自分はデキると勘違いするバカほど「タスクを整理しましょう」と言い出す
プレジデントオンライン / 2021年7月14日 11時15分
※本稿は、高松智史『変える技術、考える技術』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
■ビジネスの世界に蔓延る「打ち手バカ」と「TASKバカ」
「論点」の世界に入る前に、世の中に蔓延っている2大バカを説明してしまおう。「打ち手バカ」と「TASKバカ」である。
「打ち手バカ」というのは、言葉どおり、打ち手から考えてしまう人たちを指す。就活のグループディスカッションを思い出してほしい。では今から、この7名でディスカッションをして頂きます。お題は「相撲人気を高め、相撲ブームを起こすためには?」です。30分で考えてください。
その時に登場するのが「打ち手バカ」だ。打ち手バカはこんな感じの発言をする。
「大相撲を人気にするためには、絶対、テレビ放映をもっと大々的にやりましょう。解説は若者に人気なみちょぱとか、男性なら誰ですかね、誰がいいと思いますか?」
「あー、テレビ放映やるなら、広告しましょう、広告。テレビCMを打ちましょう。やっぱ、橋本環奈ですよね。男性なら誰ですかね、誰がいいと思いますか?」
と、スタートの起点が「施策」「解決策」「ソリューション」である人のことを、「打ち手バカ」と呼んでいる。
何かにつけて「CM打ちましょうよ」と言う広告代理店っぽい人をイメージすると、想像しやすいはずだ。しかし、思考の起点に打ち手がくることはない。なぜならば、打ち手から考えてしまうと、「課題」を深掘りできなくなってしまうからである。
さきほどの「相撲ブーム」の話も、一切、「課題」の話が出てこなかったでしょ。それが、大問題なのだ。まず、呪縛から解かれなければならないのは「打ち手バカ」だ。
■打ち手バカ以上に多い「TASKバカ」
2大バカのもう一つは「TASKバカ」だ。TASKバカというのは、文字どおり、タスクから考えてしまう人たちを指す。TASKバカは打ち手バカ以上に多い。
例えば、「『考えるエンジンちゃんねる』の登録者数が1万人を達成するためには?」という課題があったとする。さきほどの打ち手バカであれば、どうなるかというと、「1万人目指しましょう、目指しましょう!
当然、YouTube広告、打ちましょう。文言は僕の知り合いにコピーライターがいるので、その人に頼んでみましょうか。そいつ、僕から頼めば、やってくれると思いますよ」という発言をする。
イメージがついてきただろうか? この課題に対して、TASKバカはどう考えるか?
「まず、何からやりますかね。Todoを整理していきましょう。それから期限もセットで決めちゃいましょう。あと、誰がやるか? も決めちゃいましょう。やっぱ、そこまで決めないとですよね」
これが、TASKバカだ。世の中にはこの2大バカが、蔓延している。素直な方は、「もしかして、打ち手バカになっているかも」「もしかして、TASKバカになっているかも」と不安になっているかもしれない。
■重要なのは「どんな問いに答えるべきか?」を考えること
見分け方の1つは、会議室にある「ホワイトボード」に、何を書いて議論してきたか? でわかる。
打ち手バカのホワイトボードには「打ち手」のオンパレード。TASKバカのホワイトボードには「タスク、期限、責任者の名前」のオンパレード。身に覚えがあるはずだ。
話は逸れるが、こうやって自分がハマる罠に「キャッチーな名前」をつけると、行動を変えやすい。そうすると、思わず、口走るようになる。「おまえ、打ち手バカになってんぞ」とか「あー、やっちまった、気づかないうちに、TASKバカに」という風に。
タスクを考えることはもちろん重要だ。それがないと作業もできない。ダメなのは、タスクから考えてしまうこと。順番の問題なのだ。「どんな問いに答えるべきか?」を十二分に検討してから、「タスク」「スケジュール」「作業」に移ってほしい。
例えば、先ほどの「『考えるエンジンチャンネル』の登録者数1万人」の問いであれば、「そもそも『考えるエンジンチャンネル』とは何か?」や「なぜ登録者1万人に行かないのか?」など、問いを深掘りすることから始めるべきなのだ。
次の日に会議に出てみると、「打ち手バカ」「TASKバカ」のあまりの多さに気づくだろう。みなさんの上司が「打ち手バカ」「TASKバカ」ではありませんように。
