「何度注意しても忘れ物を繰り返す」子供をそう育ててしまうダメな親の"ある口癖"
プレジデントオンライン / 2021年7月17日 11時15分
※本稿は、中曽根陽子『成功する子は「やりたいこと」を見つけている』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■「どうして」と聞く限り子どもの行動は変わらない
「子どもには、何か困ったことが起きても、自分で考えて解決できるようになってほしいと思っているのですが、うちの子すぐに私にどうすればいいのか聞いてきて、自分で考えようとしないんです」と話してくれたお母さんがいました。
考えて解決する力は、探究力と深いつながりがあります。何かを探究する上で、問題はつきもの。壁にぶつかったときに、それをどう解決するか、それを考える力がないと、探究対象を深めることはできません。
でも、実は日常生活の中に、子どもの考える力を育てる機会はたくさんあります。しかも、子どもの困った行動の中にその種があるのです。
■忘れ物が多い原因は親のある行動
たとえばお子さんが、忘れ物が多いとします。何度も言っているのに、直らない。今日も、体育があるはずなのに、体操服を玄関に置き忘れている。そんなとき、皆さんだったらどうしますか?
もしかしたら、学校に届ける? あるいは帰宅後を待ち構えて「まったく、どうしてあなたはいつも忘れるの! あれほど、夜のうちに用意しなさいって言ってるじゃない」と怒っているうちにだんだんボルテージが上がって、「そんなだらしない子は、ろくな大人になれないわよ」と呪いをかけたり、「今度忘れ物したらおやつ抜きだからね」とバツを与えたり……。でも、それで忘れ物をしなくなったという話はあまり聞きません。
だって、忘れ物をした子どもの気持ちになって考えれば、「どうして」と言われても、忘れたから忘れたのであって、理由なんて答えられませんよね。そもそも、理由が分かっていたら、忘れ物はなくせるはずです。この「どうして」とか「なんで」という問いかけは、過去に向かって原因を追求する言葉。つまりマイナスの言葉かけです。
そして、言われた人は責められたと感じ、言い訳を考え始めます。
■忘れ物をゼロにする魔法の言葉
とはいえ、「忘れ物をするのは仕方ない」とばかりも言っていられません。
では、この問題を解決するには、どうすればよいのでしょう。
それは、「て」を「たら」に変えることです。
「どうしていつも忘れ物をするの!」と怒る代わりに、「どうしたら忘れ物しなくなるかな」と聞くということです。
「どうしたら」というのは、未来に向かって解決を促す質問なので、「どうしたらいいかな?」と聞かれると、頭の中では自動的に「どうしたらいいかな」と小さい子どもでも考え始めます。それがまさに、思考力を育てていくチャンスなのです。
そして、具体的な解決方法を考えられるように促し、自分で決められたら(判断力が成長)、それを言葉にする(表現力が育つ)。しかも、自分で決めたことはやる可能性が高いから、お母さんの困りごとも解決する可能性が高くなります。
■問いかけひとつで成績も上がる
もちろん1回ですべてが解決するわけではありません。子どもに解決策を考えさせるには、親の忍耐力も必要です。
でも、この忘れ物問題一つとっても、こういう解決を促すアプローチをするかしないかは、大きな差になります。
子どもがテストで同じ間違いをする、思うように成績が伸びない……そんなときも、「どうして」と責めるのではなく、「て」を「たら」に変えて、お子さんに考える機会を与えてください。この話は、中学受験の保護者講演会でもお話しているのですが、実際に親子関係がよくなり、子どもの成績も上がったと喜ばれているのでぜひやってみてください。
ちなみに私も、充電していた携帯を忘れて出かけて困ったことが何回かあったので、どうしたら忘れないかとセルフコーチングをして、翌日持っていくかばんの中に入れたまま充電することにしました。以来、充電していた携帯を忘れることはなくなりました。
■お手伝いで考える力がぐんぐん伸びる
子どもが自分で考える力を身に付けるにはお手伝いも役に立ちます。お子さんに、何かお手伝いをさせていますか?
「子どもに頼むと、かえって時間がかかってめんどうだからやらせない」という人がいますが、お手伝いは子どものさまざまな能力を伸ばす上で、大きな役割があります。
国立青少年教育振興機構が行っている「子供の生活力に関する実態調査」によると、保護者が、勉強以外のさまざまなことをできるだけ体験させているほど、その子どもの生活スキルが高い傾向が見られるという結果が出ているのです。
特に注目したいのが、お手伝いをたくさんしている子ほど、課題解決スキルが高くなるという結果です。
この調査では、コミュニケーションスキルとして、「人の話を聞くときに相づちを打つこと」「自分と違う意見や考えを、受け入れること」などを、課題解決スキルとして、「一つの方法がうまくいかなかったとき、別の方法でやってみること」「目標達成に向けて努力すること」などをあげています。
確かに、お手伝いをすることで、どうしたらうまくできるかを考えて段取りよく動くことや、気配りや人と協力する力も育まれそうです。これって、そのまま社会人として必要な力ですよね。
たとえば、料理を一品作るとして、予算を決めて、家にある食材をチェックして足りないものを買うことから子どもに任せるというのはどうでしょうか。
■本当に子どもの気持ちに寄り添えているか
しかし、「お手伝いを頼んでも、めんどうがってなかなかやってくれない」という人もいます。そうですよね。お手伝いって、何か楽しくないことを押し付けられるというイメージがありますからね。
でも思い出してください。
お子さんが小さいときに、親のまねをしていろいろなことをやりたがりませんでしたか? それが実はお手伝いの始まりでした。
子どもには本来、できるようになりたいという気持ちや、人の役に立ちたいという気持ちがあります。家族の一員として、子どもにも何か仕事を任せてみましょう。そのときに大切なのは、子ども自身がやってみたいという気持ちになることです。
そのためには、子どもができそうなことで、やってみたいと思うことを、子どもと話し合いながら決めて任せてみてください。お仕事のリストをつくって、どれならできそうか、子ども自身に選んでもらうというやり方もいいですね。
先の調査でも、保護者が「もっと頑張りなさい」とか、小言をいう「叱咤激励」的な関わりをしても、子どもの生活スキルは上がらないという結果も出ています。親のやってほしいことを押し付けるのではなく、子どものやってみたいという気持ちを大切にして、ぜひお手伝いを習慣にしてみましょう。
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子育て・教育コンサルタント 教育ジャーナリスト
出版社勤務後、女性のネットワークを活かして取材・編集を行う、情報発信ネットワーク「ワイワイネット」を発足、代表に。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに、数多くの書籍をプロデュースした。現在は、教育ジャーナリストとして、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆する傍ら、海外の教育視察も行う。20年近く教育の現場を取材し、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探求型の学びへのシフトを提唱している。
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(子育て・教育コンサルタント 教育ジャーナリスト 中曽根 陽子)
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