「トヨタよりでかい会社をつくる」「東大しか受けない」ビッグマウスのわが子を全肯定した母親の意図
プレジデントオンライン / 2021年7月24日 11時15分
※本稿は、『プレジデントFamily2021年夏号』の一部を再編集したものです。
■3つの企業の社長務める現役東大生(25)はどのように育てられたのか
「札幌に拠点を置く、プロバレーボールチーム『サフィルヴァ北海道』の運営をしています。チームが元気になれば、観光業の活性や健康に対する意識の向上につながると考えています」
そう語る三木智弘さんは三重県出身の25歳。休学しながらスポーツ関連企業3社の社長を務めている。
「起業のきっかけは父でした。父はサッカー日本代表チームのアスレチックトレーナーを務めていました。トレーナーは選手に同行し、けがの予防や治療を行うなど、チームにとって欠かせない役割でありながら、待遇面や契約が安定しない人も多いのです。こうした状況を改善するために、トレーナー全般の地位向上を実現したいと考えていました。現在はアスレチックトレーナーの教育・派遣事業なども手掛けています」
父・裕昭さんは日韓、ドイツW杯に随行した超一流トレーナーだ。日韓W杯では、智弘さんは試合中にけがを負った選手の治療にあたる父親の背中を最前席から見ていたという。
「大学2年生頃までは外資系コンサルタントに就職し、経営の面からスポーツチームに携わりたいと思っていました。ただ、コンサルの先輩に聞くと、コンサルタントからスポーツチームの経営者になるには、個人的なつながりや運の要素も強く、必ずしもスポーツに関われるとは限らないと言われました」
そこで智弘さんは確実にスポーツ業界に入るために起業の道を模索し始めた。自分を追い込むためバイトなどの収入を断ち、少しの貯蓄を元に、事業に共感して、お金を出してくれる人を探すために起業家のイベントに参加したり、東大生と経営者が会える機会を作ったりしていくなかで経営者との関係を構築していった。
「そんな中、ある投資家さんが『経営が厳しいバレーボールチームがあるんだけど経営してみる?』と声をかけてくれて『やります!』と即決しました」
■「トヨタよりもっとでかい会社をつくる」「僕は東大しか受けない」
今では東京・北海道間を頻繁に行き来する経営者だ。休学も社長就任も、両親へは事後報告だったという。
「全然知らなかったです。ただ、驚きもしませんでした。『トヨタ自動車っていう世界一大きい自動車会社があるんだよ』って教えたら『もっとでかい三木自動車をつくる』って言うような子でしたから(笑)」(裕昭さん)
母・智恵子さんは、智弘さんのこうした発言を決して否定せずに育てた。
「智弘の幼少期の口ぐせは『ともくん天才、浩江ちゃん(姉)天才』でした。先生に褒められたことを自慢げに話し始めたら、私は『そうなの〜⁉ 偉かったね〜』って言っていましたね。高校生になって、『僕は東大しか受けない』と言ったときも、滑り止めは? とか受かりそうなの? とは聞きませんでした。大げさなことを言っているように見えたとしても、無理とか駄目と否定してしまうのは、子供の可能性を制限してしまう気がしたんです」
一方、智弘さんは母の次のような一言が心に残っているという。
「母には『お父さんのように好きなことを仕事にして食べていけることはとても幸せだから、あなたも早く夢を見つけて、好きなことが仕事になるように頑張りなさい』と言い聞かされていました。起業に踏み切れたのは、この言葉の影響が大きいかもしれません」
社長になり智弘さんが感謝し始めたのは、智恵子さんから人付き合いの基本を教え込まれたことだという。
「『アパートの共有スペースに知らない人がいても挨拶しなさい』とか『人の家におじゃまするときは手土産を持っていきなさい』などと教えられました。当時は近くの市民会館へ乗り込み、お年寄りと将棋を指したりすることもありました。母から教わった人との接し方が、投資家や大企業の社長にかわいがってもらえるようになったきっかけかもしれないです」(智弘さん)
現在、経済学部4年生で休学している智弘さん。
「スポーツビジネスには国境がありません。海外で仕事をしたいので、大学は卒業する予定です。ビジネスと学業を両立しながら頑張りたいです」
(起業家東大生・経済学部4年生 三木 智弘 文=土居雅美)
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