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一方的に「訪日中止」を宣言する文在寅大統領は、どこまで自己中心的なのか

プレジデントオンライン / 2021年7月21日 15時15分

スペイン・バルセロナで開催された経済フォーラムでスピーチをする韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領=2021年6月16日 - 写真=AFP/時事通信フォト

■「菅首相と首脳会談を行いたい」と言っていたが…

7月23日に開催される東京オリンピックにともない、各国の首脳や閣僚らが来日し、いわゆる「五輪外交」が展開される。このうち韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も来日予定だった。その狙いは菅義偉首相との日韓首脳会談だ。

ところが、韓国大統領府の青瓦台(チョンワデ)は7月19日、「訪日を見送る」と発表した。文在寅氏は「菅首相と初の対面による首脳会談を行いたい」との意向を示し、青瓦台が「短時間の面談ではなく、成果の見込める本格的な会談なら訪日を検討できる」と日本政府に対応を求めていた。日本政府も準備を整え、会談は実現する見通しだった。

今回の直前のキャンセルには、文在寅氏の「会談が物別れで終わり、目立った成果がなかった場合、世論の反発を招く恐れがある」との計算があったようだ。

沙鴎一歩は見送りで良かったと思う。東京五輪が終わった後、今度は日本側のペースで調整を進め、慰安婦と徴用工の問題についての本格的協議に入るべきである。

■「成果の見込める会談なら訪日を検討できる」

文在寅大統領は残りの任期が1年を切るなか、日韓首脳会談を実現しようと懸命だ。来年3月の大統領選を前に冷え込んだ日韓関係を改善することで与党に貢献し、政治家としての自身の名誉を挽回したいと考えているからだ。

韓国大統領の任期は5年で再選はできない。文在寅氏は2022年5月で任期が満了する。すでに任期最後の1年に入っている。

韓国側の「成果の見込める会談なら訪日を検討できる」という言い方は、日本を馬鹿にしている。「韓国として成果が得られるようならオリンピックをきっかけに首脳会談に臨んであげてもいい」という意味に受け取れる。開いた口が塞がらない。日韓関係を「戦後最悪」という状態に陥らせたのは文在寅氏であり、日韓関係を改善する責任は韓国政府にある。この観点からも「訪日見送り」でよかった。

ちなみに、6月中旬のイギリスでのG7サミットでは、菅首相と文在寅氏はあいさつを交わしただけで、正式な会談は行わなかった。日本が日韓首脳会談に対して慎重な姿勢を示したからで、この日本の対応は評価できる。

■南北改善のためには、東京五輪も利用しようとする

今年3月1日、文在寅大統領は「3・1独立運動」式典での演説の中で東京五輪に言及し、「韓日、南北、日朝、朝米の絶好の対話の機会になる。成功させるために協力する」と述べていた。同式典は日本の支配に抵抗した1919年の3・1独立運動を記念するものだ。

文在寅氏は、南北関係の改善を自らの重要課題と考え、東京五輪に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記を招待し、東京五輪をアメリカと北朝鮮の対話の舞台にしようと画策した。東京五輪の開会式に各国の首脳クラスを集めて北朝鮮の核・ミサイル開発や日本人拉致の問題について議論する会議の開催を、文在寅氏は日本や関係各国に水面下で打診していた。

だが、日本側の支持が得られず、北朝鮮にも相手にされなかった。

おのれの念願である朝鮮半島の南北改善のためには、東京五輪も利用しようとする。文在寅氏の腹の中はどこまでも自己中心的なのである。

ブルーハウス
写真=iStock.com/NGCHIYUI
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/NGCHIYUI

■日韓関係を「戦後最悪」とした張本人は文在寅氏

ところで、文在寅大統領は今年1月18日、新年の記者会見で徴用工問題と慰安婦問題についてこれまでと異なる発言をして日本政府を驚かせた。

徴用工問題については「日本企業の資産が現金化されるのは韓国と日本にとって好ましくない」と話し、初めて現金化を避けたいとの考えを示した。文在寅氏はこれまで「資産売却を許容する司法判断を尊重する」との意向を繰り返し表明していたため、周囲を驚かせた。

徴用工問題の訴訟は、2018年に大法院(最高裁)で日本企業の敗訴が相次いで確定し、日本企業の資産を強制的に売却する手続きが進んでいる。

一方、慰安婦の問題に対しては、ソウル中央地裁が元慰安婦に対する損害賠償を日本政府に命じた判決(1月8日)に触れ、「徴用工問題にこの慰安婦判決の問題が加わり、困惑している」「韓国政府は日韓合意を公式的なものだったと認める。そのうえで元慰安婦ら原告も同意できる解決策を見出したい」と語った。文在寅氏が慰安婦訴訟の判決について意見を述べたのもこれが初めてだった。

文在寅氏は慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決される」とする2015年12月の日韓合意を「当事者の意思を反映していない」と全面否定してきた。ところが、新年の記者会見でその考えを180度翻した。

徴用工問題も慰安婦問題も、以前とは違う考えを示してはいるが、問題の解決に向けた具体的な動きはない。しかし日韓関係に深い傷を付けた張本人は文在寅氏である。その責任をどう考えているのか。ここは潔く大統領職を辞するのが筋である。見送ったとはいえ、それを日本で開催されるオリンピックに便乗する形で日韓首脳会議を開いて与党に貢献しようとまで画策したのだから、まさに「人のふんどしで相撲を取る」である。

