開催反対から一転…テレビ局の「五輪バカ騒ぎ」を選挙利用する菅政権の狡猾
プレジデントオンライン / 2021年7月10日 11時15分
※本稿は、和田秀樹『コロナの副作用!』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。
■コロナ対策の「目的と手段」を国民に説明する国、しない日本
新型コロナウイルスの集団免疫の獲得を目指して独自の新型コロナ対策を行ったのが、スウェーデンです。スウェーデンは当初、集団免疫の獲得を目指してロックダウンなどの強い制限措置を行わず、街中でもカフェでも、マスクをしていない人たちが普段の生活を続けました。
その結果、他の北欧諸国と比べると死者数が多くなり、集団免疫を獲得することもできず、スウェーデンの集団免疫獲得政策は失敗したと言われています。
ただ、スウェーデンの新型コロナの死者数は約1万5000人と、確かに他の北欧諸国よりは多いですが、10万人を超えているイギリスやイタリア、フランスといったロックダウンを行った国よりもはるかに少なく、人口100万人当たりの死者数でもそれらの国よりやや少なめです。
スウェーデンの集団免疫獲得政策が、特にひどい失敗政策だったと言えるほど悪い結果だったわけではない、と私は見ています。
ではなぜ、スウェーデンは移動の自由を制限する道を選ばず、集団免疫の獲得を目指したのでしょうか。私は、スウェーデンが高齢者の多い国だからだと見ています。ロックダウンのような強い制限措置を行ってしまうと、将来の介護財政に悪影響が及ぶと考えたのです。
「高齢者が多いのだから、できるだけ外に出て身体を動かしてもらったほうがいい」
スウェーデンの政治家や専門家は、こう発想しました。一方、日本の政治家や専門家たちの中に、こうした発想はまったくありませんでした。これが現実です。
■政治家や官僚、専門家への信頼度が高い国、低い日本
スウェーデンとは逆に、ロックダウンを短期集中的にやったのがフィンランドです。高齢者にとっても、1年間移動できないのと、1カ月移動できないのとでは後遺症の重さが違ってきます。
将来を見据えて、高齢者にできるだけ悪影響が及ばないような政策を、スウェーデンも、フィンランドも採りました。手段は正反対でしたが、目的は共通していました。
そして、目的と手段をきちんと国民に説明しているから、大きな反対の声はあがっていません。どちらの国も、そもそも政治家や官僚、専門家などへの信頼度が高い国として有名ですが、今回の新型コロナに対する政策を見ても、信頼に値する政治家や官僚、専門家たちだということが端からもわかります。
翻って、日本の政治家や官僚、専門家を見るとき、悲しい気持ちになるのは私だけではないはずです。
■政治家の世襲率が中国や韓国よりも高い日本は封建国家のようだ
ただ、日本の政治家を選んでいるのは、私たち日本人です。
私は、日本は民主主義国家ではなく、いまだに封建国家だと思っています。なぜなら、それぞれの地元のお殿様に票を入れるからです。お殿様は世襲で決まりますが、日本の国会議員をはじめとする政治家にも2世議員、3世議員が、これでもかというほど多くいます。
自由選挙で立候補者の誰に投票してもいいのに、世襲のお殿様に投票する人が多い。その結果、政治家の世襲率が中国や韓国よりも高くなっていますし、先進国の中ではトップということになっています。
無定見なワクチン接種政策のトップを任されている河野太郎氏も3世議員です。
投票する国民も、お殿様が「バカ殿」であることが多いことには気づいていますが、それでもそのバカ殿に政治を任せています。
■平時なら許されても、有事に「バカ殿」に政治家をさせてはいけない
さらに言うと、日本の税金は年貢だと思っています。他国であれば、税金を払ったら、払っただけのサービスを受けようとします。税金が高いなら、それに見合った教育や福祉を求めます。だから税金の高い北欧の国などでは、教育や福祉が無料です。
他方、日本では税金を毎年払っていた人がうつ病になって収入が途絶え、生活保護を受けようとしたらバッシングされます。
国や地方に税金を払ったら、国や地方のサービスを受けるのは当然の権利です。ところが、日本は税金が年貢のため、生活保護はお上からの施しになります。
