肩こりや腰痛の根本原因「姿勢の悪さ」が改善しない人の"ある共通点"
プレジデントオンライン / 2021年7月14日 15時15分
※本稿は、大橋しん『魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■心身の緊張が体をゆがませる
姿勢をよくするためには、「姿勢が崩れてしまう原因」を正しく認識しなければなりません。いろいろな答えがあるでしょうが、私の答えははっきりしています。
私たちが無意識のうちに、心身を緊張させ、かためてしまっているからです。
赤ちゃんのときから姿勢が悪い人なんて、いませんよね。周りの人がすべてお世話をしてくれますし、嫌なことがあっても、泣けば誰かがケアしてくれます。心身を緊張させる必要もない、いわばとても幸せな時期です。
でも、成長すれば幼稚園や小学校という「社会」に入らなければなりません。中高生にもなれば、人間関係の悩みも増えていきます。大人になれば、仕事や家庭に対する責任もあるでしょう。嫌なことがあったり、心配事やストレスを抱えているとき、私たちは赤ちゃんのように泣き叫ぶことはできません。その場から逃げ出したり、責任を投げ出すことも、なかなか難しいでしょう。
すると、どうするか?
その場を乗り切るために、体をグっとかためてしまうんです。
この、体をグッとかためてしまう状態を、私たちは何十年も続けています。心身の緊張が、ゆがみやカチコチのかたまりとして蓄積された結果、出来上がるのが「悪い姿勢」です。
姿勢が悪いと、当然注意されたりします。「背筋をピンと伸ばしなさい」「もっとシャキっとしなさい」私も何度も言われて、そう努力してきました。
このやり方では、私には無理でした。どんなに頑張っても、まっすぐな姿勢がもつのは10分くらい。すぐ疲れてしまい、また元の悪い姿勢に戻ってしまうのです。それどころか、反動でよりいっそう姿勢が崩れていく……そんな悪循環でした。
■「ふんわりさせる」という視点
何がダメだったのでしょうか? 答えは簡単です。心身の緊張が原因で姿勢が悪くなっているのに、さらに心身を緊張させて「よい姿勢」をつくろうとしていたからです。
これは逆効果でしかありません。これらの「よい姿勢」に、「しっかり」はあっても、「ふんわり」はありません。ここは断言したいのですが、私たちが健康的で幸せな人生を送っていくための「よい姿勢」には、「ふんわり」が絶対に必要不可欠です。
つまり、「ふんわり」と「しっかり」が両立していなければなりません。両方あって、はじめて「よい姿勢」と言えるのです。みなさんが親や学校に言われてきたのは、「しっかり」だけではないでしょうか?
世の中には、姿勢をよくする本や、ねこ背をなおす本がたくさん出ています。ある本は、トレーニングを勧めています。たしかに、姿勢を保つのに筋肉は必要ですから、間違ってはいません。
でも、体を「ふんわり」させるという観点が抜けているために、逆効果になってしまっています。まずは体を「ふんわり」させなければなりません。その結果として、背骨や体幹が伸び上がり、体を「しっかり」支えてくれるのです。
■引き算で体はラクになる
この話の続きをするにあたり、まず私の経歴を紹介させてください。私は、アレクサンダー・テクニークの指導講師であり、その身体技法を臨床に導入して成果を上げている理学療法士です。
アレクサンダー・テクニークとは、簡単に言ってしまうと、よりよく生きるために体と心の扱い方を学ぶ学問です。ここでは、「しようとしていないのに、無意識にしてしまっていることをやめていく、引き算のメソッド」とだけ言っておきましょう。
ポール・マッカートニー、スティング、キアヌ・リーヴス、松任谷由実などの有名人が行っていることも知られています。日本では知名度がいまひとつですが、欧米では大学のカリキュラムに入るくらい普及していて、医療や芸術をはじめ、さまざまな分野で幅広く活用されています。
私はドイツ留学中、このアレクサンダー・テクニークのレッスンを受け、自分の背中の痛みがすぐに解消したのをきっかけに興味を持ちました。そして、帰国後に勉強を重ねて、アレクサンダー・テクニークの教師として国際認定されたのです。
私は理学療法士の資格も取っていたので、アレクサンダー・テクニークを患者さん方のリハビリテーションに活用していこうと考えました。最初は大阪の救急病院にいたのですが、リハビリの技量を認められたことで、神戸の某クリニックに誘われ、そこで理学療法士として8年間勤務していました。
