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「野菜たっぷりなら良いわけではない」糖尿病患者にほぼ確実に不足している"ある食べ物"

プレジデントオンライン / 2021年6月30日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taratata

糖尿病を改善するには、どのような食事をすれば良いのか。医師の水野雅登さんは「タンパク質をとることが最優先だ。タンパク質は身体の土台なので、不足すると他の栄養素が吸収されにくくなる」という――。

※本稿は、水野雅登『糖尿病の真実』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■医師が気づいた「慢性疾患の患者の共通点」

色々ある栄養のうち、最も大切なものは何かというと、タンパク質です。ところが、現代の食生活の中では、タンパク質が非常に軽視されていると医師として感じることが多々あります。なぜなら、糖尿病などの慢性疾患の患者さんを診ると、ほぼ確実にタンパク質が不足しているからです。

「野菜は健康にいいから食べるべき」「ごはんやパンを食べないとエネルギー不足になる」という見当違いの考えが一般的ですが、肉や卵や魚を食べる意識はさほど強く持っていないことが多いようです。

その自覚があまりないことが多く、「タンパク質を十分にとっていますか?」と質問すると、必ず「はい、しっかりとってます!」という答えが返ってきます。顕著なタンパク質不足がある人も、BMIが18.5を切っている「痩せ」に分類される人も、そう答えます。

これは、患者さんたちだけに問題があるのではなく、一般的な医師も管理栄養士も、そのほとんどが栄養に関して正しい知識がないことも影響しています。専門家たちも、国が定めた食事摂取基準にのっとった「炭水化物6割、タンパク質2割、脂質2割の食事」という低タンパクで高糖質な食事を指導しているからです。

日本人のほとんどが、無自覚なタンパク質不足です。身体を構成している成分は、重さでいえば、7割程度が水で、2割程度がタンパク質です。つまり、水を除くと、最も多いのがタンパク質ですから、最も補給すべき栄養素だと考えてください。

■優先順位をイメージづける「栄養ピラミッド」

摂取すべき栄養素には、優先順位があります。それをわかりやすく図にしたのが、図表1の「栄養ピラミッド」です。このピラミッドの考え方は、ブログ「パラダイムシフト好きの外科医のblog」にある「治療のピラミッド」から発展させたものです。考え方の優先順位をイメージしやすいので、ヒントにさせてもらいました。

栄養ピラミッド
出典=『糖尿病の真実』(光文社新書)

この図表でいうと、ピラミッドの土台はタンパク質と脂質です。これらが十分に足りている状態で、はじめて上に位置する鉄、さらに上部のビタミンやミネラルがしっかり吸収できるようになります。

たとえば、タンパク質不足がひどい場合には、ビタミンやミネラルを胃が受けつけることができず、かえって食欲不振になったりします。胃も胃壁も胃の中で働く消化酵素も、すべてタンパク質を材料としているからです。材料が不足していると、胃が十分に機能を果たせなくなってしまうのです。だから、優先順位が大切になってくるのです。

脂質を優先する食事方法もあり、おすすめすることも多くありますが、糖尿病の場合にはタンパク質不足であることがほぼ確定的です。脂質優先の食事は、タンパク質不足が解消してからの方が健康的です。

■国民総鉄不足の日本人

本来は、鉄はミネラルの一種ですから、このピラミッドでいうと一番上に含まれることになります。しかし、わざわざ別にしているのは、他のミネラルよりも優先順位が高いからです。

欧米などの諸外国では、小麦粉などへの鉄の添加が法律で義務づけられています。他にも、ベトナムでは調味料のナンプラーに、モロッコでは塩に、中国では醤油に鉄添加が行われています。各国が、貧血の予防のために国策として鉄添加を行っているのです。

しかし、日本では、こうした国策として鉄を添加する、ということは行われていません。その結果、多くの国民が鉄不足に悩まされています。しかも、それは貧血と認識されていないことも多々あります。

貧血といえば立ち眩みや顔色が悪いなどの症状が有名ですが、それだけではありません。いつも疲れている、眠れない、血圧や体温が低い、原因不明の頭痛、甘味依存、糖尿病、肥満、マタニティーブルー、発達障害、うつ・パニック、がんなど、鉄不足がもたらす心身への悪影響は数限りなくあります。

鉄不足は、鉄を補充しない限り、未来永劫に治りません。それと同時に多くの人が、自分の鉄不足に気がついていません。このため鉄の重要度を強調すべく、栄養ピラミッドでは他のミネラルから独立させ、より基礎的な箇所に位置づけしました。

■タンパク質は何からとるか?

