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独身アラフォー男が朝4時にコンビニをはしごして作った"あるメニュー"

プレジデントオンライン / 2021年7月17日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokoroyuki

「おひとり様」のアラサー、アラフォーは、いまどんなことを考え、どんな日々を過ごしているのか。38歳、男性、独身でコラムニストのウイ氏は「朝4時にコンビニをはしごして、冷やし中華をつくった」という。その理由とは――。

※本稿は、ウイ著、『38歳、男性、独身 淡々と生きているようで、実はそうでもない日常。』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■キャンプ歴は15年目に突入

朝6時。部屋から出て、駅前のレンタカー屋へと向かいます。10月の早朝はぼんやり寒い。空気も、朝の明るさも、雲の形状も、すっかり秋。

予約している車を借り、いったん自宅に戻り、テント、ランタン、寝袋などを車に積み込みます。キャンプ歴は15年目に突入しました。回数が増える毎に荷物は減っていき、昔は部屋と車を何度も往復して荷物を積み込んでいましたが、最近は両手&背中に背負える程度の荷物で3泊くらいならなんとかなってしまいます。

ドライブのプレイリストを流し、目的のキャンプ場まで約3時間の運転スタート。と言っても、まずは高速道路のサービスエリアで朝食を食べないと始まりません。早起きは腹が減るのです。焼き魚定食かお蕎麦が定番。たまに豚汁定食に浮気します。

コーヒーを飲みながらゆっくりと高速道路を運転し、キャンプ場近くの道の駅へ。地元の食材を買うことが目的ではあるものの、いかんせん道の駅に売っている野菜や総菜は全国どこに行っても量が多い。大根1本、キャベツ1玉、漬物300グラム。

どれも一人キャンプには多すぎるのです。結局、いつも道中のスーパーで揃えることが恒例となります。

ホームセンターで薪も買って、10時ぴったりにようやく目的のキャンプ場へ。車から出ると息が白い。気温は7度。街と10度くらい気温差があります。

長野、群馬、静岡、山梨、岐阜、三重、和歌山。全国にお気に入りのキャンプ場があるのですが、今回は初めて利用するキャンプ場。最大の特徴はその「広大さ」です。

なんと5万平方メートル。全然ピンとこない。しかもインターチェンジからも遠く、悪路や山道が多いという抜群のアクセスの悪さで空いています。

自分のサイト(キャンプするエリア)から他のキャンパーが目に入らないのが良い。森で一人っきりになっているような気分が味わえます。

■制約がある場所で居心地のよさの追求する

すばやくテントとタープを設営し、マットと寝袋を放り込み、テーブルと椅子を出して自分の空間が完成。サイトのすぐ背後には森。目の前には小川。前日の雨で森は濡れていました。

僕は「制約がある場所での居心地のよさの追求」が非常に好きです。居心地の悪い場所を自分の知識と力と道具を使って「時間を快適に過ごせる状態にする」という行為。それはキャンプだけではなく、たとえばビジネスホテルや旅先の旅館や喫茶店のテーブルの上などでも、自分の居心地がいい空間を創り出すことに大きな喜びをおぼえるのです。

この行為に漫画家の香山哲さんは「ビルド」という名前をつけています。引っ越しなんか最大のビルドです。新しい拠点を自分が心地いいように工夫するわけですから。

快適な空間ができたら昼食作りです。と言ってもだいたい袋ラーメンとビール。カット野菜と卵と一緒に麵を茹でるだけ。僕は3分茹でなくてはいけない麵の場合、半分の1分半で食べ始めます。一人なので当然誰からも「もう食べるの?」という詮索は受けません。

完成と同時にプシュッとビールを開けます。缶ビールの開く音はファンファーレ。時々完成が待てずに開けます。ごくりと飲んだ瞬間、胃にビールが流れ込み、胃から脳へとアルコールの味が速やかに伝達される。目の前はこれでもかという自然。トリップします。

キャンプファイヤーでビール
写真=iStock.com/Dziggyfoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dziggyfoto

そしてその瞬間、今日は車を運転できないことが確定。キャンプ場に着いたら周囲を散策する人もいるし、近場の温泉を探しに行ったりする人もいるけど、僕はしません。昔は散歩をしたり山菜を採ったりもしましたが、ビールを飲みに来ているのでしなくてもいいのです。最近のキャンプギアにも興味がなくなりました。快適ならそれでいいのです。

お腹が膨れたら昼寝です。だってまだお昼です。身体も温まったし、寝袋もふかふかです。寝るしかありません。一応アラームを3時間後にセットして、すぐに入眠。

――ここまで書いたことって、わざわざキャンプ場でやらなくてもいいんですよね。

ビールも袋ラーメンも昼寝も全部家でやれることばかり。でも、自然の中でやるから意味と価値があるのです。

■何かしら食べているか寝ているか

昼寝から起きてもまだ夕方の4時とかです。ここから夜の宴の始まりです。高級な肉を焼いてもいいし、燻製を作ってもいいし、ホイル焼きもうまいし、カレーでもいい。とにかく作りたいものを作りたいように作り、ビールやハイボールやレモンサワーを飲む。