このクリニックにおける私のポジションは、普通の理学療法士と比べるとだいぶ特殊なものでした。言うなれば、難治性の患者専門の「特命理学療法士」。クリニック内に個人ブースを与えられて、難治性の疾患に苦しむ患者さんを回復させるというミッションを担っていたのです。
私のもとに送られてくる患者さんには、大学病院がギブアップするほどの難しい腰痛の人もいれば、原因不明の不定愁訴に長年悩まされ続けてきた人もいます。また、うつ病を合併している人もいれば、交通事故後の首のケガの後遺症で裁判中の人もいます。いずれも複雑な事情があって、通常の治療ではうまく治らず、他の医療機関をたらい回しにされてきたような患者さんばかりです。
つまり、私はそういった「他の病院でお手上げだった方々」を回復させてきたのです。「あのクリニックでリハビリを受けると難しい病気が治る」という評判は口コミで多くの方々に伝わっていたようで、クリニックが混み合い何年も予約一杯の状態になったこともありました。
■難治性の患者は姿勢が悪い
そうした難治性の疾患に悩む患者さんには共通点がありました。ご想像の通り、姿勢が悪いのです。
姿勢が悪ければ、体の荷重バランスが崩れて関節や筋肉の機能が低下し、内臓や神経、血管が圧迫されます。その結果、多種多様なトラブルがもたらされるのです。みなさんの中にもふだんから肩こり、首痛、頭痛、眼精疲労、だるさ、腰痛などに悩まされている方が多いことでしょう。また、浅い呼吸、動悸・息切れ、胸の圧迫感、手のしびれ、不眠、冷え、むくみ、血行不良、イライラ、落ち込み、便秘、胃腸の不調などに悩まされている方もいらっしゃるかもしれません。
これらの不調や病気のほとんどすべてに「姿勢が影響している」と言ったら、みなさんどう思われますか? にわかに信じられない方もいるかもしれませんね。
私がこれまでリハビリで診てきた患者さんにも、ねこ背による慢性不調がうつ病につながっていたケースや、ねこ背による内臓圧迫が呼吸器系や循環器系の疾患をもたらしていたケースがたくさんありました。逆に言えば、姿勢さえ改善できれば、ここで挙げたさまざまな症状も改善していけるということです。
姿勢が悪くなるのは、前述のように、心身の緊張が体をかためているからです。それが何十年も続いている状態は、あたかも、体のあちこちを緊張の鎖でがんじがらめにして、カギをかけてしまっているようなもの。頭、背骨、目、口の中、首回り、胸郭、胴体、骨盤、足……あらゆる部位が、ロックされてしまっています。
この「緊張のロック状態」は、努力で解除することはできません。そもそも努力とは、心身をかためる方向性のアプローチ。逆にロックを強固にしてしまうのです。
「努力」や「忍耐」「頑張り」「意志の強さ」は必要ありません。それに、筋トレのようなエクササイズをする必要もありません。むしろ、頑張ることがあなたの姿勢を悪くしている可能性は非常に高いと思います。
まずは頑張るのを、やめてみませんか?
そうすれば、「ふんわり」と「しっかり」が共存し、「美しい」「疲れにくい」「快適」という3条件を兼ね備えた姿勢を手に入れることができます。そして、これから先の人生を、より快適で充実したものへと変えていきましょう!
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理学療法士、アレクサンダー・テクニーク国際認定教師
岐阜生まれ、神戸在住。(株)フローエシックス代表取締役。ドイツでチェロの修業中にアレクサンダー・テクニークを知り、帰国後に理学療法士とアレクサンダー国際認定教師の資格を取得(両資格の所有者は国内初)。救急病院勤務を経て、整形外科クリニックにて「特命理学療法士」として数々の難しいケースを解決。2020年に独立し、リハビリと太極拳を中心としたスタジオを開設。姿勢改善の研究成果を積極的に学会で発表しており、医療だけに頼らない健康とケアのあり方を提案している。著書に『魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本』(飛鳥新社)がある。
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(理学療法士、アレクサンダー・テクニーク国際認定教師 大橋 しん)
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