「なぜ勉強したほういいのか」本当に頭のいい人だけが知っている"シンプルな答え"
プレジデントオンライン / 2021年7月18日 9時15分
※本稿は、山口真由『東大首席が教える 賢い頭をつくる黄金のルール』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■勉強が苦痛なのはあたりまえ
世の中に「勉強が好きな人」は、いったいどのくらいいるのでしょうか?
「勉強が好きなのね」と小さいころから言われ続けてきたわたしは、身もふたもない実感として「勉強はとくに好きではないな」と思っています。だって、勉強より楽しいことは、世の中には山ほどありますから。遊んでいたほうが楽しいに決まっています。
だからこそ、勉強が嫌いだったり苦痛を感じたりしている人に、わたしは強く伝えたい。
「勉強は楽しいものではない」と。
むしろ、これを認めないと、面白くもないことを続けることはできません。もちろん、勉強をしていて難しい問題が解けた瞬間や、知的好奇心が広がっていく感覚を楽しいと感じるときはあります。
でも、それはあくまで一時的なもの。勉強の大部分は、覚えるべきことをひたすら覚え、同じルーティンを繰り返していく、まさに忍耐の連続です。そんな勉強に苦痛を感じるのは、むしろ正常で、あたりまえの状態だと思いませんか?
では、いったいなんのために、人生の貴重な時間を費やして、楽しくないことに延々と取り組むのでしょうか?
それは、「目標を達成するため」です。
苦しい勉強に時間を費やす自分に思い悩むのではなく、そのように割り切ってしまう気持ちこそが大切です。
■「面白くもない」勉強をどう続けるか
勉強は手段に過ぎない。
わたしは、いつもこのように考えて勉強を続けてきました。あくまで、自分が設定した目標を達成するための手段と割り切っていたのです。だからこそ、つねに最小限の勉強で目標を達成できる方法を模索し、それを実践してきました。
ドイツの社会学者マックス・ウェーバーは、かつて「目的合理的行為」という概念を提唱しました。これはある結果を得るために、最適な手段を取ることを指します。
これと対比されるのが、「価値合理的行為」という概念。結果はどうであっても、自分の信条などに従って行動することを指します。
そして、この概念でいうなら、わたしはつねに「目的合理的」に勉強を続けてきたといえます。勉強が好きではなかったわたしは、このように考えないと、面白くもない勉強を続けることなんてできなかったのです。
もちろん、これはどちらが良いか悪いかという話ではありません。「価値合理的」に勉強ができるなら人生や生活はきっと充実するし、学問に魅せられて研究者を目指す道が拓かれるかもしれません。
だけど、わたしと同じように、勉強が面白く感じられなかったり、挫折しがちだったりする人がいたら、「勉強は手段に過ぎない」と声を大にしていいたい。
勉強を「目的合理的」にとらえたときにはじめて、勉強の方法も戦略も変わります。
いかにして、最大の成果を上げるか。
これがわたしの勉強に対しての考え方なのです。
■勉強は「コスパ最強」
「勉強は好きではない」「楽しくもない」「手段に過ぎない」と書いてきましたが、勉強には、良いところももちろんあります。
それは、取り組んだぶんだけの成果が手に入る点です。猛烈に勉強したらすごい結果が出るだろうし、より大切なのは、ほんの少しの勉強でも、一歩ずつ前へと進んでいけることです。
たとえば、音楽やスポーツなどは、プロとして稼いで裕福に生活していけるのは上位5%程度の厳しい世界。でも、勉強は活躍できる裾野が広く、勉強さえしていればがんばったぶんだけなにかが確実に手に入ります。
つまり、たとえ勉強で上位5%に入れなくても、勉強したことが無駄になることはないのです(もちろん、音楽やスポーツの分野でも、上位5%に入れなかったからといって、それまでのすべてが無駄になるわけではありませんが)。
勉強はオール・オア・ナッシングではなく、社会にさまざまな受け皿があります。そのため、社会で生き抜いていくためには、じつは勉強はかなりコストパフォーマンスが良い方法だと見ることができます。
なにごとも、将来の目標をしっかり持っていれば、努力を続けていくモチベーションになります。でも、ぜひみなさんにお伝えしたいのは、たとえその目標に勉強が必要なさそうに思えても、勉強はしておいたほうがいいということです。
勉強がいつ役に立つのかは、人それぞれです。もちろん、受験や就職だけに役立つものではありません。勉強で得た知識そのものが役立つこともあれば、考える力や課題解決力、分析力、計算力など、人生のあらゆる場面において勉強した経験は役に立ちます。
勉強をすれば、そのぶんだけ活躍できる場所が社会には用意されているのです。
■ハーバードで見た“本物の秀才”たち
数年前、わたしが自身の勉強法(「7回読み」勉強法)を提唱したとき、こんな声をたくさんいただきました。
「7回も読めないよ」
「教科書を読むこと自体がつらいんだよ」
![勉強して疲れを感じている女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/3/670/img_73029db8cc222edac462ed8191052ae3300094.jpg)
