台所に汚れた食器が溜まる人は、食べる前に「フライパン」を片付けなさい
プレジデントオンライン / 2021年7月9日 11時15分
※本稿は、菅原洋平『やらなきゃいけないのになんにも終わらなかった……がなくなる本』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。
■行動を変えるには環境を変えなければいけない
サボり脳は、他人の行動力や、監視の目に依存しているので、他人の評価によって行動が変わりがちです。他人の評価によって自分の感情が操作されるということを知っておきましょう。
脳には自分がある状況に直面したとき、どんな反応をするかを予測する感情予測という現象があります。私たちは、無意識のうちに常に自分の感情を予測しているのですが、この感情予測は他人の評価という情報に影響されることが往々にしてあります。
感情予測に関する研究として、あらかじめ決められた短い時間内で相手と会話をしてパートナーを見つけるお見合いパーティーの場面での実験があります。
そこでは、相手のプロフィールを知っている人のグループよりも、他人の評価という情報を知っている人のグループのほうが、相手と話したときの楽しさについての感情予測が正確だったことが示されています。
つまり、他人の評価によってつくられた感情予測に自分の感情まで引っ張られてしまい、それが自分の感情だと思い込むのです。
他人の評価に自分の感情が操作される、ということを前提にしてみると、目的に見合う集団に意図的に入ったり、他人の評価から離れて自分の目的を見失わないようにする、という環境設定ができます。
自分の行動をコントロールするより、環境設定を変えてしまう方が簡単に行動を変えることができます。
また、環境を一旦設定してしまえば、望ましい行動は再現できますし、継続させることもできます。メタ認知を使い、その環境が自分の目的に対して望ましい環境かどうかに注意を払い、先手を打って望ましい環境を仕向けるようにしてみましょう。
■他人と目標を共有すればパフォーマンスが安定する
他人と関心事を共有することができるのは、人間が持っている特殊能力です。単に同じ体験をするということではなく、一緒に体験したという認識を持ちます。この共有が、自分の行動選択や他人とともに成し遂げることに影響を与えます。
![オフィス](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/9/670/img_c9e4c07f33091e9f986719ed358d0cbd1169731.jpg)
他人と目的を共有できたとき、自律神経の腹側迷走神経系が働きます。過剰に代謝を高める交感神経系の活動を抑制し、適度に覚醒していい意味で力が抜けた体がつくられ、交感神経系が高代謝な状態より高いパフォーマンスが発揮されるのです。
自分の行動が社会の一部になっていることを確認したり、SNSで同じ目的をもって行動している人の記事に共感すること、目的を共有できるコミュニティに接することで、安定したパフォーマンスが発揮されます。
自分は行動の主体ではなく、ジグソーパズルのピースのような、全体を構成する1つ。だから、自分が得意な能力を磨くことで、全体の目的を達成する。このような考え方を、ジグソーメソッドと呼びます。
極端に高い成績を上げる社員は、必ず周りの人を巻き込み、自分だけで仕事を抱えないようにする傾向があることが研究で明らかになっています。1つの作業のある部分を自分が担う、認知的分業を実験してみると、自分と他人の課題遂行の方法の違いにいら立つことが減ります。
プロジェクトを進めるために、自分にはどんな役割があるかを考え、自分の持っている能力が必要な作業に注力することを意識してみましょう。
■「これができていればいい」という“生活の核”を作るべき
先延ばしをしないこと自体が目的化すると、できたかどうかを人と比べ始めます。
「すぐにだらけてしまって、社会人失格なんです。休日の様子を話すのも恥ずかしいくらいで、普通の人のようにはなれないんだと思います」こんな相談の場合、特定の誰、というわけでもない、創り上げられた「誰か」と自分を比べる思考になっています。
「誰か」とは、あるべき姿としてのイメージです。他者から聞いた、ドラマで見た、小説で読んだ、そうすべきという周囲の空気。そんなもので創られた「誰か」からは、感覚データが得られません。
データがなければ、それに見合う行動が企画できないので、体は動きません。先延ばしをしないのは、脅威への防衛反応から動けなくなってしまうのを防ぐため、自分をいたわるためであって、他人、ましてや実在しない「誰か」の要求を満たすためではありません。
「誰か」との比較をしていると、実際に自分が取り組んだことも見えなくなってしまいます。そこで、自分のパフォーマンスの評価軸をつくってみましょう。日常生活の中で、「これ」ができているときはまあまあ充実しているというように、生活の核になる作業があるはずです。
朝起きられること、シャワーではなく入浴をすること、夕食をつくること、洗濯物を出しっぱなしにせずタンスにしまうこと、テーブルの上に捨てられる物が置かれていないこと、などなど。「これ」ができていないときは他人に目が向いているときです。
だらけてしまったけど「これ」はできている、と観察できれば、それなりに満足感を得られるはずです。「これ」をするために妨げになる動線を変えたり、「これ」をやりやすい順番にスケジュールを変えるなど環境設定をすれば、自分のパフォーマンスを守ることができます。
■洗い物を後回しにしないためには先に鍋を洗うべき
会社の仕事では、サボっていると催促がきますが、一人暮らしの家事となると、いつ、どのように作業をするのかは自分次第です。洗濯は衣服を他人から見られるので、ちゃんとする人もいるかもしれませんが、掃除や皿洗いは先延ばしが起こりやすい家事と言えるでしょう。
![台所](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/a/670/img_7a528044f3a16f7bf12a00d343fe3c5b837269.jpg)
溜まったホコリや、流しに置かれた皿を見ると、「後にしよう」という考えが頭をよぎるかもしれません。この「後にしよう」という言葉は、脳の立場から正確に言い換えると「どうなるかわからない」ということです。わからないことはリスクが高いので、それを避ける体がつくられてしまいます。
この先延ばしには、脳に入ってきた視覚情報が関係しています。特に、その空間配置が重要です。流しにたくさんの物が置かれているほど、脳は高いリスクがあると判定してしまいます。特に、物は多くないのにたくさんあるように見えてしまうのが、鍋が置かれているときです。
![菅原洋平『やらなきゃいけないのになんにも終わらなかった……がなくなる本』(WAVE出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/4/200/img_9463e7ddfde271b8e1bf95086e9acaf2355501.jpg)
大きなボウルや大皿が置かれているときも、その上に数枚の皿が乗っているだけでたくさんあるように見えてしまいます。脳に伝える情報を変えるには、たくさん皿があるように見えなければよいので、流しに鍋だけは置かないようにしてみましょう。
フライパンや鍋を使って料理をつくり、皿に盛りつけたら、そのままフライパンや鍋を洗って拭いて引き出しにしまう。これを一連の動作にするだけです。これだけで流しの物は格段に少なく見え、脳が「リスクが低い」と判定するので流し台の前で立ちすくむことが減るはずです。
鍋や大きなボウルがなくなると、食事を終えた後すぐに皿洗いをするのも苦ではなくなりますし、先にお風呂に入るなどしても、後で洗い物に取り組みやすくなります。
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作業療法士、ユークロニア代表
1978年、青森県生まれ。国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許取得。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。その後、脳の機能を活かした人材開発を行うビジネスプランをもとに、ユークロニア株式会社を設立。現在、ベスリクリニック(東京都千代田区)で外来を担当する傍ら、企業研修を全国で行い、その活動はテレビや雑誌などでも注目を集める。ベストセラーとなった『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)や『すぐやる! 「行動力」を高める“科学的”な方法』(文響社)など、多くの著書がある。
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(作業療法士、ユークロニア代表 菅原 洋平)
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