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「毎日テレビを見るの老人ばかり」キー局が冷や汗をかく"テレビ離れ"の最新データ

プレジデントオンライン / 2021年7月12日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RapidEye

■「毎日テレビを見る人」は8割切る

毎日テレビを見る人は8割を切り、10代・20代の半数がテレビを見なくなった――。こんなデータが明らかになり、コロナ禍で広告収入が落ち込んでいる放送界に激震が走っている。

しばらく前から若者の「テレビ離れ」は言われてきたものの放送界はタカをくくっていた節があるが、テレビライフが激変している実態を突きつけられて、にわかにざわついてきた。

「衝撃的なデータ」を明らかにしたのは、NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査2020」。5年ごとに実施している全国的な調査で、生活行動と関連づけながら行うため信頼度の高いメディア調査として知られる。

年層別 テレビの行為者率(1日)(平日)
出典=NHK放送文化研究所「国民生活時間調査2020」

この中で、平日の1日に少しでもテレビを見る人の割合(行為者率)は79%と、2015年調査の85%に比べ、5年間で6ポイントも減少。1960年の調査開始以来、初めて8割を切った。

年齢別にみると、50代以下は軒並み減少。とくに、10~15歳は56%(2015年調査78%)と22ポイント減、16~19歳は47%(同71%)と24ポイント減、20代は51%(同69%)と18ポイント減、と、いずれも激減した。つまり、今や10代や20代の若者は、2人に1人がテレビを見ないということになる。

また、30代も63%(同75%、12ポイント減)、40代68%(同81%、13ポイント減)、50代83%(同90%、7ポイント減)と、いずれの世代も「テレビ離れ」が加速している。

9割以上の高水準を保っているのは、70歳以上95%、60代94%とシニア世代に限られてしまった。

2010年までは、9割の人がテレビ漬けの日々を過ごし、若者世代も8割以上が毎日テレビを見ていただけに、この5年間の「テレビ離れ」のスピードは半端ではない。

■若者世代はネット動画がテレビに代わる

一方、平日にインターネットを利用する人は、全体で45%。このうち、16~19歳は80%、20代は73%で、「テレビ離れ」が激しい若者ほどネットの利用率が高くなった。

年層別 インターネット・テレビの行為者率(平日)
出典=NHK放送文化研究所「国民生活時間調査2020」

ネット動画の視聴に限ると、10代は男性48%・女性37%、20代は男性44%・女性43%と、いずれも高い利用率で、5割前後のテレビに迫っている。ユーチューブやネットフリクスなどネットの動画配信サービスが普及する中、若者世代はテレビからネットに急速に移行している現実が浮き彫りになった。

このトレンドが続けば、5年後の調査では、若者世代はテレビとネット動画の利用が逆転していることが確実視される。

60代以上でもネットの利用者は急増しているため、全体のテレビ79%対ネット45%という利用率も、限りなく拮抗しているかもしれない。

今回の調査結果について、当のNHK放送文化研究所が「衝撃的」と驚くように、若者にとってテレビは毎日見る「日常メディア」ではなくなりつつある、といえそうだ。

■民放キー局は軒並み大幅減収

この数字に、もっとも衝撃を受けているのが民放各局だ。

在京民放キー局5社は、6月17日から29日にかけて相次いで株主総会を開いて新体制を整えたが、2020年度の決算は、全社とも売上高が前年を大きく割り込み、営業利益もテレビ朝日以外は大幅減となった。連結決算でみると、全社とも減益減収だった。

図表3の「民放5局の2020年度決算」を見れば一目瞭然で、見るも無残に「▲(前年比マイナス)」で埋め尽くされた。

民放キー5局の2020年度決算
筆者作成

こうなったのも、売り上げの大半を占める広告収入が、コロナ禍の直撃を受けて激減、軒並み2ケタの減収になったからだ。番組制作費の大幅削減などで、かろうじて赤字は免れたものの、かつてない厳しい事態に直面している。

■落ち込みが大きかったフジテレビ

落ち込みがもっとも大きかったのはフジテレビで、広告収入は14%も減少し売上高は15%という2桁の大幅減、営業利益はさらに大きい29%減となった。連結も、傘下のホテル事業の収益悪化もあって、売上高は18%、純利益は76%の大きなマイナスを記録した。

番組制作費を大幅に圧縮して唯一営業利益を黒字にしたテレビ朝日も、広告収入は12%減で売上高も12%減。連結は、イベント事業の不振が重なり、売上高が10%減、純利益は52%減となった。

TBSは、11%減の広告収入に引きずられて売上高が10%減、営業利益は45%の大幅なマイナスとなった。連結は、ライフスタイル事業が苦戦し、売上高は9%減、純利益も7%減。5局の中ではもっとも規模の小さいテレビ東京は、広告収入が11%減と苦しみ、売上高は7%減、営業利益も9%減。

一方、民放キー局トップの日本テレビは、広告収入の落ち込みは8%減と1社だけ1桁に抑えたものの売上高は7%減、営業利益も12%減。連結は、スポーツクラブ事業が振るわず、売上高8%減、純利益21%減だった。

