恥ずかしさと痛みに耐えて、38歳独身男性が「VIO脱毛」に挑んだワケ
プレジデントオンライン / 2021年7月16日 15時15分
※本稿は、ウイ著、『38歳、男性、独身 淡々と生きているようで、実はそうでもない日常。』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「VIO脱毛」にピンときた
2020年12月30日。年の瀬に生まれて初めてVIOの脱毛をしてきました。
理由はいくつかあるのですが、「VIOの脱毛をしたら快適。二度と毛のある生活には戻れなくなる」とすすめられたからです。
何がどう快適なのか。それはインターネットを見れば分かるのですが、もうそういうのをいい加減に減らさないとな、と思っていたのです。
なんでもかんでもインターネットで検索すれば大量の情報を仕入れることができます。そして、あたかもそれを体験したような気になってしまう。何を買うにも何を食べるにもまずは口コミ。口コミが悪ければ好きな作家の本でも買うのを躊躇してしまうし、気になる店構えの居酒屋にも入らない。判断基準が他人の評価。
そういった世界にどっぷり浸かってしまっている。そんな状況をたまには打破したいなと思っていた矢先におすすめされたのが、VIO脱毛なのです。あと、2020年はコロナで何もかも予定通りにいかず、何か刺激的なことを体験しておきたかったという理由もあります。とにかくピンときたのです。
■ブラジリアンワックス脱毛を選択
まず、どうやって脱毛するかを調べます。なんとなく色々な手段があることは知っていたのですが、調べてみるとその手段の多さに驚きます。
真っ先に決めたのは、自分で剃毛するのは避けるということです。なんせ、場所が場所です。しっかり目視したことのない場所も含まれています。素人が簡単に手を出していい場所ではありませんし、絶対に満足のいく仕上がりにはならないでしょう。
除毛クリームという手段もありますが、「顔とデリケートな部分には使用不可」とあります。やはり専門家に任せるしかない。
かと言って医療脱毛も抵抗があります。その抵抗は施術に対するものではなく「永久脱毛」という部分です。僕は、まずはお試しで1回なくしてみたいのです。もし快適でなかった場合に後戻りできないのも困ります。
そこで、最終的に行き着いたのはブラジリアンワックス脱毛です。VIOにワックスを塗り、乾燥させたらワックスを毛ごと一気に剝がしとる。乱暴極まりない。
刺激が欲しかった僕にはぴったりです。そしてブラジリアンワックスの良いところはまた毛が生えてくるという点。僕のようなお試ししてみたい人間にはぴったりです。
「メンズ ブラジリアンワックス」で検索すると思っていた以上に施術してくれるところが多いことに驚きます。年の瀬ということもありお休みのところが多く、選択肢は少なかったのですが、清潔そうで料金が安すぎないところから勘で選び予約を入れます。なぜか「施術」という名の付くサービスは安すぎると敬遠してしまいます。
■「全部やっちゃって」クールに対応
当日、まず驚いたのは施術する方が女性ということです。メンズ向けのサロンはてっきり男性が施術をしてくれるものと勝手に勘違いしていました。
しかし、ここでやめるわけにはいきません。38歳独身男性。わざわざ年の瀬に脱毛に来ておいて施術が女性と知った途端に尻っ尾を巻いて逃げるわけにはいかないのです。
平然と「ああ、そうなのね」くらいの余裕の表情で脱毛の経験の有無など簡単なカウンセリングを受けます。
デザイン脱毛と呼ばれる台形や三角形などの形状で毛を残す施術もあることに驚きますが、「ああ、そうなのね。でも、全部やっちゃって」と余裕の表情で返します。
本当は、初めてだから優しくしてねとか言いたかったし、VIOを一気にやるのか、Vをやった後にIOと続くのかも聞きたかったし、最悪皮膚が剝がれたりしないのかとか、まさか施術するの初めてじゃないよね、わりと経験あるよね等々、20個くらい質問したかったのですが、相手が女性であることでかっこつけてしまい、クールな自分を演じてしまったのです。本当にめんどくさい。
■「キャン!」あまりの痛みに声が漏れる
施術室に通されます。そこで下半身だけ脱ぐように指示をされます。当然と言えば当然なのですが、上半身は脱ぎません。当日、寒波が到来しており平野部でも雪が積もるくらい降るという予報が出ており、いつもよりも厚着をしていました。もうすぐ年が明けるっていうのに上半身は4枚も5枚も重ね着して、下半身は何も穿いていない状況が情けない。
施術台に腰掛け、指示通りに脚を開きます。人様の前では着衣の状態でもしたことがない体勢です。
「ブラジリアンワックスってブラジル関係ないんですよ」
「ナポリの人がナポリタン知らないみたいなことですかね」
「台湾にも台湾ラーメンないですもんね」
そんな当たり障りのない会話をしながらも温かいワックスが塗られます。走る緊張。
10分くらいだと思っていた乾燥時間はわずか1分くらいでした。無理。心の準備ができない。一気に剝がされるワックス。
刹那、「キャン!」という小型犬のような声が出てしまいます。
これまでクールに装ってきたのに台無しです。もちろん声を出す予定はなかったのですが、とにかく痛いのです。確かに説明された通り、痛みはほんの一瞬です。でも、痛いもんは痛いのです。
