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最年少18歳で公認会計士の女子高生、10歳で第一種電気工事士の小学生の素顔

プレジデントオンライン / 2021年7月31日 9時15分

父の正晴さん(右)は病院やビルなどの電気工事が仕事。中学生になった絆翔さん(左)の好きな科目は「理科と数学」。苦手は「音楽と国語」という。

大人でも合格が難しい難関国家試験を、最年少で突破した子供たち。生まれつき天才少年・少女だったのか、環境なのか、教育の力か……。どんな勉強をして、どうやって合格に至ったのか。その素顔に迫る。
第一種電気工事士 10歳で取得 新田絆翔(まこと)さん

■幼稚園の頃から試験準備を開始「つらいと思ったことは1度もない」!?

群馬県高崎市の中学1年生、新田絆翔さんは、小学3年生(8歳)のときに、住宅や店舗の電気工事に従事できる国家資格「第二種電気工事士」、小学5年生(10歳)で、ビルや工場などの電気工事に従事できる国家資格「第一種電気工事士」の試験に合格した。どちらも史上最年少だ。

いずれも工業高校生以上が挑戦するレベル。筆記試験では、オームの法則など電気工学の基礎理論や、配線設計の知識などが問われ、「施工」「絶縁」「被膜」「漏電」など、一般の小学生には縁のない難読漢字や専門用語が満載だ。さらに、配線図通りに配線を完成させる実技試験もある。絆翔さんが受けた年の第一種合格率は、筆記が54.1%、実技が64.7%の狭き門だった。

絆翔さんは小さいころから飛行機が大好き。「パイロットになりたい」という絆翔さんに、電気設備工事業の会社・弘電社でビルや工場の電気設備の施工管理を行う父の正晴さんは、「それなら飛行機の電気機器がわかるようになるといいぞ」と働きかけたところ関心を持った。

「とはいえ、幼稚園児に電気設備の専門書を見せてもわからないので、『読み聞かせ』をしていました」と正晴さん。

小学校に上がるころには「自分で読めるようになりたい」と、専門書の難しい漢字を書きとり、意味を調べて覚えるように。そして小学2年生の夏には、第二種電気工事士の試験に向けて勉強を始めた。

■設問のパターンや解き方のテクニックも伝授

正晴さんが気を付けたのは、本人の気持ちを大事にし、勉強を押し付けないこと。「1人にしないように」と、二種の試験は、作業療法士で電気についてはまったくの素人だった母の純恵さんも一緒に勉強して受験。一種は、すでに免許を持つ正晴さんも加わり、3人で試験に挑んだ。

テレビは居間から撤去。毎日午後11時ごろまで勉強した。友達が遊びに来ても「勉強があるから」と断った。絆翔さんは「勉強はおもしろかったので、イヤになったことはない」と言い切る。

試験問題は、電気工事士のほか配管やクレーンなど40以上の資格を持つ正晴さんが徹底的に研究。過去20年分の問題を分析して、設問のパターンや解き方のテクニックも伝授した。

両親が、過去20年分の問題を研究して練習問題を作成。試験問題を読むために、少1のころからこんなに難しい漢字の読みと意味を勉強していた!
両親が、過去20年分の問題を研究して練習問題を作成。試験問題を読むために、少1のころからこんなに難しい漢字の読みと意味を勉強していた!

合格したときは、「努力が報われてうれしかった」という絆翔さん。電気工事専門誌から声がかかって連載を持ったり、テレビ番組に出たりと、世界が広がるのも楽しいという。

資格を取ったあとも、身に付けたスキルを忘れないようにと、自室のエアコンを取り付ける際の配線を行うなど実践を欠かさない。2019年の台風では、正晴さんのサポートを得ながら、漏電のため停電していた祖母の家の屋根裏に入って配線を直した。

学校では、「答えは1つなのに、いろんな導き出し方があるのが楽しい」数学が好きだという絆翔さん。最近はSDGsや再生可能エネルギーにも興味が広がっている。目標に向けて努力し、結果につなげた経験は、将来にも生きるだろう。