つまり、日本では、税金は年貢で、福祉は施し。そして、施しを受ける人は恥ずかしいという文化なのです。封建国家そのものではないでしょうか。
昔は「バカ殿」にも優秀な家老がいました。しかし今は、優秀な家老だった役人が「バカ殿」のことを忖度して、「バカ殿」のやりたい放題になっています。そうなったのは、内閣人事局によって官僚の人事権を「バカ殿」が握ったからです。
「バカ殿」を政治家にするのならば、もう少し官僚を大事にしなければならないのに、国民も、マスコミも官僚バッシングを行います。
「バカ殿」が言うことに官僚が唯々諾々と従わないといけない制度に対して、誰も文句を言わず、野放しにしているのは、どうかしているとしか思えません。
「バカ殿」が政治家をやっていても、何事もない平時であれば許されるのかもしれませんが、困るのは非常時です。
今回の新型コロナのような非常時の危機対応には、これまで見てきたように、目的と手段の明確化、計画性や戦略、スピード、専門家の言うことをうのみにしない俯瞰的総合的な判断力、近未来の予測能力、長期的な展望など、様々な能力が問われますが、悲しいかな、「バカ殿」にはこれらの1つたりとも備わってはいないのです。
■地の利で金メダルラッシュ…東京オリンピックが絶対に開催される理由
この本が出版されるときには、すでに結果が出ていますが、あえて書いておきましょう。
2021年6月21日現在、私は、東京オリンピック・パラリンピックは、何があっても開催されると予想しています。なぜ、そのような判断にいたったのか、説明しましょう。
東京オリンピックが開催されるからといって、世界中の国と地域が参加するとは限りません。おそらく、参加を辞退する国や地域が50以上あるでしょう。
さらに、直近1年間のアスリートたちの練習量は、どの種目、どの国のどの選手であっても満足のいくものではないはずです。多くのアスリートが自粛生活の中で、試行錯誤を繰り返して、何とか現状を維持するのが精一杯ということも考えられます。
このようなアスリートたちが、いくら一生懸命、全力でプレイしたとしても、世界新記録は出にくいはずです。つまり、東京オリンピックは、世界新記録ゼロの凡庸なオリンピックになる可能性すらあるのです。
こうした凡庸なオリンピックで活躍できるのが、地の利を活かせる日本人選手たちです。
■開催反対から一転…テレビ局の「五輪バカ騒ぎ」を選挙利用する菅政権
日本人選手のメダルラッシュになれば、それをマスコミが両手を挙げて大喜びし、歓喜の報道を溢れさせることで盛り上げます。オリンピックの危険性を論じ、開催に反対したマスコミ、とくにテレビマスコミは、掌を返したようにオリンピックに熱狂した報道をすることでしょう。結果、東京オリンピック・パラリンピックは大成功だったということに「日本では」なります。
そして、東京オリンピック・パラリンピック後に行われる衆議院議員選挙で、自民党と公明党の政権与党が大勝ちするというのが菅義偉政権の描くシナリオだと、私は考えています。したがって、東京オリンピック・パラリンピックは必ず開催されるのです。
総務大臣の経験から日本のテレビマスコミの性質を知り尽くした菅総理は、そのくらいのことを考えていると思います。そして、オリンピックの熱狂のあと、若者のワクチン接種が進まなければ、重症者や死者は減っても、だんだん涼しくなることも重なり、感染者数は減らないので、またマスコミが政権批判を始めることもわかっているので、オリンピックの熱狂がさめやらぬうちに選挙を断行すると私は見ています。
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国際医療福祉大学大学院教授
アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。1960年6月7日生まれ。東京大学医学部卒業。『受験は要領』(現在はPHPで文庫化)や『公立・私立中堅校から東大に入る本』(大和書房)ほか著書多数。
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(国際医療福祉大学大学院教授 和田 秀樹)
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