タンパク質をとるときの基本は、「肉、卵から」が基本です。加えて、タンパク質不足を補う段階では、ほぼ必須なのが「ホエイプロテイン」です。

プロテインと聞くと、ムキムキのスポーツマンが飲んでいるイメージがまだまだ強いのですが、私はタンパク質不足が顕著な人、特に糖尿病の方の食事療法の一環としておすすめしています。

「ホエイ」は日本語では「乳清」といいます。ヨーグルトの上によく溜まっている、あの透明な液体が、ホエイです。それを粉末に加工したものが、ホエイプロテインの製品です。なお、英語では「whey」と書き、発音では「H」を発音せずに「ウェイ」または「ウエイ」と呼ばれます。「ホエイ」は、あくまで日本語読み、ということになります。

肉は、牛肉、豚肉、鶏肉、どれでもかまいません。好きなものを選んでください。調理方法も、糖質やトランス脂肪酸を添加しない方法であれば、好みでかまいません。糖質とトランス脂肪酸を添加する調理法とは、たとえば、パン粉をたっぷりつけて、サラダ油で揚げるなどといったものがそうです。トランス脂肪酸は「食べるプラスチック」といわれるほど健康被害リスクが高いので、できる限り避けることをおすすめします。

キッチンに置いてある選りすぐりのタンパク源
写真=iStock.com/a_namenko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/a_namenko

■「肉食は身体に悪い」に対する答え

「肉ばかり食べていては栄養が偏るのでは?」という質問をよく受けます。「肉は太る」「肉は身体に悪い」「肉ばかり食べているとがんになる」というイメージを持つ人は多く、わざわざ肉を控えている方も少なくありません。健康志向の高い人ほど、そうした傾向が強くあります。

逆に、「バランスよく」や「栄養の偏り」という考え方の方が、偏っていると私は考えています。それについては、旧来のカロリー理論がいかに間違った古い考え方か、すでに述べてきた通りです。

「バランスのよい食事」とは、本来であれば、私たちの身体が求める栄養素に対して「バランス」をとるべきです。しかし、一般に広まっている「バランスのよい食事」は、私たちの身体の求める栄養を無視しています。身体を構成する要素の多くをタンパク質が占めているのは、前述した通りです。それに対して「炭水化物を6割とりなさい」というのは、明らかにバランスを欠いています。大切なのは、「私たちの身体の求める栄養をとる」ことです。

■卵は完全栄養食

私に言わせれば、卵こそ「バランスのよい」食品です。実際、「完全栄養食」といわれるほど、栄養が充実しています。ところが、この卵も「週に○個までにしないといけない」といった間違ったイメージを今も持ち続けている人が少なくありません。

これはコレステロールの冤罪が関係しています。一時期、卵に豊富に含まれるコレステロールが血管に悪いという間違った情報が広まっていたからです。

しかし、2013年に米国心臓病学会が「コレステロールの摂取制限を設けない」としました。その2年後、2015年には、米農務省と保健福祉省も、コレステロールの摂取制限をガイドラインから削除しました。日本でも厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で、コレステロールの摂取基準が撤廃されました。そのいずれの理由も「コレステロール摂取の上限値を算定するのに、十分な科学的根拠が得られなかった」ためです。

毎日、2個でも、3個でも、10個でも食べて大丈夫、ということです。むしろ、卵をたくさん食べると、不健康になるどころかタンパク質不足が解消され、健康になります。

■卵でコレステロールが上がる2つの条件

ところが、いまだに「卵は控えてください」と患者さんに指導している、化石のような医師が多くいます。これには理由があり、その医師たちは自分の患者さんたちで、卵を食べた後にLDLコレステロール値が上がったためでしょう。確かに、実際に、卵を食べるとLDLコレステロール値が上がる人がいます。それは、次の2つの条件が当てはまる人です。

・糖質まみれの食事
・今までコレステロールを含む食べ物をとる機会が少なかった

糖質の多い食事をしてきた人の身体は、インスリンの酸化ダメージでボロボロになっています。その状態で卵を食べると、身体は「やっと身体を治す材料が来た!」と、せっせとLDLコレステロールを作ります。そのため、LDLコレステロール値が上がるのです。つまり、むしろ至極、健康的な反応といえます。逆にいえば、卵を控え続けると身体はいつまで経っても修復されません。