公認会計士 高校3年生で取得 星 絵里香さん

■「公認会計士の資格取得に必要なのは、“根性”です」

現在、上智大学経済学部3年生の星絵里香さんは、中学3年で簿記2級に合格、高校3年(18歳)で、平均合格率10%といわれる難関の公認会計士試験に合格した。2018年に合格した女性としては最年少で、2000年生まれ初の合格者。おそらく女子高生としては初の合格者と思われる。

勉強がつらいときは「何年もやってきたから戻れない」という気持ちでやった。「嫌になったときは、BUMP OF CHICKENの『sailing day』を聴いて、鼓舞していました」
勉強がつらいときは「何年もやってきたから戻れない」という気持ちでやった。「嫌になったときは、BUMP OF CHICKENの『sailing day』を聴いて、鼓舞していました」

会計に関心を持ったきっかけは中学の部活。「商業高校を前身とする中高一貫校なので、『簿記部』があったんです。よくわからないまま友達に誘われて入ったんですが、最初はつまらなくて、部活ではずっと寝てました(笑)」

何の気なしに簿記3級を受験したところ、あっさり落ちた。「それが、すごく悔しかったんです」。勉強して再度受験しようと、簿記部で公認会計士の予備校講師が開催する対策講座に出て、おもしろさに目覚めた。「簿記は、言葉は違っても世界中で同じルール。貸借対照表などの左右の数字が一致するのも美しい。『こんな仕組みを考えた人ってすごい』と思いました」

中学2年で簿記3級、3年で難関の2級に合格。そこで、部活に来ていた予備校講師から、「せっかくだから公認会計士を目指したらどうか」と勧められた。公認会計士は、待遇がいいだけでなく女性が働き続けやすいと聞いた。そこで高校入学と同時に予備校にも入り、本格的に勉強を開始した。

高校生活は多忙を極めた。スケジュールに、授業や学校の試験勉強、大好きな演劇部の活動、公認会計士試験の勉強をパズルのようにはめ込む日々。平日は予備校で2〜4時間、休みの日は7時間ほど勉強した。「高校生って学校にいる時間が長いので、社会人と同じくらい資格の勉強をする時間が取りにくい。時間管理が大変でした」

活用したのはスマホの時間管理アプリだ。「試験は6科目あるんですが、まんべんなく勉強しているつもりでも偏りが出てしまう。しかも、苦手科目ほど勉強が短くなりがちなんです。アプリで科目ごとに勉強時間を記録すると、偏りが一目でわかるし、達成感も生まれてモチベーションにもなります」

会計というと、数学の素養が必要なイメージがあるが、実際は「試験では電卓を使うし、勉強は暗記が中心。『文系科目』です」という。

黄色い線は苦手なところ、赤い書き込みは毎回間違えるところなど、ノートは使わず予備校の教科書に色分けして書き込みをする形で勉強した。
黄色い線は直前期に見返すところ、赤い書き込みは毎回間違えるところなど、ノートは使わず予備校の教科書に色分けして書き込みをする形で勉強した。

「合格に必要なものは?」と聞くと「根性ですね」ときっぱり。「科目が多く、勉強量は多いですが、まじめにやれば時間はかかっても必ず受かる類の試験だと思います。予備校の先生も、『“あきらめなければ”いつか必ず受かる』と断言していました」

現在YouTubeで、試験対策や、会計について解説する動画も発信している。「会計っておもしろいのに、知られていないのが残念。もっと会計を知ってほしい」と語る。将来の夢は、大好きなもの2つを組み合わせた。

「演劇が大好きですが、私はそれほど才能がないと思ったんです。だから将来は、演劇を会計や経営の面で支えるコンサルタントになりたいんです」

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大井 明子(おおい・あきこ)
ライター
ワシントン大学卒業後、時事通信社に入社し、記者として警察、経済などを担当。再びの留学を決意し、米国コロンビア大学国際公共政策大学院を卒業。大手家電メーカーなどを経てライターとして独立。

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(ライター 大井 明子 撮影=増田岳二)

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