たしかに、勉強に慣れていなかったり、目的があいまいだったりすると、退屈な教科書を読む作業は苦痛かもしれません。わたしも、英語で「7回読み」に挑戦したとき、はじめてそのことを思い知りました。
「人によっては負荷の高い勉強法なのかも……」
そう思って、不安になりかけたこともあります。
でも、いまでははっきりお伝えできることがあります。それは、どんなアプローチだとしても、努力や勉強に「楽な近道」はないということ。
このことを証明する光景に、わたしはハーバード大学院で出くわしました。そこにいる学生たちは、世界中から集まった秀才ばかりです。しかし、そんな彼ら彼女らでさえ、少しでも暇があれば、教科書をぼろぼろになるまで繰り返し読んでいたのです。
芝生に寝転びながら、ジムで自転車をこぎながら、授業に備えて飽くことなく教科書を読みふける姿を目にして、わたしは「やっぱり勉強に近道なんてないんだ」と再認識できました。
大きな結果を出すのは、けっして要領良く点数を稼ぐような人ではありません。
時間をかけて、努力し続けた人が、最終的に伸びていくのです。
■高校時代の教訓……勉強法は「命綱」だった
努力を続けていても、勉強の成果はスムーズに上がり続けることはありません。まるで上り階段のように、途中に必ず「踊り場(停滞期)」があります。
がんばっても、なかなか成果が現れない踊り場にいると焦ります。
そんなときに限ってまわりの人が気になるもので、「あの方法がいいのかも」とつい他人の勉強法に手を出しがちになります。
じつは、わたしにもそんなことがありました。高校生のときに成績が停滞し、自信を失って「7回読み」勉強法をやめたときがあるのです。「7回読み」勉強法は教科書などを丸ごと頭に入れていく方法ですが、それをやめて、応用問題を解いていく方法に切り替えました。
結果はさんざん。停滞どころか、成績がどんどん下がっていきました。わたしはこのとき思い知りました。
「勉強法は、命綱のようなものかもしれない」
人には、それぞれ自分に合った命綱(勉強法)があります。たとえ、上に登れないからといってそれを手放してしまうと、無残にも落ちていくだけなのです。
自分の勉強法は、変えてはいけません。改善することは必要ですが、停滞していても信じて続けることが大切。やはり、勉強は反復と継続に尽きるのです。
■自分だけは、努力した自分を否定しない
努力すると、少しずつでも前へ進んでいけますが、そのことと他人からの評価はまた別のこと。自分の努力と環境とのタイミングが合わないときもあれば、まわりの人から完膚なきまでに努力を否定されることもあります。
わたしにも、そんなことがたくさんありました。わたしのような「努力型」の人間にとっては、努力を完全に否定されるのは人格を否定されることに等しく、しばらくのあいだは絶望感に襲われます。
![山口真由『東大首席が教える 賢い頭をつくる黄金のルール』(プレジデント社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/c/200/img_cc1d3030d3a5604d09ad2de83db31fe7208110.jpg)
「これ以上は、がんばれないんじゃないか」
「あきらめてしばらく休もうかな」
そんなことを思ったときもあります。
それでもわずかに残った力を振り絞って、なんとか進んできました。なぜなら、そんな自分の努力にいちばん期待していたのは、まぎれもないこの自分自身だったからです。
ここまで読んで、「わたしも努力して生きていこう」と思ってくださった方に、ぜひ伝えたいことがあります。それは、誰が否定してこようとも、自分だけは、努力をした自分を否定してはいけないということ。否定した瞬間、自分の歩みは完全にとまります。
誰もあなたの足をとめることはできません。最終的にとまることを選択するのは、やはり自分自身なのです。
努力するということは、自分の足で一歩でも前へと進んでいくという、無言の「意志表明」なのでしょう。
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信州大学特任教授/ニューヨーク州弁護士
1983年生まれ。北海道出身。東京大学を「法学部における成績優秀者」として総長賞を受け卒業。卒業後は財務省に入省し主税局に配属。2008年に財務省を退官し、その後、15年まで弁護士として主に企業法務を担当する。同年、ハーバード・ロー・スクール(LL.M.)に留学し、16年に修了。17年6月、ニューヨーク州弁護士登録。帰国後は東京大学大学院法学政治学研究科博士課程に進み、日米の「家族法」を研究。20年、博士課程修了。同年、信州大学特任准教授に就任。21年より現職。著書に『「ふつうの家族」にさようなら』(KADOKAWA)などがある。
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(信州大学特任教授/ニューヨーク州弁護士 山口 真由)
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