確かに、すでに血管が詰まりかけている状態にあると、増えたLDLコレステロールによって血管が詰まるケースはあります。私も、そういった症例を何例も診たことがあります。血管が詰まる根本原因は糖質です。この場合には、その糖質を控えつつ、時に血液をサラサラにする薬も併用した対応が必要です。

■糖尿病の場合の「脂質」摂取の考え方

「脂質」については、さほど摂取を意識しなくても問題ありません。肉や卵でタンパク質をとっていれば、必然的に脂質は摂取できるからです。

最近は「高脂質食」についての情報もたくさん出てきていますが、本格的に取り組もうとすると、摂取するグラム数や、脂質代謝に必要なビタミンやミネラルをサプリメントで補うことも考え合わせる必要が出てきて、非常に複雑になります。

まずは、本稿の目的である「糖尿病の予防と改善」のためであれば、それらを考える必要はありません。「お腹が空かない程度の脂質をとる」くらいのイメージで十分です。

また、脂質の摂取をわざわざ避ける必要もありません。カロリー指導を受けた人は「カロリーの高い脂質の摂取は避けるべき」と思い込んでいる方が多いと思いますが、脂質のみの摂取で血糖値は上がりません。血糖値を直接的に上げるのは糖質だけです。

しかし、糖質と脂質を合わせてとると、糖質の影響で血糖値が上がり、インスリンが分泌されて、糖質と一緒に脂質も脂肪細胞に取り込まれることになります。つまり、太りやすくなります。

しかし、脂質だけならこのスイッチは入りませんし、タンパク質と合わせて摂取しても、少量のインスリンしか分泌されないため、過剰に肥満になる心配はありません。

逆に、糖質オフをしながら脂質まで制限すると、エネルギー不足に陥るので、注意が必要です。

空腹をやわらげるためには、エネルギーに素早く変わるMCTオイルを摂取することが助けになることもあります。加熱せずにそのまま摂取するのがコツです。朝や食間の紅茶やコーヒーに加えて飲んでいる人も多いようです。

素早くといっても、摂取してからエネルギーに変換されるまで3時間ほどかかるため、そのタイミングを見計らって摂取する必要があります。

■糖質依存からの脱出法

3食の主食をたっぷり食べて、おやつもしっかりとっていた……という人の場合、いきなり糖質をゼロにすると、ほぼ失敗してしまいます。「糖質はやめなければいけない」。その「やめなければいけない」という「我慢」と「義務感」は、必ず反動を生んでしまい、続けることが難しくなるからです。

これを避けるためには、まずは「タンパク質をたくさん食べる」意識を先に持ってくることです。

具体的にいうと、肉や卵、魚でお腹をいっぱいにする、ということです。前菜にタンパク質、主食もタンパク質にしましょう。ごはんやパンはデザート感覚で最後に少量とる、というスタイルにすると、自然と糖質をとる量が減っていきます。

水野雅登『糖尿病の真実』(光文社新書)
水野雅登『糖尿病の真実』(光文社新書)

同時に、鉄の摂取も進める必要があります。鉄はエネルギー産生をサポートする重要な栄養素です。鉄が不足すると身体がエネルギー不足になるため、手っ取り早くエネルギーになる糖質を強烈に欲するようになります。

特に、月経で鉄を毎月大量に失う女性は、鉄不足による甘み依存に陥りやすいといえます。鉄は必要量を食事で満たすことはほぼ不可能なので、サプリメントを使って、速やかに満たしてください。

糖質依存から離脱するためには、まずは、タンパク質と鉄の不足を迅速に改善することが必須となります。

また、今まで実際にこの食事法(タンパク脂質食)を開始した全員が、いきなり糖質ゼロにしたわけではありません。たとえば、糖質量を、まず今までの8割、次に6割などと徐々に減らした方もいました。このように、タンパク質と鉄をとりながら、糖質を減らすことが大切です。そうすれば、エネルギー不足になることなく、高タンパク・糖質オフに移行できます。

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水野 雅登(みずの・まさと)
医師
1977年、愛知県生まれ。2003年に医師免許取得(医籍登録)。日本糖質制限医療推進協会提携医。著書に『薬に頼らず血糖値を下げる方法』(アチーブメント出版)、『医学的に内臓脂肪を落とす方法』(エクスナレッジ)、『糖質オフ大全科』(主婦の友社)など多数。

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(医師 水野 雅登)

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