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「中国を終身支配する」習近平が100周年式典で"毛沢東と同じ服装"で現れた本当の意味

プレジデントオンライン / 2021年7月6日 15時15分

北京の天安門広場で開かれた中国共産党創立100年を記念する式典で演説する習近平党総書記(国家主席)=2021年7月1日 - 写真=AFP/時事通信フォト

■「欧米の民主主義とは今後も決別する」と演説

中国共産党が7月1日、創設100年の祝賀式典を北京の天安門広場で開いた。習近平(シー・チンピン)党総書記(国家主席)は、式典に集まった7万人の党員を前にこう演説した。

「1921年7月の創設以来、共産党は欧米の勢力に打ち勝ち、中華民族の偉大なる復興を実現するため、政治制度の基盤を築き上げてきた」
「共産党の指導は中国社会主義の頂点であり、欧米の民主主義とは今後も決別する」

1921年の党創設当時の党員数は労働者を中心に50人ほどだった。それが100年で9500万人以上にまで膨れ上がった。しかも党員はホワイトカラーが多数を占め、中国社会は貧困から脱出することに成功した。それを考えると、中国共産党の実績は大きいかもしれない。

さらに習近平氏は、中国の一部と主張して軍事的な脅しを続ける台湾に対しては「完全な統一を実現することは党の歴史的任務だ」と強調し、暴力と言論の弾圧で民主派を排除した香港については「これからも民主運動を取り締まる国家安全維持法(国安法)の履行により長期的な繁栄と安定を維持する」と力説した。

いまの中国の繁栄は台湾や香港など多くの犠牲の上に成り立っている。中国共産党トップの座に君臨する習近平氏は言いたい放題である。

■歴代最高指導者の中で習近平だけが、毛沢東と事実上同列

そんな習近平氏は自らの権力をさらに高めようと画策している。

来年の党大会では定年制のルールを廃し、トップの地位の続投を狙う。それだけではない。建国の指導者である毛沢東が就き、いまは廃止されている「党主席」の地位を復活させ、自ら就くことを狙っている。

それが証拠にこの日の習近平氏は、天安門広場に掲げられている毛沢東の肖像画と同じ灰色の人民服を着て登壇した。

毛沢東のポートレート
写真=iStock.com/zhaojiankang
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/zhaojiankang

また、北京市内にできた記念施設「中国共産党歴史展覧館」では、歴代最高指導者の中で習近平氏だけを毛沢東と事実上同列に扱って業績を展示している。

中国共産党は毛沢東による過度の権力集中が「文化大革命」の混乱をもたらした反省から、集団指導体制をとってきた。ところが、習近平氏は、自身を毛沢東と同一視し、終身支配を狙っている。

習近平氏は自分の欲望を果たすことしか念頭にない。そのために世界の平和と安定を顧みず、中国の繁栄を追い求める。共産党1党独裁のなかで国民が貧困から抜け出して経済的に豊かになれば、多くの国民が自分の前にひれ伏すと考えてきたからだ。まさしく歪んだ正義である。

■あらゆる惨い行為が、正義の名のもとに行われてきた

習近平政権は民主主義そのものが「悪である」と確信している。いまの中国政府にとって民主主義を攻撃し、消滅させることこそが正義なのである。

どの戦争も正義のために他国民を殺害した。敵は悪で、味方は正義なのである。中世における異端者殺しも、反革命者への弾圧も、ナチス・ドイツによるユダヤ人の虐殺も、すべて正義の名のもとに行われてきた。どんな惨い行為も、それが正義の名のもとに行われると、国民は是認し歓喜する。

習近平氏は正義に普遍性がないことをよく理解しているのだろう。だからこそ、民主主義との決別を強調し、国民を鼓舞するのだ。習近平政権にとって中国の社会主義が善つまり正義で、日本や欧米の民主主義が悪なのである。

しかし、騙されてはならない。いまの国際社会のなかで、沙鴎一歩は世界の平和と安定を求めることこそが正義である、と固く信じる。その観点で習近平政権の正義は大きく歪んでいる。

■「内政干渉」と言い放ち、基本的人権を踏みにじる

習近平政権は、軍事力を使って東シナ海や南シナ海を埋め立て人工の軍事要塞を築き、沖縄県の尖閣諸島周辺の海域では中国海警船が侵入を繰り返しては日本漁船を追い回している。国際社会のルールに背く行動であり、決して許されない。

台湾や香港だけでなく、ジェノサイド(集団殺害)が国際問題になっている新疆(しんきょう)ウイグル自治区に対しても、絶対に譲ることのできない「核心的利益」、他国の口出しを認めない「内政干渉」と言い放ち、基本的人権を踏みにじる行為を続けている。さらに巨大経済圏構想の「一帯一路」に関連する国々を脅して支配下に置こうとしている。

7月2日付の朝日新聞の社説は「中国共産党 誰のための統治なのか」との見出しを付け、こう書き出す。

「長大な栄枯盛衰の中国史のなかでも、この100年は特筆すべき激動の時代だった」
「確かに、一党支配体制は富国強兵を実現した。しかし、その統治は真の意味で人びとの解放を成し遂げているか」
「中国共産党の言う『偉大な復興』は、足元に潜む危うさと裏腹であると認識すべきだろう」