■「本格会談は必要ない。儀礼的な対応にとどめるよ」と産経社説

7月14日の産経新聞の社説(主張)は「日韓首脳会談 反日を改めねば無意味だ」との見出しを付け、「韓国の文在寅大統領が東京五輪の開会式に合わせ、訪日を計画している。2018年の平昌冬季五輪開会式に安倍晋三首相(当時)が出席したことへの返礼だとし、菅義偉首相との本格的な会談を訪日の条件として要請しているという」と書き出し、こう訴える。

「だが、反日姿勢を改めない文氏と会談することにどれほどの意味があるのか。日本が韓国に求めているのは、いわゆる徴用工訴訟など両国間のトゲとなっている問題の解決に向けた具体案だ。その用意がないのに本格会談を行う必要はない」
「菅氏は8日、『外交上、丁寧に対応することは当然のことだと認識している』と述べたが、文氏が翻意したという前向きな変化がみられるまでは、ごく儀礼的な対応にとどめるべきである」

この産経社説の訴えに大賛成である。具体案もない文在寅氏との会談などまったく意味がない。具体案がないから今回、見送ったのだ。だいたい、「反日種族主義(反日トライバリズム)の権化」の文在寅氏が自らの反日思想をあらためるわけがない。

■韓国はこれまで具体的な打開策を示したことがない

産経社説は「韓国政府高官が『両国の首脳が会うことだけでも意味がある』と発言したように、韓国にとって大切なのは会談内容ではなく、これを行ったという事実と『公式』という格式なのだろう」と指摘したうえで、こうも主張する。

「だが、外交には相手がある。自国の都合だけで進むものでもなければ、そうあるべきでもない。日本は、日韓間の諸懸案を引き起こした韓国自身がその打開策を示すよう再三伝えてきたはずだ」

繰り返すが、韓国はこれまで具体的な打開策を示したことなど一度もない。

産経社説はさらに指摘する。

「文政権の会談要請は今回だけではない。19年6月に大阪で行われた20カ国・地域(G20)首脳会議に参加した際も、文氏は『日本は外交儀礼上からも首脳会談を行うことになるだろう』と自国本位の見通しを周辺に披露していた。実際は安倍氏との立ち話すら実現せず、深い失望を見せたという」

文在寅大統領は自分中心に物事を判断する人物だ。一国を代表する大統領にはふさわしくない。沙鴎一歩はこれまで「大統領の職を辞するべきだ」と繰り返し主張してきたが、その思いは強まるばかりである。

■文政権を離れた人物が「次期大統領にふさわしい人」でトップ

産経社説より1週間前の7月7日付の読売新聞の社説は「韓国政治 若者の支持はどこに向かうか」との見出しを付け、「韓国の与野党が来年3月の大統領選に向けた動きを本格化させている。現状に不満を抱く若者には、政治の変化を求める声が強く、選挙の行方にも大きな影響を与えるだろう」と書き出し、こう指摘している。

「『次期大統領にふさわしい人』を問う最近の世論調査では、保守系の尹錫悦・前検事総長がトップだった。左派与党陣営の李在明・京畿道知事が追っている」

尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏は文在寅大統領と正面から衝突し、文政権を離れた人物として日本でもよく知られている。

読売社説は「尹氏は検事総長在任中、文在寅大統領側近の法相に対する捜査や検察改革を巡り、政権側と激しく対立し、辞任した。先月下旬に大統領選出馬を表明しており、保守系最大野党『国民の力』に入党することが有力視されている」と書き、「尹氏の人気の高さは、政権や与党に対する国民の怒りや改革への要求を反映したものといえる」と評価する。

だが、尹氏は政治家としての実績がゼロである。読売社説も「ただ、尹氏に政治経験はなく、経済・外交の力量は未知数だ。大統領を目指すに足る見識と政策を提示しなければなるまい」と指摘する。

尹氏が大統領に就任した場合、対日政策、とくに慰安婦と徴用工の問題をどう解決しようとするのか。日本政府としてはそこを見極める必要がある。

■韓国では「若い有権者」が政治を動かす力を持っている

読売社説は書く。

「韓国では、18歳から20代、30代の若い有権者が政治を動かす力を持っている。街頭デモの主力となり、選挙での投票率も高い。朴槿恵(パク・クネ)前大統領を弾劾・罷免に追い込んだのもこの世代だ」

日本と違って若者が政治を動かすところが非常に興味深いし、日本の若い世代にもそうあってほしいと思う。

読売社説はさらに書く。

「4月のソウル、釜山両市長選で与党候補が惨敗したのは、政権が就職難解消や不動産価格の抑制といった公約を実現できず、若者の失望を招いたことが大きかった。大統領選に向けて、若者票の争奪戦はさらに激しくなろう」

読売社説は韓国の若者の動きに注目し、今後の日韓関係のあるべき姿を模索したいのだろう。

そんな読売社説はこう主張する。

「保守陣営は支持層の高齢化と支持率低迷に悩んできた。若い代表を据えるだけで再生は期待できまい。日米との関係を重視し、北朝鮮の脅威に毅然と対処する伝統的政策に立ち戻り、政権担当能力を示せるかどうかが問われよう」

沙鴎一歩も韓国の保守に期待している。来年3月の大統領選で保守陣営が勝利し、日韓関係の改善に向けた動きを加速させてほしい。残念ながら、韓国の反日種族主義は根深く、一朝一夕には解消できない。日本と韓国の若者たちが新たな日韓関係を築き上げていくには、まだ時間がかかるだろう。しかし、決してあきらめてはいけない。変化の兆しはある。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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