「TASKバカ」=「作業の羅列」「作業・期限・担当」と「タスク」から考えてしまう
「論点バカ」=「どの問いに答えるべきなの?」と「問い=論点」から考えられる
残念なことに、ほとんどの方が、「打ち手バカ」「TASKバカ」になってしまっている。どんな仕事にも「作業」「期限」があるわけだから、気持ちはわかる。だが、タスクを考える前に、一呼吸してほしい。それこそ、15分でもいい。
■2大バカを脱却するためには「論点バカ」になるべき
この話を思い出し、「論点バカ」になってほしい。目の前にあるタスクは「クライアントの何の論点に答えるための作業なのか?」を常に、自問自答してほしい。
もし、それが明確でなかったら、今すぐ、上司と議論してほしい。その議論も数分で終わる話だ。やって、損はない。
印象付けるために、すべてに「○○バカ」という表現をしたが、「論点バカ」だけは、良い意味でつけている。違和感があれば、「論点ラバー」と言い換えてもらってもかまわない。僕が、BCG時代に、師匠たちから勝手に学んだのが、「『論点』を大事にしなさい」ということ。
ミーティングが始まる前に、「高松さんさぁ、このミーティングの論点は何?」と言われ、ミーティングが終われば、「高松さんさぁ、さっきのミーティングでプロジェクトの論点が進化したけど、理解できている?」と事あるごとに言われていた。
どんな仕事にも、常に論点が潜んでいるのだ。みなさんに論点を愛してほしい。仕事を進める上で、論点を強く意識してほしい。そろそろ、「打ち手バカ」「TASKバカ」から脱却する時だ。
「論点バカ」をより深くあなたの仕事に活かしてほしいので、別の視点で説明しよう。「論点ベースの働き方」のサイクルはこれしかない。
■論点から始めればアウトプットの質は上がる
①その「論点」を分解する
②その分解した「論点」に沿って、タスクを洗い出す
③そのタスクを踏まえ、スケジュールを立てる
④作業する
⑤アウトプットが出る
仕事をする時は、常にこの⓪〜⑤のサイクルを頭に浮かべて、動いてほしい。特に⓪①が重要なので、重点的に解説する(②〜⑤は文字通りの内容になるので、省略する)。
⓪上から降ってきた「論点」をありがたく頂戴する
まず、いきなり難しい話になるが、解かなければいけない「論点」はいったん与えられたものと考えたほうが楽だ。仕事でも、プライベートでも、解かなければならない問いは「上から降ってくる」と考えよう。
例えば、「『考えるエンジンちゃんねる』の登録者数を増やすためには?」「もっとダイエットするためには?」という論点も、どこからか降ってくると考えて問題ない。さぁ、ここがエネルギーを使いまくるところだ。もらった「問い」である論点を分解しよう。
分解のお作法は色々あるが、それは置いておき、ざっくり「その論点を解くために、解いたほうが良さそうな問いは何なのか?」などを自問し、問いを羅列しよう。その羅列した「問い」の集合体で、マネージャーやクライアントと議論できると最高だ。ここまでやって、②以降の段階に入る。
②その分解した「論点」に沿って、タスクを洗い出す
③そのタスクを踏まえ、スケジュールを立てる
④作業する
⑤アウトプットが出る
ここまでできれば、TASKバカモードで構わない。ぜひとも、明日から実践してほしい。
質が上がった問いの「作業」は当然、効率が上がる。効率の上がった「作業」からは当然、良質のアウトプットが出てくるはずだ。「論点バカ」になり、論点ベースの働き方に挑戦しよう。
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経営コンサルタント
カナタ代表取締役。一橋大学商学部卒。NTTデータ、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)を経て「考えるエンジン講座」を提供するKANATA設立。本講座は法人でも人気を博しており、これまでアクセンチュア、ミスミ等での研修実績がある。BCGでは、主に「中期経営計画」「新規事業立案」「組織・文化変革」などのコンサルティング業務に従事。YouTube「考えるエンジンちゃんねる」の運営者でもある。
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(経営コンサルタント 高松 智史)
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