施術してくれるおねえさんから「よかったらこれどうぞ」と抱き枕のようなクッションを手渡されます。強く抱きしめます。いい香りがしました。そこから塗っては剝がすを何度か繰り返し、約30分後(体感は2時間くらいでした)、とうとうVIOの毛がなくなります。
■すっきりした下半身は清潔感があって快適
鏡に映った自分。相変わらず上半身は厚着で、下半身は本当の意味で全裸になっています。なんか、下半身ってシンプルなんですね。その後、アフターケアの説明を受け帰宅となりました。
2021年1月末、VIOの毛がない生活を1カ月送ったころ。確かに清潔感があって快適です。お風呂上がりやウォシュレット使用時も快適さを感じます。おそらく夏はもっと快適に感じるのでしょう。一番のメリットはフローリングに縮れた毛が落ちていないことです。部屋に陰毛を発見すると気持ちまで陰になるので、その点では間違いなく脱毛して良かったと言えます。
男性でVIO脱毛をしている人は、日本では圧倒的少数派でしょう。ブラジリアンワックスの痛みや永久脱毛のコストや時間、銭湯に行った時の周囲の目やまだ見ぬ恋人のことを考えながら、さて今後どうしようかなと股間の方向性について悩む日々です。
■スキンケアにもハマる
本当の意味でのスキンケアというものを知りませんでした。一応、入浴時に顔を洗う時は洗顔料を使用し、身体はボディソープで洗います。ボディソープで全身洗うようなことはしていません。その使い分けがスキンケアだと思っていました。
メンズコスメの市場が拡大していることや化粧をする若者が増えていることは情報として知ってはいましたが、自分にはあまり関係のない世界だと思っていたのです。
ある時、コスメのプロの方によるスキンケアやメイクのお話を聞く機会があり、何回も話を聞いているうちに、自分のスキンケアの概念がいかに間違っていたかを知り、正しい方法でやってみようかなと興味がわきました。
まずは正しいスキンケアには何が必要なのか、複数の専門家に聞いて回り、洗顔ネットや化粧水や乳液を買い揃えます。これでもかというくらい洗顔料を泡立て、直接手が肌に触れないように顔を洗います。流す際も水気を拭きとる際も絶対にこすりません。
洗った直後に化粧水。はじめは500円玉のサイズを出してハンドプレスと言われる方法で浸透させます。化粧水が馴染んだら次は10円玉サイズ。最後は1円玉サイズで同じことを繰り返し、乳液を塗って終わりです。これを朝晩行います。
そうすると、1週間も経過しないうちから変化が。明らかに毛穴は小さくなり、アゴにできていたニキビは沈静化し、顔色が良くなったのです。
普段正しい方法でスキンケアしていないおじさんの肌は荒れ果てた荒野なのです。地面はひび割れ、草木は枯れ、乾燥した風が吹いている、試される大地なのです。
そこを開拓していくのですから、普段スキンケアしている女性よりも伸びしろがあるのは当然です。しかも多くの独身男性はルーティーンを守ることが得意です。正しい知識さえ得られれば、愚直に言われたことを続けられるのです。
僕は、朝は水で顔洗っておしまいだったので正直はじめはめんどうでしたが、モテたいという下心も手伝って、半年経過した今でも朝晩のスキンケアはマシンのように正確に行っています。この過程に心地よさを感じます。肌の状態がよくなっていくこと以上に、自分の伸びしろを発見し、それを埋めるための新しいルーティーンによって自分の生活の質が向上することが心地いいのです。
■みんな「伸びしろ」を探している
先日、美容に詳しい友人にスキンケアを始めたことを知らせると、「これ使ってみなよ」と美容液をもらいました。いかにも高そうな瓶に入ったその液体は、おじさんの肌に新しい命を吹き込みました。そして、驚くのです。まだ伸びしろあったんかと。
最近、シャンプーブラシを投入しました。毎晩シリコン製のブラシで頭皮を揉むように洗い上げます。指で洗うよりも頭皮がきれいになっているかどうかなんて正直分かりません。
しかし、明らかに顔が引きあがり表情もスッキリするのです。指でシャンプーする時代は終わりです。頭皮にもありました。アラフォーの伸びしろ。
きっと、ゴルフも一緒なのかなと考えます。おじさんになってからハマる人が多いのは、練習次第で飛距離が伸びたり真っすぐ飛んだりして、スコアという分かりやすい数値が縮んでいくことに自分の伸びしろを見出しているのかもしれません。ダイエットやジョギングもそう。あれは健康は建前で、本音は伸びしろ探しなのです。
一人暮らし歴20年のおじさんの家に増えていく美容グッズ。最近、ヘアオイルが気になり始めています。
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ライター、コラムニスト
本名、ウイケンタ。1982年7月23日、山形県生まれ。東京や名古屋で暮らした後、現在は横浜在住。著書に『ハッピーエンドを前提として』(KADOKAWA)、『エンドロールのその後に』(大和書房)がある。オンラインサロン「喫茶 クリームソーダ」主宰。趣味はアウトドア。好きな食べ物はカレーとざる蕎麦、飲み物はレモンサワー、犬種はゴールデンレトリバー。
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(ライター、コラムニスト ウイ)
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