■少子高齢化の大波が寄せ、国民の貧富の格差は広がるばかり

「足元の危うさ」。それは習近平総書記も分かっているはずだ。アメリカとの関係は悪化するばかりで、IT産業に欠かせない半導体の輸入も滞っている。日本など周辺国との摩擦も大きい。ヨーロッパでも中国を批判する国は多くなっている。内政的には一人っ子政策の失敗の結果、少子高齢化の大波が寄せているし、国民の貧富の格差も広がるばかりだ。

元凶は戦狼外交にある。習近平氏はこの外交戦術を捨て去り、軸足を内政に移して諸問題の解決に力を尽くすべきである。

朝日社説は「この100年間には、大躍進運動、文化大革命、天安門事件など、多大な不幸や流血を生んだ共産党支配の過ちがあった。その痛ましい過去が再び繰り返されない保証はない」と指摘したうえで、こう主張する。

「中国が今後の持続可能な発展のために実践すべきは、棚上げされた政治改革である。現在の豊かさを築いた『改革開放』の柔軟な発想を、経済から政治にも広げる必要がある」

北京の天安門
写真=iStock.com/bushton3
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bushton3

■いまこそ柔軟な発想を経済から政治へと広げるべき

沙鴎一歩は社会主義体制に行き詰まってソ連が崩壊したとき、中国共産党も同じ運命をたどると考えた。しかし、中国は経済力を立て直してアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国にのし上がった。なぜなのか。

たとえば、社会主義と自由経済をうまく同居させた香港の一国二制度の成功である。それは中国本土にも応用され、一党独裁体制のなかで見事なまでに経済力を伸ばした。中国共産党に柔軟さがあったからだろう。

しかし、いまの習近平政権は違う。世界的な金融市場として活気の溢れた香港からも自由を奪ってしまった。柔軟さの欠片もない。朝日社説が主張するように、いまこそ柔軟な発想を経済から政治へと広げるべきである。

朝日社説は後半部分で「平和的な権力移行の仕組みを崩し、香港や新疆で弾圧し、ことさら外国の脅威をあおる。その遠景には列強から屈辱を受けた近代史があるとはいえ、今ほど強大化した中国が内向きな強権政治に走るのは危うい」とも指摘する。その通りだ。

■「中国共産党に祝電 二階氏は恥を知らぬのか」と産経社説

7月2日付の産経新聞の社説(主張)は日本の政治家の動きに目と止め、「中国共産党に祝電 二階氏は恥を知らぬのか」との見出しを掲げ、書き出しからこう主張する。

「自民党や公明党、立憲民主党など日本の多くの政党や有力な政治家が、中国共産党の創建100年を祝うメッセージを送った」
「民主主義を奉ずる国の政党、政治家の行動にふさわしくない。日本の名誉と国益を損なうものでもある」

各党は「中国から要請があったので儀礼的に送っただけだ」など説明しているが、欧米とともに国際社会の一員として覇権主義的かつ強権的な習近平政権に対抗していこうとしている矢先に、日本の政治家たちは一体何を考えているのか。実に情けない。

日本政府は「特段の対応は取らない」(加藤勝信官房長官)とするものの、自民党が二階俊博幹事長の名前で祝意のメッセージを送っている。ここに日本外交の弱さが見える。だから日本は中国になめられるのだ。中国が尖閣諸島に上陸しても抗議さえできないのではないだろうか、と心配になる。

■習近平政権にはそれ相応の態度で臨むべきだ

産経社説は「自民は二階俊博幹事長、公明は山口那津男代表、立民は枝野幸男代表、社民党は福島瑞穂党首の名義で、電報などで祝賀のメッセージを伝えた。立民の小沢一郎衆院議員、河野洋平元衆院議長もメッセージを送り、中国共産党の歩みを称えた」と書いてこう訴える。

「今このときに祝意を伝えることがどのような意味合いを持つのかきちんと考えたのか」

祝意のメッセージを送った政党と政治家たちにはその意味合いの深刻さをきちんと考えてもらいたい。

産経社説は「日本の政党は、昔からの惰性で中国共産党と『友好』を続けてはいけない時代になったと自覚すべきだ。弾圧に苦しむ人々や国際社会の目を気にしてもらいたい」とも訴え、最後にこう駄目押しする。

「創建100年への不用意な祝賀は、中国共産党の歴史的過ちを不問に付す問題もはらむ。天安門事件や文化大革命、大躍進運動、革命時の混乱で何千万人もの犠牲者が出た悲惨な歴史に目をつむって祝意を伝えるなど言語道断だ」

産経社説が指摘するように、中国の悲惨な歴史は無視できない。中国政府が強く反省すべき重要な課題である。自分たちさえ豊かになれればそれでいい。そう考える習近平政権にはそれ相応の態度で臨むべきである。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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