同時進行で本を読んでもいいし、焚き火を眺めるだけでもいいし、なんならダウンロードしてきた映画を観てもいい。キャンプ場に温泉が併設されていれば入ればいいし、めんどくさかったら顔を洗い、歯だけ磨いて寝ればいい。

いつも21時くらいには消灯してテントに入ります。テントの外から聞こえてくる自然の音を聞きながらあっと言う間に入眠です。

翌朝は5時くらいに起床。早朝の山を散歩。川沿いでもいいし、林道を歩いてもいい。1時間くらい歩いたらサイトに戻り、朝食。ずっと、何かしらを食べているか寝ているかです。

グループキャンプの時はホットサンドやらスープやらをみんなで作るけれど、一人ですからそんな手のかかることはしません。カルディで買った湯煎で温めるコーンスープと、苦みが出る手前まで焦がし気味に焼いた食パン。

このパンに焼いたハムかベーコンを載せて、コンビニでパウチで売っている卵サラダを載せて食べる。2枚あるから、もう1枚はコーンスープにディップしてもいいし、パンがびしょびしょになるくらいバターを塗ったトーストにしてもいい。

帰りはまずは温泉に入り、山で冷えた身体、狭い寝床で固まったバキバキの関節を緩めて、その土地の名物を昼飯に食べて、高速のサービスエリアでソフトクリームを食べて終わります。

これが、38歳独身の一人で過ごすソロキャンプの休日であります。

■冷やし中華が食べたい午前4時

フリーランスになってからというもの、生活のリズムがずいぶんとルーズになってしまいました。致し方ない部分もあるのですが、どうしても夜中まで仕事をしてしまいます。つい先日も、完成した原稿をメールで納品すると安心感からか空腹であることに気付きました。

(なんか腹減ったな。そういえば晩飯食ってないもんな。飯でも食おうかな)と思い、時計を見ると間もなく午前4時。(もはや朝じゃん。朝ご飯じゃん。おはよう世界)と、独り身にしては大きな冷蔵庫を開けます。

アルコール、水、お茶、炭酸水、牛乳。水分ばかりが行儀よく整列していました。

ダメもとで冷凍庫や戸棚も探しますが、かろうじて見つけた固形物は、チューブのわさびだけでした。おそらくは賞味期限が切れているであろうわさびを見てみぬふりをし、コンビニに行くため外に出ると、夜明け前だというのに風が暖かいではありませんか。

いつの間にか冬は終わっていました。春から夏に変わる時は大騒ぎするくせに、春の訪れはいつだって物音一つ立てずやってきます。

(冷やし中華、食いたいな)

冷やし中華
写真=iStock.com/yumehana
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yumehana

本当かどうか分かりませんが、コンビニの季節物の売り上げは季節の変わり目が一番売れるという話を聞いたことがあります。たとえば、おでんだったら真冬よりもちょっと寒くなってきた秋が一番売れるそうです。冷やし中華なら夏より春先です。

僕の身体も少し暖かい空気を感じただけで、身体が冷やし中華を求めています。徒歩2分のファミリーマートに行きますが、冷やし中華はありませんでした。仕方なく徒歩5分のセブン‐イレブンに向かいます。やっぱり外は暖かい。もうこれは冷やし中華以外ありえません。

■ミニサイズでは、足りない

ありました。冷やし中華。さすが安心と信頼のセブン‐イレブンさん。あなたと、コンビになりたい。でも、ダメです。ミニサイズでした。商品棚の前で少し考えましたがミニじゃだめだ。量も少ないし、何より具材が少ない。ふと棚に目をやると、うどんやそば達がこっちを見ていました。

(違う、そうじゃない)

僕は徒歩20分先にある24時間営業のスーパーに歩いて向かいます。自分の足音だけが響く寝静まった商店街。朝と夜の間。なぜか後ろめたい気持ちになります。

往復40分、買い物20分。合計1時間かけて麵、野菜、卵、紅ショウガなどを買い込み自宅に戻ります。ここでミステイク。ここまで揃ったのに、からしがないことに気付いてしまいます。刹那、漂うわさびの気配。

(でしゃばんな)

さっき行ったばかりのファミリーマートに行き、からしだけを買って家に戻ります。からし、正直持て余します。家でとんかつを揚げることはないし、そうすると用途がお総菜で買ってくる焼売か冷やし中華しかないのです。

きっとこのからしも春の訪れのように、物音一つ立てずに賞味期限が切れることでしょう。それでも今、からしなしという選択肢はありえなかったのです。これでようやく役者は揃いました。

