塾なしで合格「頭のいい県・福井」が生んだ"ニュー東大王"が目指す堅実すぎるお仕事
プレジデントオンライン / 2021年6月27日 11時15分
※本稿は、『プレジデントFamily2021年夏号』の一部を再編集したものです。
■ポスト伊沢拓司「ニュー東大王」の伊藤七海さんが東大合格できたワケ
今、東大生が出演するテレビ番組が人気を博している。TBS系列のクイズ番組「東大王」もその一つ。科学、漢字、動物、名画、世界遺産、音楽など出題範囲は幅広く、また知識以外にも閃き力や想像力が必要とされる難問で、東大王チームと芸能人チームが競う番組だ。
過去に、伊沢拓司さん、水上颯さん、鈴木光さんといったスター級メンバーを輩出し、今春から新シリーズに突入している。
「とにかく問題が多岐にわたるので、苦手分野を克服するのが大変です」と語るのが、東大王チームの一人で、「水上颯の後継者」「理数系の絶対王者」といわれる伊藤七海さんだ。
来春の卒業を控え、両親と同じ高校教師を目指して課題に追われるなか、「東大王」のための勉強を毎日欠かすことなく続けている。
「もともと遊びやスポーツが好きで、その時間を確保するために宿題はさっさとやるタイプでした。今は『東大王』の勉強をしたいがために、大学の課題も効率的にやっています」という七海さん。
■学力テストは常に上位の福井県出身、東大王はこうして育った
「宿題をさっさとやる子」を育てたご両親のいる福井県越前市を訪ねた。
「小さい頃から、好奇心旺盛な子ではありました。レスリング、逆上がり教室、スイミング、ピアノ、テニス、スキー、ソフトボール。関心のありそうなことは、なんでも体験させましたね」
こう語るのは、母・美智子さん。高校の英語の先生をしている。
「でも、七海に英語を教えたことはありません。お腹にいるときに英語の歌を聞かせたくらいですね」
ほがらかに笑いながら思いだしてくれた。
「うちの七海が東大を受験する……。何だかピンとこなかったですね」
とは、父・裕貴さん。同じく高校の美術の先生で、画家でもある。
「油絵を描かせてみようと思ったんですが、下地の絵の具を塗ったところでストップしてしまいました」
■強制はしない。塾に通わせたことは一度もない
強制はしない。本人がそれ以上興味を持たないならそれでいい。描きかけの小ぶりのキャンバスは、今もそのまま部屋の壁に掛けてある。
「私、新体操をしていたので、側転だけは教えました。興味がないことをやらないのは構わないんですが、『苦手だからやりたくない』というのはもったいないので、体の柔らかいうちにね。『できるようにする』というより『苦手のタネを減らす』感じですね」(美智子さん)
塾に通わせたことは一度もない。
「知育玩具的なものもあんまり……。『あいうえおカード』くらいかな。3歳くらいの頃、ひらがなもカタカナもすぐに覚えて、カードを並べて言葉をつくっていました。『地上の星』の歌詞とか。私たちが好きで、よく聞いていたんです。それで七海もお気に入りに。『中島』という漢字も欲しそうだったので、それは私が手作りしました」
■唯一の教育方針は、「先生の言うことは素直に聞きなさい」
肩に力が入っていない伊藤家の唯一の教育方針は、「先生の言うことは素直に聞きなさい」だ。
「自分たちもそうですが、先生というのは、勉強面も生活面も、子供一人一人を見てちゃんと指導しているものです。その先生の言葉を素直に聞いていれば、心配はないはずですから」(裕貴さん)
両親共働きの家庭だから、放課後は学童保育へ。そこでは、宿題を終わらせないと遊べないというルールがあった。
「早く遊びたくて仕方なかったから、学童に行く前、学校にいる間に宿題を終わらせていました」(七海さん)
学童の先生の教えを素直に守ったことで、「やるべきことを、できるだけ効率的に済ませる」という習慣が身についたという。
■「大好きな家族のいる福井に帰って、父や母のような先生になりたい」
志望校に東大を選んだ、そもそものきっかけも高校の先生だった。
「高1の夏休み。日帰りできる名古屋や関西の大学のオープンキャンパスには行ったんですが、東京には行かなかったんです。部活を休みたくなかったから。そうしたら先生から、『君は東大も見ておくべきだ。来年は必ず行きなさい』と」(七海さん)
それまで、本人にも両親にも東大に進むというイメージはまったくなかった。でも、先生が言うことだから……。
「東大に行きたいと自分でも考えるようになったのは、テレビで『東大王』を見てからです。東大生、かっこいい! って思って」(七海さん)
やりたい、行きたい、という目標が明確になれば、勉強に集中できるタイプ。
東京という大都会、テレビというキラキラした世界を知っても、七海さんの夢は「大好きな家族のいる福井に帰って、父や母のような先生になること」と揺るがない。
(東京大学教育学部4年 伊藤 七海 文=金子聡一)
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