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「起業には100万円以上が必要」という"きちんとした起業"がオススメできない理由

プレジデントオンライン / 2021年7月28日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Atstock Productions

起業して経営者になるには、どれぐらいの資金が必要なのか。経営コンサルタントのえらいてんちょう氏は「『100万円以上が必要だ』と考えて、手を広げすぎると失敗する。生きていくには、“しょぼい起業”でも問題ない」という――。

※本稿は、えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく 持続発展編』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

■融資は低利息でも避け、出資プランも慎重に考えるべき

「総額1億円の第三者割当増資を実施!」などと、資金調達したベンチャー企業が発表し、その金額が将来性を計るモノサシとされている現代においても、しょぼい起業では、あえて古きよき概念を大切にしたいと思います。

しょぼい起業において「借金は悪」です。そっくりもらえて返さなくてよい給付金は別として、融資(=借金)は低利息であっても避けましょう。同様に、出資を受ける(=スポンサーを見つける)プランも慎重に考えるべきです。

しょぼい起業における資本政策の基本は「50万円でいいから、きちんと貯めて起業しよう」「資金が底をつくまでやって芽が出なければいったん撤退し、また貯めて再チャレンジしよう」という、きわめてシンプルなものです。ミニマリズム的経営といってもよいでしょう。

「起業するなら創業融資」と、いろんな制度や金融機関を調べる方も多いようですが、しょぼい起業は融資を受けなくてもできますから、とりあえず金融機関とは付き合わずに進める。これが原理原則です。

なぜか。ひとことで言うと「面倒だから」です。もう少していねいに言えば、しょぼい起業では「事業について自分自身で決められること」を大切にすべきと考えるからです。

■喫茶店経営がセカンドキャリアとして人気を誇る3つの理由

すこし話は逸(そ)れますが、サラリーマンとして長年真面目に勤めあげた方が「退職後は夫婦で喫茶店でも開きたい」と話すのを聞いたことがありませんか? 失敗が後を絶たないと各所で警告されているにもかかわらず、「夢のセカンドキャリア」として喫茶店経営が不変の人気を誇る理由が、私は3つあるとみています。

えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく 持続発展編』(イースト・プレス)
えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく 持続発展編』(イースト・プレス)

第一は「社会との接点」。会社を離れても世の中と関わり続けるために、何かしらの労働を必要としているということです。

第二は「老後の不安」。日々の生活をまかなうのに年金だけでは十分でなく、蓄えを取り崩していくのも心細い。あまり心身を酷使せずに収入が得られるなら、大儲けはできなくても安心が手に入るということです。

そして第三、これがもっとも重要ですが、「事業全体が思いどおりになる」ということです。

店の主になれば、かつて仕えたような上司や、無理難題を押しつけてくる取引先はもういません。営業時間は自由、メニューも内装も自由に決められ、迷惑な客が来たら追い出してもいい。会社人生で周囲にさんざん振り回されてきたからこそ、思いどおりに理想を追求できる環境に魅力を感じるのだと思います。

■「誰かにお金を借りる」は未来の自由を縛る行為

この記事を読んでいるあなたも、心当たりがありませんか? 「起業」に興味を持つくらいですから、きっと「誰にもうるさいことを言われず、社会で活躍できる場所」を欲しているはずです。もしそうであれば、金融機関から資金を借りるのは最悪の選択です。

そもそも「誰かにお金を借りる」というのは、それを返す将来の自分自身から借りるようなもので、自分の未来の自由を縛る行為です(奨学金を借りたことがあれば、よくわかると思います)。

おまけに事業が成功しようがしまいがお構いなしに利息をとられる約束で、そのための審査だといって事業計画だの資金計画だのをいちいち細かく説明させられる。実にバカバカしいと思いませんか?

もっと言えば「絶対逃れられない確定申告の事務作業さえ面倒なのに、融資を受けるために役所で資料をそろえて頭を下げに行くなんて、せっかくゆるくはじめられるしょぼい起業を選んだ意味がない」というのが、私の正直な思いです。

■チャンスを逃すまいと手を広げると失敗する

もちろん苦にならなければ、説得材料をしっかりそろえ、収益見通しも立てた上で融資なり投資なりを受ける、ある意味「ちゃんとした起業」をしても構わないと思います。しかしそれでも、しょぼい起業の価値を信じる私から、これだけは伝えたいです。

「たとえチャンスが目の前にあっても、いきなり手を広げすぎるな」と。

具体例を挙げましょう。例えばあなたが、COVID‐19(新型コロナウイルス感染症)の流行前から輸入グッズのECサイトを出店していて、たまたま不織布マスクの調達にツテがあったとします。

メディアが連日「ドラッグストアは長蛇の列」などと騒ぎ立てていましたから、きっと手に入るうちに、なるべく多くの商品を押さえたくなったはずです。

マスク
写真=iStock.com/ipuwadol
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ipuwadol

もし当時「次の売上が入金される2カ月後まで、まとまった資金がない」状況だったなら、千載一遇のチャンスを逃すまいと、入金で返せるギリギリまで借り入れて仕入れようとしたかもしれません。

しかしご存じのとおり、2カ月ほどで約10倍まで急騰したマスク相場は、ほぼ同じ期間で品不足が解消したことによって、元値まで一気に戻る大暴落。不良在庫と化したマスクの山は、箱単位で投げ売りされるようになりました。降って湧いたチャンスがいつまで続くかなど、誰にもわからないのです。

■どうしても借りたければ個人から数十万円を

私の知人のある経営者は、貸し会議室の経営でいっとき栄華を極め、手を広げれば広げるほど利益が出るので銀行も積極的に貸し付けてきたそうです。

しかし、2011年の東日本大震災で想定外の予約キャンセルが発生。当てにしていたお金が数カ月入らなくなったとたん、事業を続けられなくなりました(いわゆる「資金ショート」)。後に残ったのは借金だけです。

どれだけ客が来ていても、うかつに手を広げない。目の前のチャンスをみすみす逃しても、ぐっと我慢ができる。それも大きな力だということを、ぜひ知っておいてください。

とはいえ実際のところは、しょぼい起業においても「開業資金を貯めるバイトをやめて一気に仕掛けないと間に合わない」といった、借り入れもやむを得ない場面があるにはあります。

100万円を超える額の借り入れがしょぼい起業で必要となることは絶対にありませんし、100万円以下を金融機関から借り入れるのは、金利も高くなるのでまったくオススメできません。

こういうときには数十万円程度を限度に、あまりうるさいことを言ってこなさそうな個人(半分趣味で若者を応援している経営者など)を頼るのがよいでしょう。

個人相手がよいのは、あなたの人柄と、計画への評価次第では「売っている商品を利息代わりに提供する」といった、形にとらわれない有利な条件も認めてもらえる余地があることです。

ぜひ熱意を伝えて交渉してみましょう(「えらてんチャンネル」内の「しょぼいマネーの虎」シリーズを参考にしてください)。

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えらいてんちょう(えらいてんちょう)
起業家、経営コンサルタント
略称「えらてん」。本名・矢内東紀(やうちはるき)。1990年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。バーや塾の起業の経験から経営コンサルタント、YouTuber、著作家、投資家として活動中。2015年10月にリサイクルショップを開店し、その後、知人が廃業させる予定だった学習塾を受け継ぎ軌道に乗せる。17年には地元・池袋でイベントバー「エデン」を開店させ、事業を拡大。日本全国で一時最大10店、海外に1店(バンコク)のフランチャイズ支店を展開。

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(起業家、経営コンサルタント えらいてんちょう)

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