小さめの音量でスピーカーから音楽を流し、クッキングスタート。

■簡単だけど、自分のための料理

卵は錦糸卵にしません。めんどくさいから。麵と一緒のお湯で半熟のゆで卵に仕上げます。昔付き合っていた彼女と「レトルトのソースを湯煎で温めながら同じ鍋でパスタを茹でることに抵抗があるか」でケンカしたことを思い出します。

あの頃の僕はそれが許せなかったのですが、今は平気になってしまいました。バスタオルだって冬場は毎日洗わないし、カレーはご飯よりもルー多めが好きになりました。こうやって、人は変わっていくのです。

麵は硬めで上げて氷水で締め、大好きな紅ショウガは多めに。牛丼屋に行くとどうしても紅ショウガをたくさん取ってしまいます。生姜には脂肪燃焼作用があると言われているので良しとしているのですが、明らかに塩分過多です。そんな紅ショウガも、いつか少なめが好みに変わってしまうのでしょうか。

ネギも大葉もミョウガも買ってきました。スーパーで買える合法ドラッグです。好きなだけザクザク刻みます。大好きな薬味が主役級の量です。

ハムが多すぎた。今、食ってしまおう。そしたらビールも開けよう。

せっかくなのできちんと盛り付けましょう。ゴマがない。ゴマくらいまあいいか。そもそも冷やし中華ってゴマかかっていたっけな。いや、ゴマはいるだろ。またコンビニ行かなきゃ。さっきファミリーマートでからし買ったばかりだから、ここはセブン‐イレブンだな。

麵を茹でて野菜を切るだけ。それでも、自分の、自分による、自分のための料理。使い終わった調理器具を洗いながら料理を進めるプロセス。スピーカーから流れるスピッツが愛と希望よりも前に響くことで有名な『春の歌』で料理の完成を祝福します。そうやって、東の空がグラデーションを描き始める頃、ようやく完成した冷やし中華を食べ始めました。

酸味のあるスープ。もちもちの卵麵に絡むからしとマヨネーズ。遠慮せず食べられる山盛りの薬味。トマトの甘味やキュウリの食感が大変心地よく、まったく食べ飽きません。あっと言う間にたいらげてしまいます。

いかん、量が足りません。全然足りません。幸い、麵は2食入りです。何のためらいもなく、もう一度麵を茹でます。でも2杯目は、野菜を切ったりきれいに盛り付けたりするモチベーションはありません。麵にスープとからしをあえて手でちぎった薬味をまぶして雑に混ぜて食べます。

外はすっかり朝です。さすがにここからもう一本お酒を開けるのは気が引けまして、満腹になったお腹を抱えながら寝床に潜り込みます。満腹で寝ることの代償は考えません。大満足です。

■「おとなしくパンでも食っとけよ」

――ということを、既婚の女性に話したところ、

ウイ『38歳、男性、独身 淡々と生きているようで、実はそうでもない日常。』(KADOKAWA)
ウイ『38歳、男性、独身 淡々と生きているようで、実はそうでもない日常。』(KADOKAWA)

「まずい。非常にまずい。自分の城を築きすぎ。城って言うか要塞。第7サティアン。朝方、仕事終わりにコンビニに行く。ここまではOK。でも、春の空気を感じて冷やし中華作り始める? コンビニはしごして、結局その材料だけを買いにスーパー行くの? これが自分の旦那だと思うとゾッとする。普段料理しないくせに急にやる気スイッチ入れちゃだめなの。寒暖差ありすぎ。コンビニの蕎麦食っとけ。いや、蕎麦はズルズルすする音がするからダメだ。朝っぱらから蕎麦すする音で起きたら気分悪いわ。音楽も鳴らすな。イヤホンしろ。スピッツでも、だ。朝、腹減ったらおとなしくパンでも食っとけよ。ここでおとなしく、静かにパンをもぐもぐ食べる男が結婚するの。以上」

と、愛ある助言をいただきました。

そうか。パン、か。

次はおとなしく駅の近くにできたクラフトサンドイッチ屋さんでパンでも買って食べようと思います。ローストビーフのサンドイッチがおいしいらしい。

サンドイッチ
写真=iStock.com/lostinyonkers
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lostinyonkers

でも、早朝は開いてないから自分で作ろうかな。ローストビーフも上手に作れるし、なんなら小麦粉からパンを作ったっていいのです。

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ウイ(うい)
ライター、コラムニスト
本名、ウイケンタ。1982年7月23日、山形県生まれ。東京や名古屋で暮らした後、現在は横浜在住。著書に『ハッピーエンドを前提として』(KADOKAWA)、『エンドロールのその後に』(大和書房)がある。オンラインサロン「喫茶 クリームソーダ」主宰。趣味はアウトドア。好きな食べ物はカレーとざる蕎麦、飲み物はレモンサワー、犬種はゴールデンレトリバー。

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(ライター、コラムニスト ウイ)

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