■コロナ禍を言い訳にできないテレビ離れの深刻さ

広告費は景気の動向に左右されるため、これまでも放送局の広告収入が減ることはままあった。2008年のリーマンショックでも大きく落ち込んだが、景気の回復とともに上昇に転じ、一過性に終わっていた。

だが、コロナ禍による今回の危機的状況は、これまでのように景気が持ち直せば広告収入が回復するという図式が当てはまらなくなりそうだ。

「国民生活時間調査2020」で示されたように、「テレビ離れ」が急加速しているというライフスタイルの激変、つまり景気の動向とは異なる社会構造的な要因が新たに生まれているからだ。

若者世代を中心とするメディアライフは、ソーシャルメディアであるSNSの普及とともに、4G・5Gという高速の無線通信ネットワークの進展やスマートフォンというツールの高度化で、急速に様変わりしている。

テレビという時間を拘束されるメディアから、自由度の高いネットメディアに興味と関心が移行するのは必然だろう。

■テレビからネットにシフトする「広告費」

テレビ広告費の指標は、言うまでもなく視聴率である。視聴率が高ければ広告収入が伸び、低ければ低迷する。だから、放送局は視聴率競争に血道を上げてきた。

だが、肝心の視聴者がテレビを見なくなるのであれば、テレビ全体の視聴率が上がることは望めない。

民放各局は、2020年度決算で赤字を回避するため番組制作費を大幅にカットしたが、広告収入が戻らなければ、さらに番組制作費を削らざるを得なくなり、その結果、番組の質が落ちて視聴率が下落し、広告収入はさらに落ち込む、という悪循環に陥りかねない。

巨額の広告費を投入する広告主(スポンサー)にしてみれば、視聴者の「テレビ離れ」、特にターゲット層の若者世代の半分がテレビを見なくなったことが数字ではっきり示された以上、これまでのようにテレビ偏重でいいのか、ということになる。

ネット広告は、利用者へのリーチ度や購入履歴などの広告効果が詳細に把握できるという点で、テレビ広告にないメリットがある。したがって、ユーチューブなど、より広告効果が見込めるネットにシフトしようと、あらためて検討することは十分に推察できる。

電通の調査によれば、国内広告費でネットがテレビを上回ったのは2019年。20年は、ネット2兆2290億円(前年度比5.9%増)に対し、テレビ1兆6559億円(同11.0%減)とさらに差が広がっている。

テレビの魅力が失せる中、民放各局の業績回復はますます見通せなくなっている。高給取りと言われる社員の給与削減やリストラも現実味を帯びてくるかもしれない。

■「NHK一強体制」へ強まる懸念

もし、民放界のパワーが衰えるようなことになれば、懸念されるのが世界の放送界では例を見ない日本独特の「公民二元体制」の行方だ。

国民が支払う受信料を財務基盤とする公共放送のNHKと広告費で成り立つ民放の共存が日本の放送文化を形づくってきたが、その仕組みが根底から崩れて「NHK一強」体制に移りかねない。

NHKは、公共放送として「自主自立」を掲げ「不偏不党の立場を守り、何人からも干渉されない」とうたっているが、かねてから国営放送と見まがうような政権寄りの姿勢を批判されてきた。政権の意向を汲んだり忖度するようなNHKを「公平公正な報道機関」と呼ぶのは心苦しい。

毎日新聞の6月28日付け報道でも、専務理事の人事をめぐって政府のゴリ押しを受け入れた疑惑が浮上したばかり。

健全な放送界の発展のためにも、ここは民放界の踏ん張りどころだ。

TVのリモコン
写真=iStock.com/EzumeImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/EzumeImages

■東京オリパラ頼みの広告収入……

放送界では、ネットやSNSの浸透とともに「テレビ離れ」はある程度覚悟していたものの、まさかこんなにも早く若者世代の視聴者が半分になるとは予想もしていなかったのではないだろうか。

フェイスブックやツィッターを使ったことのないシニア世代が経営の実権を握り、成功体験にとらわれている限り、メディア環境の急激な変化についていくことは容易ではない。時代の波を乗り切れないのだ。

視聴者のメディアライフや広告主の意識の変化をきちんと掌握し、的確に対処しなければ、あっという間に脇役に追いやられかねない。

民放キー局は、東京オリンピック・パラリンピックによる広告収入が持ち直すと見込み、2021年度決算ではTBSを除く4社が最終増益を予想しているが、はたしてどうなるか。

まして、2年後、3年後となれば、視聴者のメディアライフがテレビにとどまっているかどうかは予断を許さない。

5年後の「国民生活時間調査2025」は、見るのも怖いということになりかねない。

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水野 泰志(みずの・やすし)
メディア激動研究所 代表
1955年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。中日新聞社に入社し、東京新聞(中日新聞社東京本社)で、政治部、経済部、編集委員を通じ、主に政治、メディア、情報通信を担当。2005年愛知万博で万博協会情報通信部門総編集長。現在、一般社団法人メディア激動研究所代表。日本大学法学部新聞学科で政治行動論、日本大学大学院新聞学研究科でウェブジャーナリズム論の講師。著書に『「ニュース」は生き残るか』(早稲田大学メディア文化研究所編、共著)など。

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(メディア激動研究所 代表 水野 泰志)

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