるのもおすすめだ。
1日100グラム、2週間~1カ月、同じ種類のものを食べてみて、便がバナナ状になったり、肌の色が明るくなってきたり、疲れにくくなったり、心地よい睡眠がとれるようになったとしたら、自分に合ったヨーグルトといえるだろう。
さらに、たとえば毎日、ヨーグルトを食べていくなかで、「お腹が張る」という症状が出ても、それは腸内環境が変わってきたサインであり、異常ではない。その症状は、3~4日で治まる。もし、3~4日しても、まだその状態がつづくようであれば、そのときはじめて「自分には合わない」と判断して、別のヨーグルトに替えてみてほしい。
■「スプーン1杯の油」が自律神経を整える
みなさんは油という食品に対して、カロリーが高い=太るというイメージをお持ちではないだろうか。
腸内環境を改善して、自律神経を整えるためには、むしろ上質な油はとったほうがいい。なぜなら、油脂というのは、便の潤滑油にもなってくれるからだ。おすすめは、酸化されにくいオレイン酸をたっぷり含んだオリーブオイルや亜麻仁油である。
これらは、腸のなかで便の潤滑油になって便秘を防いでくれるだけでなく、ポリフェノールなどの抗酸化物質も豊富に含み、悪玉コレステロールを減らし、細胞の老化を防ぐ作用もしてくれる。
腸内の炎症を抑え、善玉菌を増やし、血液の流れをアップさせ、腸内環境を整える働きもしてくれる。目安としては、朝食の際にスプーン1杯。サラダのドレッシングに混ぜるのでもかまわない。
もちろん、オリーブオイルも亜麻仁油もカロリーはあるが、朝は代謝もいいから、大さじ1杯くらいの油はまったく問題ない。むしろ、積極的にとったほうが、腸がよく働き太りにくくなる。便秘を防ぎ、腸内環境を改善し、自律神経を整えるバランスのとれた「力めし」になってくれるだろう。
■炭水化物を一番最初に食べてはいけない
とくに肉体的なパフォーマンスにおいて、ここ一番の「力めし」ということでいえば、やっぱり、「肉」と「ごはん」というのは、エネルギーのもとである。
いま、ハムやソーセージがよくないといわれがちだが、やっぱり、ここぞというときは、そういうものを食べないと肉体的な力が出ない。同じように、ごはんも食べないと力が出ない。身をもってそのことを痛感したのは、ハワイで猛暑のなか、ゴルフのハーフをラウンドしたときのこと。
それまで疲労困憊でもうろうとしていたのだが、ソーセージとごはんの「スパムおにぎり」を食べた途端に、みるみる力が湧いてきたという経験をしたことがある。肉もごはんも、人間の体にとってかけがえのないエネルギーの源なのである。
たとえば炭水化物を抜いてしまうと、エネルギーも不足し、細胞構築もされなくなる。とはいえ、炭水化物のとり過ぎも、糖質過多ということになってしまうので、避けたほうがいい。とくにメタボや肥満を気にしている人の場合は、肉よりも、むしろ炭水化物を注意して減らすことだ。
細胞をつくる重要な栄養素はタンパク質。とくに肉に含まれているのは、上質なタンパク質である。血流が悪くなり、全身の不調を招く「冷え性」の一因も、タンパク質不足といえる。
もし体重を減らしたいなら、肉よりも炭水化物を減らすほうがいい。どうしても炭水化物を食べたいときは、順番を工夫することだ。ベストなのは、①野菜、②肉などのタンパク質、③炭水化物。この順番で食べると、食後のインスリンの分泌が抑えられ、より太りにくい食事になるだろう。
■意外と活用できる「コンビニ食材」
ここでは、どの栄養素が、どんな働きをするのか、簡単に説明していこう。
まず、外見・内面ともに素敵オーラを輝かせ、心身のパフォーマンスを上げるためのすべての鍵ともいえる自律神経の原料はタンパク質である。なかでも、積極的にとりたいのは、肉や魚、卵などの動物性食品に豊富な良質のタンパク質だ。
もちろん、大豆、小麦などに多く含まれる植物性タンパク質も体にはいいのだが、含まれている必須アミノ酸の種類、量などから見ると、自律神経の原料としては、やはり動物性タンパク質を積極的にとるのがおすすめである。
年を重ねてもなお、若々しくエネルギッシュな人、タフな人、長寿な人を調べてみると、「肉好き」「魚好き」の人が圧倒的に多い。動物性食品の良質なタンパク質が自律神経の働きを高めているということの、一つの証明ではないかと私は考えている。
肉を食べると、がぜん、やる気やエネルギーが湧いてくるという声も聞かれるが、それはあながち錯覚ではないのかもしれない。また、最近では、コンビニ食材もずいぶん進化して、健康を意識した品ぞろえも進んでいる。
たとえば、冷凍ブルーベリーやバナナやミニトマト、生野菜のサラダや冷凍のカット野菜などが挙げられるだろう。少しだけ意識を変えて、いつもと違う目線で棚をチェックすれば、「肉食」の脂肪からくるマイナスを補ってくれる抗酸化成分が豊富な野菜や果物は、じつはコンビニでも調達可能といえる。
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順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。近著に『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』、『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。
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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)
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